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世界哲学史
文庫クセジュ107 ピエール・デュカセ著 / 串田 孫一訳 / 渡辺 秀訳
哲学・心理学・宗教
まえがき
偉大な哲學は、どんなに古いものであっても、常にわれわれにごく近い。そういう哲學は、われわれ人間のどうにもならない志向に答えているものである。人は幼い時から、宇宙の説明を求める。一つの世界像をたてて、われわれの内外で、一切のものがどう秩序づけられているかを理解しようとするのである。歴史はそういうものであったし、一切の哲學の萌芽と更新は、そういうものである。
人間は決して知ろうとする欲求を捨てることがない。行動の必要に心をみだされても、日々の物質生活に心を奪われても、人間の精神は世界と運命について自分で探究することを止めていない。それは沈默の探究であり、超然としたとき、解脱したときには、その結論だけが、明白な内心の確信として、深く冥想されたものとして、與えられる。そこに哲學的な本能のかくされた業が示されているのであり、その本能こそ一切の知的な進歩の動力である。
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