目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

第5回 数える物がなくなると、数え方もなくなる?

「行李(こうり)ひと梱(こり)」「香炉1合(ごう)」「蚊帳(かや)ひと張(は)り」「石灯籠(いしどうろう)1基(き)」「菅笠(すげがさ)1蓋(がい)」「箪笥(たんす)ひと棹(さお)」…日本語には物に応じて、実に多様な数え方があります。

しかし、時代と共にこのような物を日常生活で使うことが少なくなり、実生活でこれらの物を数える機会はますます減っています。例えば、スーツケースを行李と同じ「ひと梱」で数えることもありません。数える機会がなくなると、その数え方も忘れられてしまうことは避けられません。

日常生活から姿を消す物がある一方、新しい物もどんどん生まれ、それらを数える必要が出てきます。ところが、新しいものが登場しても、それに応じた新しい数え方が生まれることはほとんどありません。例えば、電卓、ワープロ、パソコン、ポケベル、携帯電話…これらはすべて「1台」で済んでしまいます。

物の移り変わりが激しい現代では、次に何が登場しても対応できる、万能で包括的な数え方が好まれる傾向にあります。残念ながらかつての“豊かな”数え方は失われつつあります。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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