目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編5 数え方を知って、正しく薬を服用しよう

「錠」「粒」「丸」「包」「貼」「服」など、薬の数え方にはさまざまなものがあります。数え方を見ると、薬がどのような形状なのかを知る手がかりになります。

薬を数える際、最もよく目にするのは「錠」でしょう。主にタブレットやカプセルに入った飲み薬(錠剤)を数えます。坐薬も「錠」で数えることはありますが、飲み薬と間違うことがないよう、最近では坐薬のパッケージなどに「1個、2個」と表示するようになっています。「丸(がん)」という数え方は、古くからの薬の名前に「○○丸」というものがあるように、練り合わせた薬物を丸めて作った球形の薬を数えます。

「包」と「貼」は、粉薬を包んだものを数えます。「貼」は、病の症状を落ち着かせるという意味があり、紙に包んだ薬を数えます。1回ごとの服用分に分けられた粉薬は「1服」と数えます。「服」はぴったり身に付けて離さないという意味を持ち、そこから転じて薬を常用する、体内に取り込むことを現します。ちなみに、現代中国語でも「服」は漢方薬の分量を表すのに用いられ、1日に必要な薬の使用量を「1服」と言うそうです。

サプリメント(栄養補助食品)も粒状をしていますが、注意深くパッケージを見ると、「錠」ではなく「粒」や「個」でその数を表示している商品が目立ちます。これは、薬事法で、栄養補助食品やサプリメントなどの医薬品以外の商品を、医薬品と誤解を与えるような表現を行ってはいけないと厳しく定められているためです。確かに、薬の説明書きには「食後に3錠服用」と書かれていますが、サプリメントは「3粒を目安にお召し上がりください」となっていますね。なお、薬事法では数え方の厳密な使用は規定されていませんが、薬と栄養補助食品を区別する1つの手がかりとして、数え方が今でも一役買っていることは確かです。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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