目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編11 「三大○○」に見る、3という数の力

日本に限らず、世界の文化では3つのものを総称するのが好きなようで、とかくこれらを「三大○○」として“認定”したがります。例えば、活版印刷・火薬・羅針盤は世界の三大発明と言われます。三大珍味と言えば、トリュフ・キャビア・フォアグラ。三大料理は、フランス・トルコ・中華料理です。太平洋・大西洋・インド洋はまとめて三大洋。三大宗教は、イスラム教・キリスト教・仏教を指します。更に、日本で言うところの世界の三大美女は、クレオパトラ・小野小町・楊貴妃だそうですが、このメンバーは国によって違ってくるのだとか。同じく日本で言う世界の三大詩人にはシェークスピア・ゲーテ・松尾芭蕉が挙げられますが、これにも多少のバリエーションがあるでしょう。

我々は、3つのものを並べると、そこに物事の安定したまとまりや完結した感じを抱く傾向があります。例えば、色使いを見ると、自動車用信号機は赤・黄色・青の3色ですし、世界の国旗の多くは3色です。表現を濁したり、余韻を持たせる際に、「・・・」と点を3つ書いて文章を終えますが、これも「3」という数が我々に与える印象の成せる業でしょう。

「三大○○」に似た意味で、「三家」という表現があります。もともとは、太政大臣に昇進できる家柄の中で、特に閑院家、花山院家、そして中院家を指しました。江戸時代の「徳川御三家」と言えば、尾張の徳川家、紀伊の徳川家、そして常陸の徳川家。昭和時代、同じような年代や芸風を持つ大物芸能人3人を「御三家」と称していましたが、現在「御三家」と言えば、卒業生を一流大学に進学させることができる難関中学・高校の上位3校を総称する表現になっています。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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