目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編12 その手があった、長さの測り方

物差しやメジャーといった長さを正確に測る道具が無かった時分、私達は手足などの身体部分を基準としてものの長さを測りました。その中で最もよく使われたのが手。日本語の古い数え方や単位には人間の手によって決められたものが多数あります。

例えば、「1把(いちわ)、2把(にわ)」の「把」。現在はホウレンソウなどの葉物野菜の小売単位としてしばしば使われます。「把」という字には“手の平に当てて握る”という意味があり、もともとは刈り取った稲を片手で握り作った束を数えました。「把」は古代稲の量の単位でもあり、稲束10把で「1束(いっそく)」と言いました。

片手で作った握りこぶし1つ分の幅を「一束(ひとつか)」と言い、これも長さを測る目安でした。「束の間」という表現の語源となった長さです。1束は現在の約8cmに相当し、当時は矢の長さの単位としても使われました。「八束(やつか)の矢」なら64cm、「十束(とつか)の矢」なら80cmといった具合です。皆さんも自分のこぶしの幅を測ってみると、8cm前後であることに気がつくと思います。

手の平の付け根から中指の先端までの長さは、親指と中指とを大きく開いた長さとほぼ同じで、この長さを「一咫(ひとあた)」と言います。標準的な手の大きさの人だと17~18cm前後でしょう(横綱・朝青龍でも19cmです)。昔から、使う箸は手の大きさに合わせよと言いますが、その目安として「一咫半の長さの箸が良い」と言われます。しかし、それに従うと、一咫18cmの人ならその1.5倍、27cmの箸を使うということになってしまい、少々長過ぎます。私達が日頃使う割り箸は20cm前後の長さであることを考えると、現代では「1あた+半束」くらいを目安に箸を選ぶのが良いのかもしれません。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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