目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編4 「腹」をくくって数える魚の卵

しばしば商品としての鶏卵はパックに「10玉入り」などのように書かれていますが、ニワトリの卵は「1個、2個」と数えます。料理のレシピなどでも、使う卵の数は「個」で記されています。鳥類の卵は、ウズラの卵のように小さなものでも、ダチョウの卵のように巨大なものでも「個」で数えます。

親の個体が1回の産卵で産む卵のひとまとまりを「1腹(ひとはら)」と言います。例えば、ツバメは1腹で3~7個、ワニは1腹で約16個から、多い場合は約80個もの卵を産みます。そして魚類にいたっては、1回の産卵で何万、何億の卵を産みます。もちろんこれも1腹です。

そこから出てきたのが「腹」という数え方。よくタラコを数える際に使いますが、これもスケソウダラが1回の産卵で産む(はずだった)分量の卵という意味で、左右の卵巣をセットで1腹と数えます。店で「タラコ1腹ください」と言えば、細長い卵のまとまりが2本分出されるということになります。もし、それでは多すぎるという場合は「タラコ片腹(かたはら)ください」と言います。

魚卵は常に1腹で売買されるかというと、必ずしもそうではありません。スジコやイクラのように大きな卵のまとまりは、1腹分買って食べるのはなかなか大変です。店によっては、片腹分の魚卵を「1腹」と称して売っていることもあります。築地場外市場には、ニシンの卵・カズノコを専門に扱う店がありますが、そこでは片腹分のカズノコを「1羽(ひとはね)」と数えています。これはカズノコの形が鳥の羽に似ているためだそうです。カズノコは高価な食材ですから、客が「片腹しか買えない」という恥ずかしい気持ちを抱くことがないよう、「1羽」と数えることによって気持ち良く買い物をしてもらうための店側の配慮から生まれた粋な数え方です。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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