目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編1 動かないものを数える「基」──「ベンチ」から「人工衛星」まで──

公園のベンチ、モニュメント、神社の鳥居、歩道橋、信号機、タワー、観覧車、ダム、原子力発電所、そしてピラミッドにいたるまで、これらにはある共通点があります。それは何でしょうか? 答えは、すべて同じ助数詞「基」で数えるということです。「え! 公園のベンチとピラミッドが同じ数え方?」と驚くのも無理はありません。これらの物は作られた時代はもちろん、形も大きさも、機能も異なっているからです。公園のベンチはくつろぐための物ですし、信号機は交通を整理する物、そしてピラミッドは古代エジプトの王様のお墓だと推測されている物です。

実は、この「基」という漢字には、建物の土台や物事の礎となる物という意味があり、簡単には動かされない物を表します。そこから、人間ひとりの手では動かすことができない施設や設置物などを数えるようになりました。普段、話し言葉ではあまり使わない数え方ですが、ニュースや街中でしばしば目にします。例えば、建物に据え付けてあるエレベーターやエスカレーターなども「基」で数えます。助数詞「基」は、大きさや規模に関わらず、地面や建物に据え付けてある物を数える、と覚えておくと戸惑いがないでしょう。建物自体も地面に据え付けてありますが、人間がその中で活動したり生活したりする空間を提供する目的で建てられているため、「基」では数えません。

ただし、例外もあります。それは地球の周りをまわる人工衛星。人工衛星は打ち上げられると「1基、2基」と数えるのです。なぜそう数えるのか専門家に聞いてみたところ、「軌道に“据えて”機能するものだから」という答えが返ってきました。なるほど、空に浮かんでいるものに対しても、据え付けるという「基」の意味が生かされているのですね。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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