今年の厳しい寒さの影響もあって国産野菜が値上がりし、野菜の緊急輸入に踏み切る商社や輸入品の取扱いを増やすスーパーが増えているが、5年前に大きな問題になった中国からの冷凍ギョーザ中毒事件のように、安全性が担保されているか心配である。

 そんな中で『週刊朝日』(3/8号、以下『朝日』)が「危ない輸入食品472品目一挙掲載」という特集をやり、危ない輸入食品は中国だけではなく52か国・地域に及んでいると警鐘を鳴らしている。

 厚生労働省のまとめによると、2011年度の輸入食品の届け出件数は1991年度に比べると、約3倍の209万6127件、総重量は1000万トン近くも増え3340万トンを超えている。

 日本の食品衛生法に違反した輸入品の件数は09年度の1559件から11年度は1257件に減っているものの、体に危ない食品は後を絶たない。

 『朝日』によれば、やはり中国産が国内外で問題を引き起こしているそうだ。

 「昨年は、ドイツで中国からの輸入イチゴを食べた1万1千人超が下痢や発熱を訴え、ノロウイルスの感染が疑われた。今年に入ると、ケンタッキー・フライド・チキンを展開する米外食大手ヤム・ブランズの中国事業部が、鶏に過剰な生長促進剤や抗生物質を投与していたことを認め、謝罪。2月には、遼陽市でカモ肉に基準の約2千倍の亜硝酸塩や発がん性のある添加物を加え、牛肉や羊肉と偽って販売したとして、中国当局が生産工場の関係者らを拘束したと現地紙が報じた」

 昨年6月には中国産蒲焼きうなぎから、中国でも食品への使用が禁止されている合成抗菌剤「マラカイトグリーン」が検出された。菓子類や油脂からは防腐剤「TBHQ(ブチルヒドロキノン)」、冷凍コハダや健康食品から、発がん性が疑われ日本では約40年前に使用が禁止された人工甘味料「サイクラミン酸」が検出されている。

 日本と中国では農薬などの使用基準が異なり、食の安全に対する感覚も違うため、抜本的な改善策はないと、食品輸入業者が嘆息している。

 しかし、日本人の体への影響が心配される食品は中国産だけではない。熱帯、亜熱帯で生息するカビ毒の一種「アフラトキシン」により、1960年にイギリスで10万羽以上の七面鳥が死んだが、米国産のトウモロコシなどから59件(12年2月~13年1月)も見つかっているのだ。

 東南アジアを中心に、えびのような養殖水産物から抗菌剤や抗酸化剤、抗生物質などが検出される例が多い。

 生食用と謳(うた)ってある韓国産のひらめから、国立医薬品食品衛生研究所などの調査で、食中毒の原因と特定された寄生虫「クドア・セプテンプンクタータ」が見つかり、中国、フィリピン産の生食用うにからは「腸炎ビブリオ」。まぐろ、イカ、えびなどからも基準値以上の「大腸菌群」が検出されている。

 アメリカは先のトウモロコシだけではなく、いったピーナッツやピスタチオ、生鮮アーモンド、ピーナッツバター、乾燥いちじくから「アフラトキシン」が検出されている。日本人の好きなチョコレートからも原料となるカカオ豆から「イミダクロプリド」など基準値を超える殺虫剤がたびたび検出されている。

 TPP加盟交渉国のオーストラリアからもうるち玄米やうるち精米から異臭、カビの発生などが認められているし、加盟国のニュージーランドのアイスクリームや冷凍フライドポテトからも大腸菌群が検出されている。

 TPPが締結されれば、さらに大量の輸入食品が日本に入ってくるはずである。食品の安全という点でも十分な国民的議論が必要なこと、いうまでもない。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 市川猿翁(いちかわ・えんおう)丈が猿之助(えんのすけ)時代に始めた「スーパー歌舞伎」は、現代的ともいえるケレン味のある演出で一世を風靡(ふうび)した。その第一作『ヤマトタケル』の台本を書いたのが梅原猛(うめはら・たけし)氏。哲学者として著名な氏が、『ムツゴロウ』などの「スーパー狂言」三部作を経て、2013年1月に発表した新作能が話題になっている。タイトルは『世阿弥』。「スーパー能」というふれ込みで、4月に東京・国立能楽堂で上演される。

 2013年は、室町時代に能を大成した世阿弥の生誕650年に当たる。記念すべき年にお披露目となる「スーパー能」第一弾は、世阿弥の息子元雅の死の謎をめぐる内容で、能の未来への希望などが描かれる。能の舞台で使うことのなかった照明の登場、従来の古語を脱した現代語による展開など、新しい演出が「スーパー」たるゆえんである。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 確定申告は、おもに自営業者が1年間の所得を確定させて、国に納める所得税を申告するために行なうものだ。サラリーマンは勤務先で行なう「年末調整」で一応の所得税額が決まるので、通常は確定申告する必要はない。ただし、「医療費がたくさんかかった」「家を買った」など特別な事情があった年は、サラリーマンでも確定申告すると税金が戻ってくる可能性がある。こうした節税対策のひとつとして話題になっているのが、2012年度の税制改正で適用範囲が拡大したサラリーマンの「特定支出控除」だ。

 自営業の必要経費は、材料費や交通費など仕事のために実際に必要な金額で、これを売り上げから差し引いて課税所得を決定する。一方、サラリーマンの必要経費は「給与所得控除」と呼ばれ、実際に使った金額に関係なく年収に応じて一律だ。たとえば年収500万円なら154万円だが、仕事で使う経費には個人差があり、実態を反映していないこともある。

 特定支出控除は、仕事で使った必要経費が給与所得控除を超えた場合に収入から差し引けるというものだったが、条件が厳しく実際に利用できる人はほとんどいなかった。だが、今回の改正で適用範囲が広がったため、対象者が広がるのではないかと期待されている。

 まず経費として認められるのは、従来は通勤費、転勤に伴う転居費用、職務に必要な技術・知識習得のための費用や研修費用など一部に限られていたが、今後は仕事で着るスーツや作業服の購入費、仕事のために読んでいる雑誌、新聞や書籍の代金、取引先への接待・交際費なども認められるようになる(ただし65万円まで)。

 控除額は、これまで給与所得控除を超えた額だったのが、今後は給与所得控除の2分に1を超えた額まで引き下げられた。たとえば、年収500万円の場合、これまで仕事の必要経費を100万円使っても特定支出控除の対象にはならなかったが、今後は77万円以上で対象になるので、23万円を収入から差し引けるようになる。所得税率が5%の人なら1万1500円の節税になる。

 特定支出控除の適用拡大は、来年の申告から。申告時にはお金を使った証拠を税務署に提出し、会社の証明を添える必要がある。今後はサラリーマンでも仕事で使ったお金は領収書をもらう習慣をつけたいもの。

 ただし、確定申告で税金を取り戻せるのは、自分が納めた所得税の範囲内なので、すでに住宅ローン減税を受けていて所得税がゼロの人などは特定支出控除の恩恵は受けられない。
 そもそも、一般的な収入のサラリーマンは生活費や子どもの教育費で精一杯で、仕事の経費に回せるお金はそれほどないだろう。特定支出控除の適用が拡大しても、結局、トクをするのは高収入のサラリーマンとなり、所得格差に拍車をかけることも心配される。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 「日本のアニメが世界中で人気」というトピックは、わざわざ語られる必要のないほど認知されているようだが、『巨人の星』のインド版を製作するニュースにはさすがに驚きがあった。2012年12月から放映を開始した『スーラジ ザ・ライジングスター』は、野球を「クリケット」という野球に似た球技に置き換え、スポ根物語を展開する。クリケットはよく「サッカーの次に競技人口が多いスポーツ」とされるが、それは人口の多いインドで盛んなことから来ている(実際のところ根拠となるデータはなさそうだ)。
 日本のトムス・エンタテインメント(前身の東京ムービーが実際に『巨人の星』を手がけた)が制作に関わっている。内容はかなり原典に忠実で、もはや語りぐさの「大リーグボール養成ギプス」同様のアイテムまで飛び出した。本作のスポンサーについているのは、インドでのビジネスをより推し進めたい日系企業。単なる「輸出」ではない、日本発のアニメコンテンツの戦略に注目である。ちなみに、「スーラジ」とは主人公の名前。「星(飛雄馬)」に対して、スーラジは「太陽」を意味している。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 メディアはあまり書き立てていないが、永田町で、国民の政治不信を増幅する出来事が起きている。衆院定数削減問題の棚ざらしだ。
 自民、公明、民主3党は昨年11月、現在、480ある衆院定数の削減について合意した。2014年4月の消費税率引き上げを控え、「増税を国民にお願いする手前、議員も自ら身を切る必要がある」からだ。
 定数削減は、衆院解散の条件ともなり、3党は「2013年通常国会終了までに結論を得た上で法改正を行なう」との約束を取り交わし、同年12月に総選挙が行なわれた。
 しかし、通常国会開幕後、定数削減に向けた政党間の協議は遅々として進んでいない。2月22日に3党の幹事長がこの問題で話し合ったが、前述の合意を再確認しただけに終わった。
 新聞報道によると、会談終了後、自民党の石破茂幹事長は記者団に「法改正も今国会中にできればベストだが、3党だけでは決められない」と語り、公明党の井上義久幹事長もこれに同調したという。
 そもそも自公両党は、先の衆院選の政権公約で定数削減を唱っていたはずだ。民主党は「3党合意は衆院を解散させるための方便だったのか」(細野豪志幹事長)と反発しているが、当然だ。
 「公約破り」「国民騙し」などと後ろ指を指されないよう、両党は定数削減に向けた議論を主導すべきである。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 京都のひな祭りに欠くことのできない和菓子の一つ。漢字は「引千切」と表し、「ひっちぎり」ともいう。見た目が真珠を宿す阿古屋貝に似ているので「あこや餅」と呼ばれたり、形を蓮(はす)に見立てた「いただき」という菓銘で、お釈迦様の誕生日、4月8日にお供えする菓子ともなる。
 ひちぎりの起こりは、平安時代の公家(くげ)が我が子の前途を祝して、子どもの頭上に餅(もち)を三度触れさせたという儀式、戴餅(いただきもち)である。この儀式の餅は、丸い餅の中央のくぼみに小豆餡(あん)を載せたものであったという。ひちぎりは蓬餅(よもぎもち)を杓子(しゃくし)型にして、真ん中のくぼみに小豆餡を置いた菓子である。杓子型の柄の部分は、「引き千切る」という名前の由来通り、先端は引きちぎられて角(つの)のようになっている。昔の京都では、女の子が生まれたとき、婿方の家に祝いの配りものとし、ひちぎりを贈るならわしがあったそうである。現代では、餅の代わりに団子や求肥(ぎゅうひ)、こなしなどを用いて白、赤、蓬の三色をつくり、愛らしい色のきんとんで配色したものなどをよく見かける。
 そもそもひな祭りとは中国の五節句の一つ、上巳(じょうし)の節句であり、中国ではこの日、川で禊(みそ)ぎをして邪気を払い、祝いの宴を催していた。日本に伝わると、禊ぎの神事は、人形(ひとがた)に穢(けが)れを移して川や海に流す流しびなの習俗になり、それが子どもの身代わりのひな人形へと移り変わっていった。また、邪気を払うために食べていた母子草(ははこぐさ:春の七草の一つ、オギョウのこと)の草餅は、蓬を用いたひちぎりとなって、今日にも受け継がれているのである。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 政治家、70歳。私が小沢一郎氏に注目したのは、彼が最年少の自民党幹事長になったときである。47歳。傲岸不遜(ごうがんふそん)が洋服を着たような男だった。以来20余年の間に田中角栄・竹下登・金丸信などの“恩師”を次々に裏切り、“政敵”小渕恵三・海部俊樹・野中広務を屠(ほふ)り、時の政権を潰すことに執念を燃やし続け、「豪腕」「政界の壊し屋」と呼ばれてきた。
 田中がロッキード事件で逮捕され政界の表舞台から姿を消すと、小沢が主役に躍り出た。彼が自著『日本改造計画』(講談社)で主張していた「戦争のできる普通の国」という考え方が、私には危険だと思え、ライターの松田賢弥(まつだ・けんや)氏と組み『週刊現代』(1992~97年)で反小沢キャンペーンを続けた。
 そこでは東北地方を中心とするゼネコン支配、不明朗な金脈作り、愛人、隠し子問題などを追及した。だが、1993年に自民党を飛び出した小沢は、新生党を結成、細川護煕(もりひろ)を首相に担いで非自民連立政権をつくるなど、念願である二大政党制づくりへと突き進み、2009年に彼が率いる民主党が大勝して政権交代を果たすのである。
 ここまで日本の政治は小沢を中心に動いていたといっても過言ではなかろう。
 彼の人生が暗転したのは2010年に小沢の秘書達が政治資金規正法違反容疑で逮捕されてからである。小沢は嫌疑不十分で不起訴となったが、翌年、検察審査会で強制起訴(2012年11月に無罪確定)されてしまう。
 さらに小沢を追い詰め、人間としても問題ありと批判したのは妻の和子であった。『週刊文春』(2012年6/21日号、以下『文春』)がスクープした「妻からの離縁状」では、夫・小沢の愛人・隠し子のことについても触れ、原発事故が起きてから放射能を怖がって逃げ出したと書いてある。
 「岩手で長年お世話になった方々が一番苦しい時に見捨てて逃げだした小沢を見て、岩手や日本の為になる人間ではないとわかり離婚いたしました」(『文春』)
 妻や息子たちからも遠ざけられ、民主党を離党して臨んだ昨年末の総選挙で惨敗を喫した小沢氏は、『週刊ポスト』(3/1日号)で最近の心境を語っている。
 中国の鄧小平が73歳のとき3度目の復帰をして最高指導者に登りつめたことを例に出し、勝負は3年半後のダブル選挙だと意欲を見せ、こう語っている。
 「人生はいろいろあるし、勝つも戦、負けるも戦だからね。ただ何としても、議会制民主主義の最初のレールだけは敷きたい。だから、自民党に対抗できる政党、基盤となる政党をつくり上げたい」
 彼は西郷隆盛が好きなようだ。インタビュアーに「西郷のように幕をおろすわけにはいかない?」と聞かれ「城山(西郷が西南戦争に敗れて自決した地)には、まだちょっと早いな」と答えている。
 だが、小沢氏が憧憬する西郷どんのように、後世の人が彼を一時代の英雄や憧れの対象として思い浮かべることはないに違いない。私も小沢ウオッチャーとしての役目を終える時期にきたと思っている。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


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