京に都が移された平安遷都のとき、周囲を取り囲む四方の山の石蔵に経文を納め、王城鎮護を神仏に祈ったという。その四方の山とは、東は左京区粟田口(あわたぐち)の東岩倉山(現在の大日山(だいにちやま))・日向(ひむかい)大神宮付近、西は西京区大原野にある西岩倉山・金蔵寺(こんぞうじ)、南は下京区石不動之町(いしふどうのちょう)の明王院不動堂、北は左京区岩倉上蔵町(あぐらちょう)の山住(やまずみ)神社で、これらの地を「四磐座」と呼んでいる。

 このような磐座は、神が降臨するとされる石を、神の座として神聖視した古代信仰の磐座信仰によるものである。古代の人は、山の頂に巨大な岩を積み上げ、それを祭壇として祭祀を執り行っていたと伝えられている。北岩倉山にあたる山住神社は、996年ごろまでは、現在近くにある岩座(いわくら)神社がこの場所にあったといわれている。今は岩座神社の御旅所で、そこには社殿がなく、かつての磐座であろう巨大な岩があり、これをご神体として崇めている。

 磐座信仰の痕跡は、四磐座以外にも、京都市内のあちこちに見られる。例えば、上京区浄福寺通上立売上ルに巨石のみが残されている岩神祠(いわがみのほこら)、左京区松ヶ崎の林山にある岩上神社などである。さらに、応仁の乱で西軍の拠点となったことで知られる船岡山(北区)の山頂には、磐座の跡が残されており、この場所を基準として平安京の朱雀大路が決められたという。このような磐座信仰の名残は全国各地に残されており、磐座の多くは、腰掛石や影向石(ようごういし)、姥石(うばいし)などと呼ばれている。


船岡山の西南側山頂付近にある磐座。船岡山は標高415メートルの小山で、京都に都が定められたときの北の基点である。この磐座の真南に大極殿が建てられ、朱雀大路が通された。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 いまさらいうまでもなく日本を代表する5人組の“アイドル”グループである。といっても30代は香取慎吾だけで、キムタクこと木村拓哉、中居正広、草彅剛、稲垣吾郎は40歳を超えている中年男たちである。

 1988年にスケートボーイズのメンバーとしてデビューし、3年後にジャニー喜多川社長がSMAPと命名した。ちなみにSMAPは、スケートボーイズのキャッチコピーだった「Sports Music Assemble People」(スポーツや音楽をやるために集められた人々)の頭文字。2003年に出したCD『世界に一つだけの花』が200万枚を超える大ヒットとなった。

 今年CDデビュー25周年を迎えるSMAPだが、昨年初めから事務所を離れて「独立」するのではないかと噂されていた。

 これを最初に報じたのは昨年の『週刊文春』(2015年1/29号、以下『文春』)だった。タイトルは「ジャニーズ女帝 メリー喜多川 怒りの独白5時間」。ジャニー氏の姉で事務所副社長のメリー喜多川氏とマネージメント室長の飯島三智(みち)氏がSMAPを巡って大戦争を繰り広げているというのである。

 飯島氏は売れない頃からSMAPをマネージメントしてスターへと育て上げたため、SMAPの5人も慕っているが、それをおもしろく思わないメリー氏と彼女の娘で「嵐」を手がける藤島ジュリー景子副社長とが対立しているというのである。

 またSMAPのキャスティングに携わるテレビ局関係者にとっても飯島氏の存在がどんどん大きくなっているそうだ。

 だが芸能界きってのやり手であるメリー氏の力は絶大だ。『文春』に対して、ジュリー以外に誰かが派閥を作っているというのなら、許せない。飯島を注意します。今日、(飯島氏を)辞めさせますよと言い切る。

 早速、メリー氏は飯島氏を呼びつけ、彼女は困惑しながらやってくる。その彼女にメリー氏はこう迫る。

 「飯島、私はこう言いますよ。『あんた、文春さんがはっきり聞いているんだから、対立するならSMAPを連れていっても今日から出ていってもらう。あなたは辞めなさい』と言いますよ」

 『文春』が嵐とSMAPは共演しないと言われているがと聞くと、メリー氏がこう言い放った。

 「だって(共演しようにも)SMAPは踊れないじゃないですか。あなた、タレント見ていて踊りの違いってわからないんですか? それで、そういうことをお書きになったら失礼よ。(SMAPは)踊れる子たちから見れば、踊れません」

 天下のSMAPも形無しである。しかもメリー氏にとって事務所のトップタレントはSMAPではなく、いまでも「マッチ(近藤真彦)」だというのだ。

 この確執が水面下で続いていたのである。年明けの『週刊新潮』(1/21号、以下『新潮』)が「4対1に分裂!『SMAP』解散への全内幕」とすっぱ抜いたのだ。一部のスポーツ紙は自分のところがスクープしたなどとふざけたことを言っているが、時間的にも『新潮』が先である。

 この報道に事務所側が「飯島氏の退職とSMAPの独立問題を協議している」と認めたものだから、ワイドショー、スポーツ紙、大新聞からNHKを含めたニュース番組までが挙って取り上げる「大ニュース」となったのである。

 いちアイドルグループの独立問題が国論を真っ二つにするほどのニュースになり、海外メディアまでが報じたが、それほどこの国が「平和ボケ」しているという証拠であろう。

 『新潮』によれば、この問題はこじれにこじれ、暮れのNHK紅白歌合戦もあわやジャニーズ事務所タレント総引き上げの事態になりかかったそうだ。

 件の飯島氏が昨年秋口、NHKの制作局の幹部に「今年の総合司会はSMAPにしてほしい」と推してきたというのである。

 そこでNHKが事務所側に相談したところ、事務所から「そんなにSMAPを重用したいならお好きに、どうぞ。その代わり、今年は他のグループは全て引き揚げますから」と通告されたというのだ。あわてた幹部たちが事務所に頭を下げてSMAPの司会は消え、メリー氏が重用しているマッチ(近藤真彦)のトリが決まったのだそうだ。

 たいしたヒット曲もなく久しく紅白に出ていなかったマッチがトリをとることに違和感があったが、こうした経緯があったようだ。

 事務所側と飯島氏の仲違いは修復不能なまでにこじれ、双方が弁護士を立ててやり合っていたが、12月半ばに飯島氏が解雇されることに決まった。

 だが、苦労した時代からマネージャーを務めた彼女への感謝の思いがSMAPのメンバーたちに強く、結局、中居正広、草彅剛、香取慎吾、稲垣吾郎が事務所を出て飯島氏と事務所を設立し、キムタクだけが残るということになったと『新潮』は報じた。

 キムタクはなぜ残ることにしたのか? 『新潮』によれば、彼は「成功したから独立するというのは、スジが通らない。自分はジャニーさんやメリーさんを決して裏切りません」と言ったというのだ。

 だが、この飯島クーデターはほとんどの芸能プロダクションとそれにパラサイトしている芸能マスコミに袋だたきにあう。

 スポニチは1月14日の一面で「SMAP女性マネ、独立クーデター失敗」といち早く報じた。その理由を「タレントを連れての独立は芸能界のルール違反。『これがまかり通ると芸能事務所は立ち行かなくなる。元の事務所に後ろ足で砂をかける行為で許されるものではない』(芸能関係者)」とし、「クーデターは芸能界の支持を得ることができず失敗に終わった」と断定している。

 その後、飯島氏は芸能界から完全に身を引くことになったとも報じている。こうしてSMAPの4人は「四面楚歌」になってしまったのである。

 多くのファンたちが「SMAPを解散しないで」と涙ながらに訴える声をテレビは流し続けた。

 そうしたファンの声に後押しされたという理由で、1月18日の「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)に5人が生出演し、「解散騒動」を謝罪したのである。

 キムタクが中心になり、それぞれが騒動を起こしたことへの謝罪の言葉を述べ、キムタクが最後に「これから自分たちは何があっても前を見て進みたい」と締めた。

 だが、香取の泣きそうな表情、中居の疲れ切った顔に比べてキムタクの勝ち誇った表情が「あること」を物語っていた。それは草彅の言葉の中にある。

 「今回、ジャニーさんに謝る機会を木村君が作ってくれて、今僕らはここに立てています。5人でここに集まれたことを安心しています」

 キムタク以外の4人が戻ることを了承する代わりに、事務所側が4人に対してテレビによる「公開謝罪」を要求したのではないか。放送終了と同時に事務所側の「パワハラ」ではないかという声が上がったのも当然だろう。

 私は、SMAPの独立が失敗したことを残念に思っている。なぜなら4人は何度も話し合った結果、事務所から離れる決心をしたのだろうが、そこに至るまでの彼らの葛藤に思いを致すからである。

 これまでも何人かのタレントがこの事務所を離れて独立しようと試みたが、事務所側がテレビ局にその人間を使わないよう圧力をかけたため、成功しなかった。

 だが、天下のSMAPが独立したなら、テレビ局の中には彼らを使おうという人間も出てくるかもしれない。昔、ナベプロという芸能プロダクションが「王国」を築いた時代があった。だが、一つのテレビ局(日本テレビだが)が、ナベプロのあまりの「横暴」に反発して自前でスターをつくろうと「スター誕生!」という番組をつくり、そこから桜田淳子や山口百恵など“テレビが生んだ”スターが輩出した。それをきっかけにナベプロは勢力を失っていったのである。

 今度の独立はジャニーズ事務所というより、守旧派の芸能界全体を変えるきっかけになるかもしれなかったのである。

 彼らが誤算だったのは、SMAPが稼ぎ出す金額が大きすぎたことであった。『新潮』が試算したところによると、2014年だけでもSMAPが稼いだ売上は「優に250億円は突破するに違いない」(『新潮』)という。

 同じ『新潮』がジャニーズ事務所の年間売上は1000億円程度ではないかと推測しているから、そうだとするとSMAPはその4分の1を稼いでいることになる。

 全部なくなるわけではないが、相当な危機感を事務所側は持ったに違いない。そこで芸能界の「ドン」といわれるS氏(私の推測だが)に4人の説得を頼み、スポーツ紙には「恩を仇で返す」のかと書かせ、彼らを孤立させ、ファンを動員して「元に戻れ」コールを巻き起こした。

 抱えているトップタレントに独立されたらと、同じ穴の狢(むじな)である芸能プロダクションや4人が相談したタレント仲間たちも、掟を破ったらどうなるかを説いたに違いない。

 かくして4人の反乱は鎮圧され、芸能村は何事もなかったかのように動いていく。だが、彼らがやったことは無駄にはならない。「自分たちも人間だぞ」と声をあげたのだから。いまだに「女工哀史」のままのような芸能界に開けた風穴は、必ずこれから大きくなるに違いない。中居、草彅、香取、稲垣、夜明けは近い、頑張れ!

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 SMAP騒動ばかりに目を奪われがちだが、『文春』の美智子皇后が雅子妃を「叱った」という記事は本物の大スクープである。何しろ二人だけの完全プライベートな会話のやりとりが(おそらく)すべて掲載されているのだ。美智子皇后の了解はとっているはずだが、どうやったのだろう。何はともあれ貴重な2人の会話を読んでいただこう。

第1位 「美智子さまが雅子さまを叱った!」(『週刊文春』1/21号)
第2位 「ゲス乙女川谷絵音(27)の妻 涙の独占告白」(『週刊文春』1/21号)
第3位 「滝川クリステル著書にパクリ疑惑!」(『週刊文春』1/21号)

 第3位。滝川クリステルが母親と共著で出した『リトルプリンス・トリック』(講談社)に、東京五輪エンブレム問題のように「パクリ疑惑」が持ち上がっていると報じている。
 これは『星の王子さま』の謎解き本なのだそうだが、その着想が、市井の文学研究者が長年研究してきたものと同じで、盗用したのではないかというのである。
 私はこういうことには門外漢だが、何でも滝クリの本では、サン=テグジュペリが描いた挿絵を読み解いていくと、王子はハレー彗星で、巻末のカラーとモノクロ挿絵が、明けの明星と宵の明星をさしているというのだ。
 それがどういう重要な意味を持つのか私にはわからないが、市井の研究者の友人が言うには、彼は長くその研究に没頭している。また「彗星会議」の運営委員長を務めた国立天文台の渡部潤一副台長も、私が知る限り、国内でこういう研究をしている人は彼だけではないか、と『文春』で証言している。
 その上、滝クリの母親と件の研究者とは長年の知り合いで、彼に以前からこの話を聞いているのである。
 研究者が講談社に電話で問い合わせたところ母親から電話があり、やりとりをしているうちに、母親の知人という人間から、右翼を仄めかして「これ以上、騒ぎ立てるな」と言ってきたというのだ。穏やかでない。
 2000年の朝日新聞に研究者の話が載っているが、これについての著作はないようだ。だが滝クリの母親のように、「この世の中に私と同じようなことを考えている人がいてもおかしくないんじゃないですか」という言い草はちとおかしい。
 よく知った人間であり、彼から話を聞いているのだから。その本の核心部分がその発想だとしたら、それを丸ごと頂いて知らん顔ははなはだよろしくない。
 滝クリのブログのタイトルは「大切なものは目に見えない」というそうだが、これは『星の王子さま』の一節だそうだ。またしても起きたパクリ疑惑。やはり「呪われた東京五輪」なのだろうか。

 第2位。先週、ベッキーと「ゲス」(このスキャンダルのためにつくられたようなバンド名だ)の川谷絵音(かわたに・えのん、27)の「不倫愛」を『文春』がスクープしたが、今週『文春』はベッキーに夫・川谷を奪われそうな妻のA子さん(27)の独占告白を掲載している。
 彼女は冒頭、ベッキーが謝罪会見で「私への謝罪がなかったことには正直、驚きました」と語っている。
 昨年7月に結婚した彼女と川谷は、正月に初めて実家へ里帰りするために、2人分のチケットを予約していたという。それが、ベッキーが現れた頃から夫婦仲が急速に悪化し、帰省の話も立ち消えになっていたのに、大晦日にLINEで「飛行機のチケットどこにあるの?」と連絡があったそうだ。
 彼女が「まさか、誰かと帰るんじゃないよね?」と送り返したが返事はなかった。ベッキーが会見した日はA子さんの誕生日だった。
 A子さんは川谷が「ゲスの極み乙女。」を立ち上げる前のバンドのときから、彼を一番そばで見守ってきた。川谷は東京農工大大学院を休学中で、彼女は就職で上京したばかり。やがて惹かれあい、ワンルームマンションでの同棲生活が始まったそうだ。
 川谷は「大戸屋」でバイト、彼女も働きながらバンドの裏方として川谷を支えた。そして次第に川谷が注目を浴びるようになる。
 入籍は昨年7月。だが川谷は若い女性ファンがいることを理由に結婚していることを秘密にしていた。結婚直前に元カノとのトラブルもあったという。
 そして10月に開かれたファンクラブ限定イベントに現れたベッキーと川谷が知り合い、急速に親しくなり、11月21日に夫からベッキーの名前は出さなかったが「離婚」という言葉が出たという。
 ベッキーの会見の後、川谷から電話やメールが入ったが、A子さんは精神的なショックから立ち直ることができず、今でも食べ物もろくに受け付けないほどの健康状態で、横になってばかりいるそうだ。

 「やはり私に黙ってお正月に二人で実家に行ったことが一番ショックでした。どんな気持ちで彼は家族にベッキーさんを会わせたのか。(中略)正直、今は何も考えられないし、考えたくありません」(A子さん)

 音楽関係者が、川谷とベッキー双方の事務所が話し合って、離婚届を出すまでは会わせないという取り決めができていると話している。
 離婚もしていないうちからベッキーを両親に会わせるなど、常識をわきまえない男は、A子さんと別れ、ベッキーと結婚してもまた必ず同じようなことをするに違いない。ベッキーがこの男との結婚を選ぶのなら、芸能界を引退するくらいの覚悟をもつべきである。

 第1位。『文春』は「宮中重大スクープ」と謳っているが、正真正銘のスクープである。12月23日の天皇誕生日に、美智子皇后が雅子妃を「叱った」というのである。
 記事には詳細な美智子皇后の言葉が記されている。これは「すべての事情を知る千代田関係者が、その顛末を詳細に証言する」(『文春』)とあるから、美智子皇后の了解を取った上で『文春』に話したということだろう。
 かいつまんでいえば、雅子妃の病気について、多くの人々の前に姿を見せることが最善の道で、それが「適応障害」という病気にもとても良い効果をもたらすのではないか、ということである。
 被災地などは実際に訪れ、もっと時間をかけて被災者の方々の気持ちに触れるように。天皇陛下が大切に思われている広島原爆の日、長崎原爆の日、終戦記念日、沖縄慰霊の日の意義を深く考え理解してほしい。
 なかでも雅子妃の実家、小和田家とのことは、かなり厳しい言葉で話している。

 「ご家族という意味では、(連絡を取るのは)良いことであるけれど、皇室という中で小和田家は特別の存在ではありません。小和田家と、浩宮が育ってきた皇室というのは、文化が違うのですから。皇族の文化の中にある雅子が小和田家と触れ合いを持つという、そういう心構えでなければならないのよ」

 美智子皇后は、実家である正田家には嫁いだ後、ほとんど顔を出さなかった。正田家側も控えめな態度で、母親の富美子さんは「機械(電話)を通してしか娘と話すことができません」と語っていたという。
 それに比べ、何かと小和田家と会いたがる雅子妃に、皇室に嫁ぐということはどういうことなのかを諭されたのである。
 さすが文藝春秋。美智子皇后と雅子妃の極めてプライベートな会話まで事細かに掲載するというのは、よほどの信頼関係がなければできないことである。
 私は皇室にはほとんど関心がなかったため、このスクープがどれほどの価値があるのか、よくわからないが一読の価値は間違いなくある。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 近年日本進出が相次いでいる海外の有名ファストフードブランド。なかでも海外ツウのグルメライターたちの評価を受けているのが、ニューヨーク発のハンバーガーショップ「シェイクシャック(Shake Shack)」である。すでに世界各国で展開されており、2015年11月、東京都・明治神宮外苑内にも日本1号店がオープンした。その緑に囲まれた立地は、マディソンスクエアパークに誕生した本家アメリカの店舗に近いものだ。

 オーストラリア産のアンガスビーフ100%の「シャックバーガー」が看板メニューである。ホルモン剤をまったく使わず、近年のファストフード界におけるヘルシー志向が反映されている。また、昨今は1000円以上もするぜいたくなグルメバーガーが人気だが、シャックバーガーは680円と、有名チェーンのプライスとグルメバーガーのあいだぐらいといったところ。その他のメニューも安くはない一方で味のこだわりが感じられ、店舗の雰囲気込みで満足度は高いだろう。「ハンバーガー界のスタバ」という異名は、価格帯や店構えのニュアンスをよくとらえている。ちなみに、同店はスターバックスと同じサザビーリーグが日本展開を仕掛けた。

 シェイクシャックはアメリカにおいてマクドナルドをおびやかす勢いを持ち、「マックキラー」とも呼ばれるそうだ。業界の「巨人」であったマクドナルドもいま、大量生産・大量消費というビジネスモデルが見直されている。これはアメリカや日本だけでなく世界的な傾向である。ファストフードは、値段をそれなりに抑えつつ高品質を実現しようとする時代に差し掛かっているのか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2015年6月、選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が成立。1945年に25歳以上から20歳以上に引き下げられて以来、実に70年ぶりの変更となった。

 18歳に引き下げられる対象となるのは、衆議院、参議院、地方自治体の首長と議会の選挙、農業委員会委員の選挙、最高裁判所裁判官の国民審査など。地方自治体の首長解職や議会解散請求などの住民投票資格も、18歳以上になる。

 公布から1年間の周知期間を経て、2016年6月19日に施行されるため、実際に適用されるのは今年7月の参議院選挙からになる。

 若者の政治離れが問題となっている日本では、「18歳で判断できるのか」といった不安の声も聞かれるが、世界の選挙権年齢は18歳以上がスタンダードだ。約190の国と地域の約9割が18歳以上を選挙権年齢としており、オーストリアなど一部の国では16歳以上となっている。

 そのため、以前から日本でも選挙権年齢を引き下げるべきという声は上がっていたものの、政権与党である自民党の反対によって18歳選挙権は実現していなかった。

 しかし、2014年6月に「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法)が改正され、憲法改正のための投票権が18歳以上に引き下げられた。これは、審議過程で民主党などの野党が、投票権を18歳以上にすることを求めたためで、憲法改正を急ぐ自民党はこれをのむ形で国民投票法は成立した。そして、付帯決議に、選挙権年齢の引き下げも2年以内を目途に法制上の措置をとることが明記されることになった。

 また、近年、ネットなどに保守的な主張を書き込む若者が増えており、支持の増加も期待されるため、自民党はこれまでの方針を転換。一気に、選挙権年齢の引き下げが実現することになったというわけだ。

 2015年10月、選挙権年齢の引き下げを受け、文部科学省は高校生の政治活動を禁じた1969年の通知を廃止し、新たな通知を教育委員会などに出した。この新しい通知では、学校外での政治活動を容認する一方、学校内での活動は放課後や休日も制限・禁止されるとしている。ほかにも、教員に対して「個人的な主義主張を述べることは避ける」など、政治的中立が強く求められており、規制とも受け止められかねない内容だ。

 だが、自民党の思惑通りに事が運ぶかはわからない。

 2015年8月に、日本労働組合連合会(連合)が、全国の15~23歳の男女1000名に聞いた「若者の関心と政治や選挙に対する意識に関する調査」によると、72.4%が「投票に行きたいと思う」と答えている。

 また、安全保障関連法に反対するデモを繰り広げたSEALDs(自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクション)に代表されるように、これまで政治に無関心と言われていた若い世代のなかからも、自ら声を上げ、行動し、政治に参加しようとする人々が少しずつだが出てきている。

 いくら政治的中立という名の規制をかけても、自ら思考し、判断するという行為を止めることは、誰にもできない。その若い彼らが、今の政治に対してどのようなジャッジを下すのか。

 次の選挙で、新たに投票権を得る18~19歳の若者は約240万人なので、投票数が大幅に増えるわけではないし、若者の意見がすぐに反映されるわけではない。

 だが、この選挙権年齢の引き下げが、若者の政治参加の意識を高めるきっかけになることを期待したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 コラムニストの犬山紙子氏が生んだ新語が、良くも悪くもネット上などで話題になっている。その名も挑発的な「クソバイス」。著書『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)の表紙によれば、「ケチな男はモテないよ~」「それ男ウケ悪いよ!」「早く結婚しないとね」といった、「クソみたいなアドバイス」のことをいう。

 たしかに、この世はクソバイスをしてくる輩が多いのだろう。相手のためというテイでありながら、価値観の押しつけになっているところが困る。しかも、言われた側は不快になるのに、言っている本人はけっこういい気分になっていたりする。旧態依然とした企業の上司など、相手より優位な立場の人にはありがちのようだ。もっと複雑なのが、「男とは~」「女とは~」「母親とは~」などと決めつけてくるタイプ。ライスフタイルに自信がありすぎるというか、発言するだけの人生経験の深さがあるのかたずねるわけにもいかないから、黙って拝聴するほかはない。

 とはいえ、「クソバイス」というワードは、「クソ」という語が強すぎて、誤解の可能性をはらむ。犬山氏は、相手のことをおもんぱかっての「アドバイス」自体を否定しているのではなかろう。たとえば、身近な友人の助言などは大事だ。あくまで、細かい事情を知らないのに、個人的な感覚から安易に助言してしまう問題を指摘している。「他人のアドバイスを受容するな」とは言っていないのだが、ネットの反応を見る限り、一部にはそうした解釈もあるようである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 ミドリムシは昆虫ではない。藻類の一種で単細胞生物である。体長は0.05~0.1ミリ程度。田んぼや湖沼など淡水系に生息する。鞭毛(べんもう)という器官を使って動くとともに、盛んに光合成を行ない、体内に栄養分を蓄えることができる。その栄養分には脂質が多く含まれ、これをもとにして作ったバイオ燃料が「ミドリムシ燃料」である。

 2015年12月、ユーグレナ(じつはミドリムシの学術名,Euglena)というベンチャー企業がこのミドリムシ燃料をジェット機向けに製造する計画を発表した。

 同社はまたミドリムシから作ったディーゼル燃料の実用化も進めており、横浜市にジェットおよびディーゼルの燃料を製造する実証プラントを建設する。プラントは2018年前半に稼働し、2020年までに実用化させる計画である。東京五輪が開催される年には同社が製造したミドリムシ由来の燃料で、ジェット旅客機が運航し、トラックやバスなどディーゼル車が走行するわけだ。

 ミドリムシ燃料の特長は光合成、すなわち、空気中の二酸化炭素から酸素や有機化合物を作りだすことで環境的に優れていることだ。課題は、将来的に安定して大量に生産できるようにすることだ。また、「原油安」の時代にあって従来の石油燃料と競争できるようにコストダウンも必須だろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 読んで字のごとく「店内でモノをつくることができるカフェ」のこと。デジタル系の工作から手芸、アクセサリーまで、“つくれるモノ”はさまざまであるらしい。

 「工房」みたいなスペースとカフェとが併設させる具体的なメリットは今ひとつよくわからないが(疲れたらドリンク飲んで一休み?)、「カフェ」という単語からただよう気軽さとお洒落さが集客の面で一役買っているのは間違いなさそうだ。

 「ナンバー1よりオンリー1のモノを手づくりによってリーズナブルに入手できるスポット」というコンセプトは、今のエコロジーやミニマリスト的な風潮にもしっくりとくるんだろうが、たとえば「ここで汗を流して懸命につくったモノを彼女や奥さんの誕生日にプレゼントする」といった選択はやめておいたほうが無難だと忠告しておきたい。

 「お金よりも丹精を込めてつくったモノのほうが愛着も倍増するに違いない」なんて考えは、本人だけにしか通用しない“勝手な思い込み”であって、女子としてはやはり「素人がつくった念だけがたっぷり注入されたグダグダなモノ」より「汗を流して稼いだ金で買った既製品」のほうが素直に喜べるのではなかろうか? オンリー1なプリミティブ・グッズは自分だけの大切なモノにとどめておくか、記念日とかじゃない日に「コレつくってみたんだけど、いる?」くらいのカジュアルな感覚でプレゼントする謙虚さは持っていてもらいたい。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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