学習図鑑の過去と今のおもしろトピックスを紹介します。毎月15日ころ更新予定。
『小学館の学習図鑑シリーズ 交通の図鑑』より
2017-10-17
学習図鑑は「動物」や「昆虫」、「植物」など生き物のイメージが強い印象がございます。しかしそれだけではない!昭和の時代より、図鑑編集者たちは様々なテーマの図鑑づくりにチャレンジしてきました。なかには文科系の図鑑もあります。今回はそのひとつ『交通の図鑑』です。
(図1)『小学館の学習図鑑シリーズ⑨ 交通の図鑑』昭和31年刊
「表紙の写真は横浜港上空を飛ぶダグラスDC-8」とあります。ん、写真?どうやって飛ぶ飛行機を上から撮影したの?と不思議に思いましたが、よく見ると、精緻に描かれた1枚のイラストのようです。湾の描写が細かく、絵か写真か俄かにわかりませんでした。それにしても、この「横浜港上空を飛ぶダグラスDC-8」の表紙絵は、題材、構図も素敵です。当時最新鋭の旅客機と日本を代表する港湾の当時の様子が、実によく表現されています。
さてページをめくってゆきましょう。
これは当時の都市と交通の様子でしょうか・・・。本の発刊が昭和31年(1956年)。 現代の都市といっても差し支えないような発展ぶりであります。
右下の解説文を読んでみましょう。
「近代都市が発達し、大きな事務所や百貨店が立ち並ぶようになると、その建物のひとつひとつが小さな都会くらいの人口を入れるようになり・・・」
すごい。一つの建物の人口規模が、「小さな都会」くらいとは!
「空には飛行機・ロケット・ヘリコプター・・・」
確かにロケットは飛ぶが、都市の上には飛ばさないぞ。
「自動車道路の交叉点はすべて立体交叉となって、ゴー・ストップの必要がなくなります。」
素敵だが、約60年後の現代でも、まだすべての交叉点は立体交差になっていません。
ここに表現されている「近代都市」は、たとえば東京の汐留~お台場あたりの光景によく似ています。立ち並ぶ高層ビル、片側3車線の高速道路、モノレール、地下鉄は銀座線でしょうか。戦後約10年、このような光景が 詳細に描かれていることから、当時の日本の急速な発展ぶりがわかります。
次のページをめくると・・・。
陸上交通の歴史であります。下から左→右→左→右→左と上に進んでゆくと、「現代」の乗り物に近づきます。一番最初は「原始人」。
なんと「ふみわけみち」であります。人間が最初につくった(自然にできた)交通インフラは、水やくだものを求めて自然にできた踏み跡だったのであります。あたりまえのようですが、なるほど。
そして「原始人」は、「そり」「コロ」「牛」というシンプルな運搬手段を使い始め、ついに「車」を発明したのです。
海の交通を見てみますと・・・
こちらも下から左→右→左→右→左と上に進んでゆくと、「現代」の乗り物に近づきます。
海上交通のはじめは「丸太」です。丸太にうつぶせに乗り、手で水を掻いている!
そして運搬手段は「くりぬき舟」「いかだ」と進化してゆき、なんと牛の皮をそのまま使った船なども使われたのだそうです。「雄牛皮船」。乗っている人も、なんだか楽しそうです。
『交通の図鑑』。驚きのページはまだまだあります。この続きは次回をお楽しみに!
<引用文献>
『小学館の学習図鑑シリーズ⑨ 交通の図鑑』(山中忠雄 伊藤謙徳 斉藤敏夫 岡義雄 共著 1956年)
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