(むろまちものがたりそうししゅう)
作者未詳
おとぎ話の原形――中世の庶民を魅了した不思議で妖しい絵物語
南北朝時代から江戸時代初期にかけて、平易な散文体の読み物が多くつくられ、「室町物語」や「室町物語草子」、「近古小説」、「御伽草子(おとぎぞうし)」などとよばれる。今日のおとぎ話や昔話の原型となった作品も多い。『文正草子(ぶんしょうそうし)』、『猿源氏草紙』、『ものくさ太郎』、『和泉式部』、『一寸法師』、『浦島の太郎』、『熊野本地絵巻(くまのほんじえまき)』など、13編をおさめる。
[南北朝時代前期~江戸時代初期][物語(御伽草子・短編物語)]
《校注・訳者/注解》 大島建彦 渡 浩一
(かなぞうししゅう)
作者未詳
江戸初期に流行した仮名書きの庶民向けベストセラー小説
17世紀になって書かれ、井原西鶴の浮世草子『好色一代男』の出た1682年までの約80年間に著述刊行された小説類のことを総称して「仮名草子」と言う。出版され、世間に流布した。浅井了意による『かなめいし』と『浮世物語』、一休禅師のエピソード集『一休ばなし』、遊郭話を扱う『たきつけ草・もえくゐ・けしずみ』、京や摂津の話を中心に集めた『御伽(おとぎ)物語』の5作品をおさめる。
[江戸時代初期][戯作(仮名草子)]
《校注・訳者/注解》 谷脇理史 岡 雅彦 井上和人
(うきよぞうししゅう)
夜食時分(やしょくじぶん)、江島其磧(きせき)
市井の人々の色と欲、その生活や風俗を描いた庶民文学
井原西鶴の『好色一代男』(1682年)以降、約100年間、上方を中心に流行した近世小説のことを「浮世草子」という。遊里遊びを描く『好色敗毒散(こうしょくはいどくさん)』(夜食時分・作)、女色と男色の両恋を描く『野白内証鑑(やはくないしょうかがみ)』(江島其磧・作)、老人の特質に笑いを求める『浮世親仁形気(うきよおやじかたぎ)』(江島其磧・作)の計3作をおさめる。
[江戸時代初期~中期][戯作(浮世草子)]
《校注・訳者/注解》 長谷川 強
(いはらさいかくしゅう)
井原西鶴
元禄の“粋”の文化を象徴する人気作家・西鶴の傑作小説集
大阪の商人の出で俳人でもあった井原西鶴は、庶民文学ともいえる浮世草子の傑作を数多く残した。西鶴の作品の中から、好色物の『好色一代男(こうしょくいちだいおとこ)』、『男色大鑑(なんしょくおおかがみ)』、武家物の『武道伝来記』、雑話物(説話物)の『西鶴諸国ばなし』、町人物の『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』、『世間胸算用(せけんむねざんよう)』などをおさめる。
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[江戸時代中期][戯作(浮世草子)]
《校注・訳者/注解》 暉峻康隆 東 明雅 宗政五十緒 谷脇理史 神保五彌 冨士昭雄 広嶋 進
(まつおばしょうしゅう)
松尾芭蕉
「さび」や「軽み」などの独自の境地を開いた俳聖・芭蕉
俳人・松尾芭蕉ははじめ談林風を学んだが、のちに「さび」や「軽み」、「不易流行」などを特徴とする蕉風を確立。のちに俳聖と称えられた。51歳で没するまで、各地を行脚し、紀行文や句を残した。芭蕉の全発句、『おくのほそ道』や『野ざらし紀行』、『鹿島詣(鹿島紀行)』や『笈(おい)の小文』などの全紀行、『嵯峨日記』などの日記、俳文、連句など、芭蕉のすべての作品を網羅する。
[江戸時代前期][連歌・俳諧]
《校注・訳者/注解》 井本農一 堀 信夫
(きんせいはいくしゅう)
西山宗因、与謝蕪村、小林一茶ほか
小林一茶や与謝蕪村など江戸期の俳人約120名の代表句作
連歌師の山崎宗鑑(そうかん)、貞門風の祖・松永貞徳、談林風の西山宗因(そういん)や井原西鶴、松尾芭蕉の弟子の宝井其角(きかく)や河合曾良(そら)、向井去来(きょらい)、茶道・千家不白流の祖・川上不白(ふはく)、中興期俳壇の中心・与謝蕪村、画家の酒井抱一(ほういつ)、江戸時代後期の俳人・小林一茶など、江戸期の俳人約120名の代表的な俳句を収録。
[室町時代末期~江戸時代][連歌・俳諧]
《校注・訳者/注解》 雲英末雄 山下一海 丸山一彦
(きんせいはいぶんしゅう)
北村季吟、上嶋鬼貫、横井也有ほか
「鶉衣」や「おらが春」など江戸期の代表的な俳文
俳人が書いた俳諧的な要素を備えている文章を「俳文」という。北村季吟(きぎん)による貞門時代の俳文『山の井』、山岡元隣(げんりん)の『宝蔵(たからぐら)』、上嶋鬼貫(おにつら)の『独ごと』、200あまりの俳文を載せる横井也有(やゆう)の『鶉衣(うずらごろも)』、与謝蕪村の俳句日記『新花摘』、小林一茶の『おらが春』や『父の死』など、 23人の俳人の40の俳文をおさめる。
[江戸時代][連歌・俳諧]
《校注・訳者/注解》 丸山一彦 松尾靖秋
(きんせいわかしゅう)
後水尾院、冷泉為村、香川景樹ほか
貴族から庶民まで幅広い階層が愛好した江戸時代の和歌
江戸時代の和歌は、新しい歌風は誕生しなかったが、上は天皇から下は庶民まで、あらゆる身分階層の人々に愛好された。後水尾(ごみずのお)院などの堂上歌人、豊臣秀吉の近臣・木下長嘯子(ちょうしょうし)、冷泉(れいぜい)家中興の祖・冷泉為村、「ただことの歌」を主張した小沢蘆庵(ろあん)、国学者の賀茂真淵(かものまぶち)、桂園派を興した香川景樹など、22人の歌人の和歌を収録。
[江戸時代][歌集(和歌)]
《校注・訳者/注解》 久保田啓一
(ちかまつもんざえもんしゅう)
近松門左衛門
愛と死のドラマを描いた近松門左衛門の世話・時代浄瑠璃
武士の子として生まれた近松門左衛門が歌舞伎作家、浄瑠璃作家として名声を得たのは30歳を過ぎてから。72歳で没するまで歌舞伎脚本30余編、時代浄瑠璃80余編、世話浄瑠璃24編を書いた。本人の出世作となった『出世景清(しゅっせかげきよ)』、世話浄瑠璃の傑作『曾根崎心中(そねざきしんじゅう)』、時代浄瑠璃の『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』など計30作をおさめる。
[江戸時代中期][浄瑠璃]
《校注・訳者/注解》 鳥越文蔵 山根為雄 長友千代治 大橋正叔 阪口弘之
(じょうるりしゅう)
二代目竹田出雲、三好松洛、並木千柳ほか
『仮名手本忠臣蔵』など、今も上演される傑作浄瑠璃
浄瑠璃とは、室町時代に興り江戸時代に完成した三味線を用いた語り物のことで、17世紀後半に竹本義太夫が義太夫節を確立してからは、以降の作品を特に浄瑠璃という。赤穂浪士の討ち入りを描いた『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』、王代物の傑作『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』(近松半二、松田ばく、三好松洛らの合作)など、代表的な4作品をおさめる。
[江戸時代中期][浄瑠璃]
《校注・訳者/注解》 鳥越文蔵 長友千代治 大橋正叔 黒石陽子 林 久美子 井上勝志