本辞典の収録語彙は,紀元前200年頃からの古ラテン語(PlautusやEnniusなど)および古典ラテン語(紀元前1世紀頃‐紀元後200年頃;Cicero, Caesar, Vergilius, Ovidius, Livius, Seneca, Tacitusなど)を中心とするが,さらには紀元3世紀以降のキリスト教作家(TertullianusやAugustinusなど)の語彙や中世ラテン語・近代ラテン語(主に学術用語)などをも視野に収めている.なお,解説「ラテン語」も参照のこと.
1. 1 紀元200年頃以降の語彙については,その品詞名に◇を付した.また,◇が付されていない見出し語でも,紀元200年頃以降のみに知られる語義・用例があるときには,その語義番号・用例に◇を付した.ただし,出典を示すことによってそれが自明な場合は省略した.
1. 2 語形変化を伴う見出しの表示のしかたについては以下のとおり.
1. 2. 1 名詞は,単数主格形を見出し語とし,そのあとに属格形の語尾を挙げた.単数での用例がない場合は,複数主格形が見出し語となる.
例:amor -ōris.
dīvitiae -ārum.
1. 2. 2 2語以上から成る名詞で,その属格形が見出し語形と同じ場合は,~を使って示した.
例:Datārius Cardinālis -ī ~.
1. 2. 3 形容詞は,単数主格男性形を見出し語とし,そのあとに女性形,中性形の語尾を挙げた.単数での用例がない場合は,複数主格形が見出し語となる.
例:bonus -a -um.
tristis -is -e.
trīnī -ae -a.
1. 2. 4 三性が同形の形容詞・現在分詞については,見出し語のあとに属格形の語尾を挙げた.
例:vetus -teris.
sapiens -entis.
1. 2. 5 動詞は,直説法現在一人称単数形を見出し語とし,そのあとに不定法現在,直説法完了一人称単数,目的分詞(対格)の基本形を挙げた.また,形式受動相動詞は,見出し語の直説法現在一人称単数形のあとに,不定法現在,直説法完了一人称単数の基本形を挙げた.
例:amō -āre -āvī -ātum.
hortor -ārī -ātus sum.
1. 2. 6 現在幹のない動詞は,直説法完了一人称単数形を見出し語とし,続いて不定法完了形などを挙げた.
例:meminī -isse.
1. 2. 7 非人称動詞については,見出し語の直説法現在三人称単数形に続いて,不定法現在形,直説法完了三人称単数形を挙げた.
例:oportet -ēre -tuit.
1. 3 見出し語の冒頭に付された*は,そのままの語形での用例がないことを示す.
例:*for.
*prex.
1. 4 母音の上に付された¯は,その母音の長いことを示す長音記号である.本辞典では,その見出し語が音量詩quantitative verse(音節の長短に基づいて作られる古典詩)に現われたとしたとき,そうすることによりその母音を含む音節が長いと判定しうる場合に限って,その母音に¯を付した.これはOxford Latin Dictionaryの方針に倣うものであるが,ただし,これには若干の例外を認めた.
例:vocātus.
longē.
1. 5 母音の上に長音記号(¯)と短音記号(˘)を重ねた記号()が付されているときは,その母音が長く発音される場合と短く発音される場合の両方があることを示す.
例:Mala.
1. 6 母音の上に付された¨は,その母音が前の母音とは別音節をなし,二重母音をつくらないことを示す.
例:Plēïades.