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  11. スズキ
日本大百科全書・世界大百科事典

日本大百科全書(ニッポニカ)
スズキ
すずき/鱸
Japanese sea perch 
[学]Lateolabrax japonicus

硬骨魚綱スズキ目スズキ科に属する海水魚。北海道から鹿児島、および台湾、朝鮮半島、中国などの沿岸に分布する。全長1メートルに達し、体は長く側扁(そくへん)する。体色は背側は青灰色で、腹側は銀白色である。若魚は背側や背びれに小黒点が散在するが、成魚では消える。しかし渤海(ぼっかい)、黄海産のものは、成魚でも大きな黒点があり、有明(ありあけ)海産のものも小黒点がある。
 成育年齢により呼び名が変わるので出世魚とよばれ、東京付近では25センチメートルぐらいの1歳魚をセイゴ、50センチメートルぐらいの2、3歳魚をフッコ(中国地方ではハネという)、60センチメートル以上のものをスズキとよぶ。元来海産魚で、内湾や沿岸の瀬のある岩場や小石の多い所に好んですむが、成長や季節によって生息場所をかえる。若魚時代は内湾で生活し、また川にも遡上(そじょう)する。冬には沿岸の深みで越冬する。成魚になれば湾外の深所にすむ。雌は3年の終わり、雄は2年の終わりから成熟する。
 産卵期は11月から翌年1月の冬季で、外海に面した急深な岩礁性の沿岸部で産卵する。卵は浮性卵で、卵径1.22~1.45ミリメートル。水温14℃のとき4、5日で孵化(ふか)する。1年で20センチメートル、2年で34センチメートル、3年で45センチメートル、4年で54センチメートル、5年で63センチメートル、6年で70センチメートルに成長する。口が大きく、幼魚は内湾の藻場(もば)でアミなどの小形甲殻類を食べ、成長するとエビ、カニ、ゴカイ、小魚などを貪食(どんしょく)する。美味な魚で、古代人もこの魚をよく食べていたことは、貝塚から骨が発見されることからもうかがえる。また、古くからめでたい魚として祝い事に供える地方がある。夏は脂肪がのり、もっとも美味で高価である。近縁種にヒラスズキL. latusがあるが、この種は体高がやや高く、腹びれが黒く、下顎(かがく)の腹面に一列の鱗(うろこ)があることなどでスズキと区別される。また、この種はスズキと異なり川に入らない。
[片山正夫]

釣り

船釣りでは、サイマキとよばれる生きた小形のクルマエビをおもな餌(えさ)としてねらう。東京湾では先調子の2~4.5メートル竿(さお)に中オモリ仕掛けか片天ビン仕掛けで釣る。竿先にくる魚信はかなり小さい。スズキよりもやや小形のフッコ級を船からルアーで釣る所もある。ルアーはプラグやジグといったものがよい。
 防波堤では生きたモエビのフカセ釣り、ルアー釣りだが、夜は電気ウキや電子ウキをつけイソメ類の餌をつけてねらってもよい。河口付近でもフッコ、スズキが釣れる。これにはブッコミ釣りが向くが、スズキ用のルアーでのキャスティングもヒットする確率は高く、この場合は日没時から夜がよい。
 磯(いそ)釣りはウキ釣り、ルアー釣り。カラーパイプと白色系の羽を組み合わせたギジを玉子形ウキと併用したものを使うと、磯や海岸線でも投げて引いてくる釣り方で楽しめる。
[松田年雄]

調理

味は淡泊で、夏にうま味がのる。刺身、洗い、塩焼き、椀種(わんだね)などにするが、とくに酢みそで食べる洗いは夏の味覚の代表の一つである。島根県宍道湖(しんじこ)ではスズキの奉書焼きが有名である。スズキを姿のまま奉書で巻き、オーブンで蒸し焼きにして、熱いところをおろししょうが、もみじおろし、刻みねぎなどを添えたしょうゆで食べる。ほんのり焦げた奉書の香りが魚に移って風味がよい。
[河野友美][大滝 緑]

民俗

スズキは熊野の神の神魚とされる。熊野の神が川に落とした巻物を拾ったのがスズキであるといい、熊野の神職の流れである鈴木氏の者は、スズキを食べてはならないという古伝がある。『平家物語』の「鱸(すずき)」の章には、熊野信仰とスズキの関係が具体的にみえており、熊野詣(もう)でに行く平清盛(きよもり)の乗った船にスズキが飛び込んだのを、平家繁栄の前兆としている。
 スズキは、川にも上る大きな魚として神聖視されたらしい。愛知県東加茂(ひがしかも)郡の山村には、川を上ってきたスズキを簗(やな)でとって食べたところ、祟(たた)ったので、これを祀(まつ)ったという神がある。夜中に、名のある魚が通るから簗をどけろという声がしたが、そのままにしておいたら簗にスズキがかかっていたという。川に上ったスズキはとらない習慣があったのであろう。スズキは神饌(しんせん)としても特別扱いにされ、秋田県ではスズキの丸焼き2尾を婚礼のときに用いる風習があった。『古事記』の大国主命(おおくにぬしのみこと)の国譲り神話にも、神饌に大きなスズキを料理して供えたことがみえる。
 神奈川県茅ヶ崎(ちがさき)市には、河童(かっぱ)がお礼にスズキ2尾を持ってきて、かまどの上に置いていったという話があるが、これは火の神にスズキを供えた習俗の名残(なごり)であろう。
[小島瓔〓]



改訂新版 世界大百科事典
スズキ
common sea bass
Lateolabrax japonicus

スズキ目スズキ科の海産魚。日本各地,東シナ海,台湾,南シナ海北部の沿岸に分布している。体長最大1mに達する重要な食用魚。貝塚などからも多量の骨が出土することも多いことから,古代から盛んに利用されてきたと考えられている。

 体はやや長く側扁し,背部は青みがかった灰色,腹部は銀白色,個体によっては体側と背びれに小黒点が散在する。成長により次々と名称が変わる〈出世魚〉である。東京付近でコッパ(全長約10cm)→セイゴ(25cm)→フッコ(35cm)→スズキ(60cm以上)→オオタロウ(老成魚),浜名湖付近では小さなものからセイゴ→マタカア→オオマタ→コチウ→チウイオ→オオチュウ→オオモノである。幼魚を有明海でアカンバクラ,宮城でセッパ,霞ヶ浦でヒカリコという。成魚は各地でスズキ,またはススキ,愛知県でマダカ,新潟県でとくに大きいものをユウドと呼ぶ。

生態

スズキは季節に対応した生活場所の移動を行う。冬季に深みで過ごした成魚は,6月ころを中心に沿岸の浅い磯や魚礁に移動してくる。貪食(どんしよく)で,夏季にはエビ類など大型甲殻類や魚類を盛んに食べているが,夏から秋にかけ沿岸沿いにしだいに沖合の深みに移動していく。11~1月には,東京湾口付近のような外海に面した急に深くなる岩礁域で産卵する。卵は球形の分離浮性卵で,全長60cmのもので約20万粒の卵を産む。卵は水温約14℃で4~5日で孵化(ふか)する。仔魚(しぎよ)はしばらく浮遊生活をした後,底生生活に入る。5月には全長20mm以上に育ち,8月ころまで沿岸や内湾の藻場にいて,おもにアミ類,橈脚(じようきやく)類(コペポーダ)などの小型の甲殻類を食べる。この時期の幼魚はしばしば川に入り,純淡水域にまで出現する。夏の終りから秋には体長10cm以上に育ち,藻場の外側に移動し,エビ類,アミ類などの小型の甲殻類や魚類を食べる。水温が下がるとともに,内湾に残る一部を除き,沿岸沿いに深みに移動し,深みで越冬する。1月には体長約20cmとなり,次の春から夏に再び接岸し,カタクチイワシ,マアジ,アユなどの小型の魚類をおもに食べるようになる。その後も冬と夏を中心にかなり規則的な季節移動を行う。うろこを用いた成長の推定によると,満1歳で尾叉体長約21cm,2歳で34cm,3歳で45cm,5歳で63cmとなる。成熟年齢は雌で満3歳,雄で2歳である。

人間との関係

水産上重要な魚で,漁法も多い。漁場,季節,対象魚群により,地引網,定置網,刺網,底引網,一本釣り,はえなわなどによって漁獲されている。おもな漁場は瀬戸内海,伊勢湾,東京湾,有明海,若狭湾などで,複雑な地形と内湾の発達した場所に形成される。えらぶたが鋭く,釣糸を緩めると水面にとび上がり,釣糸をえらぶたで切ってしまう。これをえら洗いという。とくに夏に美味な白身の高級魚で,洗い,刺身,塩焼きなどで利用される。近年,内湾の水汚染により,異臭のするものが出たり,PCB(ポリ塩化ビフェニル)が検出されるものが出たりすることがある。

近縁種

南日本の外洋に面した岩礁域を中心にスズキによく似たヒラスズキL.latusがいる。ヒラスズキは全長1mに達し,スズキより体高がやや高く,体がやや平たく,腹びれとしりびれが暗色である。食性はスズキとほぼ同じであるが,生活場所や産卵場はスズキよりやや外洋性である。漁法は釣り,刺網,定置網などである。味や利用方法はスズキとほとんど変わらない。
[望月 賢二]

[索引語]
common sea bass Lateolabrax japonicus コッパ オオタロウ マタカア オオマタ コチウ チウイオ オオチュウ オオモノ アカンバクラ セッパ ヒカリコ マダカ(スズキ) ユウド えら洗い ヒラスズキ Lateolabrax latus
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そのままにしておいたら簗にスズキがかかっていたという。川に上ったスズキはとらない習慣があったのであろう。スズキは神饌(しんせん)としても特別扱いにされ、秋田県で
2. スズキ(株)
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南日本の外洋に面した岩礁域を中心にスズキによく似たヒラスズキL.latusがいる。ヒラスズキは全長1mに達し,スズキより体高がやや高く,体がやや平たく,腹びれと
4. すずき
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5. すず‐き[スヅ‥]【寸頭器】
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6. すずき【鈴木】
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7. すずき【鈴木】
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姓氏の一つ。〓[0]
8. 鱸
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9. すずき【鱸】画像
日本国語大辞典
〔名〕スズキ科の海産魚。全長約一メートルに達する。体は細長い紡錘形。口は大きく、下あごは上あごより突出する。背部は灰青色で腹部は銀白色。幼魚では体側や背びれに黒
10. 鱸(すずき)
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16. スズキ コージ
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1929−2010 昭和後期-平成時代の心臓血管外科学者。昭和4年11月7日生まれ。ミシシッピー大準教授,順天堂大教授などをへて,昭和58年東京医科歯科大胸部外
22. 鈴木明子
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29. すずき‐あきら【鈴木朖】
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33. 鈴木章
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35. すずきあきらきょじゅうちあと【鈴木朖居住地跡】愛知県:名古屋市/西区/江川端
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37. すずき-あつゆき【鈴木篤之】
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38. すずき-あやお【鈴木綾雄】
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1818−1863 江戸時代後期の俳人。文政元年生まれ。安房(あわ)(千葉県)館山(たてやま)藩士。和学に通じ,とくに蕉風(しょうふう)の俳諧(はいかい)で名が
39. 鈴木有鷹[文献目録]
日本人物文献目録
【書誌】:0件 【図書】:0件 【逐次刊行物】:1件 『国学者鱸有飛・有鷹について』寺田泰政
40. 鱸有飛[文献目録]
日本人物文献目録
【書誌】:0件 【図書】:0件 【逐次刊行物】:1件 『国学者鱸有飛・有鷹について』寺田泰政
41. すずき-いおん【鈴木遺音】
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42. すずきいせき【鈴木遺跡】東京都:小平市/鈴木新田地図
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43. すずき-いちぞう【鈴木市蔵】
日本人名大辞典
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44. 鈴木一念[文献目録]
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45. すずき-いっぺい【鈴木一平】
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46. すずき-いづみ【鈴木いづみ】
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50. 鈴木氏
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紀伊国の土豪。熊野三山との関係が深く新宮に勤仕する三家の一つで,三方社中(衆徒,神官,社僧)として神仏に奉仕した。牟婁郡大野荘鮒田村に古くから鈴木屋敷跡という伝
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