(ヨーロッパノミンゾクガク)
ジャン・キュイズニエ 著/樋口 淳、野村訓子、諸岡保江 訳
ヨーロッパは暴力と混血のちぎりから生まれた。したがって多くの場合、ヨーロッパの民族をめぐる問いに答えることは、戦争と平和にかかわる。本書は、ヨーロッパ諸民族の現在(言語・宗教・慣習・食生活・領土紛争……)とその将来計画を語ることによって、民族学研究の新しい可能性を切り拓いている。
(ヤクガクノレキシ)
R.ファーブル、G.ディルマン 著/奥田 潤、奥田陸子 訳
アポティケールと呼ばれた薬剤師の先輩たちが、薬の調製に関して医師と争ってみずからの自治権を確立して以来、薬学は、技術的・職業的側面においてどのように変遷してきたのか。本書は薬学の歴史にとどまらず、その教育や薬の生産・調剤・販売にいたるまで、薬学の全分野を網羅して解説する。
(キルケゴール)
オリヴィエ・コーリー 著/村上恭一、小林正巳 訳
死の淵を歩みながらの苦痛の体験が「死にいたる病」「不安」の概念へと昇華し、哲学上の「実存」の概念へと体系化されていく過程を詳述した入門書。完璧なまでのキリスト者像を念頭におきつつ、その前提として「絶望論」を提示せざるをえなかった詩人・哲学者の内心の葛藤を捉え直し、この天才の全体像に迫る。
(エゾテリスムシソウ セイヨウインピガクノケイフ)
アントワーヌ・フェーヴル 著/田中義廣 訳
魔術、錬金術、神智学、ヘルメス主義、占星術、カバラ、薔薇十字思想、グノーシスなど、ヨーロッパの陰の思想に通底する思考傾向と言説をエゾテリスムという。本書はこのエゾテリスムの構造を考察し、2、3世紀から20世紀の今日にいたるさまざまなその形態を、通史として記述した概説書。
(ニンチシンケイシンリガク)
グザヴィエ・スロン 著/須賀哲夫、久野雅樹 訳
神経心理学とは、脳を損傷した患者をモデルに、脳と心理活動の関係を理解する科学のことである。そして大脳損傷患者の呈する困難を分析するにあたり認知心理学的なアプローチを採用したのが、認知神経心理学である。本書では、その学問的な位置づけと方法論が、具体的な症例とともに概説される。
(カイガノギホウ)
ジャン・リュデル 著/黒江光彦 訳
材料の選択やそれを使いこなす技術ぬきに芸術作品は存在しない。本書は、絵画のマティエールの種類を並列的に論ずるのではなく、時間を軸に「技法史」的にたどりながら、画家が己れのヴィジョンをいかに素材と技法に託してきたかを詳述する。その結果として得られた作品の画面構成と色彩の問題にまで解きおよぶ。
(ジャンヌ・ダルクノジツゾウ)
レジーヌ・ペルヌー 著/高山一彦 訳
百年戦争の末期、〈神の声〉に導かれて戦列に立ち、危機に瀕するフランス王国を救ったが、その後、教会裁判で異端として火刑に処せられた聖女ジャンヌ・ダルク。ジャンヌ研究の第一人者が、処刑裁判・復権裁判の記録をはじめ信頼にたる事実史料を駆使して、その短くも感動的な生涯を見事に再現した好著。
(ローマノコダイトシ)
ピエール・グリマル 著/北野 徹 訳
ローマ帝国に征服された都市は、何らかの形で首都ローマを模倣する。それら諸都市の成立を考古学的かつ建築学的に検証してゆくと、そこには「ローマ化」という法則が浮かび上がってくる。ギリシア・ローマ学の碩学がその学殖を披瀝しつつこの法則を解き明かす。
(ニーチェ)
ジャン・グラニエ 著/須藤訓任 訳
ショーペンハウアーとヴァーグナーの影響を受けて芸術的哲学を説き、のちに頽廃したヨーロッパ文明とキリスト教の批判へと傾斜していったニーチェ。その思想はたがいに矛盾しているところも多く、ときに誤解を招いているが、本書はそれらをより整合的に整理し、20世紀思想の源流としての意義を示す。
(チュウゴクノガイコウ)
フランソワ・ジョワイヨー 著/中嶋嶺雄、渡邊啓貴 訳
冷戦構造崩壊の後、構築途上にある新しい世界秩序のなかで、中国はどのような位置を占め、どのような外交政策を展開するのであろうか。1949年の中華人民共和国成立以来、多様な段階を経て今日にいたる複雑な中国外交の軌跡を明快に論じ、今後の展望に資する、極東問題の権威による基本的解説書。