(イタンカタリハ)
フェルナン・ニール 著/渡邊昌美 訳
13世紀にアルビジョア十字軍によって殲滅させられたカタリ派とは、どのような教派であったのか。本書は、その特異な二神教をマニ教との類縁に力点を置きながら論じ、この謎につつまれた教団の興亡を、当時はなやかな文化を開花させたラングドックのフランス国家への統合の流れのなかに再現する。
(ポルトガルシ)
アルベール=アラン・ブールドン 著/福嶋正徳・広田正敏 共訳
最も早く国家形成を行ない、《ブルジョワジー》革命を体験し、いち早く航路の発見と植民地帝国の建設に乗り出したポルトガルは、その早熟さゆえに固定化され、凋落の時期を迎えざるをえなかった。国家形成から一九七五年の動乱までを跡づけた本書は、ポルトガル史の的確な概説書となっている。
(メジチケノセイキ)
クリスチャン・ベック 著/西本晃二 訳
アルベルティが『家族について』でモラルを説きはじめるころ、メジチ家はルネッサンスの光と影を体現しはじめる。本書は、メジチ家がフィレンツェのみならずイタリア半島全域にその主導権を確立するにまでいたる歴史を語り、活気にあふれた市民的人文主義が変容してゆくさまを見事に描き出している。
(ラブレートルネサンス)
マドレーヌ・ラザール 著/篠田勝英、宮下志朗 訳
フランス・ルネサンスは『ガルガンチュワ=パンタグリュエル物語』という壮大な文学をわれわれに残した。今日、ラブレーを読むとはどういうことなのか? 本書は最新の研究成果を取り入れ、この問いに答えてくれる。バフチーンの著名な『ラブレー論』に比し、ユマニストとしてのラブレーの姿を明確にした好著。
(マヤブンメイ)
ポール・ジャンドロ 著/高田 勇 訳
神殿をはじめとする壮麗な建築や美術、正確無比な天文学にもとづいた暦、神聖文字や人間供儀など、樹海深く埋もれた古代都市はいまなお数多くの謎と不思議を発信している。本書は丹念な調査と、最新の研究成果によって、マヤ文明の隆盛と滅亡の真実を解明した労作である。
(ジョセイノケンリ ソノレキシトゲンジョウ)
ネー・バンサドン 著/池田節雄 訳
女性に必要な権利とはどのようなものか? 本書は、古代から今日にいたるまでの女性が置かれてきた地位を分析し、女性解放の歴史を語るなかで、性的・社会的タブーと果敢に闘ってきた世界各国の女性の権利の現状を比較し、論じている。巻末には補遺として「日本女性の権利」をコンパクトに付記した。
(アイショシュミ)
ミシェル・ヴォケール 著/大髙順雄 訳
愛書狂を自他ともに認める著者が、古今のさまざまな分野の貴重本・珍本・美本・豪華本を採りあげながら、古書の真の価値と愛書家の条件を説き、愛書趣味の時代的変遷とその真髄を語る本書は、フランスを中心とするヨーロッパの古書・稀覯本の書誌をも構成し、興味深い一種の出版文化史となっている。
(アタラシイチリガク)
ポール・クラヴァル 著/山本正三、高橋伸夫、手塚 章 訳
あらゆる学問の発展とともに、地理学も新たな装いで登場してきた。本書は、科学としての地理学を体系的に説明している。隣接の学問分野の成果をとり入れながら、新しい地理学的な方法にもとづいて、現代の人間社会・環境など地表に生ずる広範な問題に対する考え方を示した、意欲的な書物である。
(イスパノアメリカノセイフク)
マリアンヌ・マン=ロト 著/染田秀藤 訳
レコンキスタ(国土再征服化運動)を終えたばかりの1492年、なぜスペインは「アメリカ」を征服したのか? 本書はスペインが新世界の探検に乗り出し、コロニアリズムを推進した背景、意義、現地の実際といったことを、さまざまな資料をもとに解き明かす。歴史民族学に新たな視点をもたらした名著。
(シンチョウセンジジョウ)
ジャーク・プズー=マサビュオー 著/菊池一雅、北川光兒 訳
朝鮮で起きるさまざまな出来事、その風土と国民の行動を理解するにはまず、その民族と逞しい国民性とを、本来の極東という文化圏に位置づけて捉え直さなければならない。本書は、南北に分断されながらも力強く発展を続ける韓国・北朝鮮の地理を、豊富な資料によってわかりやすく解説する。