(カントテツガク)
ジャン・ラクロワ 著/木田 元、渡辺昭造 訳
とかく細部に拘泥して大局を見失いがちな日本人にとって、明晰なフランス的知性を通してドイツ哲学を見ることはまことに示唆的である。本書はカント哲学の全容にわたってバランスのとれた解説をほどこし、われわれを簡明直截なその読みへとさそってくれる。
(マルクスイゴノマルクスシュギ)
ピエール・ファーヴル、モニク・ファーヴル 共著/竹内良知 訳
マルクスの死とそれから12年後のエンゲルスの死を年表上の出発点として、多様に変遷するマルクス主義。本書は、改良主義からロシア革命・レーニン主義、そしてスターリン以後のマルクス主義の新しい展開などの過程を通じて、プロレタリア革命の消長を理論と実践面から詳述する。
(ヒトラートナチズム)
クロード・ダヴィド 著/長谷川公昭 訳
狂気の政治家ヒトラーの世界史への登場はドイツと世界の運命を激変させ、人類に多くの課題を残した。ナチズム研究はいまや多方面で主要な研究テーマとなっている。本書は、ヒトラーとナチズムを政治的・歴史的観点からまとめた概説書で、特にナチズムの思想的系譜の解説は本書の白眉である。
(ギリシアノセイジシソウ)
クロード・モセ 著/福島保夫 訳
古代ギリシアの政治思想は小さな都市国家の国制をめぐって展開されるが、古典期の偉大な思想家が考察した市民共同体の論理は、やがて拡大された世界へ、現代へと受けつがれていく。政治に関する思索の誕生からギリシア思想のローマへの浸透までの変遷を説き、読者の深省を促す興味あふれる好著。
(キゴウガク イミサヨウトコミュニケイション)
ピエール・ギロー 著/佐藤信夫 訳
現代の知的関心と話題の中心となって久しい記号学を包括的な形で紹介する。星占いから神話の人類学的構造にいたるまでの現代のすべての文化事象にひそむ記号性を捉え、その意味作用とコミュニケーション構造を分析する。構造言語学的視野を超えた現代記号学の格好の概説書。
(ハッセイテキニンシキロン)
ジャン・ピアジェ 著/滝沢武久 訳
発生的認識論とは発達心理学や科学思想史の実証的資料にもとづきながら、現代科学の認識論的問題点を発達的に明らかにしようとする科学である。本書では、発生的認識論の創始者であるJ・ピアジェの基本的な視点が、心理学、生物学、論理学、数学、物理学の諸科学を通して系統的に解説されている。
(アナーキズム)
アンリ・アルヴォン 著/左近 毅 訳
破壊とテロリズムにまつわる陰惨な背景ゆえに、国家とマルクス主義の両者から一様にタブー視されてきたアナーキズム。本書は、アナーキズムの起源から説きおこし、バクーニン、ブルードンなどの理論家の実像に迫り、運動の実際を記す。複雑多様な面をもつ、アナーキズムを理解するのに格好の入門書。
(レンキンジュツ)
セルジュ・ユタン 著/有田忠郎 訳
近代思想の背後から、いま呼び返される錬金術。物質の変成を通じて宇宙再生の秘儀に参加し、火による魂の浄化をくぐって死の彼方に復活することを説くこの呪われた秘伝的教理は、西欧精神の隠された暗黒部分を照らし、驚くべき象徴的世界像を描き出す。その歴史と理論と実際をめぐる格好の入門書。
(ゲンゴガク)
ジャン・ペロ 著/高塚洋太郎、内海利朗、滝沢隆幸、矢島猷三 訳
ことばの科学である言語学とは何か。資料収集の領域と方法、社会集団により変化することばの外的性格、音・語彙・文法などの内的性格、ことばの起源や歴史を探る比較の方法、通時と共時、類型・記号・構造などの一般言語学の現在について、多種多様な理論を概説し、参考文献も豊富に網羅した格好の入門書。
(シンリンノレキシ)
ミシェル・ドヴェーズ 著/猪俣禮二 訳
森林の歴史は、人間と自然との闘争の歴史であり、反面、樹木と人間の協力の歴史である。人間が森に火を放って積極的にその破壊を企ててからすでに五千年。その間の闘争と協力の歴史は多彩である。フランスを中心にしたヨーロッパの森林史を興味ふかく説く著者の手腕はみごとというほかない。