インドの伝承医学である「アーユルヴェーダ」で、若返りのハーブとして重要な存在の「アムラ」。東南アジアなどに分布するトウダイグサ科の植物で、「油柑(ゆかん)」などとも呼ばれる。ヘアケアの分野で、抜け毛や白髪の予防に関して語られることも多い。近年は、果実が栄養豊富なくだもの「スーパーフルーツ」として注目されつつある。海外のセレブのあいだではすでに浸透しているらしい。

 日本アムラ協会のホームページによれば、梅にも似た果実は赤ワインの約30倍相当というポリフェノールを含む。また、一般にくだもののビタミンCは加熱すると壊れてしまうが、アムラのビタミンCは熱に強いとされている。日本ではまだサプリメントなどで名前をみかける程度の知名度だが、各分野で普及をはかる動きが見られている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 これまで男性の仕事とされてきた狩猟の世界に、足を踏み入れる「狩猟女子」が3~4年前からメディアに登場するようになった。

 一見、どこにでもいそうな若い女性が、山や森に入り、罠を仕掛けたり、銃を使ったりして、クマやイノシシ、シカ、サル、ウサギなどの野生鳥獣を捕獲する。鳥獣の種類にもよるが、たとえばイノシシだと、体長は100~180cm、体重が80~180㎏ほどになる。力のある男性でも扱いに手こずるものだが、狩猟女子たちは自分よりもはるかに大きなイノシシを解体し、調理して食べている。

 ブームを象徴する1冊の本が、畠山千春さんの『─狩猟女子の暮らしづくり─ わたし、解体はじめました』(木楽舎)で、東日本大震災を機に、自給自足の暮らしを目指した彼女が、狩猟免許を取得して狩猟女子になるまでの心の動きや暮らしの変化を描いている。

 また、2012年には、北海道で「狩猟(shoot)」と「食(eat)」を2本の柱に掲げて活動するTWIN(The Women In Nature -shoot & eat-)という女性狩猟者の団体も発足。狩猟者確保のために女性ならではの視点と発想で狩猟環境を整え、捕獲した野生動物を食や衣などの暮らしに取り入れる提案を行なうのが目的だという。

 これらの狩猟女子に共通するのは、たんに野生動物を捕るという行為にとどまらず、「食」とのつながりを考え、「命をいただく」ことに真摯に向き合う姿勢だろう。

 ただ、狩猟女子の注目を、無邪気に眺めてばかりもいられない。ブームの裏にあるのが、狩猟者数の全体の減少だ。1975年度に51.8万人いた狩猟免許所持者は、2012年度は18.1万人まで落ち込んだ。その後、狩猟ブームの影響で所持者は増加傾向にあるものの、2014年度は19.4万人だ。このうち12.9万人が60歳以上で狩猟者の高齢化も問題になっている。さらに言えば、この統計には免許を持っているだけのペーパー猟師も含まれているので、実際に活動している人はさらに少ないことが予想される(環境省「年齢別狩猟免許所持者数」より)。

 狩猟者の減少が原因のひとつと考えられているのが、野生鳥獣の増加により農産物への被害が深刻化していることだ。1990年代に20万頭ほどだったイノシシは、現在は100万頭に、シカは30万頭から300万頭に増加しているといわれている。これは、狩猟者のいなくなった地域で生態系が変化し、野生動物の生息域が拡大した結果、イノシシやシカ、サルなどによる農作物への被害が多発するようになったから、というのが大方の見方だ。

 これに比例して害獣として駆除された野生動物も増えており、イノシシは1990年度の7万200頭から、2014年度には52万600頭に。シカは1990年度の4万2000頭から、2014年度は58万8000頭へと増加している。

 このまま狩猟者が増加しなければ、山や森の生態系を守れなくなり、農産物への被害が拡大する恐れもある。狩猟女子が注目される背景には、狩猟者の減少と高齢化という待ったなしの状況が隠されていたというわけだ。

 ただ、一方で哀れなのは駆除されたイノシシやシカなどの野生動物たちだ。現状では、捕獲されてもジビエとして食用に回るのは1割程度で、ほとんどは焼却処分されたり、その場で埋められている。いくら害獣とはいえ、ただ殺して、埋めるという行為は、命あるものへの冒涜のようにも感じる。

 駆除された野生動物が食用に回らないのは、食品衛生法第52条により、食肉処理業の許可を得ていない施設で解体されたイノシシやシカなどは販売できないこととも関係している。野生動物の場合は、狩猟後すぐに屋外で解体されることが多いため、現状では市場にのせるのは難しい。

 生態系を守るために狩猟免許取得者を増やすなら、そこで駆除されたイノシシやシカの命を最後までいただくための仕組み作りも考えたいもの。それには、狩猟の延長線上に「食」や「衣」を見出している狩猟女子たちの視点が必要なのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 熱帯魚などを水槽で飼育するアクアリウム。癒やし系の美しさにはたしかに魅了されるものの、予算も手間もわりとハードな趣味といえる。それを花瓶のようなガラスの容器(ボトル)で気軽に楽しむものが「ボトリウム」(ボトルとアクアリウムを合わせた造語)だ。業界では有名な「てっちゃん先生」こと水草作家の田畑哲生氏が考案した。

 単に「小さい」というだけでなく、水草を入れることで一つのささやかな生態系を作り出すところがポイントである。ボトリウムに入れる魚と貝は一匹だけにしておくとよい。水草が魚のための酸素を生み出し、魚のふんは水草の養分や貝のエサとなって水をきれいにする。

 田畑氏のホームページによれば、ボトリウムの「お約束」は三つ。「水かえは週に1回」「えさやりは1日おきにほんの少し」「直射日光のあたらない明るい場所に置く(本を読めるぐらいの明るさがベスト)」。なるほど、手間いらずというよりも、過剰な手間を加えないことが重要であるようだ。暑い時期、涼を感じるには絶好の趣味である。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 教育勅語は、戦前の大日本憲法下で、天皇(主権者)が日本国民(臣民)に対し、守るべき徳目を示した教育方針。1890(明治23)年に発布された。起草にあたったのは文部大臣などを歴任した井上毅(こわし)。

 いま教育勅語に注目が集まるのは国有地売却を巡る疑惑で連日、国会で取り上げられた学校法人「森友学園」が、その運営する幼稚園で、園児に唱和させていたからだ。

 その内容は、親に孝行、夫婦仲睦まじく、兄弟姉妹仲良く等々、人間として至極まっとうな行ないを求めたものだ。

 しかし、その一方で、「危急の大事が起きた場合、皇室・国家のために尽くす」ことを国民に対し求めている。戦前の教育現場では、式典で校長がこれを奉読し、「修身」の授業でも、その精神・理念を学んだ。そのため、軍国主義教育の土台となったとの批判がある。

 戦後、「主権在民」の日本国憲法が施行され、国の教育指針は教育基本法にとってかわった。国会も、1948(昭和23)年に衆参両院で教育勅語の「排除・失効」を確認する決議を採択した。

 現在の政府の教育勅語に対する立場は「法制上の効力は喪失している」(菅官房長官)である。ただし、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」(政府答弁書)という。

 要は「親を大切にするなどの項目もある。適切な配慮の下に教材として用いること自体はなんら問題ない」(菅長官)というわけだ。

 確かに、親孝行や夫婦仲睦まじくは、教育勅語を引用するまでもなく学校現場で教えることはできる。しかし、いまさら教育勅語ではないだろう。復古主義もいいところだ。

 野党は「親孝行などの徳目を隠れ蓑に、主権在民の日本国憲法の理念を危うくする、戦前回帰の動きだ」と批判する。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 倉本聰が脚本を手がける高齢者向けの連続ドラマ『やすらぎの郷(さと)』(テレビ朝日系・平日12:30〜の20分枠)をこう呼ぶ向きがある。

 テレビの「ゴールデンタイム」にちなんだ(と思われる)「シルバータイム」だが、平日の昼12時過ぎを、いくら高齢者の方々は仕事や家事をリタイアしているケースが多いとはいえ、「シルバーなタイム」と断じてしまうのはいかがなものか……と、筆者個人としては思わなくもない。もっとシンプルに「シルバードラマ」で良いのでは?

 物語の舞台は、海辺の高台にある「やすらぎの郷」という名の老人ホーム。入園できるのは、かつてテレビ界で一世を風靡した芸能人やドラマの作り手だけという設定のストーリー。そこで起こる様々な人間模様がユーモラスに描かれる。役者には石坂浩二・浅丘ルリ子・加賀まりこ・有馬稲子・八千草薫……と、錚々たるメンバーを揃えている。視聴率は好調で、4月3日からの初週は平均7%台をマーク。他局の同枠の番組(日テレ系「ヒルナンデス」、TBS系「ひるおび」、フジ系「バイキング」)をおさえてトップになることもしばしばだ。

 最近、ドラマでは水谷豊・小日向文世・柴田恭兵・松重豊……ほか、「中年」と言うよりは「初老」俳優陣の活躍がにわかに目立っているが、露骨なシルバー向けドラマってやつは、これまで案外ありそうでなかったような気もする。あの弘兼憲史(ひろかね・けんし)センセイは、すでに20年以上も前から『黄昏(たそがれ)流星群』で、実験的な試みとしてシルバー層をターゲットとする漫画を描き続けているにもかかわらず、だ。この「遅さ」はやはり、とりあえず現時点ではまだ、一番マスなメディアであるテレビの宿命なのかもしれない。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 「娘さん、しっぽりしてきよったなぁ、最近。うちのキョロはほんま、なに考えてんのやら……はずかしいわぁ」。

 「しっぽり」は、大人びていたり、落ち着いていたりする様子を表す言葉である。もともとは、「しっとりと十分に濡れるさま」や「しめやかなさま」、あるいは「男女間の情愛のこまやかなさま、親密なさま」(『日本国語大辞典』)といった意味でも使われてきた。京都や奈良、和歌山などではニュアンスが若干変化した他の意味もあり、「熱心な」という意味で、「しっぽりきばってもろて、わるいなぁ」というような使い方もされていたそうである。なお、「キョロ」というのは、目をキョロキョロしているというところから「落ち着きのない人」という意味で、かわいらしさを加味しつつ使われることが多い。

 「しっぽり」の「大人びたしっかり感」がいきすぎて、厳しさが加わるほどになると、「しかつい」という形容になる。「おたく、この頃しかついこと言わはりますな」などという感じ。ちょっと皮肉交じりに注意を促すわけだ。また、「しっぽり」の対義として使われる言葉は、せかせかして落ち着かないという意味の「いらち」であろう。「ほんまにいらちやし、忘れもんせんといてな」という風に使う。標準語の「せっかち」と同じような使い方だろう。


峰床山(左京区)にて。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 言わんこっちゃない。バカは隣の火事より怖いのだ。トランプ大統領は米中首脳会談の最中にシリアを空爆して、世界中に衝撃が走った。

 それだけではなかった。首脳会談が終わった後、今度は米原子力空母カールビンソンや空母航空団、誘導ミサイル駆逐艦などを朝鮮半島近海に集結させるよう指令を出し、北朝鮮の核施設や軍事基地への空爆も辞さないと、圧力を強めているのだ。

 朝鮮戦争以来最大の危機である。一つ間違えれば第二次朝鮮戦争勃発という最悪の事態も考えられる。なぜトランプは、プーチン大統領や習近平主席の顔に泥を塗るようなことを始めたのか。

 その謎を解き明かしてくれる報道は日本のメディアには皆無である。シリア空爆については、こういわれているそうだ。

 4月4日、シリアの反体制派支配地域で、神経ガスを使ったと見られる空爆があり、子どもを含む多くの市民が犠牲になった映像が世界中を駆け巡った。それを見たトランプが怒り狂って命令した。後先を考えない“衝動的”なものだそうだが、だとすれば、こんな怖いことはない。

 『ニューズウィーク日本版』(4/18号、以下『ニューズ』)は、トランプの攻撃を取り上げている。トランプは選挙中ISISを討伐するといってきた。それが突然、アサド政権を打倒しようとしているISIS側に回ったかのように、アサド側を空爆したのである。

 この空爆が持つ意味は深刻である。シリアのこの地域にはトランプが“尊敬”しているプーチンのロシア軍が、アサド政権を守るために1万人程度入り込んでいるといわれている。

 「攻撃直後のロシアは怒りの声明を発表。米ロ両軍の偶発的衝突を防ぐための連絡システムを停止した。直接の報復行動ではないが、これで米軍の軍事行動はリスクがかなり高くなる」(『ニューズ』)

 さらに同誌によれば、トランプはアメリカ国内で「プーチンの傀儡政権」といわれている風評を打ち消すために、このような強硬姿勢をとったのではないかという見方があるという。

 トランプがロシアの傀儡政権であったとしたら怖ろしいことではあるが、それを否定するためにシリアを空爆したのであればなおさら怖い話だ。この男には世界最大の核戦力を動かす力があるのだから。

 シリアへの空爆をしたことだけでは満足できないトランプは、米中首脳会談が終わると今度は、北朝鮮を標的にすると公言して、核開発を放棄しなければ攻撃すると空母や駆逐艦を差し向けたのである。

 おりしも北朝鮮は故金日成(キム・イルソン)国家主席の生誕105周年を祝うための行事が行なわれ、外国メディアも多数招待していた。

 どちらかが誤って発射した一発の銃弾が、第二次朝鮮戦争を引き起こしかねない緊急事態である。さらに4月25日には軍創建85周年があり、この日に6度目の核実験をするのではないかといわれている。

 そうなればトランプは躊躇せず北朝鮮を攻撃するかもしれない。トランプと北朝鮮問題について何らかの話し合いがあったに違いない習近平は、北朝鮮の核実験を止めさせるために金正恩側への圧力を強めていると思われるが、金正恩があっさり引っ込めるとは考えにくい。

 日本にとってはアメリカの占領時代が終わって以来、初めて日本が巻き込まれる戦争一歩前の異常事態である。

 だが不思議なことに、この国のメディアを見ている限り、そうした緊迫感は伝わってこない

 4月18日、ペンス副大統領が来日して安倍首相と会談した。北朝鮮問題も話し合われたことは間違いないが、安倍首相の表情からも緊迫感はうかがえなかった。

 だが、安倍の“ニタ笑い”の裏に隠された秘密の日米合意があるのではないだろうか。

 ここで『週刊文春』(4/20号)の巻頭で「金正恩“斬首”秒読み 政府が覚悟『最悪シナリオ』」を書いている山口敬之(元TBS記者)のレポートを見てみたい。

 山口は安倍官邸に近いといわれている記者の一人である。

 9日早朝、安倍首相がトランプとの緊急電話会談に臨んだ話から始まる。トランプはそこで「シリア攻撃を安倍が支持した」ことへの謝意を述べたという。だが、安倍としては、化学兵器を使用した確固たる証拠がないため、悩んだ末に「軍事行動ではなく、化学兵器の拡散と使用を抑止する」というトランプの“決意”を支持するという、もってまわった言い方にしたと、安倍の苦心話を披露している。

 山口によれば、トランプは習近平に、近く行なわれるといわれている北朝鮮の6回目の核実験をやめさせるために、中国に対して期限を区切った北への制裁強化を強硬に求めたという。

 だが習近平は明確には答えなかったのだろう。そこで北朝鮮へ軍事攻撃も辞さずという強行姿勢に転じたのだが、山口はここで、シリアは空爆したのに、北朝鮮に対しては、すでに計画立案が終了している「斬首+限定空爆」になぜ踏み切らないのかと疑問を呈している。

 その理由は、日本政府が入手した衝撃的なシミュレーションにあるという。シリアと違って北朝鮮にアメリカが先制攻撃すれば、北朝鮮は必ず韓国のソウルへ攻撃をしてくる。そうなれば韓国人だけではなく、在韓邦人や観光客が多数犠牲になる可能性がある。

 だからアメリカはためらっているというのだが、こんなことはいまさらシミュレイションしなくても、わかりきったことである。

 北朝鮮はソウルだけではなく、日本の心臓部にもミサイルを撃ち込んでくることは間違いない。だが、山口も書いているように、日本の最新鋭のミサイル防衛システムでも、全部を迎撃できるわけではない

 『週刊新潮』(4/20号、以下『新潮』)によると、『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』(2003年、新潮社刊)を書いた北東アジア地域安全保障問題に詳しいマイケル・ユーが、米ヘリテージ財団の協力を得てした試算では、北朝鮮が核、生物兵器、化学兵器を搭載するミサイルを東京都庁周辺に撃ち込むと、最大で約186万人が死ぬとしている。

 山口の原稿で見逃せないのは結びの言葉である。「覚悟を決める必要がある」。主語はないが推測するに「国民」であろうが、何の覚悟なのか。

 安倍首相は北朝鮮討伐の米軍に、今後自衛隊も参加させるがゴチャゴチャ言うなということか。官邸の意向を代弁して、われわれに戦争への準備をしておけというつもりなのか。

 森友学園問題でもそうだったが、最近、官邸の意を汲んで、安倍昭恵の疑惑隠しや、アメリカと同盟関係にあるのだから、戦争となれば自衛隊を派遣するのが当然だといういい方をする評論家、ジャーナリスト、テレビのコメンテーターが多い気がしてならない。

 衝動的で先の見通しもないまま突っ走るトランプに対して、バカなことはやめろと忠告するのが真の同盟国としての役割ではないのか。

 トランプの本音はこうだ。シリアや北朝鮮を攻撃しても、アメリカ本土が攻撃されることは当面ない。自分たちが安全な場所にいて、アジアの火薬庫に火を放てば、朝鮮半島と日本列島は火だるまになる。それをワインでも飲みながら、トランプはテレビで見るつもりなのだろう。

 『新潮』によれば、かつて金日成が息子・金正日(キム・ジョンイル)にこう尋ねたという。

 「アメリカが北朝鮮を攻めて来たら勝てるのか」。金正日はこう答えた。

 「勝てないが、朝鮮のない地球はありえない。朝鮮が潰れる時には、地球を破壊してしまえばよい

 韓国では緊張感が高まっているが、日本ではメディアも国民も騒がないのはなぜか。

 今やノー天気週刊誌の代表になった『週刊ポスト』(4/28号、以下『ポスト』)などは、朝鮮半島有事なら日本に「特需」が来るなどという、呆れた特集を巻頭でやっている。

 昔から遠い戦争は買い、近くの戦争は売りという相場の格言がある。ベトナム戦争は遠い戦争であったから「ベトナム特需」があった。『ポスト』は朝鮮戦争のときも「朝鮮特需」があったではないかという。

 だが、あの戦争は米韓と北朝鮮との局地戦だった。その頃の日本はアメリカの占領下だったから、気分的には遠い戦争であった。

 それに、今のような飛び道具戦争ではなく、地上戦が主体だったし、北にはろくに戦闘機もなかったであろう。だが、今は、北と戦争になれば、アジア全土が巻き込まれる。

 『ニューズ』(4/25号)は、まだトランプは北朝鮮を攻撃しようとは考えていないと書いている。それは、韓国にいる15万人前後、日本にいる5万人以上のアメリカ人を退避させていないからだ。

 しかし、シリア攻撃をした後、プーチンの反応は抑制的だった。最強のアメリカに対して誰も報復などしやしない。

 「トランプがそんなおごり高ぶった自信を深めたとすれば、北朝鮮に対しても同じ論理で行動するのはあり得ない話ではない。これによって、米朝双方が互いの意図を読み違えて偶発的な武力衝突に至る可能性も否定できない」(『ニューズ』)

 保守的な『ニューズ』でさえ、北朝鮮という難題を解くには「話し合い」を目指すしかないと言っている。

 安倍首相は政治生命をかけてトランプを説得し、空母を引き上げさせ、金正恩とアメリカ、中国、韓国、日本との話し合いに持ち込むことに全力を挙げるべきなのだ。それこそが真のリーダーシップというものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 安倍首相の周りにはろくな者がいない。暴言、虚偽発言、浮気、不倫など、日常茶飯である。その連中になぜそんなことをするのかと問えば、きっとこう答えるに違いない。「上がアホだから」。左右どちらを見ても馬鹿と阿呆の 絡み合いばかりと歌ったのは鶴田浩二。ほんにお天道様に顔向けできない、いや~な世の中でございます。

第1位 「飲酒規制が始まった!」(『週刊ポスト』4/28号)
第2位 「『遺言手記』余命を諦めた『木嶋佳苗』の東京拘置所から愛をこめて」(『週刊新潮』4/20号)
第3位 「“総理の懐刀”が『番記者いじめて辞めさせた』事件」(『週刊ポスト』4/28号)

 第3位。今井尚哉(たかや)という首相秘書官は、よほど評判の悪い人間のようである。『ポスト』によれば、今井の番記者がいるそうで、毎晩、今井の家の前には番記者が10人以上も集まるという。
 機嫌がいいと話すが、へそを曲げると何もしゃべらない。その今井が朝日新聞の番記者S記者をとことん嫌ってしまったという。
 S記者は15年9月に可決された安保法案を取材しており、可決後、安倍首相が祖父岸信介と父安倍晋太郎の墓参りをした際、安倍に「安保法案の成立を報告したのですか?」と声をかけたのだ。
 それを、今井は「無礼極まりない」と怒っていたという。そこへS記者が番記者として現れたから、Sを無視し続けたそうである。
 Sはそれでも腐らずに夜回りを続けていたというが、今年1月、某新聞記者とテレビ局の記者に呼び出された。
 そして、君がいると今井さんが対応してくれない。もう来ないでくれ。その代わり、今井氏とのやり取りはメモで回すからと言われたというのだ。
 こんな記者がいるから、この程度の人間にいいようにあしらわれてしまうのだ。
 それを聞いたS記者は意気消沈して夜回りをしなくなり、朝日の上司もこれを知って、4月に別の記者と交代させてしまったという。
 記者もだらしないが、朝日もだらしがない。だから権力のポチと言われてしまうのだ。
 記者の質問に答える、説明責任を果たすのは役人や政治家どものやるべきことである。もしそうしないのがいたら、記者たちがそれぞれの紙面で告発し、世間に知らせるべきである。
 それでも何もしないのなら、野党に国会で質問させる。とことん追及するべきなのに、何をやっているのだ、お前たちは!
 安倍がヘラヘラしてられるのは、こういう腑抜けた記者たちのおかげである。

 第2位。さて、木嶋佳苗(かなえ)(42)という女性を覚えておいでだろうか。婚活サイトで知り合った男性3人を練炭自殺と見せかけて殺害したと殺人罪に問われ、4月14日に最高裁で上告が棄却され、死刑が確定した。
 その彼女が、『新潮』に「東京拘置所から愛をこめて」という手記を寄せている。彼女は獄中でも結婚、離婚、再婚をし、房内をパステルカラーのバスタオルで覆い、ベターッと開脚や、筋膜リリース、タバタ式などのストレッチを欠かさず、好きなブラジャーや下着を着けながら、優雅に暮らしていると書いている。
 食欲は旺盛で、いろいろなサンドイッチを作って楽しんでいる。性欲は「考えないわけではないけれど性欲で息苦しくなることはない」(木嶋)そうだ。
 彼女は自分が犯した罪については触れていないが、自分は無実だと主張しているようだ。だが彼女は、死刑確定後に法相に対して早期執行の請願をするというのである。
 その背景には母親との激しい葛藤があるようだ。母親は自叙伝などを執筆することをやめなければ一切の支援を打ち切る、弟妹や甥姪との交流も禁じると宣告し、彼女がそれを拒否すると、敢然と実行したという。
 拘置所内の生活は外部の支援なしでは立ちいかない。木嶋は母親のやったことを「悪意の遺棄」と書いている。それに父親が母親によって「心を蝕まれた結果、還暦で自死を選」んだことなどにも触れているが、複雑な家庭や母子の間の愛憎があるようだ。
 木嶋の学歴は知らないが、文章はうまい。拘置所内で多くの本を読んでいるそうだが、もともと書くことが好きで文才もあったのだろう。以前、ジャーナリストの青木理(おさむ)を好きだと言っていたが、そのことはここには書いていない。
 不謹慎かもしれないが、編集者としては、彼女の文才を駆使して、犯罪を犯す人間の心理や行動について書いてもらいたいと思う。

 第1位。今週の1位は『ポスト』の「飲酒規制が始まった」という特集にあげたい。まさに現代の「禁酒法」を厚労省が作ろうしているというのである。とんでもない!
 タバコについては、飲食店や公共の場所での喫煙を全面禁止する受動喫煙防止法案を3月にまとめていて、今国会で成立を目指している。
 4月1日、厚労省内に「アルコール健康障害対策推進室」を新設したそうだ。
 日本は酒の規制が少ない国なのだそうだ。そういえば、桜が咲けば酒、名月だと言っては酒、めでたいと言っては酒。言われてみりゃそうだがね。
 WHO(世界保健機関)では10年に「アルコールの有害な使用を減らすための世界戦略」を採択し、各国が取り組むべき酒害対策として、酒の安売り禁止、飲食店での飲み放題禁止、酒類の広告規制などをあげて、酒の値段の引き上げ、公共の場所での販売規制などが推奨されているというのだ。
 すでに欧米をはじめ、シンガポールやインド、タイなどにも規制の動きが広がっていて、日本でも13年に「アルコール健康障害対策基本法」がまとめられている。
 これは主として依存症対策だが、昨年5月に改正酒税法を成立させ、ディスカウント店に対して、過剰な酒の安売りの規制に乗り出しているというのである。へぇ~、ちっとも知らなかった。
 『ポスト』によると、テレビCMで、うまそうにゴクゴク飲みほすシーンは、アルコール依存症の人に苦痛を与えるとして、内閣府のアルコール健康障害対策関係者会議ワーキンググループの指摘で、業界がその指導に従い、ゴクゴクの効果音は使用しない、のど元のアップはしないという自主規制をしているそうだ。
 また、日本人の飲酒率は男が83.1%、女性が60.9%で約7472万人。このうち健康被害が予想される問題飲酒の人間が1353万人もいて、飲み過ぎによるけがや病気の治療にかかる医療費は年間1兆226億円と推計されている。飲酒による事故や労働損失を考えると、社会的損失は年間推定3兆947億円で、医療費との合計は年間4兆1483億円にもなる。
 アルコール飲料の国内市場は約3兆6000億円だから、飲酒は経済効果より損失のほうが大きいそうである。
 厚労省の官僚が、世界のほとんどの国では、公園やビーチなどの公共の場所での飲酒は禁止が常識だから、東京五輪に向けてアルコール規制の議論を本格化させ、自動販売機の全面禁止、屋外や公共施設での飲酒の規制、店での飲み放題の禁止などをしていくというのだ。
 フランスは飲酒大国だったのに、現在は半分以下に減ったという。カナダでは、野球場でも酒の販売と飲酒が禁止になったところが出ている。まるでこれでは、1920年から33年まで敷かれたアメリカの禁酒法のようではないか。
 プロテスタントの間での禁酒運動の高まりと、巨大資本への不満を持つ国民の社会改革運動が結びついて制定されたというが、これによって密造酒がつくられ、アル・カポネなどのマフィアの資金源になった。映画『アンタッチャブル』の世界だね。
 禁酒法でわかったのは、どんなことをしても飲みたい奴は飲むということ。それを金儲けにしようという人間が必ず出てくるということである。
 今回の場合は、国や厚労省が、医療費削減の大義名分でもって、酒への税金を大幅に上げて税収を増やそうとする魂胆が見え見えだ。
 この国は「酒なくてなんの己が桜かな」である。それに日本酒という世界に誇れる銘酒を作り出した国である。お上が禁酒令など出したら、暴動がおこるぜ。悪いことは言わねぇ、よしといたほうがいい。
 これを書き終わったら、谷中墓地の近くにある居酒屋へ、一杯飲みに行くとしようか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


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