コトバJapan! 読んだ気になる!週刊誌 の 記事一覧


 国営放送とは何だろう。「放送事業の一形態。国有放送ともいう。国家が直接事業を所有ないし運営する放送」(「ニッポニカ」)。そしてウィキペディアには、「国家によって直接運営されている放送局の形態を指す。また、法律や国家権力により、国民に対し強い情報統制をかけて行なわれる放送形態のことを指すこともある」との解説がある。

 国営放送は中国の「中央電視台」やロシアの「モスクワ放送」、北朝鮮の「朝鮮中央放送」などで、イギリスのBBC、韓国のKBSなどは受信料を徴収し、小さいながらもアメリカのPBSは交付金や寄付金で運営しているから、公共放送である。

 では「皆様のNHK」はどちらなのだろう。受信料を強制的に支払わされているから公共放送なのだろうが、日本人の多くは国営放送だと思っているのではないか

 事業予算・経営委員任命には国会の総務委員会や本会議での承認が必要。したがって経営・番組編集方針には時の政権の意向が反映される。総務大臣はNHKに対して国際放送の実施、放送に関する研究を命じることができるなど、国営放送といってもいいくらい、政権の意向に影響されることが多い

 さらに、安倍官邸の強い意向で据えられたNHK前会長の籾井勝人(もみい・かつと)が「領土問題では明確に政府の立場を主張する、それが国際放送の役割。政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」、原発問題についても「住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えることを続けてほしい」と現場に対して発言したことで、政権の御用メディアという立場がより鮮明になった。

 籾井が去って上田良一(経営委員)が会長に選ばれたことで、政治主導から離れるという期待が局内や国民の間にもあったが、これまでのところ「籾井ほどではない」と言う程度の評価でしかない。

 籾井は三井物産出身、上田は三菱商事出身である。商社というのは言葉は悪いが「政商」である。商いは日本の政治の動向に大きく左右されるため、政治との結びつきはどうしても強くならざるを得ない。

 だが、1989年4月に会長に就任した元政治部出身の島桂次(しま・けいじ)は「シマゲジ」といわれ、テレビ朝日の三浦ジャガイモこと三浦甲子二(きねじ)、読売新聞のナベツネこと渡辺恒雄とともに政治家たちにズケズケものを言うメディア三羽烏といわれた。

 私は島と三浦とは何度か酒を飲んだことがあるが、豪快さでは三浦、強引さではシマゲジであった。ナベツネはその2人に比べると紳士的で押され気味であったように思う。

 島から海老沢勝二(えびさわ・かつじ)あたりまではNHK生え抜きで、時の政権の政治介入は今ほど強くなかったのではないか。

 大きく変わったのは安倍晋三が副官房長官の時である。NHKが2001年1月30日に放送したETV特集「戦争をどう裁くか」の内容について、安倍が政治圧力をかけたと大きな問題になった。安倍は否定したが、この際の弱腰なNHK側の反応を見て、安倍はNHKを御しやすいと考え、第二次政権では自分が操ることができる籾井を会長に押し込んだのであろう。

 安倍のNHK操縦はトップだけではない。現場で自分の意のままに動く人間を手なづけることも忘れなかった。

 阿比留瑠比(あひる・るい)産経新聞論説委員、山口敬之(のりゆき)元TBSワシントン支局長と並んで、安倍のポチ記者三人衆といわれるのが岩田明子NHK解説委員である。

 岩田は2002年から安倍番を務め、安倍の私邸(渋谷区富ヶ谷)近くに移り住んで、安倍の母・洋子に特に気に入られているといわれる。

 『文藝春秋』(2016年6月号)で、洋子のロングインタビューをして、その親密さをアピールした。

 プーチンロシア大統領を首相の地元・山口県に招いてトップ会談をする前に、岩田が流した「プーチン来日で北方領土返還」という“フェイクニュース”がメディアの間では大きな問題になった。

 16年9月14日放送のNHK『クローズアップ現代+』(以下、『クロ現+』)に解説委員として岩田が出演し、ウラジオストク会談で安倍首相がプーチンから、ロシアが所有している昭和天皇即位の礼の際に作られた「刀一振り」が贈呈されたというエピソードを紹介し、こう述べた。

 「プーチン大統領は『いろいろな経緯をたどって自分の手元にあったが、こうしたものは祖国へ帰るべきだ』と言った。そこにいた日本政府の関係者も『まるで日本への北方領土の返還を示唆しているようだ』と話していた」

 概ねこのようなことを言って、山口でのトップ会談で北方領土が戻ってくるかのような「空気」を増幅&拡散したのである。

 結果は、3000億円もの経済協力を約束させられただけで、北方領土の「ほ」の字もなく、日本人の期待を裏切ったのであった。

 さらに、昨年の12月18日に放送した『NHKスペシャル』では、岩田記者が安倍首相のインタビューを長々とやり、カメラが入れない首相官邸内での首相秘書官や国家安全保障局長など側近たちとの会談の模様を、音声抜きで放送したのである。

 これをもし、安倍首相が許可していたとしたら国家公務員法違反に問われかねない。また、この映像をNHK側がどこからか独自に入手していて、それを放送するに際して官邸から音声は消せと言われていたら、「放送は何人からも干渉、規律されることがない」という放送法に違反するのではないだろうか

 このことは国会でも問題になったが、政府側は「国家公務員法などに違反する行為はなかったと認識している」と言うだけだった。

 この放送に対して、ジャーナリズムがやらなければいけない「権力監視」という役割を放棄し、記者自身が官邸の広報機関になり下がっていると批判する声が多いのも致し方がないだろう。

 こうした安倍ベッタリ記者が今年3月、NHKから会長賞を与えられているのだから、NHKは安倍直営テレビ「ATT」とでも変えたらいいのではないか。

 加計(かけ)学園の獣医学部新設計画を巡り前川喜平(きへい)前文科省事務次官が内閣府から「総理の意向」などと“圧力”があり、やり取りの文書が残っていると告発した件では、読売新聞が前川前次官の風俗通いを大きく報じたことで、自らが安倍ポチ・メディアであることを内外に表明した。

 当然ながら読売新聞には多くの読者からの批判の声が寄せられ、新聞を取らないという読者も増えているそうだ。

 さらに読売は、前川の記者会見で恥の上塗りをしていた。

 読売の記者が前川に、そうした文書があると明かすのは「守秘義務違反では?」と質問したのだ。

 守秘義務の厚い壁と戦い、それを突き崩して権力の嘘を暴くことこそがジャーナリズムの役割なのに、そんなイロハのイはこの記者の頭にはこれっぽっちもないのである。

 NHKもろくなものではない。『週刊ポスト』(6/23号、以下『ポスト』)の「NHKが黒塗り報道した〈官邸の最高レベル〉への忖度」では、NHKが朝日新聞とともに前川の「内部文書はある」発言をスクープしたのはいいが、『ポスト』によると、その文書をわざわざテレビで映し出したのに、肝心の「官邸の最高レベル」という文言のところが消されていたというのだ。

 これには社内でも「内部文書の価値を無視した報道だ」と批判の声が上がった。

 NHKの中堅局員が憤懣やるかたない様子で語る。

 「文書の所々が黒塗りになっていましたが、文科省の教育課長や内閣府の審議官、参事官などの個人名が黒塗りにされていたのは理解できます。しかし、〈官邸の最高レベル〉の部分は首相の友人が理事長を務める加計学園に対し、官邸側が文科省に認可を迫ったことを窺わせる核心部分です。それがアナウンサーも一切触れずにスルーされた。“これほど内部文書の価値を無視した報道はない”と局内でも議論が起きました」

 『ポスト』によれば、今年の4月に報道局長になった小池英夫の指示だったと言われているそうだ。

 小池は政治部で長く自民党を担当していた。報道の直前、彼は「こんなものは怪文書と同じだ」と言い、その部分を黒塗りして放送するよう指示したという。

 菅官房長官の言い方と同じである。事前に官邸にお伺いを立てていたのかもしれない。さらに、NHKは前川前次官のインタビューをすでに撮り終えているのに、いまだに放送していない。

 だが、NHKの全員が安倍官邸の言いなりになっているわけではない。6月19日の『クロ現+』で、加計学園の獣医学部新設について、首相側近の萩生田(はぎうだ)光一官房副長官が文科省局長に、学部新設について「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年(2018年)4月開学』とおしりを切っていた」などと、首相の意向を伝えていた内容を記録していた文書の存在が明らかになったとスクープしたのである。

 萩生田は全否定し、松野博一(ひろかず)文科相は内容が不正確だったと萩生田に謝ったが、茶番である。これで安倍首相の指示で萩生田が動いたことが99%証明された。

 19日夜には安倍首相が記者会見して、支持率が落ちているからだろう、自らが関与していたと疑われている加計学園問題について「政府への不信を招いた」などと珍しくしおらしく謝罪した。だがそれを帳消しにするスクープをNHKが報じたのだ

 番組には社会部記者と政治部記者が出演し、社会部記者はこの文書が複数の文科省職員のパソコンに保存されていたこと、内容が正しいことを現役の文科省職員が証言していると、このスクープを裏付ける解説をした。

 一方、政治部記者は安倍官邸の代理人のように、内閣府と文科省とでやり取りはあったが、規制委員会の決定には透明性があると、弁護することに終始した。

 さぞ、官邸のポチを任じるNHKの記者たちは、安倍から叱責を受けたことであろう。

 『クロ現+』は永田町とは距離を置く社会部が中心の番組である。新聞社でも政治部を差し置いて政治問題に社会部が出張ってきたときは、世の中を動かす大ネタをつかんだ時である。

 リクルート事件が有名だ。朝日新聞の社会部が動いたが、政治部は「未公開株? そんなことどこの企業でもやっていることだ」と、政界へ広がることなどないと高をくくっていたのだ。

 NHK内部でも、官邸ベッタリの政治部を出し抜き、社会部が表に出てきたことで、朝日、東京、毎日とともに「もり・かけ」問題追及は次のステージへ移るだろう。メディアが独裁政権を倒す。そうなれば、官邸と組んだ政治部が長年牛耳ってきたNHKも大きく変わるかもしれない

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 ようやく安倍内閣の支持率が下がり始めた。森友学園、加計学園問題に共謀罪の強行採決では、いくらおとなしい日本人でも我慢の限界に来たのだろう。橋下徹でさえ、朝日新聞のインタビュー(デジタル版、6月20日)でこう答えている。「加計学園問題のメディアの追及はあっぱれだ。(中略)まさに有権者をバカにしたがゆえのしっぺ返しです」。その上、週刊誌では安倍の体調が悪いという報道が相次いでいる。火のないところに煙は立たない。政権内部の人間が漏らしているに違いない。安倍政権の崩壊が間違いなく始まっている。

第1位 「『安倍総理』深更の重大変調──『結婚30周年』記念日の夜に主治医が私邸に駆けつけた!──」(『週刊新潮』6/22号)/「党幹部も政治記者も色めき立った『総理ががんで9月退陣』怪情報」(『週刊ポスト』6/30号)
第2位 「政局のカギを握る『車いすの副総理候補』谷垣禎一『執念の復活』スクープ撮」(『週刊ポスト』6/30号)
第3位 「宇都宮マンションで『テレ朝看板アナ』をダブルドリブルした『田臥勇太』」(『週刊新潮』6/22号)

 第3位。バスケット音痴の私でも田臥勇太(たぶせ・ゆうた)の名前は知っている。日本人初のNBAプレーヤーになり、昨年スタートした日本のプロバスケットボール B.LEAGUE(Bリーグ)の「リンク栃木ブレックス」のキャプテンを務めている。
 5月27日に行なわれた決勝で「川崎ブレイブサンダース」を逆転勝ちで破り、Bリーグ初代王者に輝いたのも、田臥の力が大きかったようだ。日本に世界と伍すバスケットチームができるかどうかはまだわからないが、宇都宮市内で行なわれた優勝パレードには3万人のファンが沿道を埋めたというから、バスケ人気は出てきているようである。
 その田臥が、優勝パレードが終わっていったん自宅に帰り、その後出かけて再び戻ってきたときは美女をお持ち帰りしていたと『新潮』がグラビアとともに報じている。
 2人は部屋でしばらく過ごした後、近所のダイニングバーで食事し、戻ってきたのが午後10時過ぎ。

 「ようやく電気が点いたのは、2人が部屋に入ってから、2時間半以上が経過」(『新潮』)

 この女性、テレ朝で『スーパーJチャンネル』や『やべっちF.C.』に出演している人気女子アナ・竹内由恵(よしえ)(31)だという。
 翌朝、竹内アナは田臥が運転する車で宇都宮駅まで送ってもらっている。
 『新潮』が言うには、田臥が以前、半同棲生活を送り、結婚目前と言われていたのが、竹内アナの5年先輩で13年に退職した前田有紀(36)だったそうだ。
 『新潮』は、テレ朝の看板アナを2人も相手にしたのは、バスケでいう反則「ダブルドリブル」だと言うが、いいではないか。
 田臥はテレ朝の女子アナが好みなのだろう。田臥は『新潮』の直撃に、竹内との交際を認めているが、結婚は、最近こういう関係になったから、まったく考えていないと答えている。
 173㎝とバスケプレーヤーとしては小柄な田臥だが、これからの日本のバスケットを引っ張っていってもらわなくてはいけないリーダーである。そろそろ身を固めて指導者に専念したほうがいいのではないかと私は思うのだが、余計なおせっかいだろうな。

 第2位。さて、安倍内閣の支持率が落ち始めた。朝日新聞社が17、18日に実施した全国世論調査(電話)によると、「安倍内閣の支持率は41%で、前回(5月24、25日実施)の47%から下落した。昨年7月の参院選以降で最も低かった。不支持率は37%(前回31%)に上がった」
 また共同通信社の調査でも17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率 は44.9%、前回5月から10.5ポイント急落し、不支持は43.1%で8.8ポイント上昇した。
 当然であるが、ようやく世論が実態に追い付いてきたということである。
 ポスト安倍の争いが本格化するのはこれからだが、そのキーマンになるはずが谷垣禎一(さだかず)前幹事長であった。
 谷垣は自転車事故で「頚髄(けいずい)損傷」という重大な傷を負い、手術を経てリハビリ中だが、『ポスト』がその姿をカメラに収めた。
 写真を見ると、まだ回復途上のようだが、頭はしっかりしていて、目撃したところによると、食事も右手で食べ、介護者はついていないという。
 杖を使って歩くリハビリをしているというから、政界復帰は可能ではないかと報じている。
 そうなると、谷垣が所属している宏池(こうち)会(岸田派)と合併して保守本流を再結集しようとしている麻生太郎と、谷垣はどうするのか。
 谷垣が復帰すれば、もともと安倍嫌いな谷垣だから麻生と手を組み、反安倍勢力をつくる。そうなれば、安倍一強時代は終わりを告げるが、果たしてそうなるだろうか。

 第1位。ついに「共謀罪」が強行採決された。野党の昔ながらの牛歩戦術など、かつての社会党のように多くの議員がいた時代ならともかく、政権側への蚊の一刺しにもならない。
 国会前の反対集会に来た人が「負けることに慣れ過ぎている」と言っていた。よく今の日本の“空気”を表している。
 共謀罪を戦前の治安維持法と比べる識者がいる。これに私は頷けない。スノーデンが暴露したNSA(国家安全保障局)を持ち出すまでもなく、現代はもはや超監視社会である。どこかで読んだが、歌舞伎町には何十台という監視カメラが設置され、ラブホの出入りも撮られているそうだ。
 顔認証を使って、前川喜平と入力すれば、歌舞伎町でうろうろしている前川の映像は瞬時に権力側の手に入る。GPSでその人間の行動を24時間フォローすることもできる。メール、ツイッター、Facebookはもちろん、NTTは認めないだろうが、通話記録も録音されていることは、通信関係者にはよく知られている。
 昔のように、その人間を尾行したり、周りの聞き込みなどしないで、その人間の行動や考えを、瞬時に手に入れることができる時代である。
 盗聴法、個人情報保護法、共謀罪の成立で、作家の城山三郎が心配していた戦前以上の警察国家の完成である。だから安倍は何としてでもやりたかったのだ。
 「加計学園問題で野党の追及から逃れるために早く国会を閉会したかった」などと朝日新聞(6月15日付朝刊)が社説で書いているが、事はそんな生易しいものではない。「民主主義はどこへ行くのか」(同)ではなく「かくして民主主義は死んだ」と書くべきではないか。
 世論で安倍政権を倒せないなら、嫌な言い方になるが、安倍の変調に期待するしかないのかもしれない。
 『新潮』が6月9日、安倍夫妻の結婚30周年を祝った夜、10時過ぎに富ヶ谷の私邸に戻った安倍は突然体調が悪化して、慶応病院の主治医が急遽駆けつける騒ぎになったと報じている。
 入院するほどではなかったものの、翌日にメディカルチェックを受けるため、六本木のホテルのフィットネスクラブで汗を流すこととなったという。これは首相動静に書いてあることだが、安倍首相がよくフィットネスへ行くのは、そこに主治医に来てもらって、密かに診察を受けることが多いのだ。
 9日は、菅官房長官の不手際で、前川前次官が告発した文科省にある「総理のご意向文書」で追い詰められていた安倍首相が、再調査すると表明した日である。
 『新潮』によれば、そうしたことに加えて、妻・昭恵のおかげで森友学園問題で窮地に立たされたことで、夫婦仲も険悪なまま。周囲には仲睦まじいような振りをしなければならないため、ストレスが限界まで達して、持病が悪化したのではないかと見ている。まさに前門の虎、後門の狼である。強気に見える安倍だが「夫婦はつらいよ」と頭を抱えているのかもしれない。
 『ポスト』は関西在住のジャーナリストのメルマガで、「安倍首相ががんだ」という情報が出回り、9月退陣ではないかという推測も出てきているという。
 政権末期にはさまざまな情報が飛び交うものだが、安倍もそういう時期になったのであろう。
 ところで“冷血動物”菅官房長官を定例会見でしどろもどろにさせた女性記者が判明した。「終わってみれば、全体の半分程の20分弱が彼女の質問に費やされ、菅長官の顔には『辟易』の二文字が刻まれていたのだ」(『新潮』)。この女性記者、東京新聞の美人社会部記者で、2004年に日本歯科医師連盟の闇献金事件をスクープしている。
 今は加計問題の取材班に入っていて、菅の記者会見に行って、あまりにもほかの記者たちの質問が温いので、菅に質問を浴びせたのだろう。今井照容(てるまさ)責任編集のメルマガ『文徒』によると、望月衣塑子(いそこ)記者で、県警、東京地検特捜部などを経て出産後、経済部に復帰。その後、社会部で武器輸出、軍学共同を主に取材して、私も読んだが、『武器輸出と日本企業』(角川新書)を上梓している。
 だが腹の収まらない菅は、「官邸スタッフに、警察組織を使って彼女の身辺調査をするよう命じました。(中略)取材用のハイヤーをプライベートで使っていたことはなかったかということまで調査対象になっている」(官邸関係者)。先に書いたが、こんなとんでもないことが行なわれているとすれば、言論弾圧・警察国家を象徴する重大問題である。だが、『新潮』はそれほどのこととは考えていないようだ。
 このところ自由党の森ゆうこ議員の質問がすごくいい。特に、文部科学省内で文書を流出させた職員が判明した場合、告発した人物を守るべきだと主張し、元ヤンキーの義家弘介(よしいえ・ひろゆき)文部科学副大臣の「処分の可能性あり」という発言を引き出した。「告発者を守るっていえないんですか?」と迫る森、怯えさえ見せる義家。「報復をしようという動きがあったら私は許さない」「守るために戦う」と森の決め台詞。彼女と民進党の山尾志桜里(しおり)が組んだら、安倍を崩せると思う。元クラリオンガールより何倍もいい。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 山本七平の『「空気」の研究』は名著である。彼は日本がなぜ無謀だとわかっていた第二次大戦にのめり込んでいったのかをいろいろな例を引き、それに異を唱えることができなくなる「空気」の存在を指摘してみせた。

 「この『空気』とは一体何なのであろう。それは教育も議論もデータも、そしておそらく科学的解明も歯が立たない“何か”である」

 この空気は日本独特のもので、それは今もこの国を“支配”し続けている。この摩訶不思議な空気という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)し、時代を経て「ムード」「KY(空気の読めない人)」、最近流行りの「忖度」などもその流れから出てきているのだろう。

 空気が読めない、忖度できない奴は、日本社会では「異端児」扱いされるならまだしも、「変人」「奇人」呼ばわりされて、ムラ社会からつま弾きになってしまうのである。

 私は詳しくはないが、戦後に限ってみても「空気を支配」してきた人物がどの分野でも成功者になっているのではないか。または、リーダーになっても「空気を支配」できなかった人間は、成功者とみなされず、リーダーシップがない、リーダーの器にあらずなどといわれ、表舞台から消えていった。

 前置きが長くなったが、安倍晋三という男が一強といわれ、憲法を蔑ろにしても支持率が下がらず、長期政権を続けているのも、この「空気」を巧みに支配しているからではないかと、『週刊ポスト』(6/16号、以下『ポスト』)が特集を組んでいる。

 安倍政権では大臣たちの失言が続出している。明らかに大臣としてではなく人間として備えておくべき理性も知性も欠如していると思われる“デージン”が多すぎる。

 安倍自身も“お友だち”の森友学園理事長や加計(かけ)学園理事長への便宜供与疑惑や妻・昭恵の関与が疑われ、追及されているにもかかわらず、なぜか内閣の支持率はある程度のところから下がらない

 平成の七不思議であるが、『ポスト』によると、「空気という妖怪」を手なづける術を身につけているらしいというのである。

 だが安倍は、昔からそうだったわけではない。「KY」という言葉が最初に流行したのは2007年だったらしいが、これは第一次安倍政権の末期だった。

 当時の朝日新聞はこう書いている。

 「最近、中高校生の間では、『KY』という言葉がはやっているらしい。(中略)この若者言葉が安倍首相を評する時にも使われている

 その後、安倍は突然辞任し、安倍の政治家生命は終わったとみんなが思っていたのだ。

 そして、野党に転落した自民党が立て直しのために取り組んだのが「情報分析会議」だったという。メンバーは茂木敏允(もてぎ・としみつ)現政調会長、世耕弘成(せこう・ひろなり)現経済産業相、平井卓也現IT戦略特命委員長、加藤勝信現一億総活躍相など、現在の安倍内閣で中枢を担っている面々である。

 この取り組みを内部から見ていた自民党情報戦略のブレーン・小口日出彦がこう話している。

 野党になると新聞もテレビも取り上げてくれないから仕方なくネットを使った

 「そこで自民に好意的な情報からネガティブな情報まで丹念に集めて直視してもらうところからスタートした。(中略)徹底的に議論して情報を分析し、表現方法なども研究した」

 12年に政権に復帰した安倍は、13年にネット選挙が解禁されると、特に重視したのが不利な情報やネガティブ情報への反撃作戦だったという。

 小口はこれを「毒矢を消す」と呼んでいる。ネット戦略の実働部隊として小池百合子を自民党広報部長に、その下に議員、選挙スタッフ、ネット企業の専門家、弁護士からなる「Truth Team」を発足させ、24時間体制でネットを常時監視し、ブログやSNS、2ちゃんねるなどに候補者への誹謗中傷などの書き込みがあれば、直ちに削除要請する仕組みを作り上げた。

 それらが功を奏して、13年の参院選で31議席増という結果を出したというのである。

 小口は、メディアでは、政治で取り上げられるのはカネをめぐる疑惑や男女関係のスキャンダル、失言・暴言、ヤジが飛び交う議場などばかりで、そういう情報に基づいて政治の印象が固まり、「本当に重要な情報がこぼれ落ちていく」と言っている。果たしてそうであろうか。これへの反論はまた後述するとして、「毒矢を消す」手法は森友・加計問題でも使われた

 安倍首相は国会で「私や妻が関係していたら総理も国会議員も辞める」と全否定し、都合が悪い文書が公表されると菅官房長官が「怪文書みたいなもの」と頭ごなしに否定してみせたことがそれに当たるそうだ。

 さらに安倍は「空気」を支配することを考え出したという。森友学園問題では籠池泰典(かごいけ・やすのり)前理事長の補助金不正受給疑惑で検察が捜査に乗り出し、加計学園問題では、前川喜平(きへい)前事務次官が出会い系バーへ通っていたと読売新聞に書かせたことがそうだというのである。

 政権が吹っ飛ぶような内容でも、そうした風評を流すことで、国民に「どっちもどっち」という印象を与え、ダメージを打ち消してしまう

 トランプ米大統領のように、都合の悪い情報がネットに出ても、「それはフェイクニュースだ」と平気で言い張る。厚顔無恥と紙一重だと、私は思うが。

 それに安倍の常套手段は、森友学園問題では、民進党が民主党時代の偽メールを引き合いに出し、加計学園問題では、鳩山内閣も動いたと言い出す。批判を受けると「お前の時もやっていた」と言うのは禁じ手である。なぜなら、民進党からいえば、それは自民党時代からやっていたではないかと言いたくなる。それでは泥仕合になるだけだが、それが安倍のやり方で、相討ちになればオレのほうが有利だという計算があるからだろう。

 その上、メディアを支配する。時事通信の田崎史郎をはじめ、準強姦罪疑惑で名を上げた(?)山口敬之(のりゆき)元TBS記者など、安倍のポチ記者をコメンテーターに起用させ、反安倍のコメンテーターをテレビから排除していった。

 ジャーナリズム論の上智大学水島宏明教授は、こうした安倍のやりたい放題にも、安倍を支持する率がさほど落ちないのは、視聴者、特に若い層の視聴者が変わってきたからだという。

 「昔は、メディアには権力監視の役割があり、政権に批判的な報道は当然という考え方が常識としてあった。今ではそれが崩れている。特に若い世代は、安倍さんを攻撃しているように見える報道には嫌悪感を感じる傾向があります。政権に批判的な従来型のジャーナリズムのスタイルでやってきたコメンテーターは、実際には官邸の圧力などに関係なく次第に姿を消している

 今、都知事として日の出の勢いに見える小池都知事も、安倍の「空気の支配力」をよく知っているため、安倍に弓を引いたことはない。都知事選の公約も「アベノミクスを東京から」だった。

 また、政治ジャーナリストの藤本順一は、安倍のうまさを、対中強硬姿勢、アベノミクス、対ロ交渉、憲法改正など多くのテーマを次々に掲げるから、一つがうまくいかなくても目先を変えられ、大きく支持が下がらないと分析する。

 それに国論を二分する沖縄の基地移転、原発再稼働などは、反対派の反感を買っても半数の支持は得られるポチ・メディアと反安倍メディアを分断することによって、メディアが挙(こぞ)って安倍批判をすることはない。

 説得力があるのは、安倍第二次政権は元々期待されていなかった、期待値が低いから、それにしては「よくやっているんじゃない」と“好意的”に受け取られているのではないかという見方である。

 先の小口が言うスキャンダルや議員たちの怒声などで「本当に重要な情報がこぼれ落ちていく」などと言えるものは、安倍内閣には何もないということだ。

 ここはトランプ政権と酷似している。自分に都合の悪いことには知らぬ存ぜぬを決め込み、ポチ・メディアを使って批判する人間のスキャンダルや逆の情報を流させ、世論を操作する。

 文科省の人間が、官邸の意向という文言がある文書を出せば、国家公務員法違反(守秘義務違反)で処罰すると恫喝(どうかつ)する。

 これでは北朝鮮と同じではないか。こんな無茶苦茶なリーダー一人、首をすげ替えられない日本人って、欧米の常識人から見たら、どこか狂っていると見えるのではないだろうか。

 山本七平は本の中で、空気という妖怪を打ち破るには「水を差す」国民が現実に立ち返ることだとしている。

 そのうえで戦争が始まる前、誰かが石油という「先立つものがない」と水を差していれば、B29の爆撃機を「竹やりでは落とせない」と水を差せば、あれほどの惨禍を免れたかもしれないと論じている。

 今の時代、水を差す役割はメディアにあるはずだ。だが、世界一の部数だけを誇る読売新聞が「安倍御用新聞」になり果て、テレビはポチたちが勢ぞろいして安倍にすり寄っている現状では、期待するだけ無駄ということかもしれない。

 最後を、本の中にある山本の言葉で結んでおきたい。

 「これまで記してきたことは、一言でいえば日本における拘束の原理の解明である。ある状態で、人は何に拘束されて自由を失うのか? なぜ自由な思考とそれに基づく自由な発言ができないのか。そしてその状態にありながら、なぜ『現在の日本には自由が多すぎる』といえるのか。なぜ『譲れる自由』と『譲れない自由』といったおそらく世界の『自由』という概念に類例のない、まことに不自由な分類が出てくるのか。それはおそらくわれわれが、『空気拘束的通常性』の中の、どこに『自由』という概念を置いてよいかわからないからであろう。確かに、こういう状態で『自由』という言葉を口にすれば、正直な人は笑い出すだけである」

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 タレントのスキャンダルが暴露されるケースは、女性側が男の不実に我慢できない、自分が相手の知名度を利用して有名になりたい、売り込んでカネにしたいという場合が多いようだ。小出恵介というアホタレが、17歳とわかっていた女とSEXをして、彼女が『フライデー』に垂れ込んだ。雑誌に売り込む前に小出側にかなりの金銭要求があったという報道もある。質の悪い女に引っかかったということかもしれないが、未成年と性交渉では弁解の余地はない。33歳にもなって「知りませんでした」では済まされまい。無期限活動停止を同情する気にはなれない。

第1位 「小出恵介『17歳女子高生と飲酒&SEX』狩野英孝に続き……人気俳優の許されざる淫行を告発する!」(『フライデー』6/23号)
第2位 「食べログ“カリスマレビュアー”が『高評価飲食店』から過剰接待」(『週刊文春』6/15号)
第3位 「巨人軍崩壊『ああ、無策!』由伸監督を解任せよ」(『週刊ポスト』6/23号)

 第3位。無策のまま42年ぶりに球団史上ワーストを更新した巨人軍。長嶋の監督1年目でも11連敗だった。
 それもこの年は、球はものすごく速いがノーコンだった新浦(にうら)というピッチャーを根気よく使い続けたための最下位だった。
 その新浦は翌年、見事にエースに育ち、巨人を優勝させた。
 だが今の高橋由伸(よしのぶ)には何もない。由伸の名言が『ポスト』に載っている。

 「相手があることなので、なかなかうまくいかない」

 11連敗後のコメントのようだ。その通りである。相手があるから、それに対処するのが監督なのだが、由伸にはそれがわからないのだ。
 2年目の今季は、30億円もの大型補強をしたのに、その選手が一人として活躍していない。これも見事というしかない。
 これは監督だけの問題ではなく、フロント、それに口を出し過ぎるナベツネこと渡辺恒雄主筆の責任が問われなくてはいけない。
 昔、氏家齊一郎(うじいえ・せいいちろう)日本テレビ社長からこんな話を聞いた。務台(むたい)光雄読売新聞社長時代のこと。テレビで野球中継を見ていた務台が、「こんなピッチャーを使うからいけないんだ」と怒り出し、近くにいた人間に巨人のベンチに電話を掛けろと命じた。
 早速、電話をすると、次の回、監督が出てきてピッチャー交代を告げた。こんなことがよくあったという。
 これではいくら優秀な監督でも嫌気がさす。今もこのようなことが行なわれているのかもしれない。由伸よ、早く辞任したほうがいい。今の戦力では立教大学にも負ける。
 私にいい案がある。長嶋を監督に復帰させるのだ。長嶋はベンチで座っていればいい。選手たちが自分たちで考え、動いてくれる。そうすれば、必ずいいほうへ動くし、長嶋で負けても、ファンは長嶋を見に来ているのだから怒りはしない。いいと思うのだが。

 第2位。食べログというのがある。私も時々利用するが、場所や営業時間の確認をするためで星の数など気にはしない。
 だが、『文春』によれば、星の影響力は絶大で、「激戦区では星が三・五以上か未満かで月間売り上げが数千万円違う場合もある」(都内飲食店経営者)という。
 その食べログでカリスマレビュアーといわれる「うどんが主食」というのがいるそうだ。四国出身の50代男性で、小さなビルメンテナンスの会社の社長だ。
 これまで2000件近いレビューを食べログに投稿してきたという。だが、彼が高評価したステーキ店『ウェスタ』のオーナーや、『うしごろ』という焼き肉店の社長、EXILEが所属するLDHが経営する焼き鳥屋『鳥佳』と親しく付き合い、接待を受けていると『文春』が報じている。
 それだけではない。気に入らない店は罵倒したり、中韓や東南アジアをさげすんだ差別発言を書き込むことも多いというのだ。
 もちろん食べログにも「口コミガイドライン」があり、もし無料接待を受けて飲食した場合は「通常利用外口コミ」にチェックをして投稿しなければならないという。
 だがこの御仁、そんなことはしていない。食べログにはこの頃、評価の仕方やネット予約を使わないと評価を落とすといったなど、いろいろな疑問が報じられている。
 このままでは所詮ネットだからとユーザーからそっぽを向かれてしまうと思う。最近、店を探すと食べログが上位に上がってこないことが多くなっている気がする。信用回復策を講じなければ、これまでのようなおいしいことはできなくなる。

 第1位。今週の第1位は『フライデー』。俳優の小出恵介(33)が17歳の女子高生(編集部注:その後の報道では少女となっている)と飲酒&SEXをしたと報じたことで、ワイドショーが大騒ぎである。『フライデー』はこう書いている。

 「17歳のA子さんが“その日”を振り返る。
 『9日の夜11時ごろ、知り合いに「小出恵介と飲んでるからおいで」と、ミナミのバーに呼ばれたんです』(中略)
 『私が17歳ということは、小出さんは間違いなくわかっていました。私が到着した時、みんなが「この子17歳やで」と、小出さんに紹介してましたから』」

 このバーで1~2時間ほど飲んだ後、小出から「2人で飲みに行こう」と誘われたA子さんは、戎橋(えびすばし、通称「ひっかけ橋」)近くにあるバーへと案内された。

 「『ヤバいかも、と思ったのは、深夜3時ごろに2軒目を2人で出た後でした。ひっかけ橋の上で、キスしながら欄干に押し付けられたんです。私はワンピースだったんですけど、裾をめくり上げて服を脱がそうとしてきたので、「アカンよ!」と必死に止めました』」

 「『小出恵介に会える』と、ミーハー気分で飲み会に参加したことを後悔したA子さんは、帰宅しようとタクシーを止めた。しかし乗り込んできた小出に、宿泊先である帝国ホテルへ有無を言わさず連れて行かれた。
 『そこからは本当に最悪でした……。部屋に入った途端に迫ってきて(中略)』」

 6時間以上にわたって「17歳の身体」を弄んだ小出。一晩で5回。そのうち中出し2回とA子さんが赤裸々に語っている。
 事務所と小出は、お詫びと無期限の俳優活動停止を発表した。彼女はインスタグラムに、自分が『フライデー』に売り込んだのではない、謝礼も受け取っていないと書き込んでいる。
 たとえ、彼女が売り込んだのだとしても、小出には非難する資格はないが。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 大手銀行の中でも一強といわれている三菱東京UFJ銀行の頭取がわずか1年で退任したことが話題を呼んでいる。

 小山田隆、61歳。5月23日の深夜、日経新聞電子版が「三菱東京UFJ銀行頭取退任」との一報を打った。

 メガバンクの頭取は通常4年は務めるから、異例といえる退任で、いろいろな憶測が飛んでいる。

 『週刊現代』(6/10号、以下『現代』)は、退任の内幕をこう報じている。

 5月18日に小山田が全国銀行協会会長として臨んだ記者会見で、小山田の「変調」は誰の目にも明らかだったという。

 「目が虚ろになっていて、見るからに辛そうでした。当時の睡眠時間はおそらく3~4時間。疲れ果てた顔をしていて、周囲は心配していました。ただ、実際の会見が始まると、最後の力を振り絞るかのように笑顔を見せて自分の言葉で話していた」(三菱東京UFJ銀行関係者)

 小山田は仕事に対して非常にストイックで、会見ではすべての質問に百点満点の回答をしないと気が済まないタイプだそうで、そのために事前に想定問答集を作り、それを暗記していたという。

 「でも、もう限界でした。実際には4月下旬に病院で診察してもらい、『長期休養が必要』との所見が出ていたようです。決算発表と全銀協会長としての会見をやり終えたところで辞めさせてもらいたいと言った。本当に真面目な人ですから、自分で自分を追い詰めてしまったのでしょう。現在は入院しているそうですが、病状が本当に心配です」(同)

 三菱銀行グループは純利益1兆円超えを果たし、ライバルである三井住友銀行を突き放した。

 そうした好成績の中で新頭取に就いた小山田が、なぜ追い詰められてしまったのか。

 その心配は、頭取就任時に囁かれていたと『ビジネスジャーナル』(2016年2月24日)がこう報じていた。

 「東京大学経済学部を卒業後、三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。銀行の中枢である企画畑を歩き、旧UFJグループとの経営統合に手腕を振るった。
 国内では親密行の十六銀行と岐阜銀行の合併を実現させ、海外事業では平野(信行前頭取=筆者注)氏が主導した米モルガン・スタンレーとの資本提携を下支えした。2015年6月に持株会社の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が委員会設置会社に移行後は、新設されたCOO(最高執行責任者)に就任。禅譲への布石は打たれていた。(中略)

 小山田氏は米ニューヨーク支店への在籍はあるが、国際部門の重責を担った経験は皆無。会見では、国内業務が少子高齢化や企業のグローバル化で縮小均衡が必至ななか、海外事業を牽引するには経験が不足しているのではとの質問が少なくなかった。本人も自覚しているのか、『消え入るような声で回答する姿は見るに堪えなかった』(全国紙経済部記者)という。
 実際、就任発表会見前には週刊誌に『英会話を猛勉強している』と書かれる始末。競合の三井住友銀行の国部毅(くにべ・たけし)頭取、みずほ銀行の林信秀頭取が国際畑出身で英語が堪能なのとは対照的な一面を晒された格好になった。(中略)

 国内業務経験しかない『内弁慶』との次期頭取への揶揄は、競合他行からのやっかみといった部分もある。同行の行く末は、1行だけにとどまらないインパクトを持つだけに、小山田新頭取へのまなざしも熱く、厳しい」

 大手銀行は入行当初からエリートと非エリートに峻別されるという。小山田は若いころから「プリンス」といわれ、企画部門や大企業担当の営業部門などを歴任し、旧東京銀行や旧UFJ銀行との合併の際には、事務方の責任者として統合をまとめ上げた実績もある。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の平野信行社長の信頼も厚く、来春には平野の後継としてMUFGの社長に昇任すると目されていたそうだ。

 前途洋々の小山田に何があったのだろう。『現代』でMUFGの有力OBはこう話している。

 「組織が人を潰すんですよ。MUFGにはいまだに『三菱銀行の亡霊』が跋扈(ばっこ)している。現役が何をするにしても、元頭取や元役員が集まる『相談役会』に諮(はか)らなければいけない。そこで否定されたら、現場が決めた方針でも変更を余儀なくされる」

 このOBがあげた例は、来年春に三菱東京UFJ銀行から「東京銀行」の名前を消す案件だった。

 ちなみに三菱東京UFJ銀行は英語表記では「The Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ, Ltd.」となる。東京銀行は外国為替専門銀行であったため、海外では比較的名前が知られていたので、この表記になったという。

 名前を変えるプロジェクトは2、3年前から始まっていた。経営トップ数名で銀行名を「MUFG銀行」にすることに決めた。東京銀行出身者からは文句が出たが、三菱でもUFJでもないならと納得させた。

 だが、平野社長が元役員に報告に行ったら、「三菱の名前をなくすなんてとんでもない」と激怒したそうである。

 そこで、行内で一番力の弱い東京銀行を外して「三菱UFJ銀行」になったという。

 小山田はそうした三菱銀行のOBたちが現役の仕事を邪魔するため、その犠牲になったと金融庁関係者も言っている。

 「例年6月の株主総会に先立って、MUFGでは『旧三菱役員招待会』なるものが丸の内本店の食堂を占拠して開催されます。
 MUFGの常務経験者以上で、旧三菱銀行出身者が集まる。最年長の出席者は90代だそうです。この場で現役の社長や頭取が『先輩の皆様、三菱はこうやって頑張っています』と報告するわけです。MUFG全体の話なのに、三菱銀行出身者に話を聞き、時に経営に介入される。こんなバカな話はありませんよ」

 OBたちは現役トップたちを「くん」付けで呼ぶそうだし、三菱UFJ銀行の頭取やMUFGの経営陣たちは、OBたちに根回ししないと何も決められないという。

 小山田はOBたちの重圧を一身に受け、身動きできなくなっていた。また金融庁からは、OBたちが経営に介入する旧態依然としたガバナンスの改革を命じられていて、板挟みになっていたようだ。

 社外取締役の中には平野に相談役会の廃止を提案した者もいるというが、平野でも小山田でも、抵抗されるのは目に見えているだけに、このことには触れなかった。

 さらに、平野MUFG社長の任期があと1年になって、自分のレガシー「遺産」として残そうと、三菱UFJ信託銀行の法人融資事業を三菱東京UFJ銀行に統合する再編案を進めていたが、これも小山田を苦しめたのではないかといわれる。

 これは拙速にできる事業ではなく、いまだ何も決まっていないという。

 「しかも三菱UFJ信託銀行の側にも有力OBがたくさんいて、彼らから『三菱東京UFJ銀行に俺たちの事業をそこまで渡すわけにはいかない』という圧力が現役にかかっているはずです。その調整は本当に大変だったはずです」(三菱東京UFJ銀行幹部)

 それに銀行の頭取は激務で、毎日お客と飲まなくてはいけないし、週末はゴルフで本を読む時間もないそうだ。さらにOBへの根回しや再就職先の世話までやらなくてはいけない。面白い仕事ではないと前出の有力OBは語っている。

 後任頭取には三毛兼承(みけ・かねつぐ)副頭取(60)の昇格が5月24日に決まった。だが社内では、三毛は三菱UFJモルガン・スタンレー証券の副社長になることが内定していたそうだ。

 「つまり、三毛さんはそのレベルの人材であって、銀行頭取の器ではありません。本人も銀行の経営者としての訓練をしていませんから。キャリアを見ればわかりますが、国際畑が長く、国内の企画部長や人事部長をやっていないため、経営の勉強が十分ではありません」(三菱東京UFJ銀行中堅幹部)

 「小山田さんの退任で、結果的に『天皇』になってしまった平野社長が倒れでもしたら、代わりはおらず経営が行き詰まってしまう。MUFGにはトップになるべき人材が明らかに少ないんです。それはつまり、経営陣を決めるはずの指名・ガバナンス委員会がまったく仕事をしていないということでもあります」(MUFG関係者)

 今やトヨタに次ぐ純利益1兆円を超え、行員数は3万5000人を抱えるメガバンクに起きた頭取早期退任騒動は、『現代』が書いているように「三菱UFJフィナンシャル・グループが抱える構造的な問題」を浮き彫りにしたようである。

 三菱は土佐藩の事業として立ち上がった。三菱のシンボルマークであるスリーダイヤを三菱グループの人間はとても大切にする。

 実は、私の女房の親戚は三菱グループで固められている。さほど偉くなった人間はいないが、女房の父親は三菱電機の子会社の社長だった。女房の叔父は後に三菱グループに入るパイオニアの社長。女房は大学を出て東京海上(当時)に入り、妹は三菱商事。そこで結婚した男は商事の常務まで行った。

 私は講談社という三菱とは全く関係ない外様だし、愛社精神などまったくないから、女房の親や親類が集まると三菱の噂でもちきりなのをよそ事として聞いていたが、そうした繋がりは結束力を強めるのだろうが、今回の小山田ケースに見られるように、上司や先輩OBなどからの重圧もすごいものがあるのだろう。

 小説『半沢直樹』シリーズを書いた池井戸潤(いけいど・じゅん)は三菱銀行の出身である。彼の描く銀行ものには、池井戸が見たり聞いたりした「経験」が生かされているのだろう。今度は銀行の権力争いをテーマに小説を書いてくれないだろうか。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 中谷元前防衛大臣がうまいことを言った。もりとかけ問題は政府が答えを出すべきだと。もりとは森友学園、かけは加計学園。一杯のかけそばが安倍官邸を揺るがしている。ミャンマーへ行くときも、加計学園の理事長を政府専用機に同乗させたというのだから、あきれ果てる。運賃をもらったからいいという話ではない。私がカネを払うから乗せてくれといったら、安倍首相は乗せてくれるのか。安倍政権の断末魔が間違いなく近づいてきた。

第1位 「気をつけろ!ジョージ・ソロスの『アメリカ売り』が始まった」(『週刊現代』6/17号)
第2位 「いま社内で何が起きているのか 東芝の最高幹部がすべて話す」(『週刊現代』6/17号)
第3位 「検察審査会が動き出す『安倍総理』ベッタリ記者の『準強姦』」(『週刊新潮』6/8号)/「安倍首相ベッタリのジャーナリスト『素性』と『私生活』」(『週刊現代』6/17号)

 第3位。山口敬之(のりゆき)という男を覚えているだろうか。元TBSワシントン支局長だったが、この男が、知り合いの女性ジャーナリストを誘い出し、酒(彼女は薬を盛られたと言っている)を飲んだ。だが、彼女は急に意識を失って、気がついたときはホテルのベッドで全裸にされ、レイプされたと告訴した。「準強姦容疑」で山口に逮捕状が出て、逮捕寸前までいった。  だが、官邸に近い警視庁刑事部長がそれを握りつぶしたと『新潮』が3週間前の5/18号で報じた。  この山口も安倍ベッタリ記者の典型で、テレビに出て安倍擁護発言を繰り返していた。
 この不起訴処分を諒とせず、5月29日、彼女は名前と顔を出して、検察審査会に審査を申し立てたことを公表する会見を開いたのである。
 詩織さん、28歳。『新潮』のグラビアに「決意の告発」と題して彼女の写真が載っている。ハーフっぽい美人である。こんな美人が、顔をさらしてレイプされたと訴えるのだから、よほどの覚悟だろうと思わせる。
 検察審査会は選挙権のある市民11人が選ばれ、捜査記録を調べたり検察官から意見を聴き取ったり、申立人や証人の尋問などをする。
 8人以上が「起訴相当」と賛成すれば起訴される。そうなれば検察官は再捜査し、判断が覆らなければ審査会で再検討し、再び8人以上が「起訴すべし」となれば、容疑者は強制起訴される。
 焦点は、菅官房長官と親しい中村格(いたる)警視庁刑事部長(当時)が、捜査の中止を命じたことが、「捜査の指揮として当然」(中村)だったのかどうかにある。
 『現代』は山口がザ・キャピトルホテル東急の上にある14戸しかない超高級賃貸マンションを事務所として借りていたと報じている。
 2LDKで月額約200万円だという。元TBSの記者が借りられる金額ではないだろう。実家が裕福でないとしたら、その金はどこから出ているのか。このへんからも安倍官邸の影が見え隠れしているのである。

 第2位。東芝が上場廃止寸前で喘いでいる。それを見ている盟友であったはずの米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)のCEOスティーブ・ミリガンが、東芝が売り出している半導体事業を手中に収めようと画策していると、『現代』が報じている。
 このミリガン、相当なやり手らしい。東芝の最高幹部の一人が、ミリガン側の要求を受け入れられない内情をこう話している。

 「(提示額が)安すぎる。それにWDが主張するようにマジョリティを握った(注・東芝メモリのマネジメントを握ること)場合、独占禁止法に抵触する恐れがあり、その判断のために事態が長期化しかねない」

 東芝はこのままいけば半導体事業売却で手に入ると目論んでいた2兆円が入らず、上場廃止になる。
 だが、メインバンクにしても経済産業省にしても、そうなれば株主の意向に左右されずに東芝の構造改革が進められると考えているようだ。もっとも痛みを強いられるのが一般株主だが、致し方あるまい。

 第1位は、あのジョージ・ソロス(86)がアメリカという超大巨艦が傾くと考えて、アメリカ売りを始めたという話である。
 ソロスはイギリス政府を相手に投資戦を挑み打ち負かした。97年にはタイ・バーツに売りを仕掛け、これが引き金になりアジア通貨危機が起こった。
 そのソロスが率いるソロス・ファンド・マネジメントが5月に米証券取引委員会に提出した報告書に、「同ファンドがアメリカの代表的な株価指数であるS&P500に連動して価格が動くETF(上場投資信託)の『売りポジション』を増やしていることがわかりました」(在米ファンドマネージャー)
 アメリカ株が暴落すればするほど儲かる「売る権利」を大量に買い増しし、投資額は約3億ドル(330億円)だという。
 また、小型株でも「売る権利」を約4億6000万ドル(約500億円)買い増ししたというのだ。
 アメリカは一見景気がよさそうに見え、失業率も低く、株も値上がりを続けている。しかし、「アメリカの家計の『借金漬け』が危機的な水準に達しています。家計の借金残高推移を見ると、今年3月末時点にはリーマン・ショック前の水準を超えているのです」(RPテック・倉都康行代表)
 またFXプライムby GMOでチーフストラテジストをつとめる高野やすのり氏は、失業率が4%台ということは、完全雇用状態だが、それは労働者が移動しなくなっている証拠で、経済の先行きに希望が持てず、今の仕事から離れられなくなっている証左だと言う。
 さらに6月にFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに踏み切ると見られている。借金して暮らしている人にとっては金利返済額が膨れ上がり、生活苦はさらにひどくなる。
 その上、日本総研副理事長の湯元健治氏の分析によると、トランプのスキャンダルが明らかになれば、株価は暴落し、その余波は日本にも飛び火し、円高・株安になることは必定。
 その危機は6月にもやってくるといわれている。トランプの断末魔が株の暴落を招く。ありそうな話である。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦