山尾志桜里(43)と会ったのは8月4日。ビジネス情報誌『エルネオス』の対談だった。四ツ谷駅にほど近い喫茶店の2階。

 少し遅れてきた山尾は、息を切らしながら「すいません」と一人で入ってきた。

 少し前に蓮舫民進党代表が辞任を発表していた。2回生ながら、民進党の政調会長に抜擢され、匿名ブログ「保育園落ちた、日本死ね」を国会で取り上げ、待機児童問題を前に進めるなど、山尾は存在感を増していた

 私は政治家が嫌いだ。連載対談で会った政治家は数人しかいない。それも中身のある話を聞けたことは一度もない。

 だが、山尾と自由党の森ゆうこには「会ってみたい」と思わせる何かがあった。質問の内容はもちろんだが、安倍首相のウソを追い詰める気迫が他の議員とは違った。

 2人の女性議員が安倍首相を追い詰め、稲田朋美、豊田真由子、今井絵理子のおバカ女たちが自ら身体を張って安倍政権を瓦解させていったのである。安倍の提唱する「女性が活躍する社会」が皮肉な形で実現したのだ。

 山尾は子ども時代、ミュージカル『アニー』の主役になり脚光を浴びた。その後、東大法学部に入り司法試験を受けている。

 対談で山尾は「司法試験は6度落ちている。これは自民党の谷垣禎一(さだかず)と同じです」と言っている。その時は焦ったが、「その経験から、粘り強くというか、しつこいタイプになったので、12年の選挙で落選して浪人してもものともせず、ここまで来ております(笑)」(山尾)

 検察官を選んだ理由を「クライアントから依頼されるのではなく、フェアな立場でものをいうのがいい」と思ったからだそうである。

 その後、思うところあって検察官を辞し、2009年、小沢ガールズの一人として民主党から出馬し、当選した。

 検察官の経験が国会質問で生きているかと問うと、「一問目の質問には、向こうも否認するから、二問目が勝負だと質問を組み立てていく」ところが重なるかもしれないと言った。

 民進党の政策がわかりにくい、自民との違いを前面に出すべきだと言うと、民主党政権時代の失敗を踏まえて、今度は必ずやると、政策の一端を熱く話してくれた。

 「具体的に言えば、教育の無償化って民主党時代から言ってますが、保育園から大学まで、基本的には社会が面倒を見ようという政策です。私はそれをやるべきだと思っているんです。そうであれば、最初に『増税させてください』じゃなくて、二年間でもいいから政策を先行させ実現して実感してもらう。
 それでよかったねとなったら、三年目からは負担をお願いする。それぐらい国民の理解を大事にする知恵みたいなものを、政治というのは持たなきゃいけないなと思う」

 長島昭久や細野豪志(ごうし)といった選挙に強い連中が離党しているが、どう思うかと聞いてみた。彼女は決然とこう言った。

 「どこかと組まないとやっていけないような弱い政党や弱い政治家は、どことも組んでもらえないですよ

 当時、前原誠司と枝野幸男が代表選を争い、前原優勢だと言われていた。彼女は前原支持である。

 私は、前原のような古い体質の人間が党の顔になっても支持は広がらない。あなたのような若い人が代表になる時代が早く来てほしいと、本気でエールを送った

 素顔は笑顔が素敵な綺麗なおばちゃんという感じだった。雑誌にはニヤけた私と山尾のツーショットが載っている。

 それから約一月後。前原が代表に選ばれ、山尾が幹事長に内定という報道に、これで民進党が変わると拍手した。

 だが、一転、代表代行に替わり、それも消えてしまった。

 党内から、山尾では党をまとめきれない、力不足だという批判があると報じられたが、理由はそうではなかった。

 9月7日に発売される『週刊文春』(9/14号、以下『文春』)が山尾の不倫を報じているという情報が流れたからだった。

 山尾志桜里がW不倫? バカヤロー! 思わずそう叫んだ。

 9月末から始まる臨時国会で、森ゆうこと並んでパワーアップした山尾が、加計学園問題で安倍首相を追い詰めることを期待していただけに、残念というしかない。

 『文春』によれば、不倫相手は倉持不倫太郎ではない、麟太郎弁護士で、山尾より9歳年下の34歳。

 皮肉なことに「彼の得意分野は企業コンサルタントや離婚・男女問題」(弁護士仲間)。憲法問題についても詳しいそうで、「安倍政権が目指す憲法改正や安保法案に対して批判的な立場を鮮明にしている」(永田町関係者)

 安保問題や皇室問題で議論しているうちに山尾と意気投合したようだ。山尾にはIT実業家の夫と長男がいて、倉持にも妻子がいる。

 9月2日、前原から山尾に「幹事長就任」が内示された日、2人は午後8時ごろ、品川駅近くの高級ホテルに現れたという。

 山尾が先に来てフロントでカードキーを受け取り、足早にエレベーターホールに向かう。

 約20分後、倉持が現れる。赤ワインとビールを持って、フロントを経由せずに直接客室へ。36階のダブルルームで、そこからは東京の夜景が一望できるという。

 その部屋にはベッドが一つしかないと『文春』は書いている。『文春』は後でその部屋に入って確認したのかもしれない。

 2人がホテルをチェックアウトしたのは翌日早朝だったそうだ。その前の8月31日、ホテルニューオータニで開かれた前原陣営の決起集会に顔を出した山尾は、すぐに消え、恵比寿のイタリアンレストランで倉持とグラスを重ねていたという。

 その後、時間差を置いて、倉持が自宅とは別に借りているマンションに入り、山尾が姿を見せたのは翌日の午前2時半だったという。

 「本誌が確認しただけでも、代表選を挟んで、二人は週に四回逢瀬を重ねている」(『文春』)

 『文春』は山尾を直撃している。倉持弁護士とはどのような関係か? 「といわれましても……」。不倫関係にあるんじゃないですか? 「ないですけど」「(取材は)事務所のほうにお願いいたします」、そう言って足早にその場を去ったという。

 倉持のほうは、別宅のマンションに山尾氏は来たか? 「ええっとーー、ないですね。たぶん。記憶にないですね」としどろもどろ。

 『文春』が発売された夜、山尾が民進党を離党すると発表した。桜のように散り際だけは潔くということだろうか。

 山尾は声明文を一方的に読み上げるだけで、記者の質問には一言も答えなかった

 「政策立案や質問作成などの打ち合わせと具体的な作業のため、倉持弁護士とは頻繁にコミュニケーションをとってまいりましたし、こうした打ち合わせや作業は、2人の場合もありましたし、それ以上の複数人である場合もありました。
 打ち合わせ場所については双方の事務所、また会食の席上、こういった場合が相当多数回ありますが、同弁護士のご自宅の場合もありました。また、本件記事記載のホテルについては、私1人で宿泊いたしました。
 倉持弁護士と男女の関係はありません。しかし、誤解を生じさせるような行動で、さまざまな方々にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しお詫びを申し上げます」(山尾)

 涙を必死でこらえる姿が、彼女の激しい後悔と無念さを表していた。

 記者の質問に答えなかったのは「一問目は否認する」という検察官としての常道を踏まえたのかもしれない。しかし、記者から飛んでくるであろう「いい大人がホテルに泊まって男女関係がなかったとはどういうことか」という二問目の質問には答えられない。そう考えたのではないか。

 会見を見ながら「バカな女だ」そう独りごちた。不倫したことを詰(なじ)ったのではない。人間は時としてめしいることがある。政治家が不倫をしようと、私には石を投げる資格などない。

 だが、小なりといえども野党第一党の幹事長に内定していた人間が、自己コントロールができず、欲望のままに男とホテルにしけこむというのは、リーダーとしての資格に著しく欠けると言わざるを得ない。

 前原もつくづくツキのない男である。最初の代表の時は「偽メール事件」の責任を取って辞任した。

 捲土重来(けんどちょうらい)を期して再度代表になったが、早々と党の顔を不倫というスキャンダルで失ってしまった。

 山尾のゲス不倫で民進党は死んだ! そうなればほくそ笑むのは安倍首相である。

 10月のトリプル選挙まで議員辞職せず、その後辞職するのだろうか。自民党の中でも「山尾がいなくなるのは惜しい」という声が出ているようだが、私は同情しない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 『ポスト』がこのところ熱心に取り組んでいるのが、75歳まで年金受け取りを延長して、高齢者を働かせ、搾取しようと画策している政府と役人たちの「謀略」批判である。一部の大企業では65歳まで働けるようにはなってきたが、給与は大幅に下げられ、新入社員でもできる部署へ追いやられる。それが74歳まで続くとしたら、実質的な高齢者棄民政策ではないか。今週の『ポスト』は、民間はそうしておきながら公務員には手厚く遇する「差別政策」を成立させようとしているというのである。「日本死ね!」だな。

第1位 「『老後』も『再雇用』も役人はこんなに優遇される」(『週刊ポスト』9/22号)
第2位 「奇跡の腸内物質『スペルミジン』で長生きしても認知症にならない」(『週刊現代』9/23・30号)
第3位 「斉藤由貴と不倫医師『もっと破廉恥』な写真」(『FLASH』9/26号)

 第3位。『FLASH』という雑誌は、ときどきとんでもないスクープを飛ばす。不倫が報じられた斉藤由貴と医師との「自撮りキス写真」を先週スクープして、斉藤に、「不倫していました」と認めさせたが、今週も斉藤の家に上がり込み、女性もの(斉藤由貴のでは?)のパンツをかぶっている医師の写真が掲載された。
 いくらなんでも、ここまでやるかという破廉恥写真である。
 これも2人のどちらかがスマホで撮った写真であろう。その写真が流出したのである。
 斉藤は、こんなプライバシーを侵害する写真が出るのは許せないと、警察に相談しているというが、恥の上塗りになるのではないか。
 不法に流出したのではないとすると、斉藤の夫か、不倫相手の妻がスマホから盗み出し、流出させたのか。
 モルモン教は離婚を禁止しているから、斉藤は離婚しないそうだが、医師のほうはどうなのか。
 大体こんな写真を撮りあうのが正気の沙汰ではない。斉藤には仕事やCMが回ってこないそうだ。これこそ自業自得であろう。

 第2位。『現代』の健康記事。納豆が体にいいのはよくいわれる。納豆健康法の類はあふれているから、今さらだと思うが、老化を遅らせる「スペルミジン」という物質が含まれ、実験用のマウスだが、スペルミジンを投与したら、約25%も寿命が延びることがわかったそうである。
 アメリカ・テキサス州のテキサスA&M大学のチームの一員、ルユアン・リュウ博士が、実験結果を見てチームのメンバーは歓声を上げたという。
 さらに認知症を防ぐ効果まであるそうだ。また、昨年、パリ第5大学医学部では、イタリアのブルーニコで約800人を対象に、どんな食品をよく食べているかを調べたら、スペルミジンの摂取量が多いほど、心不全などの心血管系の疾患リスクが低いということが明らかになったという。
 特に男性でその傾向が顕著だったそうだ。
 そうして結論は「納豆はすごい」ということなのだ。納豆でもひきわり納豆にはスペルミジンが多く含まれているそうだ。
 納豆か味噌汁をとり、それに加えて肉を食べると、さらにいいというのである。
 今夜はひきわり納豆とアメリカ産のステーキにでもするか。

 第1位。『ポスト』の公務員批判記事。役人は現役時代は給料が安く、その代わり、天下りしてその穴埋めをするのだというのは、昔話になったようだ。
 『ポスト』によれば、民間企業の正社員の平均年収が400万円台なのに、公務員の平均年収は700万円台なのだ。
 さらに60歳定年時の平均退職金は、大卒総合職が2374万円、地方公務員、ノンキャリアの公務員の退職金は平均2315万円、国家公務員は平均2538万円になる。
 このあたりはさほど変わらないと思うかもしれないが、裏では、とんでもないことを企んでいるというのである。
 公務員の定年を65歳にしようというのだ。民間は定年延長といっても会社のお情けで置いてもらうだけで、給料は下がるし、仕事も雑用がほとんどである。
 だが公務員は、給与は下がらず仕事もそのままで、年金が65歳支給開始になる25年に「65歳完全定年制」を実施するスケジュールを立てているというのである。
 様々な優遇をしてもらっているのに、奴らは定年を伸ばし、民間の奴らには75歳まで働け、税金を納めろと鞭でひっぱたいて牛馬のごとくこき使う。
 これでは中国のほうが生きやすいと思ってしまう。こんな国いつでも捨ててやる。そう思わざるを得ない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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