コトバJapan! 元木昌彦 の 記事一覧

元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。


 『週刊新潮』(1/12号、以下『新潮』)の巻頭特集。一つ目は20日に大統領に就任するトランプが、世界を揺るがす暴れん坊になるのか、現実的な対応をとって世界各国は胸をなで下ろすことになるのかという「トランプ占い」である。

 とりわけ選挙中から毒舌を吐いてきた米中関係が注目される。12月初めに台湾の蔡(さい)総統と電話会談したことで、「一つの中国」に固執する習近平は怒り心頭だからだ。

 だが、京大名誉教授の中西輝政氏は、同じ頃トランプが師と仰いでいるキッシンジャーが習近平と会っていることに注目すべきだという。

 中西氏は、ニクソンもレーガンも大統領に就任したら対中宥和路線に転換している。共和党政権で繰り返されてきたことだから、安倍首相が、「『米国の後ろ盾があるのだから』と、対中強硬の前のめり姿勢を取ってしまうと、トランプに梯子を外され、日本が孤立する恐れがある」と警告する。

 『新潮』は「トランプ氏は、やはり日本にとって『ジョーカー』となりかねないようである」と結んでいるが、その予兆は早くも出てきている。

 トランプは国外に工場を建設しようとしている自動車メーカーなどを、ツイッターで批判してきたが、トヨタにもアメリカ国内に工場を建てろとツイートした。

 まだ大統領でもない人間の戯言になぜ過敏に反応するのか、私には理解できないが、早速、北米国際自動車ショーに出席していた豊田章男社長は、米国に今後5年間で100億ドル(約1兆1700億円)を投資するという計画を明らかにしたのである。

 こんな日本のトップ企業の弱腰を見て、トランプが大統領に就任したら、さらなる無理難題を日本に吹っかけてくるのは間違いない。

 韓国には強気の安倍首相も、アメリカの言うことには何一つ逆らえない。トランプは日本が植民地であることをはっきり見える化し、沖縄だけではなく国民全員がアメリカの奴隷だと自覚させられる年になると、私は思う。

 戦後何度目かの「敗戦」の年になる。そうした境遇に甘んじてこのまま生きるのか、独立への闘いを始めるのか、重大な岐路に立たされている日本人の正念場が、今年から始まるのだ。

 二つ目は小池都知事と今夏の都議選について。『新潮』によると、小池が今夏の都議選に新党を立ち上げるとぶち上げたが、20議席ぐらい獲得する可能性があり、小池に擦り寄る公明党、民進党、小池シンパの党を加えると「過半数の64議席を超える可能性は非常に高い」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)そうだ。

 だがそうなると、大風呂敷を広げることはできても畳むことができない小池に、移転を延ばされた築地の仲卸業者がゴネて、豊洲市場の使用料の値下げを要求することもあり得るという。

 これまでは都議会自民党が間に入っていたが、これからはそうはいかない。結果、補助金という名の都民の税金がムダに投入されることになりかねないというのだ。

 たしかに「口だけ番長」の小池に、都民の目も厳しくなってきてはいる。だが、今のような自民党のボスたちが勝手気ままなことをやり、都政を蹂躙してきたことに対する都民の怒りは大きいから、このままいけば自民党は惨敗するに違いない。

 小池の真価は、その後どうするかで決まるはずである。

 最近の小池都知事の言動を見ていて気になることがある。どこのインタビューでも「都政の改革」と言うが、具体的な政策やビジョンが見えてこないのである。

 「都民ファースト」などという浮ついた中身のないキャッチフレーズづくりはうまいが、メディアが批判力を失っていることをいいことに、内田茂という都議会のドンさえ追い落とせば、すべてよくなるなどという幻想を振りまくだけでは、都民の真の信頼は得られない

 彼女の賞味期限切れはすぐそこまで来ている。

 三つ目は、韓国との「慰安婦像」をめぐる軋みが広がるというのだ。すでに、釜山の日本総領事館前に据えられた慰安婦像をめぐって日韓が反発し合い、安倍首相は駐韓国大使を一時帰国させた。

 この問題は、安倍と朴大統領との間で合意ができ、日本側は10億円を支払ったあげくの果てに、「新たな像まで設置されたのだから、日本は『振り込め詐欺』にあったようなもの。韓国の本音は和解より対立であることがはっきりしたのである」(『新潮』)という日本側の言い分もわかる。

 だが、当事者であった朴が大統領の職務から外され混乱の最中にある韓国だけに、日本としては「大人の対応」をとり、しばらく様子を見るぐらいの度量があっていいと、私は思うのだが。

 四番目は、『週刊現代』が「株価が2万5000円超え」、『週刊ポスト』が「4万円超え」と浮かれているが、この世の中そんな甘いもんじゃないと、冷水を浴びせている。

 トランプの口先だけの莫大な公共事業や減税政策が、そのまま実行に移される可能性は極めて低い。

 政策が実行に移されない、またはトーンダウンすれば、一気に円高、株安に触れることは間違いない。

 その上、今年は、オランダ総選挙、フランス大統領選、ドイツの連邦議会選挙などが目白押しで、その結果次第では右派勢力が勝利し、イギリスに続いてEU離脱ということにもなりかねない。

 さらに気懸かりなのは、原油価格が高騰してきていることである。賃金も上がっていないのに円安と資源高が続けば、実質所得は減り、消費は冷え込む。

 経済でも、日本にいい材料はほとんどないのが実情である。週刊誌の無責任な煽りに乗せられて、なけなしの虎の子を失う愚だけは避けたほうがいい。

 私は、トランプ&経済問題は、今年最大の課題ではあるが、最悪のシナリオという意味で外してはいけないのが、首都圏大地震と国内のテロ事件だと思う。

 『週刊ポスト』(1/13・20号)は、「富士山に“異常変動”が! MEGA地震予測2017年最新版 いよいよ首都圏に大地震襲来」という特集を組んでいる。

 これは村井俊治東大名誉教授が全国1300か所に設置されている電子基準点のGPSデータを使って地震を予測するやり方だが、的中率が高いといわれている。

 村井名誉教授は今回、「6年前の東日本大震災以降、日本列島では地表の大変動が起きている。昨年の熊本地震以降、その変動幅は拡大し、今も広がっています。そのため、今年は昨年以上に大きな地震が起こる可能性がある」と不気味な予測をしている。

 なかでも昨年末に4センチの「異常変動」が観測された富士山だが、この変動は無視できないという。

 したがって、首都圏を含む南関東を全国で唯一、最高警戒レベルの5、地震の可能性が極めて高い地域に指定して、警告を発しているそうである。

 95年の1月に発売した『週刊現代』で、関西地方に大地震の可能性という予測記事を掲載した。

 阪神淡路大震災が起きたのは発売の翌朝だった。首都圏をおそう大地震は間違いなくいつ起こってもおかしくないのに、国も都もわれわれ住民も何も手を打っていない。

 そしてテロ事件である。イスラムの過激派だけではなく、日本でテロを起こそうと考えている人間は、おそらくそこら中にいるはずである。

 日本ほどテロに無防備な国はないだろう。貧困や非正規雇用問題で鬱憤がたまっている若者や、国の冷たい福祉政策に怨みを抱く年寄りが「暴発」することもあり得る。

 一見、平和で穏やかに見えるこの国も、一枚皮を剥ぎ取れば「生き地獄」が見える。そうした現実があることを、いやというほど知らされる年になる。これが私の最悪のシナリオである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 年の始めから出版界に衝撃が走った。総合出版社では最大手の講談社の編集者が、殺人容疑で逮捕されてしまったのである。
 数々のベストセラーマンガを世に送り出してきた名編集者である。『進撃の巨人』は累計6000万部という信じられない発行部数を積み上げてきた。
 その人間のことは知らないが、同じ屋根の下で働いていた後輩である。どうしてそんなことを、と思わざるを得ない。暗い出版界が一層暗くなってしまうことを恐れる。

第1位 「『進撃の巨人』元編集長の妻が怪死」(『週刊文春』1/19号)
第2位 「天皇陛下『安倍総理への不満』」(『週刊現代』1/14・21号)
第3位 「生長の家 谷口雅宣総裁インタビュー」(『AERA』1/16号)

 第3位『AERA』は久々の登場だが、安倍首相の支持団体として名高い「日本会議」について、その中心メンバーの多くの出身母体である「生長の家」の谷口雅宣(まさのぶ)総裁(65)がインタビューに答えている
 「日本会議」の中枢メンバーは「生長の家」の谷口雅春初代総裁の熱烈な信者だといわれている。
 だが雅宣総裁はこう断言している。

 「戦後の冷戦下に雅春先生が唱えられたことを、世界構造が変わった現代で実践しても、何の実効性もありません」

 元メンバーは「生長の家」のなかに「生長の家政治連合」をつくり、右派学生たちを集めて全共闘と対抗したり、政治活動をしていたが、2代目の谷口清超(せいちょう)総裁が、宗教運動が政治運動によって阻害されているとして、これを活動停止にした。
 現在の「生長の家」は、原発を推進し経済発展至上主義の安倍首相の政治姿勢に反対し、「日本会議」の元信者たちに対しても、「時代錯誤的」「狭隘なイデオロギーに陥っている」と断罪し、そのことを声明として発表したのである。
 宗教的な信念と政治を選ばなければならないとき、政治的な現実を選んではいけないという。
 政治家はあくまで政治家の価値判断で生きるため、何度も裏切られたからだというのだ。

 「だから、今の創価学会と政治の距離感をみていると危ういと思います。完全に政治にのみこまれてしまっている。実は声明を発表したら、創価学会の人から感謝されたんですよ(笑)。本当は創価学会もスタンスをきちんと表明すべきだと」

 声明を発表したら、信者の1割ぐらいが離れていったそうだ。

 「信仰とは生き方です。『信仰はあるが、生き方は違う』というのでは、信仰は続きません」

 こうした人間が創価学会にはいない。だが、少しずつ流れが変わってきたのはたしかだろう。

 第2位。1月10日の産経新聞にこんな記事が載った。

 「天皇陛下が在位30年を節目として譲位を希望されていることを受け、政府は、平成31(2019)年1月1日(元日)に皇太子さまの天皇即位に伴う儀式を行い、同日から新元号とする方向で検討に入った。
国民生活への影響を最小限とするには元日の譲位が望ましいと判断した。譲位に伴う関連法案は、有識者会議の報告と衆参両院の論議を踏まえ、5月上旬にも国会に提出する見通し。譲位は『一代限り』として皇室典範改正は最小限にとどめる方向で検討を進める」

 こうしたやり方が、天皇が望んでいる「退位の制度化」や「皇室典範についての議論」とほど遠いことは間違いない。
 『現代』によれば、もともと15年秋の時点で天皇が安倍側に生前退位の意向を伝え、その後、時間をかけて内容を摺り合わせてきたのに、「おことば」を発した直後に生前退位は「憲法違反」などという話が出るのは、ハシゴ外しではないかというのだ。
 そこで、昨年暮れの誕生日会見で「内閣とも相談し」という文言を入れ、そうした話は終わっているはずだ、私の意向を反映させろと釘を刺したのだと見る向きもある。
 なぜ安倍首相が皇室典範の議論をしないのか。それは、反対議員が出てきて党内が混乱するから、面倒くさいのだそうだ。呆れた話である。天皇と安倍の確執はまだまだ続きそうだが、国民の多くは生前退位と皇室典範改正支持であるはずだ。
 安倍首相はそこを見誤っていると思う。

 第1位。私の古巣である講談社で大変な事件が起きた
 1月10日、講談社編集次長の朴鐘顕(パクチョンヒョン)容疑者(41)が妻殺しの容疑で逮捕されてしまったのである。
 事件が起きたのは昨年の8月9日未明。文京区千駄木の自宅で妻の首を締めて窒息死させた疑いが持たれているという。
 『文春』によれば、警察に対して朴容疑者は、「妻は自殺した」と言っていたそうだ。
 だが遺書は残っていなかったし、自殺する動機が見つからない。警視庁捜査一課は、遺体の状況なども容疑者の話と違う点が多かったため、殺人の可能性もあるとみて捜査していたようだ。
 その後、死因が窒息死だと判明して、被害者の首には手で絞められた跡があり、絞殺死体によく見られる舌骨の損傷はなかったが、室内が物色された形跡もなく、誰かが侵入したとも考えにくかったという。
 『文春』によれば、これほど時間が過ぎてしまったのは、彼が大手出版社の社員編集者で、大ヒットマンガを数多く手がけてきた敏腕編集者だからだという。
事の真偽はまだわからないが、彼が社の看板雑誌『週刊少年マガジン』の現役副編集長で、09年に立ち上げた『別冊少年マガジン』創刊の編集長で、そのとき、後に大ベストセラーになる『進撃の巨人』など、数々のヒット作品を手がけてきたため、講談社社内は混乱の極にあるようだ。
 私は彼のことを知らないが、1999年入社だというから、私が『週刊現代』を離れ、インターネット・マガジン『Web現代』を立ち上げた頃である。
 75年、大阪府生まれで、一浪して京大法学部に入り、『文春』によれば、当初、弁護士になろうと思っていたが、父親が経営する喫茶店でマンガに接し、マンガ編集者の道を志し、講談社に入社したそうだ。
 私と一緒に仕事をしたことのある男で、マンガが大好きで東大法学部から講談社に入ってきた編集者がいる。今は某誌の編集長をしているが、彼も優秀な編集者である。
 近年、彼らのような有名大学を出て、マンガ編集者をやりたいという人間が増えてきている。
 一方で『週刊現代』や『フライデー』をやりたいなどという学生はとんといなくなった。
 彼は韓国籍だそうで、韓国の苗字にこだわっていたそうだ。私が入った頃は韓国名や中国名を名乗る社員はいなかったと思うが、それは日本名を名乗っていたからであろう。
 私の記憶では1980年以降からだろう、朴や劉という苗字を堂々と名乗る人たちが入ってきたのは。私は眩しい思いで彼らの名簿を見た覚えがある。
 彼は、入社して社内報に「わたしたわしわたしたわ」という回文のタイトルをつけた文章を寄せているが、これは読んだ記憶がある。
 最初に配属されたのは『週刊少年マガジン』編集部で、以来そこにいて、数々のヒットを飛ばしてきた。
 昨年アニメ映画が大ヒットした『聲(こえ)の形』、累計発行部数2000万部を超える『七つの大罪』、ヤンキーマンガの最高峰『GTO』などにも関わっていたようだが、なかでも『別冊少年マガジン』の編集長として手がけた『進撃の巨人』は、累計発行部数6000万部を超えるというからすごい。
 それも諫山創(いさやま・はじめ)という新人マンガ家を起用し、彼は「絶望を描いてほしい」と伝えたという。
 これ一冊だけでも「役員候補」といわれる由縁はあると思うが、残念ながら講談社という会社は、ベストセラーを出した編集者が出世するところではない。
 『窓ぎわのトットちゃん』を出した女性編集者は、最後は校閲へ行かされたし、乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)の『五体不満足』を手がけた編集者も大出世はしていない。
 百田尚樹(ひゃくた・なおき)の『海賊とよばれた男』を世に出した編集者も局長まで行かずに、先日定年を迎えた。
 マンガ出身の役員はいるが、多くは営業や販売の人間たちで、オーナー会社だからトップにはなれないがナンバー2には、この中から選ばれることが多い。編集上がりをあまり重用しない不思議な会社である。
 朴容疑者は華々しい実績を上げている上に、「後輩のちょっとした悩みも邪険にしませんし、若手編集者の目標です」(講談社関係者)と言われるように、人格的にも優れていたようだ。
 奥さんと知り合ったのは10年以上前で、同期が開いた合コンでだった。
 結婚して2人は社宅に住み2011年には今の一戸建ての家を買ったというから、私生活も順調だったようだ。
 その証拠に、07年に長女が生まれると次々に4人の子宝に恵まれている。彼は次女誕生の後、ツイッターで「僕は結婚してから3回しかエッチしてません!!!」と呟いているそうだが、夫婦仲もよく、声を荒げることもなかったという。
 次女誕生後に、講談社の男性社員としては初めて約2か月の育児休暇を取ったそうだ。
 朝日新聞で連載していたコラム(12年7月18日付)で、こう書いている。

 「なぜ今も昔も、現実でも漫画の中でも、子どもは『お母さん』が好きなのか、分かった気がしました。そりゃそうだ、あんなに大変なんだもん。子どもたちはじっとそれを見ている。じっとお母さんを愛している」

 これほど妻の苦労を思い、子どもたちを愛している男が、なぜ妻殺しで逮捕されてしまったのか、私なりに考えてみたい。
 近隣住民の言葉にある「奥さんは育児ノイローゼ気味ではないか」というキーワードがある。
 私にも3人の子どもがいるが、3人目が生まれたのが40歳の時だったから、彼と同じような年だった。
 その当時は『月刊現代』という雑誌の編集次長(組織的には副編集長→編集次長で、編集長心待ちなどと揶揄されることもあった)。
 幸い2人の両親が近くにいたため、何かあれば助けてくれるのをよいことに、毎晩午前様どころか、2時、3時に帰り、4、5時間寝て家を飛び出していった。
 週に1回、子どもたちの顔を見ればいいほうだった。今でもカミさんに愚痴られるが、子どもたちの小学校の運動会が毎年5月末の日曜日に行なわれていた。
 その日は、さすがに見に行ったが、2時頃になると「行くぞ」と言って東京競馬場に駆けつけ、ダービーにありったけのカネをつぎ込んだ。
 子どもたちが一番可愛い頃、父親が遊び相手にならなくてはいけないときに、仕事と称して酒を飲み、博打にうつつを抜かしていた。
 3人の子どもを抱えて辛い思いをしているカミさんのことなど、思ったこともなかった、ひどい亭主であり父親であった。
 あるとき、夜中胸苦しくて目が覚めた。布団の横に立ち、包丁を手に私を睨み付けているカミさんの鬼気迫る表情は今でも忘れられない。
 子育てに疲れ、家庭を顧みない私に対しての「怨み」が積もり積もったのであろう。
 あの時、何が起きても不思議ではなかったと思う。

 マンガ編集者はもっと大変である。マンガ家は絵を描く才能はあるが、ストーリーを作れない作家が多い。
 それに若い人が多いから、担当編集者は、ストーリーを一緒に考え、絵コンテのアイデアを出し、できるまでマンガ家のところに寝泊まりすることもしょっちゅうである。
 女性マンガ家と編集者が結婚するケースがあるのは、こうした密な時間を共有するからである。
 妻の実家は北関東で朴容疑者は大阪で親にも頼れないだろうから、4人の子どもを抱えた奥さんの苦労はいかばかりだったろう。
 彼も懸命に支えたのだろう。家も会社から比較的近いから、子どもの幼稚園の送り迎えなどもしていたようだ。
 だが30代の終わりから40代初め、編集長になる日も近い彼の多忙さは想像に難くない
 育児に疲れ、日に日に消耗していく妻を見ながら、彼にも焦りがあったのではないか。
 そんなとき、ちょっとした言い争いから悲劇が生まれた。
 これは私の経験から想像してみた妄想である。真相はまったく違うところにあるのかもしれない。
 この事件は各テレビ局のニュースもトップで報じていた。ワイドショー然りである。だが、そのいずれも、容疑者の逮捕前の姿をカメラに収めていた。
 たしかに『文春』によれば、昨年秋頃から情報が出回り、年末から「年明け逮捕」と言われていたのであろう。
 だが、『文春』が発売される前日に逮捕、それも、すべてのメディアに知らせ、逮捕の瞬間を撮らせるというのは、後輩だからというのではなく、納得がいかない。
 『進撃の巨人』を世に出したエリート編集者だから、ニュースバリューがあるから、ということなのだろうか。
 警察は、週刊誌でスッパ抜かれたから仕方なく逮捕したという形をとりたかったのではないのか。
 日頃、警察批判をしている雑誌を出している出版社をさらし者にするという「意図」はなかったのだろうか。
 メディアの人間だからというのではない。もし朴容疑者が妻を殺した殺人者であっても、もう少し人権に配慮したやり方があったのではないか。
 講談社の広報は言いにくいだろうから、私が言っておく。

 小説でもノンフィクションでもマンガでも、優れた作品にはいい編集者の手が必ず入っている。
 優秀な編集者を失ったのは、講談社も大きな損失であるが、優れた作品を待ち望んでいる読者にとっても取り返しのつかない損失であるにちがいない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 『週刊ポスト』(1/1・6号)が「政界『失言・珍言大賞』を決定する!」という特集を組んでいる。

 イクメン議員として注目を集めた宮崎謙介議員だったが、ゲス不倫が発覚してあえなく憲政史上初の不倫で辞任。彼が辞職会見の時に言った言葉が「人間としての欲が勝ってしまった」だった。

 弁護士出身の丸山和也参議院議員の人種差別発言もあった。

 「米国は黒人が大統領になっている。これ奴隷ですよ」

 オバマ大統領でなかったら同盟を解除されても致し方ない暴言である。否、戦前なら戦争に発展していたかもしれない。

 当選2回ながら“失言王”とあだ名がついたのは大西英男代議士。衆院北海道5区補選の応援に入った際、神社の巫女さんから「自民党は好きじゃない」と言われたことにブチ切れ、「巫女のくせに」と思い、「私の世話を焼いた巫女さんが20歳くらいだった。口説いてやろうと思って、『補選を知っているか』と聞いたら知らないというから、夜誘って説得しようと思った」

 産婦人科医の赤枝恒雄代議士が、大学生や民間NGOが出席した「子どもの貧困対策推進議員連盟」の会合で、

 「とりあえず中学を卒業した子どもたちは仕方なく親が行けってんで通信(過程)に行き、やっぱりだめで女の子はキャバクラ行ったりとか」

 丸山、大西、赤枝も70代である。安倍が掲げる「女性活躍社会」など頭の中にない古いアホ議員たちである。

 熊本・大分地震が起きた後、片山虎之助おおさか維新の会(当時)共同代表がトンデモ発言。

 「終盤国会になってから熊本・大分の地震が起こりまして、これがずっと長引いていますね。ダブルになるのかならないのか、消費税を上げるのか上げないのか、全部絡んでくるんですね。大変タイミングのいい地震」

 都知事選では、小池百合子候補が「崖から飛び降りる覚悟」をして立候補した。

 対抗馬の増田寛也候補の応援に行った石原慎太郎元都知事が小池候補に対して「厚化粧の女に任せるわけにはいかない」と発言し、一気に小池支持者を増やしてしまった。

 中でも私は、失言の“国家遺産”ともいうべき麻生太郎副総理のこの発言が許せない。

 「90歳になって老後が心配とかいってる人がテレビに出ていた。いつまで生きてるつもりだよ」

 政治家失格というより人間失格である。

 現役時代に「サメの脳みそ」といわれた森喜朗元首相の暴言は枚挙に暇がないが、昨年も口を開けば暴言・迷言だらけである。

 新国立競技場に聖火台が忘れられていた問題で批判を浴びると、

 「日本スポーツ振興センターという少し頭のおかしな連中が、聖火台を忘れた設計図を作った」

と発言。自分の頭のおかしさを忘れて他人を批判するのが、サメの脳みそといわれる由縁である。

 業者から現金をもらったことがバレて辞任に追い込まれた甘利明前経済再生相が辞任会見で漏らしたひと言。

 「政治家の事務所はいい人だけと付き合っているだけでは選挙に落ちてしまう」

 本音すぎて、いい人なのだろうが政治家には向いていないのがよくわかる。

 山本有二農水相の「この間冗談をいったら、閣僚をクビになりそうになった」。萩生田光一(はぎうだ・こういち)官房副長官が、野党の国会対応を「田舎のプロレス」と揶揄。

 安倍首相の奥さん昭恵が小池都知事との対談で「『日本を取り戻す』ことは『大麻を取り戻す』こと」というのもベスト10ぐらいには入るだろう。

 『ポスト』はベストワンを選んでいないから、私が独断で2016年の「暴言大賞」を決定してみたい。

 まずは、政治家ではないが間違いなくワーストワンになるのはこれだ!

 沖縄県・東村高江で強行している米軍ヘリパッド建設をめぐって、大阪府警の機動隊員が反対派市民に「ボケ、土人が」「黙れ、コラ、シナ人」と、呆れ果てた差別発言をした。

 これは安倍首相が沖縄に謝罪し、即刻ヘリパッド建設を中止するほどの「大問題発言」だと、私は思う。

 安倍首相も失言・暴言の宝庫である。

 彼は、過去にも「税金というのは国民から吸い上げたものでありまして」「憲法上は原子爆弾(の保有)だって問題ではないですからね」、自衛隊というべきところを「我が軍」と言ってしまったりと呆れた発言には事欠かない。

 一昨年も「我々が提出する法律についての説明はまったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」と国会で答弁して顰蹙を買ったが、私が安倍首相のワーストワンに挙げるのは、この発言。

 環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案を審議する衆院特別委員会で、「我が党においては(1955年の)結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」と言ったことである。

 以前も、五輪招致のプレゼンで「福島第一原発の汚染水はコントロールされている」とウソをつき、日本以外のメディアに袋だたきにあったが、この御仁、自分の発言のおかしさに気がついていないのであろう。

 森元首相とどっこいどっこい、質の悪さでは森を凌駕するのではないか。

 ついでに日本人は忘れっぽいから21世紀最悪の首相の暴言も紹介しておこう。

 小泉純一郎が首相時代に吐いたウルトラ暴言は、これから日本が100年続くとしても、これを超えるものは現れないと思う。ギネスに載せたらいい。

 衆院予算委員会で民主党(当時)の菅直人の質問。小泉首相が選挙で「国債発行額を三十兆円以内に抑える」と公約したのを守れなかったことを問われて、

 「その程度の公約なんか守らなくても大したことではない」

と、言い放ったのである。

 私は国会中継を見ていて、開いた口がふさがらなかった。一国の首相が選挙で公約したことを、守らなくてもたいしたことはないと公言することなど、あってはならないことである。

 これで小泉辞任は避けられないと思ったが、この国のメディアは取り上げはしたが、辞任まで追い込むことはしなかった。あの頃からメディアの凋落は始まったと思っている。

 日本には言論の自由がないと海外メディアにいわれるのは、日本のトップがウソをついても、致命的な暴言を吐いても、言論機関がとことん追及しないからである。

 かくして言論は年々軽くなり、トップはますますその場その場でいい加減なウソをつくことに慣れきってしまう。はて、2017年はどうなるのだろう。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 この世に女と男がいなくならない限り、不倫という“文化”はなくなることはないのだろう。
 昨年も各界の有名人たちの不倫が話題になったが、乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)のケースのように離婚までいってしまったものもある。
 2017年も『文春』の裏切り愛、ゲス不倫報道で幕を開けた。昔の女性誌編集長に聞いた話だが、取材費が潤沢だった時代には、都内の主だったホテルの従業員にカネを掴ませ、有名人の不倫カップルが来たら知らせてくれるよう頼んでいたという。今はどうなっているのだろう。

第1位 「嵐・松本潤 裏切りの“4年恋人”」(『週刊文春』1/5・12号)
第2位 「安田美沙子 デザイナー夫の『ゲス不倫』撮った」(『週刊文春』1/5・12号)
第3位 「香川照之『離婚』」(『週刊文春』12/29号)

 第3位。『文春』に、昨年12月、21年の結婚生活を解消したと発表した俳優・香川照之(てるゆき)のことが載っている。
 『文春』によると、香川は息子を歌舞伎役者にしたいために母親・浜木綿子(はま・ゆうこ)と離婚した三代目市川猿之助に急接近していった。
 11年からは脳梗塞で介護が必要になった猿之助と独断で同居をはじめたが、仕事でいない香川が面倒を見られるわけはなく、妻が向き合うようになった。
 また、妻のほうは息子を歌舞伎役者にするのは、「息子の将来を決めて自由を奪ってしまう」ことになるとして、望んではいなかったという。
 そんなこんながあって、ついに離婚ということになったというのだが、2ページという短さもあって、よくわからない記事である。
 香川という俳優は東大出で、時には神ってる演技をするが、私の好きなタイプの俳優ではない。
 離婚というのは2人にしかわからないものだが、こういう人間と一緒にいるのはさぞ大変だっただろうなと、私はやや奥さんに同情的である。

 第2位。タレントの安田美沙子(34)の夫(37)のケースは正真正銘の「ゲス不倫」
 安田は現在妊娠5か月で、予定日は5月だそうだ。それなのにファッションデザイナーの夫は、都内の病院に勤務する北川景子似の27歳スレンダー美女と食事をした後、新宿歌舞伎町のシティホテルへ入り、出てくるところを『文春』砲にバッチリ撮られてしまったのだ。
 それにこの夫氏、結婚していることはもちろん、フルネームもきちんと名乗っていなかったそうなのだ。
 『文春』の直撃に、夫氏は最初はとぼけていたが、写真を見せられると観念したのか、「出来心というか……。妻には直接話すので時間を下さい」と、認めたのである。
 その話し合いが持たれたのは12月21日の深夜を過ぎた頃だった。
 その後、事務所を通じて安田からコメントが寄せられたという。

 「この度は、私たち夫婦のことでお騒がせして申し訳ありません。夫から事情を聞き、こっぴどくお灸をすえました。反省しているようなので、今回ばかりは許したいと思っています」

 中村芝翫(しかん)の浮気の際の妻・三田寛子もそうだったが、女は強い。母親はさらに強いと思う。

 第1位。昨年はベッキーのゲス不倫で幕を開けた『文春』「怒濤のスクープ」連弾が大きな話題を呼んだが、今年はSMAP解散後のジャニーズ事務所を背負う人気グループ・嵐の松本潤(33)の「裏切り愛」である。
 裏切りというのは、松本には交際中で結婚間近といわれる女優・井上真央(29)がいるからだ。
 『文春』によれば、2人はドラマ『花より男子』(TBS系)で共演してから付き合いが始まり、すでに10年以上になるという。
 だが、ジャニーズ事務所は色恋については本人の自覚に任せているそうだが、常に幹部からは「バレないようにしなさい」と言われているそうだ。
 それに、恋愛はいいが結婚となると、人気に影響が出るので難色を示すそうである。
 井上との逢瀬も、もっぱら松本の自宅か信頼できる友人宅でしか会わないそうだ。
 そのため、ほとんど2人のツーショットは撮られていないという。それに井上がヒロインを演じたNHKの朝ドラ『おひさま』以来、紅白の司会や映画『八月の蝉』で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞するなど、仕事に忙殺されているため、会うのもままならないそうだ。
 そんな松本の心の隙間に入り込み、毎週逢瀬を重ねている恋人との決定的瞬間を『文春』が捉えたのである。
 12月18日、ナゴヤドームでコンサートを終えた嵐のメンバーは、JALの最終便で羽田空港に到着した。
 各々ワンボックスカーに乗り込み家路につく。松本も厳重なセキュリティで守られているマンションへ帰宅。
 そこへポニーテールに髪を結ったスレンダー美女が現れたのは、19日の午前4時を回っていたという。
 美女は慣れた手つきでインターホンを押し、松本の部屋へ入っていった。
 『文春』は12月に3度、彼女が松本の部屋を訪れるのを確認しているという。
 彼女は葵つかさ(26)。10年にAVデビューしてこれまでに100本近い作品に出演し、深夜のバラエティ番組にも出演する人気女優だそうだ。
 出会いは、4年前の中村勘三郎のお通夜の席で共通の知人から紹介されたことからだった。
 その後松本から彼女にメールを送り、13年の1月中旬に「薄暗い雰囲気の隠れ家のようなマンションの一室」(『文春』)で会ったという。
 ほかの人間もいたそうだが、散会した後2人きりで過ごしたという。その日以来、毎週のように松本は彼女を自宅に呼び入れるようになった。
 葵は松本が井上と付き合っていることを最初は知らなかったそうだ。
 一度松本に、井上とのことを尋ねたら、それには答えず松本は「それ以上、彼女のことを言ったら殺すよ」と突き放すように言ったという。
 だが、叶わぬ恋に身を焦がし続けた葵は、一度、松本と話し合い、別れることにした。
 別れから3か月後、松本から突然会いたいと言ってきたそうだ。その時松本は彼女にこう言ったという。

 「なんでオレこんなに会いたくなっちゃうんだろう」

 再び葵が松本のマンションを訪れるようになる。
 こうした取材でいつも不思議に思うのは、当事者を直撃するのはわかるが、恋人といわれる井上真央にも話を聞いていることである。
 夫婦ならわかるが、まだ結婚するかどうかもわからない井上にインタビューするのはちと酷ではないのか。
 当然、井上は「ごめんなさい」と笑顔で言うだけだ。葵は、記者の問いかけには答えず、逃げるようにその場を立ち去ったそうだ。
 松本は? 葵つかささんをご存知ですねと聞く記者に、

 「いえ、わかんないです」「その人がわかんないんで」

 と、要領を得ない返答をして、お決まりの「事務所を通してくれ」と言って去って行く。
 『文春』は、井上という恋人がいながら葵とも付き合うのは「二股ではないか」と言いたいのだろうが、若くて人気絶頂のアイドルに、そうした“倫理”を求めるのは無理がある。
 葵も彼氏に彼女がいることは承知で付き合っているのだから、この三角関係がこれからどう進展していくのか、そっちのほうが気にはなるがね。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチンは第4代ロシア連邦大統領。ロシア・サンクトペテルブルク(旧レニングラード)生まれ、64歳。

 2016年12月15日に来日して、安倍首相の郷里である山口県の旅館で首脳会談をした。だが、約束の時間に2時間半も遅刻し、期待された北方領土問題には何ら進展はなく、翌日は柔道の聖地「講道館」を見学して早々に帰国してしまった。

 今年は日ソ共同宣言と日本の国連加盟から60年、安倍首相の父親・安倍晋太郎が亡くなってから25年と、節目の年に何とか成果を出したかった安倍首相だが、プーチンからは「領土問題は全くない」と相手にされなかったのである。

 このプーチンの訪日をメディアは「日ロ首脳会談 あまりに大きな隔たり」(朝日新聞)、「進展見られず」(読売新聞)、「『引き分け』より後退か」(産経新聞)と酷評した。

 『週刊新潮』(12/29・1/5号、以下『新潮』)で北大名誉教授の木村汎(ひろし)氏がこう言っている。

 「日本にとって99%敗北。元島民の北方領土への自由訪問が広がりそうなことだけは1%分評価できます」

 また、『新潮』によれば、唯一の成果といわれる「北方4島に日本企業も進出できるようになる、共同経済活動案」にも乗り越えるには厳しすぎる障壁があるとしている。

 現在北方4島には約1万7000人のロシア人が居住しているというが、ロシア極東事情に詳しいジャーナリストはこう話す。

 「ウラジオストクから運ばれてくる麻薬が蔓延しています。ロシア本土より監視の目が緩いことから格好の取引場所となっており、密売人たちに重宝がられているためです。また、択捉(えとろふ)島にあるロシア軍基地から横流しされた武器を市民が所有していて、それを使っての犯罪も横行。道路事情も悪く、悲惨な交通事故が地元紙の紙面をよく飾っています。警察などの役人たちの間では、横領や賄賂が常習化しています」

 こうした治安の悪さとともに、日ロ双方が主権を訴えている北方4島では、もし日本人が罪を犯した場合、どちらの法律で裁くのかなどの難しさもある。

 プーチンの好きな柔道には「柔よく剛を制す」という言葉があるが、今回は剛の前に軟弱な安倍があえなく投げ飛ばされたということである。

 だが、安倍首相は投げ飛ばされただけではなく、プーチンにとんでもないお土産まで貢いだと『週刊現代』(12/31・1/7号)は報じている。

 「安倍晋三首相は、北方領土の共同経済活動という名のもとで、カジノ建設を狙っています。それをトップ同士で詰めることが、プーチン大統領をわざわざ故郷・山口まで招待した大きな目的の一つだったと思われます」(中村逸郎筑波大学教授)

 中村教授が言うには、トランプとプーチンの共通の友人の一人がロシア人のヴェルホフスキー上院議員で「北方領土の帝王」という異名を持っているという。

 その人間が抱いている野望が「北方領土にカジノ建設」だそうなのだ。

 『新潮』(12/22号)は、安倍首相がカジノ法案を急いだわけは、カジノ経営のノウハウを持っているトランプへの配慮があり、カジノをつくってトランプ大統領にお越しいただくというシナリオを描いているのではないかと報じている。

 安倍の北方領土で共同経済活動をという構想に、メガバンクや日本企業は積極的ではない。

 そこでカジノをつくって共同経営すれば、プーチンもトランプも歓んでくれるという浅知恵を思いついたのであろうか。

 それなら、わずか審議6時間という短さであわててカジノ法案を通した安倍の「意図」についての説明がつく。

 プーチン訪日までに何としてでも法案を通してプーチンの歓心を買いたかった。もしそうだとしたら安倍というのは、ひたすら情けない男である。

 では、プーチンという男はどういう人間なのだろうか。

 『ニューズウィーク日本版』(12/20号、以下『ニューズ』)の「世界を手玉に取るプーチンの本心」に詳しい。

 『ニューズ』によれば、プーチンはソ連時代の諜報機関で、プーチンの出身母体でもあるKGBの復活を狙っているという。彼の領土拡張に対する野心は「ロシアの国境に終わりはない」というものだそうだ。

 北方領土は「大祖国戦争(プーチンは第二次大戦をこう呼ぶ)におけるロシアの勝利を象徴する重要な一部」だと考えているから、北方4島を返すつもりなどさらさらなく、目的は日本から資金を絞り出すことにある。

 そのためには日本が中国に抱いている恐怖心を利用できると公言している。

 アメリカ大統領選にトランプが勝利したことはプーチンにとって千載一遇のチャンスだと考えているはずだと、プーチン戦略について書いている。

 ロシアがウクライナ南部クリミア半島の一方的併合をしたことに対して、欧米が行なった金融制裁はロシア経済に確実にダメージを与えたが、ロシアの人びとはプーチンに不満を言うどころか、「プーチンが事実上の権力を握った99年からの10年で、実質所得(インフレ調整済み)が倍増したことを感謝している」というのである。

 中でも読みどころはプーチンの日常を描いた特集。朝起きて朝食を取るのは正午を少し回ってから。側近たちが待機しているのにもお構いなく、プールで2時間ほど泳ぐ。愛読するのは歴史書。

 執務室では情報漏れが心配なためコンピューターは滅多に使わない。ドイツ語が堪能で、外国メディアが彼を悪者扱いしていても知りたがる。ネットに拡散している彼の風刺ビデオも見ているという。

 住まいはモスクワの郊外で一人暮らし。両親はすでに死去し、妻は精神疾患を患い長い別居の末に離婚。2人の娘の存在は国家機密だが、政治には関わっていないそうだ。

 専用機は3機。どこへ行くにもコックと安全な食材を持って行き、「たとえ国家元首が用意した食材でも、決して口にしない。クレムリンの検査を通ったものでない限り、外国産の食材は食べないのが決まりだ」という。

 安倍首相が地元の旅館で用意したもてなし料理を食べたとすれば、プーチンが安倍に心を許したということになるのかもしれないが、どのテレビ局も新聞も、安倍とプーチンがどんな料理を食べたのか、酒は何を飲んだのかを報じているところはないようだ。

 子どもの頃は「ワル」でならし、みんなが宇宙飛行士になりたかった時代にKGBに入ることを夢見ていた。ソ連崩壊後、わずか10年でロシアの主にのぼり詰めたが、その間何をしていたのかは全く不明。

 そんな鋼のような肉体と冷徹な心臓を持った全身KGB男と、三代続いた政治家のボンボンである安倍首相などが太刀打ちできるわけはない。

 2017年は、プーチンと商売のためなら手段を選ばないトランプ、あわよくばロシアと組んでアメリカをひねり潰そうと虎視眈々と狙う習近平に囲まれて、安倍外交は嵐の前の小舟のように心許ない舵取りをすることになるはずである。日本沈没はあり得る。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 日本のテレビがジャ-ナリズムだと思う人はほとんどいないだろうが、広告の落ち込みで、企業から広告費をもらいながらそれを隠し、局の独自取材と見せかけるステルスマーケティング、略してステマ番組が横行しているようだ。
 雑誌でもときどき、そのページが広告だと明記しない特集を作って読者を騙すということが表沙汰になるから、どっちもどっちもではあるが。あれだけの原発事故を起こしながら、原発はクリーン、原発を再稼働させなくてはエネルギーが足りないと、電力会社が膨大な広告費で電通を使って、識者にテレビでいわせるのもステマ番組であるはずだ。そうしてみるとほとんどの番組がステマか?

第1位 「明治『R-1ヨーグルト』とテレビ局の裏金『ステマ番組』」(『週刊新潮』12/22号)
第2位 「漢方大手『ツムラ』が売る『社員に飲ませられない生薬』」(『週刊新潮』12/22号)
第3位 「ビールを飲んで認知症を予防しよう!」(『週刊文春』12/22号)

 第3位。私も家人も、この頃自分が認知症ではないかと思うことがたびたびある。年だからと諦めてはいるが、『文春』はビールが認知症予防になると報じている。
 もはや遅いとは思うが読んでみた。
 何でもビールの苦みになっているホップに含まれるイソα酸という成分が有効だというのだ。
 アルツハイマー型認知症は大脳皮質に異常なタンパク質が沈着してできるらしいが、脳内に溜まったこの悪い物質を包み込み消化してくれる免疫細胞を、イソα酸が活性化させるそうだ。
 50歳から70歳の男女25名に1日グラス一杯のノンアルコールビールを4週間飲み続けてもらったら、6割の人に脳活動の上昇を示唆する結果が得られたという。
 これは東京大学と学習院大学の共同研究で、発表したのがビールメーカーのキリンというところがやや引っかかるが、トリスならぬビールを飲んでハワイへ行こうではなく、ビールを飲んで認知症よさようなら、となれば、嬉しい話である。
 だが、飲みすぎてはいけないし、イソα酸を多量に入れてしまうと苦すぎて飲めないようだ。早く何とかしてくれないかね、キリンさん。

 第2位。ツムラという漢方薬大手がある。かつては入浴剤のバスクリンで当てたが、多角経営や創業者一族の元社長による特別背任事件によって倒産寸前までいった。だが、漢方薬に特化した製薬会社として再出発し、昨年度の売上高1126億円を誇るという大復活を遂げている。私もここの「葛根湯(かっこんとう)」は風邪の引き始めに効くと愛飲している。
 『新潮』は今年7月に役員会議で配られた内部文書を入手したという。
 その文書は、中国産の生薬原料からツムラが使用許可を出していない農薬が検出されたため、再発防止を図るために今後どのような対策を取るべきかが書かれているという。
 ツムラのガイドラインには、栽培手順や使用許可農薬の徹底、万が一の時には医療機関から原料生薬生産地まで遡れる生薬トレーサビリティ体制、生産団体の監視も行なうという3本の柱があるという。
 だが、ツムラの幹部の話では、製造する漢方薬の原料は国内とラオスでもわずかに栽培されてはいるが、8割はあの中国で栽培されているというのである。

 「誰が作ったのかを把握している農民は全体の約55%で約1万人。つまり、残りの1万人の生産者は誰かも分からなければ、農民たちがどんな栽培を行っているかさえ、不明なのです」(ツムラの幹部)

 さらに衝撃的な一文が書かれていた。

 「自分の家族に飲ませることができる生薬を供給する」

 おいおい、それじゃツムラは自社の家族には飲ませられない薬を売っているのか?
 『新潮』が広報担当者を直撃すると、こう答えた。

 「この一文は、生産者としての意識向上、動機づけとしてのスローガンなのです」

 2015年に農薬の不適切な使用が発覚した際、中国の農民にどうすればわかってもらえるかと考え、この表現が家族を大事にする中国人が腑に落ちるということでつくった。したがって日本の社内向けではないというのだ。
 だが社の3本柱の重要な一つ、トレーサビリティが確立していなかったというのは、ツムラの信用を落とすのではないか。
 また、こうした内部文書がメディアに流れるというのは、社内で権力闘争が起こっている現れではないのだろうか。
 再び、昔のような不祥事が起これば、ツムラは二度と立ち直ることはできないだろう。

 第1位。ステマ番組とは、広告料金をもらいながら、それを隠して、あたかも独自で探し当てたような番組を作ることをいう。
 昨年9月に、TBS系列のローカル局「IBC岩手放送」が、明治から広告料金をもらってR-1乳酸菌がインフルエンザ予防に効くなどと放送し、番組審議会で問題になった。
 R-1乳酸菌といえば、私もときどき飲む明治のヨーグルトであるが、局の幹部が事実を認め、番組で用いた素材も明治から提供を受けたと“自白”したという。
 これは当然ながら放送法で禁じられているが、『新潮』が調べたR-1乳酸菌を扱い、明治の名前が出て来ない番組は、IBC放送後も全キー局にわたってあったそうである。
 私はあまり見ないが、テレビではコンビニやスーパーを取り上げ、そこで売っている商品を製造過程から事細かに紹介するような番組が多くある。
 ひな壇に並んだお笑い芸人たちが「メチャスゴ~イ」「おいしいそう」などと出来レースで驚いてみせるが、あのような番組もステマではないかと、私は睨んでいる。
 茶の間の視聴者も、漫然と見ているだけでなく、ステマかそうではないのか見分ける厳しい目を養うことが必要だろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦