コトバJapan! 元木昌彦 の 記事一覧

元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。


 9月16日(土曜日)発売の『週刊ポスト』(9/29号、以下『ポスト』)は、巻頭に「安倍『火事場泥棒10・22解散総選挙』へ!」と報じた。

 大メディアが臨時国会冒頭解散を報じたのは17日になってからである。締め切りを考えれば、『ポスト』のこの特集はスクープと言ってもいいだろう。

 『ポスト』によれば、9月10日夜、麻生太郎は渋谷区神山町の自宅からすぐ近くの富ヶ谷にある安倍晋三の私邸を訪れたという。

 麻生を安倍のところへ走らせたのは、民進党の山尾志桜里(しおり)の不倫報道による離党であった。

 「これで麻生氏の目の色が変わった」(『ポスト』)という。

 民進党は離党者が続出してこれからもっとボロボロの状態になっていく。

 「麻生さんは絶好のチャンスと判断して『今なら勝てる』と総理に早期の解散・総選挙を強く進言したのです」(麻生氏側近)

 だが、危機管理の責任者である菅官房長官は、北朝鮮情勢が緊迫している時に解散するべきではないと反対していたという。

 11月にはトランプ米大統領が来日するといわれている。そんなタイトなスケジュールの中で解散・総選挙はするべきではない。

 そんな菅の考えを知っている麻生は、菅のいない安倍の私邸に押しかけたのである。

 安倍にも解散をためらう大きな理由があった。憲法改正をやりたいのだが、解散すれば改憲発議に必要な現有3分の1以上の勢力を失うリスクがあるからだ。

 麻生ら解散推進派が説得材料に使っていたのは、安倍の大叔父・佐藤栄作がやった「『黒い霧』解散」(66年)だという。

 自民党議員がからんだ贈収賄事件や国有地売却の不透明な取引が相次ぎ、「黒い霧」だと批判を浴びた。

 そこで佐藤首相は、綱紀粛正を発表すると、意表を突いて66年12月の国会冒頭で解散に踏み切ったのである。

 苦戦が予想されたが、自民党はほとんど議席を減らさなかった。落選中だった安倍の父・安倍晋太郎もこの選挙で返り咲いた。

 中曽根の「死んだふり解散」、小泉純一郎の「郵政解散」など、佐藤以外にも突然解散したケースはあるが、そのいずれも自民党が勝っているというデータもある。

 そうした入れ知恵に、優柔不断な安倍の心は揺れ動いた。そして、決断したらしい。

 安倍ポチ新聞といわれる産経新聞と読売新聞がともに社説でこう書いた。

 「安倍晋三首相は、北朝鮮危機の下で、衆院を解散する道を選択した」(産経、9月20日付)「安倍晋三首相が、衆院解散・総選挙に踏み切る意向を固めた。『10月10日公示-22日投開票』の日程を軸に調整している」(読売、9月19日付)

 だが、朝日新聞(9月20付)が社説で言っているように、

 「安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散である。(中略)
 重ねて記す。野党は6月、憲法53条に基づく正当な手続きを踏んで、臨時国会の早期召集を要求した。これを3か月以上もたなざらしにした揚げ句、やっと迎えるはずだった国会論戦の場を消し去ってしまう。
 まさに国会軽視である。そればかりか、憲法をないがしろにする行為でもある」

 自民党の中からも少なからず、大義がない、改憲のための論議が尽くされていない、北朝鮮危機がどうなるかわからないのに政治空白をつくっていいのか、などの批判の声が出て、日増しに大きくなっている。

 また、連立与党の公明党は、憲法改正、特に9条の改正には慎重な姿勢を表明しているのである。

 総選挙をやれば現有勢力から減るのは100%間違いない。

 一部報道では、安倍はトランプから、北朝鮮危機が本格化するのは来年だと聞いているから、その前にやってしまえと決断したという。

 だが、それが本当なら、国民にその根拠を明らかにすべきこと、いうまでもない。

 アメリカや日本、韓国の動きを注視している北朝鮮が、日本の政治空白の隙を突いて何かを仕掛けてくることは十分に考えられる。なぜそのような危険な「賭け」をする必要があるのだろう。

 森友・加計学園問題で下がった支持率が、内閣改造以来少し上向いているからだという、いい加減な根拠を上げる評論家もいる。

 その理由は簡単だ。国会を閉会して3か月以上、野党の国会開会要求にも応えず、逃げ回っていたからである。

 しかも加計学園問題で開かれた7月24日の閉会中審査で、大串博志(ひろし)民進党議員の質疑に対して「(加計学園のことは)申請が正式に認められた国家戦略特区の諮問会議、2017年1月20日に初めて知った」と致命的な失言をしてしまったのである。

 そのうえ、腹心の友の加計孝太郎理事長とは16年中も何度もゴルフや食事をして、おごられたりおごったりしていたと「白状」したのである。

 コメンテーターの中には、加計学園問題は犯罪ではないのだから、そこまで首相を追い詰める必要はないというバカな輩がいる。

 一国の宰相が、一私大のために便宜供与したという重大な疑惑があるのだ。しかも安倍は、「森友や加計学園問題にもし、私や妻が関わっていたら辞職する」とまで言い切っているのだ。

 この問題でこれ以上追及されれば、安倍は総理の座も危うい、そう考えたに違いない。

 安倍はこの件についての「うしろめたさ」、否、「総理の犯罪」を構成する何かがあるから怯えているのだ。

 そう考えなくては、3か月以上の政治空白の末、なおも2か月近く国会を開かず、有権者への丁寧な説明もせず、ひたすら時間稼ぎする理由が全く理解できない。

 8月29日にビジネス情報誌『エルネオス』で、自由党の森ゆうこと対談した。森は、加計学園問題は贈収賄事件に発展するかもしれないと言っている。

 「森 安倍さんはもはや権力の作法というのを忘れてしまっている。権力を長期にわたって持ち続け、しかも野党が弱いという状況の中で、自制をしなければいけないというようなことを、もう忘れてしまっていますよ。
 野党をバカにして、何でも自分の思い通りになると思ったから、危機感がなく加計孝太郎さんと去年も、頻繁に会って飲み食いしていた。
 しょせん野党は追及できないだろうし、マスコミも俺の言いなりだという思い上がりがあったと思います。(中略)
 (加計学園問題では=筆者注)設計書の話が出てきて、坪単価一五〇万円という法外な値段になっていることが明らかになりました。
 資金計画を出した銀行の分析によると、あの土地は坪単価八〇万円ぐらいなんです。森友学園補助金詐欺事件(籠池理事長夫妻が逮捕)と同じように、補助金を高く取るために不正に水増ししたんじゃないかという話になってきています。

元木 加計孝太郎理事長と何度も食事やゴルフをして、奢られる時もあると答弁しましたね。

森 あれはしまったと思っているんじゃないかな。しょっちゅう奢り奢られていて、それが何の問題もないと思って答弁している。そんなことを国会で言ってはいけない話ですよ。
 それに加計さんは、複数のマスコミに対して、安倍さんには一億使ったと豪語していたそうです。そうなると贈収賄事件にまで発展する可能性があります。

元木 そうやってウソが次々にばれて、つじつま合わせに加計学園が特区に申請しているのを知ったのは1月20日だったという問題発言をしてしまった。

森 あれは命とりでしたね。それ以外にも総辞職すべき理由は山ほどあるんです。中でも稲田(朋美前防衛大臣)さんの問題は決定的でしたけど、国会閉会中で野党は追い込めなかった。

元木 加計学園問題で辞任に追い込めますか。

森 私たちは諦めない。(中略)本人もそうとう焦っていると思います。あの閉会中審査の七月二十五日の安倍総理は、完全に混乱していましたからね。
 現在、北朝鮮の脅威が増していることは確かです。だったら防衛大臣を早く代えて対応すればいいのに、加計問題や森友問題から国民の目をそらそうとしていると思われてしまいますよ」

 今度の衆院選は、安倍の森友・加計学園についての説明責任を有権者が求める選挙にしなければいけない。

 メディアは、野党の足並みがそろわない、自民党に代わる受け皿がない、したがって安倍自民は負けようがないと無責任に報じるが、私はそうは思わない。

 森友・加計学園問題もある、稲田朋美の防衛相辞任の追及もうやむや、アベノミクスも失敗と、戦争のできる国にしてしまった以外に安倍は何をしたのか。

 特に、年金、医療、介護費の引き上げで「下流老人」や「破産老人」が増えている。高齢者の怒りが爆発寸前である。

 安倍自民だけは心から嫌だ。投票する理由はそれだけでいい。

 今度の解散は「バカヤロー解散」である。だが、吉田茂の時とは真逆である。今回は安倍首相に国民から「バカヤロー」と大声を上げる選挙なのだ。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週は『ポスト』の政府や役人の年金謀略政策や小泉進次郎批判がさえている。この国は、政治屋やシロアリ役人どもの失敗のツケを、高齢者から搾取することで穴埋めしようと考えているに違いない。だがこれを見逃せば、これから年寄りになる若い世代にもしわ寄せがいくこと間違いない。豊かな老後など夢のまた夢。ひどい国である。

第1位 「拝啓 小泉進次郎殿『年金を正当に受け取ることは、そんなに悪いことですか?』」(『週刊ポスト』9/29号)/「この秋から『年金受給者狩り』が始まる」(『週刊ポスト』9/29号)
第2位 「次は『佳子さま』お婿さん情報の暗雲」(『週刊新潮』9/21号)
第3位 「JAL機体の3割は『中国の工場』で整備されていた」(『週刊ポスト』9/29号)

 第3位。このところ航空機の「間一髪」、事故寸前という事態が多いようである。
 ひとつは今月5日のJAL機エンジン火災事故であった。午前11時過ぎに羽田空港を離陸したJAL6便が、2つある主翼エンジンの1つから出火し、約1時間後羽田に緊急着陸したのだ。
 エンジン内部では、タービンにある222枚もの羽が破損していた。
 国土交通省の担当記者がこう振り返る。

 「国土交通省は翌日、《発動機の破損に準じる事態》として重大インシデントに認定しました。つまりは乗員・乗客248人とともに『墜落の危機にあった』といっているに等しい」

 『ポスト』は、そうした深刻な「整備不良」は、中国の下請け企業に任せているからではないかと危惧している。

 「とりわけ日本や米国の航空会社からの需要を取り込んで急速に規模を拡大してきたのが、中国福建省に本社を置く『TAECO社』とシンガポールの『SASCO社』という2社の整備専門会社(MRO企業)だ」

 ここでは1年に一度行なわれる「C整備」と呼ばれる比較的軽度なメンテナンスと、もうひとつは約5年に一度行なう「M整備」は「飛行機の人間ドック」と呼ばれ、点検・整備は広範囲に及ぶという。

 「日本航空乗員組合」の『乗員速報』(06年10月8日号)には、機体トラブルが続いたことを問題視、後の『乗員速報』では、07年だけで実に10件もの『TAECO社』がらみの不具合が発生したことが大きく取り上げられているそうである。
 海外MRO企業への委託はANAでも同様に行なわれており、やはり整備ミスが発生している。
 09年にANAで起きたトラブルは、国土交通省から異例の厳重注意が下った。同社保有の3機で、非常用酸素マスクの一部が落下しない状態のまま、2600回も飛行していたことが発覚したのである。
 整備を担当したのはシンガポールの『SASCO社』。
 海外MRO企業への整備委託が3割程度(16年は約5割)ある。
 それに気がかりなのは、工場の整備資格を認定している国交省が「整備は各社が責任を持って行なうもの」というスタンスでいることだと『ポスト』は指摘している。

 「個別の機材の整備履歴を当局が把握する仕組みにはなっていません。したがって、海外の整備に伴うトラブル事例がどれだけあるかといわれても、そのような記録は持ち合わせていないのです」(航空事業安全室)

 これで空の安全を守れるのか? そう言いたくなるのはもっともだろう。

 第2位。「佳子さまお婿さん情報」と言うから、新潮砲が大スクープかと思って読んだら、話の中心はそこではなかった。
 以前から流れているが、先日短期留学でイギリスへ旅立った佳子さんの「恋人」は、富士急行・堀内光一郎代表取締役、妻は堀内詔子(のりこ)自民党代議士の息子・堀内基光ではないかといわれている。
 申し分ない家柄で、基光も中学時代まで学習院にいて、高校から慶應に転じ、法学部を卒業後みずほ銀行に入行している。
 基光は学習院時代に眞子さんと同級生で、その縁で佳子さんと知り合ったのではないかと言われているようだ。
 だが、2人が交際しているという話が出たため、「基光くんの両親が当時の(林信秀)頭取に相談し、行員が1200人もいて東南アジアのハブ的な存在であるシンガポール支店へ異動させることになったと聞きました」(慶應の関係者)
 表向きは、みずほに入った慶應の同級生と交際中ということになっているという。
 だが、『新潮』の問いかけに、母親の詔子代議士は「いや、あの~。私はないと、思って……ないです」
 父親の光一郎社長も「私が知っているかぎり佳子さまには一度もお目にかかったことはないし、本人もそのように言っています」と、なにやら密会がばれた芸能人か、政治家の答弁のようである。
 話はここから変わる。富士急行が山梨県から借りている広大な山中湖畔の土地が、原野として借りているため法外に安いが、別荘地として再評価すべきだと住民監査請求が出されている話になる。
 もしそれが認められると、莫大な借地代になり、富士急行の屋台骨を揺るがしかねない。そうなると2人の交際に暗雲が立ち込めるという、風が吹けば桶屋が儲かる式の記事作りである。
 アイドルをしのぐ人気のある佳子さんだから、致し方ないのかもしれないが。

 第1位。安倍首相は、自分の森友・加計学園問題を追及されるのが余程イヤだと見える。
 それが臨時国会冒頭解散をする理由だと、有権者の大半が見抜いているため、安倍の思うとおりに選挙結果が出るとは到底思えない。
 だがもっとけしからんのは、『ポスト』が毎号追及している高齢者搾取の汚いやり方である。
 こうした追及が他誌でも始まれば、高齢者の圧倒的多数が反安倍晋三で結集するはずだ。『ポスト』がんばれ!
 『ポスト』によれば、宮沢洋一・自民党税制調査会長は新聞各社のインタビューに、「高額な年金をもらっている人に今と同じ控除をする必要があるか」(日経新聞、9月8日付)という暴言を吐いたというのである。
 最大の問題は、ここでいう「高額な年金をもらっている」とは誰のことかということであり、年金の少ない高齢者からも、控除を縮小してしまえというのだからとんでもないことである。
 『ポスト』によると、年金月額15万円、年間180万円の65歳以上の高齢者の場合、公的年金等控除が廃止されれば、所得税・住民税が合わせて年間18万円もの増税になるという。
 そのうえ、国民健康保険料や介護保険料も月に数千円アップする。これまでは年金収入が約200万円までなら実質非課税だったのにである。
 こんな政権がこのまま続けば、高齢者は死に絶える。
 日弁連の調査(14年)によると、自己破産者に占める70歳以上の割合は05年の3.05%から急増し、全体の8.63%を占めるまでに至っている。
 みずほ中央法律事務所の代表・三平聡史弁護士がこう言う。

 「70代の高齢者から“自己破産を申請しようと悩んでいる”という相談が数多く寄せられています。自己破産の全相談件数の1割は70代という印象です。“定年後に収入が激減したのに現役時代と同じ生活レベルを維持しようとして年金も貯蓄も使い果たしてしまった”という相談が非常に多い」

 今年6月時点で164万519の生活保護世帯のうち、65歳以上の世帯はその過半数を占め、過去最多を更新したという。
 日本総合研究所の星貴子・調査部副主任研究員が今年5月に発表した論文は、収入が生活保護水準を下回ったり、預貯金を切り崩しても生活保護水準が維持できない「生活困窮高齢者世帯」は、その予備軍も合わせて2020年には531万世帯に、2035年には562万世帯に上ると予測している。
 これは実に高齢者世帯全体の27.8%に及ぶ数字である。この数字は、高齢者は年金をもらい過ぎだという政府の主張と大きな乖離があると経済ジャーナリストの荻原博子が言う。
 まさに「国家的犯罪」である。
 そうした事実を知ってか知らずか、小泉進次郎という議員は、年金を返上して、子育てや若いやつらの起業資金に充てようと主張している。
 これに『ポスト』が噛みついた。
 年金だけではない。安倍政権になって後期高齢者医療制度の窓口負担や医療費が上がり、一定額を超えた場合に患者の負担が軽減される「高額療養費制度」の限度額が引き上げられ、介護保険料もどんどん引き上げられているのだ。

 「新しい『高齢社会対策大綱』には、高齢者が老後のために守ってきた退職金や貯金など虎の子の個人金融資産1000兆円を、若い世代の『起業資金』に使わせようという仕組み作りまで検討されている。
 どこまで高齢者のカネをあてにするのか」(『ポスト』)

 そこで『ポスト』は小泉進次郎あてに手紙を書く。

 「拝啓 小泉進次郎殿
 改めて、やはり親子だな、と思いました。
 『年金はこの先、100年安心だ』と断言した貴殿の父上、小泉純一郎・総理が、年金法大改正を実行したのは2004年のことです。その時の約束はこういうものでした。
〈年金保険料は2017年まで毎年上げ続ける。支給額はカットする。その代わり、100年安心の制度にする〉
 約束通りなら私たち国民にとって今年は、ようやく保険料アップの時代が終わり、額は減ったにせよ、安心して年金を受け取れる『元年』になるはずでした。
 ところが、今度は息子の進次郎殿がいきなり、『年金を返上してもらおう』と言い出したのですから、心の底から驚きました──」

 年金を自主的に返上する仕組みなどどこにあるのか? 『ポスト』がそこで調べてみると、日本年金機構のホームページから、「老齢・障害・遺族給付支給停止申出書」という書類がダウンロードできることがわかる。これが《年金返上届》だという。

 「進次郎殿、驚きました。
 全くといっていいほど存在を知られていない、この年金返上制度の創設が決まったのは、04年の年金大改正の時でした(施行は07年)。父親が総理の時にひっそりと仕組みを作っておいて、10年以上経ってから息子が、“せっかく仕組みがあるのだから、活用しよう”と言い出したわけですね──。

 進次郎殿
 働く高齢者には、収入が多くなると自動的に年金をカットされる『在職支給停止』の制度があります。いってみれば、今でも強制的に年金を“返上”させられているのです。毎年、125万人から総額約1兆円が召し上げられています。
 70歳以上への『在職支給停止』の適用が決まったのは、お父上による04年の年金法大改正の時のことです。
 親子して、どれだけ国民から年金を奪うつもりなのでしょうか──。   敬具」

 『ポスト』万歳である。今のように世の中が悪くなったのは小泉純一郎時代からであり、それをもっと悪くしたのが安倍晋三である。
 このことだけはしっかり頭の中に叩きこんでおこうではないか!
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 山尾志桜里(43)と会ったのは8月4日。ビジネス情報誌『エルネオス』の対談だった。四ツ谷駅にほど近い喫茶店の2階。

 少し遅れてきた山尾は、息を切らしながら「すいません」と一人で入ってきた。

 少し前に蓮舫民進党代表が辞任を発表していた。2回生ながら、民進党の政調会長に抜擢され、匿名ブログ「保育園落ちた、日本死ね」を国会で取り上げ、待機児童問題を前に進めるなど、山尾は存在感を増していた

 私は政治家が嫌いだ。連載対談で会った政治家は数人しかいない。それも中身のある話を聞けたことは一度もない。

 だが、山尾と自由党の森ゆうこには「会ってみたい」と思わせる何かがあった。質問の内容はもちろんだが、安倍首相のウソを追い詰める気迫が他の議員とは違った。

 2人の女性議員が安倍首相を追い詰め、稲田朋美、豊田真由子、今井絵理子のおバカ女たちが自ら身体を張って安倍政権を瓦解させていったのである。安倍の提唱する「女性が活躍する社会」が皮肉な形で実現したのだ。

 山尾は子ども時代、ミュージカル『アニー』の主役になり脚光を浴びた。その後、東大法学部に入り司法試験を受けている。

 対談で山尾は「司法試験は6度落ちている。これは自民党の谷垣禎一(さだかず)と同じです」と言っている。その時は焦ったが、「その経験から、粘り強くというか、しつこいタイプになったので、12年の選挙で落選して浪人してもものともせず、ここまで来ております(笑)」(山尾)

 検察官を選んだ理由を「クライアントから依頼されるのではなく、フェアな立場でものをいうのがいい」と思ったからだそうである。

 その後、思うところあって検察官を辞し、2009年、小沢ガールズの一人として民主党から出馬し、当選した。

 検察官の経験が国会質問で生きているかと問うと、「一問目の質問には、向こうも否認するから、二問目が勝負だと質問を組み立てていく」ところが重なるかもしれないと言った。

 民進党の政策がわかりにくい、自民との違いを前面に出すべきだと言うと、民主党政権時代の失敗を踏まえて、今度は必ずやると、政策の一端を熱く話してくれた。

 「具体的に言えば、教育の無償化って民主党時代から言ってますが、保育園から大学まで、基本的には社会が面倒を見ようという政策です。私はそれをやるべきだと思っているんです。そうであれば、最初に『増税させてください』じゃなくて、二年間でもいいから政策を先行させ実現して実感してもらう。
 それでよかったねとなったら、三年目からは負担をお願いする。それぐらい国民の理解を大事にする知恵みたいなものを、政治というのは持たなきゃいけないなと思う」

 長島昭久や細野豪志(ごうし)といった選挙に強い連中が離党しているが、どう思うかと聞いてみた。彼女は決然とこう言った。

 「どこかと組まないとやっていけないような弱い政党や弱い政治家は、どことも組んでもらえないですよ

 当時、前原誠司と枝野幸男が代表選を争い、前原優勢だと言われていた。彼女は前原支持である。

 私は、前原のような古い体質の人間が党の顔になっても支持は広がらない。あなたのような若い人が代表になる時代が早く来てほしいと、本気でエールを送った

 素顔は笑顔が素敵な綺麗なおばちゃんという感じだった。雑誌にはニヤけた私と山尾のツーショットが載っている。

 それから約一月後。前原が代表に選ばれ、山尾が幹事長に内定という報道に、これで民進党が変わると拍手した。

 だが、一転、代表代行に替わり、それも消えてしまった。

 党内から、山尾では党をまとめきれない、力不足だという批判があると報じられたが、理由はそうではなかった。

 9月7日に発売される『週刊文春』(9/14号、以下『文春』)が山尾の不倫を報じているという情報が流れたからだった。

 山尾志桜里がW不倫? バカヤロー! 思わずそう叫んだ。

 9月末から始まる臨時国会で、森ゆうこと並んでパワーアップした山尾が、加計学園問題で安倍首相を追い詰めることを期待していただけに、残念というしかない。

 『文春』によれば、不倫相手は倉持不倫太郎ではない、麟太郎弁護士で、山尾より9歳年下の34歳。

 皮肉なことに「彼の得意分野は企業コンサルタントや離婚・男女問題」(弁護士仲間)。憲法問題についても詳しいそうで、「安倍政権が目指す憲法改正や安保法案に対して批判的な立場を鮮明にしている」(永田町関係者)

 安保問題や皇室問題で議論しているうちに山尾と意気投合したようだ。山尾にはIT実業家の夫と長男がいて、倉持にも妻子がいる。

 9月2日、前原から山尾に「幹事長就任」が内示された日、2人は午後8時ごろ、品川駅近くの高級ホテルに現れたという。

 山尾が先に来てフロントでカードキーを受け取り、足早にエレベーターホールに向かう。

 約20分後、倉持が現れる。赤ワインとビールを持って、フロントを経由せずに直接客室へ。36階のダブルルームで、そこからは東京の夜景が一望できるという。

 その部屋にはベッドが一つしかないと『文春』は書いている。『文春』は後でその部屋に入って確認したのかもしれない。

 2人がホテルをチェックアウトしたのは翌日早朝だったそうだ。その前の8月31日、ホテルニューオータニで開かれた前原陣営の決起集会に顔を出した山尾は、すぐに消え、恵比寿のイタリアンレストランで倉持とグラスを重ねていたという。

 その後、時間差を置いて、倉持が自宅とは別に借りているマンションに入り、山尾が姿を見せたのは翌日の午前2時半だったという。

 「本誌が確認しただけでも、代表選を挟んで、二人は週に四回逢瀬を重ねている」(『文春』)

 『文春』は山尾を直撃している。倉持弁護士とはどのような関係か? 「といわれましても……」。不倫関係にあるんじゃないですか? 「ないですけど」「(取材は)事務所のほうにお願いいたします」、そう言って足早にその場を去ったという。

 倉持のほうは、別宅のマンションに山尾氏は来たか? 「ええっとーー、ないですね。たぶん。記憶にないですね」としどろもどろ。

 『文春』が発売された夜、山尾が民進党を離党すると発表した。桜のように散り際だけは潔くということだろうか。

 山尾は声明文を一方的に読み上げるだけで、記者の質問には一言も答えなかった

 「政策立案や質問作成などの打ち合わせと具体的な作業のため、倉持弁護士とは頻繁にコミュニケーションをとってまいりましたし、こうした打ち合わせや作業は、2人の場合もありましたし、それ以上の複数人である場合もありました。
 打ち合わせ場所については双方の事務所、また会食の席上、こういった場合が相当多数回ありますが、同弁護士のご自宅の場合もありました。また、本件記事記載のホテルについては、私1人で宿泊いたしました。
 倉持弁護士と男女の関係はありません。しかし、誤解を生じさせるような行動で、さまざまな方々にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しお詫びを申し上げます」(山尾)

 涙を必死でこらえる姿が、彼女の激しい後悔と無念さを表していた。

 記者の質問に答えなかったのは「一問目は否認する」という検察官としての常道を踏まえたのかもしれない。しかし、記者から飛んでくるであろう「いい大人がホテルに泊まって男女関係がなかったとはどういうことか」という二問目の質問には答えられない。そう考えたのではないか。

 会見を見ながら「バカな女だ」そう独りごちた。不倫したことを詰(なじ)ったのではない。人間は時としてめしいることがある。政治家が不倫をしようと、私には石を投げる資格などない。

 だが、小なりといえども野党第一党の幹事長に内定していた人間が、自己コントロールができず、欲望のままに男とホテルにしけこむというのは、リーダーとしての資格に著しく欠けると言わざるを得ない。

 前原もつくづくツキのない男である。最初の代表の時は「偽メール事件」の責任を取って辞任した。

 捲土重来(けんどちょうらい)を期して再度代表になったが、早々と党の顔を不倫というスキャンダルで失ってしまった。

 山尾のゲス不倫で民進党は死んだ! そうなればほくそ笑むのは安倍首相である。

 10月のトリプル選挙まで議員辞職せず、その後辞職するのだろうか。自民党の中でも「山尾がいなくなるのは惜しい」という声が出ているようだが、私は同情しない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 『ポスト』がこのところ熱心に取り組んでいるのが、75歳まで年金受け取りを延長して、高齢者を働かせ、搾取しようと画策している政府と役人たちの「謀略」批判である。一部の大企業では65歳まで働けるようにはなってきたが、給与は大幅に下げられ、新入社員でもできる部署へ追いやられる。それが74歳まで続くとしたら、実質的な高齢者棄民政策ではないか。今週の『ポスト』は、民間はそうしておきながら公務員には手厚く遇する「差別政策」を成立させようとしているというのである。「日本死ね!」だな。

第1位 「『老後』も『再雇用』も役人はこんなに優遇される」(『週刊ポスト』9/22号)
第2位 「奇跡の腸内物質『スペルミジン』で長生きしても認知症にならない」(『週刊現代』9/23・30号)
第3位 「斉藤由貴と不倫医師『もっと破廉恥』な写真」(『FLASH』9/26号)

 第3位。『FLASH』という雑誌は、ときどきとんでもないスクープを飛ばす。不倫が報じられた斉藤由貴と医師との「自撮りキス写真」を先週スクープして、斉藤に、「不倫していました」と認めさせたが、今週も斉藤の家に上がり込み、女性もの(斉藤由貴のでは?)のパンツをかぶっている医師の写真が掲載された。
 いくらなんでも、ここまでやるかという破廉恥写真である。
 これも2人のどちらかがスマホで撮った写真であろう。その写真が流出したのである。
 斉藤は、こんなプライバシーを侵害する写真が出るのは許せないと、警察に相談しているというが、恥の上塗りになるのではないか。
 不法に流出したのではないとすると、斉藤の夫か、不倫相手の妻がスマホから盗み出し、流出させたのか。
 モルモン教は離婚を禁止しているから、斉藤は離婚しないそうだが、医師のほうはどうなのか。
 大体こんな写真を撮りあうのが正気の沙汰ではない。斉藤には仕事やCMが回ってこないそうだ。これこそ自業自得であろう。

 第2位。『現代』の健康記事。納豆が体にいいのはよくいわれる。納豆健康法の類はあふれているから、今さらだと思うが、老化を遅らせる「スペルミジン」という物質が含まれ、実験用のマウスだが、スペルミジンを投与したら、約25%も寿命が延びることがわかったそうである。
 アメリカ・テキサス州のテキサスA&M大学のチームの一員、ルユアン・リュウ博士が、実験結果を見てチームのメンバーは歓声を上げたという。
 さらに認知症を防ぐ効果まであるそうだ。また、昨年、パリ第5大学医学部では、イタリアのブルーニコで約800人を対象に、どんな食品をよく食べているかを調べたら、スペルミジンの摂取量が多いほど、心不全などの心血管系の疾患リスクが低いということが明らかになったという。
 特に男性でその傾向が顕著だったそうだ。
 そうして結論は「納豆はすごい」ということなのだ。納豆でもひきわり納豆にはスペルミジンが多く含まれているそうだ。
 納豆か味噌汁をとり、それに加えて肉を食べると、さらにいいというのである。
 今夜はひきわり納豆とアメリカ産のステーキにでもするか。

 第1位。『ポスト』の公務員批判記事。役人は現役時代は給料が安く、その代わり、天下りしてその穴埋めをするのだというのは、昔話になったようだ。
 『ポスト』によれば、民間企業の正社員の平均年収が400万円台なのに、公務員の平均年収は700万円台なのだ。
 さらに60歳定年時の平均退職金は、大卒総合職が2374万円、地方公務員、ノンキャリアの公務員の退職金は平均2315万円、国家公務員は平均2538万円になる。
 このあたりはさほど変わらないと思うかもしれないが、裏では、とんでもないことを企んでいるというのである。
 公務員の定年を65歳にしようというのだ。民間は定年延長といっても会社のお情けで置いてもらうだけで、給料は下がるし、仕事も雑用がほとんどである。
 だが公務員は、給与は下がらず仕事もそのままで、年金が65歳支給開始になる25年に「65歳完全定年制」を実施するスケジュールを立てているというのである。
 様々な優遇をしてもらっているのに、奴らは定年を伸ばし、民間の奴らには75歳まで働け、税金を納めろと鞭でひっぱたいて牛馬のごとくこき使う。
 これでは中国のほうが生きやすいと思ってしまう。こんな国いつでも捨ててやる。そう思わざるを得ない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 私の新入社員時代のことから書かせていただこう。私が講談社という出版社に入ったのは1970年、25歳の時だった。

 1か月の研修で『月刊現代』に配属され、その日に編集長から「よど号ハイジャック事件のJALパイロットの手記をとって来い」と命じられた。

 JALよど号が赤軍派にハイジャックされ、北朝鮮へ亡命したことはニュースで知っていた。その時の石田真二機長が冷静沈着に操縦したことが称賛され、帰国してからはメディアが英雄のように報じていた。

 予備知識はそれだけ。JALに石田機長の自宅を教えてくれと聞いたがノーコメント。先輩に教えられたブン屋さんを手掛かりに、ようやく神奈川県・川崎市だったと記憶しているが、自宅がわかったのは次の日の夕方。

 そのまま川崎へ直行した。夜、恐る恐る自宅のベルを押すと上品な奥さんが出てきて、すまなそうに「まだ帰っていない」という。

 その日は川崎駅近くの温泉マーク(今のラブホ)に泊まり、次の早朝、前夜買っておいた箱入りメロンをもって訪問。今度も奥さんが「主人は朝早くに出てしまいました」とすまなそう。

 そんなことを3日ほど続けたが機長の影さえ見ることができなかった。あとでわかったのだが、機長には別宅があり、自宅には帰って来なかったのだ。

 それ以降は、先輩の後にひっついて取材や作家、有識者との打ち合わせに同道させてもらって、夜になれば、知ったばかりのブン屋、作家などを呼び出して食事をし、酒が入ればはしご酒となること毎晩。

 研修では、たまには作家と会って食事や酒を飲むこともあるから、相手と別れた時刻までを残業として申請しなさいと教えられた。

 まじめだった私は、言われた通り正直に申告したら、その月は残業時間が220時間になった。今のように三六協定などなかった時代である。

 これが経営陣の中で問題になった。当時の講談社としては初めての長時間労働であったようだ。総務だか人事課に呼ばれ、日ごとに時間外の明細を質された。もとより不正に申告したわけではないから、この日は、6時半に何々さんと会って食事をし、その後、近くで酒を飲んだら、何々さんがゴールデン街へ行こうと言い出し、そこで朝の4時ごろまで飲んで別れた。次の日も誰々さんと会って朝3時まで飲んだ。

 校了日になれば、新人は先輩たちの仕事の手伝いをしなければいけないから、1週間続けて朝帰りになる。家に帰って2~3時間寝て出社する。1か月のほとんどが仕事漬けだった。

 先ごろ、電通の新入女性社員・高橋まつりさんが長時間労働と上司のパワハラで追い込まれ、自殺したことが大きな問題になり、電通は社長まで交代した。

 度を越した長時間労働や心無いパワハラやセクハラは絶対許されるべきではない。だが、悩みを打ち明ける相手や嫌なことを忘れて打ち込める何かがあったら、自殺は避けられたのではないかと、残念でならない。

 人口10万人当たりの若者の自殺者数(自殺死亡率)で、日本は先進国の中で突出して高いと厚労省が5月に発表した。

 競争心が強い、全体の一体感や同調圧力が強いことが理由に挙げられるという。つまり協調性のないやつはいくら優秀でも組織から弾き出されてしまうということだが、自殺にまで追い込まれるのは、仲間や上司に相談できる人間がいない「孤立感」があるのではないだろうか。

 私のつまらない昔のことを縷々書いたのは、私は感受性が鈍いため嫌味やパワハラを深刻に受け止めなかったから組織にとどまれたということもあるが、一番の理由は仕事にかこつけてタダ酒が飲めるということであった。

 意地汚い話で恐縮だが、人間なんてそんな小さなことで、生き死にが左右される弱い生き物なのである。

 話は変わるが、8月29日の夕方、東京・千駄ヶ谷近くのゴルフ練習場へ行くとき、建設中の新国立競技場の前を通りかかった。

 何人かの労働者風の人たちが集まって横断幕を持って声を上げていた。急いでいたのでよくわからなかったが、『週刊文春』(9/7号、以下『文春』)で報じている新国立の建設現場で働いていた高橋昭(仮名・当時23歳)さんが自殺したことへの抗議だったようだ。

 『文春』によれば、高橋さんは5大ゼネコンの一つ大成建設の一次下請として、地盤改良工事を担当している専門業者の新入社員だった。

 彼は現場監督として重機の管理などをしていたが、今年3月2日に失踪して、4月15日に長野県内で変わり果てた姿で発見された。

 ネットの「数字で見る芸能ニュース情報・考察サイト」では、高橋さんが残した手紙にはこうあったと報じている。

 「突然このような形をとってしまい、もうしわけございません。身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」

 その後、弁護士が会社・元請けから提供された資料に基づいて分析したところ、明らかになったのは異常な長時間労働であった。16年12月は94時間、今年の1月が143時間、死ぬ直前の2月には212時間というものだった。

 当初、現場監督は3人でやっていたが、1月に1人異動して2人になり、さらに工事の遅れを取り戻すために重機が増え、彼は昼休憩をとる時間もなかったという。

 新入社員に現場監督が務まるのかという疑念があるが、人の多い工事現場では、とりあえず“名称”を付けておくということなのだろう。

 私の大学時代の友人が大手建設会社のOに就職した。京都のはずれの建設現場にあるプレハブ小屋に数か月住み込んでいたから、「慰問」を兼ねて遊びに行った。

 ヒゲづらで作業服姿なので最初はわからなかった。奴も一応現場監督の一人だった。

 高橋さんは、それに加えて、「作業が遅い」と職長や部長に暴言を吐かれていたそうだ。そのくせ、自分たちは喫茶店に行って若手に多くの業務を押し付けていたと、同じ現場で働いていた人間が話している。

 「異常な長時間労働、暴力……。あの現場は地獄でした」とも『文春』に話している。

 「元請の大成の社員は、残業時間を八十時間以内で申告するよう指示を受けていますが、現場社員の多くは百五十時間近く働いています」と、大成の社員も下請けは長時間働かせられていたと証言している。

 高橋さんは失踪する直前、俯(うつむ)きながらフラフラの状態だったという。

 それほど地獄の現場になったのは、元をただせばJSC(日本スポーツ振興センター)が公募でザハ・ハディド氏のデザインを選び、批判が出たからと白紙撤回したためである。

 五輪組織委員会の森喜朗や当寺の文科相・下村博文(しもむら・はくぶん)らによる無責任体制のため、ようやく工事が始まったのは昨年12月、この時点で1年2か月の遅れが出てしまっていた。

 大成建設と森喜朗との「癒着構造」も多くのメディアで報じられた。

 新国立は東京五輪のプレ大会が開かれる19年11月末までには完成させなければいけない。

 そのためには、死人が出てもいいから、なんとしてでも完成させろと上から指示が出て、そのしわ寄せが下請けの労働者にいくという構図は、相も変わらずである。

 五輪に間に合わせるために建設ラッシュが続いているが、会場だけではなく周辺の工事も必要になるため、知り合いの他の建設会社の人間は、「こんな工期でできるはずはない」と言い切った。

 こんなことをしていれば第2、第3の自殺者が出ることは間違いない。

 あの夕方、垂れ幕を持っていた人たちは、大成に対して、「労働者の権利を守れ、長時間労働をなくせ」と抗議していたのだろう。

 これほどまでして東京五輪などやらなくていい。私はそう思う。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 9月3日、北朝鮮は昨年9月以来6回目となる核実験を実施した。ついに来るところまできてしまったかという思いである。ここから一歩進めば米朝戦争必至だが、日米はどうするのだろう。米朝ともに対話ができるリーダーではない。だが、トランプが北朝鮮の核基地を攻撃すれば、北からの報復で、日韓は火だるまになる。キューバ危機の時のように、ケネディがいてくれれば。どこの国にも、真のリーダーがいないことが、今世紀最大の危機を招いたのである。

第1位 「北朝鮮危機」(『週刊現代』9/16号)/「使えないJアラートに100億円超の価値はあるのか」(『フライデー』9/15号)/「撃ち落とせない『北朝鮮弾道ミサイル』」(『週刊新潮』(9/7号)
第2位 「日野皓正74歳が中学生を『往復ビンタ』動画」(『週刊文春』9/7号)
第3位 「認知症で『行方不明』激増! 1万5000人の衝撃」(『週刊ポスト』(9/15号)

 第3位。『ポスト』の巻頭特集。昨年1年間で全国の警察に届け出があった行方不明者のうち、認知症を患っていた人数は1万5432人で、前年に比べ26.4%も急増した。今や行方不明者全体のおよそ2割を占めるという。

 「認知症の行方不明者は、届けが出た当日から数日の間に見つかっているケースが大半です。ただ、昨年も471人が死亡した状態で見つかっています。決して少ない数字ではない」(介護施設情報誌『あいらいふ』佐藤恒伯編集長)

 認知症患者が起こした交通事故も13年が63件だったが、15年には78件と増加を続けている。

 「厚生労働省が14年に調査したところ、身元不明のまま保護されている認知症患者は全国に35人存在することがわかっている」(『ポスト』)

 姿が見えないと気づいたときには1時間以内がデッドラインになるという。

 「初動が重要です。1時間以内に捜索願を出せば同じ町内で発見される可能性が高まる。“周囲に迷惑をかけては……”と遠慮しがちですが、そうしているうちに1時間以上経過すると、町内を出てしまい、顔を知る人物もいなくなる。途端に発見・保護の確率が下がります」(「認知症の人と家族の会」阿部佳世事務局長)

 北海道釧路市や福岡県大牟田市では「SOSネットワーク」という新たな取り組みも始まっている。「行方不明者の届け出があれば、警察だけでなく、自治体や地元のFM局が連携して情報を発信し、早期発見につなげる取り組みだ」(『ポスト』)

 「10年に500万人だった独り暮らしの高齢者は35年には1.5倍の760万人になるといわれています。独居老人が認知症で徘徊を始めたら、行方がわからなくなっても行方不明になっていることすら知られない。そうして孤独に見知らぬ土地で死んでいく悲劇を今のところ防ぐ手立ては存在しません」(前出・佐藤氏)

 独り暮らしで認知症では……絶望的になる。

 第2位。今週の文春砲は、世界的トランぺッターの日野皓正(てるまさ)(74)の狼藉現場
 自分が「校長」を務める世田谷区の中学生たちのジャズコンサートで、ソロドラムを叩いていた男子中学生A君に駆け寄り、スティックを奪い取って「馬鹿野郎!」と一喝。さらにA君の髪を鷲掴みにして往復ビンタを食らわせたというのである。
 このコンサートは世田谷区の「新・才能の芽を育てる体験学習」の一環として行なわれ、今年で13回目を迎えた。
 日野は区の教育委員会から依頼され、第1回から「校長」をしている。日野は現在活動拠点をニューヨークに移しているから、このコンサートへの意気込みが分かる。
 区内の中学生が集められ、4か月間練習し、8月にその成果を発表する。入場料は大人4500円だというから、本格的なものだ。
 ワイドショーでは、日野が中学生に駆け寄り、スティックを放り投げたり、大声を上げ、ひっぱたいている映像が流れた(区の教育委員会は暴力があったと認めていない)。
 なぜ、日野はここまで大人げない振る舞いをしたのか? メンバーの保護者は、A君が長々とソロを続けたため腹を立てたと話している。
 また、このA君、「ドラムの技術が高く、天才肌」(このバンドの関係者)で、個性的な性格から周囲と衝突することも少なくなかったという。練習中にも日野が手を上げたことがあったそうだ。
 このシーンを見ていて、ジャズ映画『セッション』を思い出した。ドラマーを目指す若者と厳しい指導者の激しいぶつかり合いを描いた名画だ。最後に若者が指導者の言い付けを守らず、迫力あるドラムソロを叩き続ける。曲は『キャラバン』。その見事なドラムにみなが引きずり込まれたところで突然、映画は終わる。
 A君が何の曲でドラムを叩いていたのかここには書いていないが、彼も『セッション』を見ていたのかもしれない。
 私は、新宿のピット・インができたばかりの頃に入り浸っていた。日野や、渡辺貞夫、山下洋輔たちが出ていたと記憶している。若い粗削りな日野のペットをビール1本だけとって、飽きずに聞いていた。
 ジャズの神髄はインプロビゼーション(即興演奏)にある。日野も自分の若いころを思い出して、自由にやらせてやればよかったのにと思う。
 A君が自ら『文春』に電話をしてきて、自分が悪かった、今回の件で『ドリバン(ドリームジャズバンド)』がなくなってほしくないと訴えている。
 才能があるからこそ厳しくした。日野はそう言って、A君を名ドラマーとして育てたらどうだろう。私もジャズが好きだ。オフィスでは四六時中ジャズをかけている。

 今週の第1位は北朝鮮問題を扱った『現代』、『文春』、『新潮』の記事。特に『現代』の記事は、これが本当なら国際的スクープである。
 北朝鮮は9月3日に昨年9月以来6回目となる核実験を実施した。

 「朝鮮中央テレビは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に『完全に成功』したと発表した。軍事力行使も辞さない構えをみせてきたトランプ米大統領は、過去最大規模の核実験を強行した北朝鮮をツイッターで批判した。朝鮮半島情勢がさらに緊迫するのは必至だ」(朝日新聞9月4日付)

 それに先立って5日にワシントンで予定されていた麻生副総理とペンス米副大統領との非公式会談が中止された。
 こうした動きをアメリカが知っていた可能性がある。
 一つ間違えれば休戦協定は破棄され、第二次朝鮮戦争が起こる可能性はあるが、どうも日本の対応はイマイチ後手後手と回っているようだ。
 『文春』によれば、8月29日の日本列島越えミサイル発射は予告されていたというのである。日朝外交筋は、朝鮮労働党幹部が「はやく日本列島越えのミサイル実験をやりたい」と話していたという。

 「ロフテッド実験(垂直に近い形で打ち上げ、飛距離を出さない=筆者注)だとあくまで理論上の数値しか得られないという焦りが彼らにはあったようです」(日朝外交筋)

 それを水平に近い実戦形式で発射したのが今回のミサイル実験だったというのだ。
 さらに北朝鮮は、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)実験の動きも観測されているというから、挑発はエスカレートしていくのかもしれない。
 だが、『新潮』によれば、こうしたミサイルを日本の防衛力ではとても撃ち落とすことができないというのである。現在はイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の二段階で撃ち落とす仕組みだが、イージス艦はSM3という迎撃ミサイルだから、弾道直下から撃たないと精度が落ちるそうだ。
 どこからいつ発射するという確度の高い情報をつかめなければ、艦を移動させることは不可能だから、相当難しい。
 またPAC3も、34基配備されているものの、射程範囲は半径20㌔しかない。仮に撃ち落とせたとしても破片が音速で周囲に降り注ぐという。
 防衛省はイージス艦の陸上版、イージス・アショアを導入することを決めたが、これまた、迎撃の最高高度は1200キロしかない。北朝鮮が5月に打ち上げた火星12型は高度2100キロ超だから、これも迎撃不可能だそうである。
 こんな脆弱な防衛体制に大金を注ぎ込んでいるのはいかがなものかと思わざるを得ないが、そのうえ、Jアラート(全国瞬時警報システム)の評判がすこぶる悪いのだ。
 『フライデー』によれば、先のミサイルが発射された29日、北海道から北関東の広範囲で、ミサイルが発射された4分後にJアラートが作動した。
 そして12分後に「ミサイルが上空を通過した」という情報が届いたが、こんなわずかの時間では、避難できるわけはない。
 Jアラートについては当時総務相だった麻生太郎が、各自治体に迅速に情報を送るJアラートの開発などを提案した。
 それによって総務省消防庁で04年から開発が始まり、07年に運用を開始している。
 総務省はJアラートを導入した全国の自治体に92億円余りの整備事業費を交付し、メンテナンスに年間数億円かかるから、これまでに100億円以上の税金が投じられていると『フライデー』は報じている。
 このシステム、実際に発信するのは首相官邸地下1階にある内閣官房の危機管理センターで、責任者は安倍首相、不在の時は菅官房長官になるそうだ。
 避難する間もないアラートに100億円は高いが、正確に「ミサイルは東京都中野区の何丁目をめがけて飛んできています。すぐに避難して!」といわれるのも怖いだろうが。
 次に『現代』のスクープ記事。内容はすこぶる興味深い。なるべく多くを紹介したい。
 「本誌はある信頼できる人物を介して、平壌(ピョンヤン)の朝鮮労働党幹部との接触に成功した」という書き出しで始まる。
 なぜ頻繁にミサイル実験を繰り返すのか、それは日本に向けたものか?

 「そんなことはない。将軍様(故・金正日(キム・ジョンイル)総書記)は『アメリカは、こちらが強硬に出ないと振り向かない。そして核とミサイルを手放した時に襲ってくる』という遺訓をのこされた。現在の元帥様(金正恩(キム・ジョンウン)委員長)も、まったく同様に考えておられる。(中略)
 わが国は現在、3人のアメリカ人を拘束しているので、アメリカはわが国を軽々にはできない」

 日本を超えるミサイルを撃つのは日本を標的にしているからか?

 「中でも首都、東京にほど近い横須賀基地を叩くのが、一番効果があるに違いない」

 アメリカが平和協定を結ぶと約束したら、核兵器とICBMのどちらを放棄するのか?

 「まずは平和協定を締結することが先決だ。平和協定が締結されれば、わが国の軍事的リスクが軽減されるのだから、もし必要でないものがあるなら、持っていることもないだろう」

 トランプ米大統領が北朝鮮空爆を決断したら?

 「核兵器を搭載したICBMを、アメリカ帝国の首都ワシントンに向けて撃ち込む。『ただ一発だけワシントンにブチ込めれば本望だ』と、元帥様も常々おっしゃっている」

 そうなればアメリカは総攻撃に出るが?

 「それは覚悟している。アメリカとの問題は、究極的にはプライドの問題なのだ。われわれはいかなる脅しにも屈することはなく、本気だということを示すまでだ」

 8度目の制裁決議が採択されたが?

 「おそらく輸出が半減するだろう。すでに平壌市内でも、配給の遅滞やガソリンの使用制限が始まっている。
 だが石油に関しては、こういう事態を予期して、昨年のうちに中国から大量に仕入れている。そのため当面の使用分は確保している。
 加えて、ロシアから鉄路などで輸入している。ロシアは石油供給に、非常に協力的だ。
 また、労働者の輸出については、相手国と水面下で合意すればよいだけの話で、楽観視している。
 いずれにしても、わが国は1953年以降、常に制裁を受けてきており、耐えることには慣れている

 現在、北朝鮮をバックアップしている大国は、中国ではなくロシアと考えてよいのか?

 「その通りだ。プーチン政権とは、蜜月時代を築いている」

 ICBMの技術もロシアから得ているのか?

 「現在の朝ロ関係は、過去最高のレベルにあり、ロシアが多くのことを支えてくれている。
 一例を挙げると、72回目の祖国解放記念日(8月15日)に、ロシアは40人ものメンバーから成るモスクワ交響楽団を平壌に派遣し、祝賀の演奏会を開いてくれた。
 それに較べて中国は、祖国解放記念日の式典に、金日成(キム・イルソン)総合大学の中国人留学生さえ顔を見せなかったのだ」

 プーチン大統領は、9月6日、7日にウラジオストクで行なわれる東方経済フォーラムに合わせて、安倍首相と日ロ首脳会談を行なう予定だが、その時、平壌に立ち寄る計画はあるのか?

 「その予定はない。だがわが国は、年内のプーチン大統領の訪朝を要請していて、ロシア側は前向きに検討してくれている。
 もしかしたら、元帥様が先にモスクワを訪問するかもしれない。元帥様のモスクワ訪問はもともと、15年5月にモスクワで戦勝70周年記念軍事パレードが開かれたときに検討していた。
 ともあれ、元帥様の初外遊が、モスクワであって北京でないのは確かだ

 北朝鮮と中国との関係は、かなり悪化していると考えてよいのか?

 「1949年に国交を結んで以来、最低レベルまで落ち込んでいると言える。朝鮮戦争(1950~53年)以降、朝中両国は互いに『血盟関係』を唱え続けていたが、いまやむしろ敵対関係に近い」
 「すべての原因は、習近平が変節したことにある。習近平は信用ならないから、わが国のミサイルは、いつでも向きを変えて北京を狙えるようにしてある

 これが真実の声なら、トランプが話し合うべきは習近平ではなくプーチンなのだ。だが、したたかなプーチンでは、トランプはもちろん、安倍総理などでは歯が立つまい。
 トランプが暴走して、空爆を指示しないか、それが心底心配だ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦