コトバJapan! 元木昌彦 の 記事一覧

元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。


 少子化が止まらない。総務省が先日(7月5日)発表した人口調査で、生まれた子どもの数は100万人を切り、昨年1年で約30万人、人口が減った。

 『週刊現代』(7/22・29号、以下『現代』)が縮小を続ける日本の「未来の年表」という特集を組んでいる。これまでも言われ続けていることだが、一つひとつ見てみよう。

 「92年に205万人だった18歳人口は、09年から数年は120万人前後が続く『踊り場』の状態にありましたが、2018年頃(121万人)から大きく減り始める見込みです。(中略)こうなると、私立大学は当然のこととして、国立大学にも潰れるところが出てくる」

 こう語るのは『未来の年表』 (講談社現代新書)を書いた河合雅司・産経新聞論説委員。2020年には女性の過半数が50歳以上になるのだから、子どもを産める女性が少なくなっていくので、少子高齢化・人口減少に歯止めはかからない。

 2021年には「団塊ジュニア世代」が50歳に差し掛かるが、この頃から介護離職が増え始めるという。

 さらに今後は、介護スタッフがさらに厳しい人手不足に陥ることが見込まれる。25年には約253万人の需要が見込まれるのに対して、215万人程度しか確保できないから、約38万人もの介護スタッフが不足する。

 2025年には、ついに団塊の世代全員が75歳以上となり、後期高齢者の人口全体に占める割合は18%にも達する。

 25年の東京圏(東京、千葉、神奈川、埼玉)の後期高齢者は572万人になり、今と同じ割合で通院すれば、約420万人にもなる。現在の病院にこれだけの人数が押し掛ければ、完全にパンクしてしまう。

 さらに長期的問題になるのは医療費である。08年の厚労省のデータによれば45歳から64歳の一人当たりの医療費が年間約25万4100円であるのに対して、75歳以上の医療費は約83万円と3倍以上になる。

 全国紙社会部記者がこう言う。

 「75歳以上人口の激増によって、25年には、政府の医療費負担は56兆円にのぼると見られています。こうした予測を受け、すでに高齢者の自己負担の引き上げが予定されています」

 そうなると保険適用されている高額な治療が少しずつ保険適用から外され、自由診療になっていくことは避けられない。医療の二極化が進んでいく。


 当然ながら認知症患者も増える。新聞でよく報じられるように、万引きなどの軽犯罪で逮捕される高齢者が続出する。

 これが「認知症社会」の現実である。

 「すでに認知症の高齢者が、同じく認知症のパートナーを介護する『認認介護』の問題が顕在化しつつある。当然リスクは高く、今後は介護中の事故がじわじわと増えていくと考えられます。さらに、ひとり暮らし世帯が激増することが見込まれています。多くの認知症高齢者が、一人で暮らさざるを得ず、孤独死を強いられる。そういう状況がもうすぐそこまで迫っているのです」(河合雅司氏)

 行方不明者も増える。16年、認知症の行方不明者は1万2000人を超えたが、認知症の患者数、介護施設の不足などを考えれば、25年には行方不明者が2万人を超えるのは確実だという。

 それに、家族が認知症になったからといって、引き取ってくれる介護施設は見つからない。「東京圏(東京・千葉・神奈川・埼玉)の15年段階での要介護認定は91万人です。人口に対する要介護の比率が同じだとすると、25年には、これが132万人となる。
 現状でさえ、要介護認定91万人に対して、介護老人保健施設や特養など介護保険施設は19万6000人定員で、どう考えても足りていない状態。今後はこれがもっと不足する可能性がある。危機的な状況です」(政策研究大学院大学・松谷明彦名誉教授)

 厚労省は、認知症高齢者増加に対する総合戦略である新オレンジプランをまとめているが、早期診断のための医療機関の整備が遅れるなど、政府の思惑通りには進んでいない。

 若い働き手が少なくなるとどうなるのか。

 「今後、若年層の人口が減る中で働き手が減少し、コンビニやスーパーといった若年層を雇用する傾向のある業種は、次々に深刻な人手不足になってきます」(流通コンサルタントで株式会社イー・ロジットの角井亮一代表取締役)

 こうした人手不足が、国民の生活基盤に深い打撃を与え始めるのは30年頃だそうである。

 95年に8716万人でピークを迎えた生産年齢人口は、2027年には7000万人を下回る。さらに経産省の調査によれば30年、IT業界の人材は78万9000人不足するという。

 角井氏によれば、「小売り、物流、ITは、人手不足について相関関係がある」という。

 2030年には38道府県で働き手が足りなくなると予想されている。

 さらに地方からは銀行すらも消えていく。フレイムワーク・マネジメントの津田倫男代表がこう解説する。

 「銀行は地方で貸出先を見つけられないことから多くの地銀は統合・合併を繰り返し、現在の105行が、5年以内に20~30グループに、10年後には全国で8~12行といった寡占体制になると考えられます。
 問題となるのは、『県内合併』です。たとえば、現在2行2店しかないような地域で、仮に店舗が統合され、競争原理が働かなくなると、借り手が高い金利を吹っかけられるなど、不利になる場合もある」

 内閣府の『地域の経済2016』では、40年には有料老人ホームは、23.0%の自治体で維持困難になる。在宅ベースの介護サービスを受けることが難しい地域も出てくるとしている。

 2033年には団地やマンションがスラム化していく。

 「これから空き家が大問題になるのは首都圏です。郊外に暮らしてきた団塊の世代が2023年には後期高齢者となり、施設に移るなどしますが、その家の引き取り手がいない。売りに出そうにも需要はない。結果、大量の空き家が発生します。世田谷や杉並、練馬といった土地でも、駅から少し離れた場所では、そういった状況になっていく」(オラガ総研代表・牧野知弘氏)

 野村総研の推計によれば、2033年には日本全国の3戸に1戸が空き家になっているという。

 空き家率が30%を超えた地域は、治安が著しく悪くなるといわれている。そうした地域はスラム化したり、犯罪の温床になったりする可能性が高いと牧野氏は言う。

 こうした地域ではインフラの問題も深刻である。

 老朽化するインフラ整備にかける予算は年々増加しており、国土交通省によれば、2033~2034年にかけて、最大の5兆5100億円が投じられるとみられているそうだ。

 2036年には東京でバスの本数が激減する。2037年には新聞を取る人がいなくなるという。

 現状のままいけば、今から20年ほどで、年金をはじめとした社会保障制度が破綻するという指摘は多い。

 「年金の支給額は目減りしていきますし、これから給付開始年齢も引き上げられるでしょう。しかし、延命策をとっても、少子化という根本問題が解決されない限り、この仕組みは崩壊してしまう。仕組みの前提が崩れてしまうのです。あと20年もすれば、支給額がほぼゼロになるといった『制度の終わり』が見えてきます」(北村庄吾・社会保険労務士)

 さらに追い打ちをかけるように、所得税率も上がる。現在も年収が4000万円を超えると税率は45%となるが、この税率が一つの基準となり、一般的な収入の国民にも適用されることになる。現在、年収695万~900万円の場合、税率は23%だが、これが45%となり、最高税率は50%を超えるところまで引き上げられるだろうと『現代』は言う。

 2040年には119番をしても救急車は来ない。現在は電話をしてから到着までの平均時間(全国)は10分を切っており、「電話をすれば救急車が来てくれる」状況にある。だが、それも過去のものとなる。

 2053年には人口が9924万人となり、1億人を割り込むことになる(国立社会保障・人口問題研究所〈社人研〉の推計)。ピーク時の95年に約8726万人だった生産年齢人口は、約5119万人にまで落ち込むのだ。

 働き手が減り、イノベーションが起きないと日本の経済力が低下していく。イギリスのコンサルティング会社・PWCが15年に行なった推計によれば、50年の日本のGDPは世界7位になる。中国、インド、アメリカは当然のことながら、インドネシア、ブラジル、メキシコにも抜かれ、小国になっていくことはもはや必然だそうだ。

 『現代』はこう結ぶ。

 「縮小するニッポンをどうすればいいのか。対策は多くはないが、その時を漫然と迎えるのではなく、今すぐ覚悟を決め、国を挙げて備える必要に迫られている」

 週刊誌の悪いところは、問題を指摘するが、その解決策を提示することがないことである。

 頭の悪い官僚たちは、この危機的状況を「打開」するためにやることといえば、歳出を抑えるか、増税して国民の負担を増やすか、二通りの考えしか浮かばないだろう。

 12年には経団連が、25年までに消費税を19%に引き上げろと提言している。世界的に見れば、南カルフォルニア大学のセラハッティン・イムロホログル教授は、2019年から2087年の間、約60%の消費税率にすることを提案しているという。

 どちらにしても。このままいくと段階的に消費税率引き上げが行なわれ、40%程度になる日がくるといわれているそうである。

 ふざけるなである。哲学者の内田樹は、私との対談でこう言っている。

元木 ところで、日本が抱えている最大の問題は少子高齢化だと思います。現在の前期高齢者が後期高齢者になるのが2025年ですが、全人口の4人に1人が後期高齢者という超高齢化社会になります。膨らみ続ける医療費や介護費用などの社会保障費問題をどうしたらいいのでしょう。
内田 こうなるということは、もう五十年前、六十年前からわかっていたわけです。その間何もしないで、そろそろ危ないぞと考え始めると言うんですから、日本の役人というのがいかにバカかということです。
 これを国民的問題だとか言われたら、それを考えるのがお前たちの仕事だろ、制度設計するのが官僚の仕事なのに、五十年間放置しておいて、尻に火がついてから考え出すなんて、ばかやろうですよ。この問題に関しては、全部役人が悪いと言っていいと思うんです。
 そりゃそうでしょう。国民が年金制度とか医療保険の制度なんか考えられるわけないじゃないですか。どういう仕組みになっているかもわからない。全部、専管事項で役人がやっていたわけです。挙句の果てに、潰れそうだから税金上げますって言われたって、それはいくらなんでも職務怠慢なんじゃないですか。
 自分たちの失敗に誰も責任を取らないで先送りしていたら、いい加減なことしか考えないですよ。僕は怒りますよ。これを国民的な問題だなんて投げ返すんじゃないよ、ばかやろうと言う。おまえらの責任だよ。制度が崩壊したら尻拭いするのは僕らなわけですから。

 今こそ、役人の無策、政治家の無責任に対して怒る時であること間違いない。そうしないと手遅れになる。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 安倍政権が追い詰められてきた。時事通信の調査(7月7日~10日)で、ついに支持率が30%を切ったのである。それもこれも、身から出た錆。だらしのない野党も、女性議員たちの力を結集して、安倍一強政権を打倒してもらいたいものである。

第1位 「逃げ隠れする『加計孝太郎理事長』の疑惑のスイカ」(『週刊新潮』7/20号)/「加計学園問題 証人喚問で真相を暴け!」(『サンデー毎日』7/30号)
第2位 「どこまでやるの『松居一代』と『船越英一郎』」(『週刊新潮』7/20号)/「松居一代『虚飾の女王』」(『週刊文春』7/20号)/「松居一代がひた隠す『7つの嘘』」(『女性セブン』7/27号)
第3位 「リアル店舗『アマゾンブックス』はサイトとリンク」(『AERA』7/24号)

 第3位。このところアマゾンのことをあちこちで取り上げている。
 これはアメリカのアマゾンだが、137億ドル(約1兆5300億円)で自然食品スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを買収する計画を発表した。
 もはやアマゾンは本や家電、薬品、雑貨だけではなく、スーパーの分野でも世界一を目指そうというのである。
 だが、アメリカでは、リアルな大型書店をつくったことでも話題を呼んでいる。
 『AERA』によると、それはニューヨークのマンハッタンに近いアマゾンブックス。書店にしてはすごい混みようで、店内では皆がスマホを手にしている。
 アマゾンのカメラアプリを開いて本のカバーを撮影すると、本の正札と「アマゾンプライム会員」である場合の値引き価格がすぐに表示される。
 アジア系の父子は、アマゾンの人工知能スピーカー「エコー」のところへ行くと、店員を質問攻めにしたという。
 「エコー」か。私も買いたいな。日本でも話題の本、『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)は、正札は27.99ドルだが、プライム会員は12.59ドル。
 アプリに登録しておけば、クレジットカードですぐに買える。買ったものが重い本なら、配達もしてくれる。
 アマゾンが得意な、本を買おうとすると、こんな本もありますと表示してくれる。スマホさえあれば、何もいらずに買い物ができる。実物の本を見て、プライム会員になれば大幅な値引きがある。
 日本ではまだ「再販制度」があるから、このような値引きはできないが、書店の新しい形として、こうした大型書店が東京などにできれば、話題にはなるだろう。
 書店の閉店が続く日本では、こんなものができれば紀伊国屋なども危ないかもしれない。早急に、新世代の書店づくりをみんなで真剣に考えるときである。

 第2位。さて、夫・船越英一郎(56)を詰(なじ)り続ける松居一代(60)だが、『新潮』が潜伏先でコンビニへ行き、カップ味噌汁を手に持って歩いている松居のさえない姿をカメラに捉えた
 さすが『新潮』である。松居は動画で、89歳のおばあちゃんの家に匿(かくま)ってもらっていると話しているが、『新潮』によれば、元々は松居の息子と親しい20代の大学生の家で、彼はベンチャー企業で映像クリエーターを務めているから、松居に頼まれて動画づくりを手伝っているそうだ。
 当のおばあちゃんはこう話している。

 「松居さんは自分の車に身の回りの物だけ載せて、私の家まで来ました。匿ってもらっているのがバレることをそこまで警戒していなかった時には、近所の銭湯にも行っていました」

 松居は、船越の浮気の証拠を掴むためにハワイまで行ったとも話していたそうだ。
 松居は、船越が糖尿病でSEXができないため、バイアグラ100ml(mgの誤り)という強いものを飲んでいると言っている。船越がもし「ヘモグロビンA1c」9・3だとしたら、相当深刻な糖尿病である。
 その上船越は心臓疾患があるというのだから、性行為で心拍数が上がると、狭心痛が発生し、心筋が壊死して腹上死に至ることもある。
 『文春』は、船越の大学ノートを手に入れた。そこには手書きで、

 「<・病院の証明書
 ・DV関連の大学ノート(手書き)
 ①一代と自ら話し合い。弁護士を立ててくれ。私の代理人に●●先生。宣言。もう直接は話せない。
 ②離婚条件は通常の財産分与、半分。
 ③調停(短く!)→裁判。
 ④マスコミ対応>」

 などと書かれているという。
 離婚調停から裁判に至るまでの手順と、病院の診断書など松居によるDVの証拠を用意した上で、弁護士と話し合うようだ。ノートのあちこちにN来日、などNというイニシャルが多く出てくる
 松居は、このNが船越の不倫相手だと確信しているようだ。
 当然船越側の言い分は違う。2人の仲が決定的になったのは、15年10月の松居の出版会見で、彼女が、船越が川島なお美(2週間前に亡くなっている)と交際していたことを暴露したことからだそうである。
 船越は激怒し、その後も口論になった。すると翌日、松居は船越のマンションの玄関前に、船越家の仏壇や両親の位牌を乱雑に放置したそうだ。やっと船越は腹を決めた。
 可愛さ余って憎さ百倍。一度こじれると男女、特に夫婦というのは難しいものだ。
 『女性セブン』は、2人の問題を以前から取材していた。だが、松居の言い分には嘘が多いと報じている。
 『セブン』によれば、松居は『文春』の編集長に手紙を送り、この件を取材してくれるよう頼んだ。船越と不倫相手との「証拠」を探しに、『文春』の女性記者とハワイに行ったが、それらしい証拠は見つけられなかったという。
 さらに、16年11月14日に、船越のバッグにあったバイアグラを見つけ、問いただしたと松居が言っているが、その日船越は京都でロケ中、東京の自宅にはいなかったと松居の嘘を指摘している。
 不倫はない、バイアグラの件も創作だとしたら、船越側は、名誉棄損や偽計業務妨害罪で松居を訴えることができるというが、船越は、一刻も早く別れたいのだから、そんなことはしないだろう。
 修羅のような夫婦の姿を描いた作品では島尾敏雄の『死の棘』がよく知られる。その小説の真実を知ろうと、生前の島尾の妻・ミホのインタビューや残された2人の資料を読み込んで、「愛の神話を壊し、創り直した」梯(かけはし)久美子の『狂うひと』(新潮社)はノンフィクションの傑作である。
 ミホは梯に「そのとき私は、けものになりました」と言った。夫の日記を読み、夫に愛人がいたことを知った時の衝撃、そこから始まる夫婦の「地獄絵」を島尾は書き続けた。こんな描写がある。

 「妻が私を責める気配が見えさえすればすぐそうしないではいられないし、妻はまたきまってそれを止めにかかる。(中略)そうはさせまいとするから私と妻はどうしても組み打ちになる。くりかえしにあきてくると、もっと危険な革バンドやコードを用いることをえらび、首のしまりがいっそう強く、だんだん限界がぼやけてくる。ここで、もう少し力を入れたら向こうがわに渡ってしまうかもしれないと思えるところまでしめると、妻も力が加わり、組み打ちもひどくなった」(『死の棘』より)

 こうしたことを繰り返し、ミホの狂気が増幅していって精神病棟に入院してしまう。以来、島尾はミホの要求をすべて受け入れ、徹底的に従うことになる。
 梯は、この小説には、ある種の虚構があるというが、私もそう思う。だが、事実と、それを小説としてまとめるのとでは、何かが違っていて当然であろう。
 事実だがどうしても書けないこと、事実より誇張して書きたくなることはある。私もここまでではないが、似たような修羅はあった。だが、それを書こうとすると、きっと出来上がったものは事実と違うものになってしまうのだろう。
 船越と松居の修羅は、どこまで続き、どういうエピローグを迎えるのだろうか。一段落したら、松居にこの間の顛末を書かせると面白いものができるかもしれないが、あまりにも一方的な内容になるからボツか。

 さて今回の第1位は『新潮』の、安倍を窮地に陥れている「お友だち」である加計(かけ)学園の加計孝太郎理事長(66)を追いかけた記事にあげたい。腹心の友が友人の大変な時に、助けるのではなく、雲隠れしたままなのである。
 だが、7月8日の夕方、『新潮』は、岡山市内で加計夫妻が白い小型ジープで、スーパーへ買い物に行く姿を捉えた。ハンドルを握るのは20歳近く年下の妻。加計は8年前に長年連れ添った妻と離婚し、この女性と再婚している。
 スーパーでは、カレールーの品定めをし、デザート用のスイカを買ったという。『新潮』が直撃すると、最後まで無言のまま、逃げるように走り去ったそうだ。
 こども園から大学までを擁する一大教育コンツェルンのトップが、疑惑に答えず逃げ回っている姿は見苦しい。『新潮』によれば、加計学園の内情は実は火の車だという。
 『今治(いまばり)加計獣医学部問題を考える会』の武田宙大共同代表は、こう言う。

 「加計学園グループは20以上の学校を有していますが、採算が取れているのは岡山理科大くらいしかありません。他の千葉科学大や倉敷芸術科学大は定員割れが続き、赤字が慢性化している。その結果、岡山理科大の黒字で補填せざるを得ない有り様です」

 加計学園は、15年の3月から岡山理科大と倉敷芸術科学大のキャンパスを担保にして、日本私立学校振興・共済事業団から50億円を超える借り入れをしているという。
 この利息の返済を来年3月から始めなければいけないそうだ。そのために、安倍を動かし、萩生田光一たち側近が文科省へ押しかけ「獣医学部開校は来年4月」と尻を切って強引に認めさせたのではないか。そう『新潮』は見ているようだ。
 どちらにしても、安倍首相だけではなく、加計孝太郎理事長をも国会へ招致して説明させなくては、この問題はいつまでも燻ぶり、安倍政権を骨の髄まで蝕むことは間違いない。
 さて、安倍首相が自らの嘘がバレるかもしれないリスクを冒して1日だけだが、国会審議に応じるという。
 それを迎え撃つ野党側は、どこをどう攻めればいいのだろう。『サンデー毎日』で、元経産官僚の古賀茂明は「規制緩和を錦の御旗(みはた)にしたお友だち優遇でしかない」と断じ、「安倍首相や萩生田氏ら加計と特別の関係にある人が直接『加計を認めてあげてよ』とは言えない。一方、原(英史、特区ワーキンググループ委員)氏や竹中平蔵氏ら特区の民間議員は規制さえ撤廃できれば、事業者は加計であろうと知ったことではない。原氏らが『議論に一点の曇りもない』と言うのはその通りで、彼らは100%撤廃したい。でも、安倍さん側は『反対意見への配慮も必要だから』と10%くらいの穴を開け、そこに加計を入れたということです」
 真相究明のためには、首相はもちろんのこと、加計孝太郎理事長、和泉洋人(いずみ・ひろと)首相補佐官らを国会に呼び、証言させなければいけないこと、言うまでもない。
 野党に求めたいのは、くれぐれも作戦を練り、安倍首相が隠したい「恥部」を徹底的に攻めて攻め切ることをやってほしい。
 場合によっては、小沢一郎議員にも質問に立ってもらえ。安倍政権がこのまま生き残るのか、審議後、政権をおっぽり出すと会見するのか、天下分け目の関ケ原である。くれぐれも油断するでないぞ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 加計(かけ)学園問題で、官邸からの圧力があったと爆弾証言をした前川喜平(きへい)前文科省事務次官が、「風俗店通い」をしていたと、官邸のリークであろうと思われる情報をデカデカと報じた読売新聞は、自ら安倍のポチ新聞であることを公言して世の顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 この“マスゴミ”的所業は、末代まで読売新聞の恥として語り継がれるであろう。

 だが、ほかの大メディアも似たり寄ったりで、読売に石をぶつけることができるメディアなどないのが、日本のジャーナリズムのお粗末な実態である。

 『週刊ポスト』(7/14号、以下『ポスト』)は、元祖・安倍ポチ新聞である産経新聞が運営する神戸「正論」懇話会の講演で、安倍首相が加計学園問題について、「私の友人だから認めてくれ、という訳のわからない意向がまかり通る余地などまったくない」と潔白を主張し、反省も国民への真摯な謝罪もなかったと報じている。

 そもそも論でいえば、国家戦略特区というのは安倍首相が言い出し、その内容を決める諮問会議の議長が安倍なのだから、安倍の「意向」が働いているのは至極当たり前なのである。

 「私がすべてを勘案して加計学園に決めた。文句があるか」と言えば済む話である。疚(やま)しいところがあるから説明もできずに逃げ回っているのだ。

 安倍政権の支持率も急降下し、崩壊する危険水域といわれる30%を切るのも時間の問題であろう。

 一強と言われてきた安倍政権も追い詰められているように見えるが、そうさせないように支えているのもメディアだと『ポスト』が批判している。

 それは、安倍政権の「政府広報費」欲しさのためだというのである。

 都議選告示日から朝日、読売、毎日をはじめ全国の新聞70紙に「弾道ミサイル落下時の行動について」という黄色と赤の派手なレイアウトの政府広報が掲載された。

 政府の全国瞬時警報システム「Jアラート」でメッセージが流れたら、屋外にいる場合は「できる限り頑丈な建物や地下に避難する」、建物がなければ「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」という、子どもだましのバカバカしいことが書いてあるだけだが、これに加えて、全国の民放43局でも同じ内容のテレビCMが流れ、これに支払われた政府広報という税金は3億6000万円にもなると『ポスト』が報じている。

 同じような時期に流れた「男女共同参画週間」の政府提供テレビ番組を合わせると、メディアに流れたカネは約4億円にもなるという。

 都議選の自民党支援、加計学園問題隠しであること間違いない。上智大学新聞学科の田島泰彦教授は、弾道ミサイルの政府広報は、いたずらに国民の危機を煽って不安にさせ、「外敵」の存在を強調する問題の多いやり方で、国民のナショナリズム的な感情を高め、政権が抱えている様々な疑惑から、国民の目をそらせるのが狙いではないかと批判する。

 事実、この一連の政府広報が流された後に行なわれた前川前事務次官の2回目の会見は、「なぜかワイドショーでもほとんど取り上げられることはなかった」(『ポスト』)

 さらに都議選の最中に、日本テレビ系『スッキリ!!』(26日放映)でコメンテーターの橋本五郎・安倍ポチ読売新聞特別編集委員がこう話したというのだ。

 「地方自治は二元代表制。互いにチェックし合ってほしいと住民が知事を選び、都議会議員も選ぶ。あまり知事与党ばかりになってしまうと、チェック機能がなくなってしまう恐れがある」

 一見正論風だが、読売の人間が言うと眉に唾を付けたくなる。

 テレビ局はスポンサーからの広告料が減り、新聞は発行部数が落ちて経営はどこも苦しい。政府広報は取りっぱぐれがない確実な収入源だから、メディアにとっては美味しいが、そうなれば、政権批判がやりにくくなることは当然であると、前出の田島教授は語る。

 私なりに、現在のメディアを色分けしてみるとこうなる。安倍のポチメディアは、産経新聞と読売新聞。経済紙という新聞の性格上、政権寄りにならざるを得ない日経もここに入る。

 毎日新聞が是々非々の中間で、やや反安倍寄りなのが朝日新聞と東京新聞であろう。テレビ局は、政権の管轄下にあるNHK、民放はフジテレビ、日本テレビ、テレビ東京がポチテレビ。

 中立がTBSで、朝日新聞傘下だが、このところ急激に安倍寄りに右旋回しているテレビ朝日もポチと言っていいだろう。いまのところテレビは安倍の思うがままで、真っ当な政権批判など言える局はどこもない。恥ずかしいことだが。

 政府広報予算の話に戻ろう。『ポスト』によれば、この予算は、民主党政権時代に年間約41億円(12年度)まで減らされたが、安倍政権が予算編成を手掛けた14年度は、「消費税率引き上げに国民の理解を深める」という名目で、前年から21億円増の65億円になった。

 消費税を8%に引き上げた15年度には、この消費税宣伝分を削るどころか、「政府の情報発信強化」という名目で約83億円に増額し、わずか3年で2倍にしたのである。

 その後は83億円に据え置かれているが、予算書を子細に見ると、この予算以外に、「マイナンバー制度の周知・広報」に約3億5000万円

 「原子力利用に関する適切な情報発信」に約2億5000万円などが計上され、官邸の実質的な広報予算は90億円を超えていると『ポスト』は指摘する。

 元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資(やすし)は、安倍は第一次政権の時、メディアを敵に回して支持率が激的に下がったため、今回は萩生田光一(はぎうだ・こういち)官房副長官を中心に、メディア対策に力を入れてきた。広告費でメディアを抑え込むというのが安倍官邸の共通認識だという。

 覚えているだろう。消費税を8%に引き上げた時、政府広報予算が21億円も投入され、国民の9割方が反対していたにもかかわらず、新聞とテレビが挙って「増税は必要」というキャンペーンを張ったことを。

 消費税増税で景気が冷え込むと今度は、消費税率10%引き上げの1年半延期を発表し、その是非を問うというまったく大義のない解散を安倍が行なったのだ。

 その際、政府は全国の新聞70紙とテレビCMで「増税延期」の広告を流した。それによって安倍自民は大勝したのだが、メディアが安倍に加担したといって言い過ぎではないだろう。

 15年の安保法案国会では、この年の新聞広告は約17億円。法案審議が佳境に入った6月から9月の強行採決にかけて全国紙に重点的に掲載された。

 こうした効果は絶大で、消費税8%増税の直後、安倍内閣の支持率が57%から60%に上昇するという不可解な動きをし、安保法案の強行採決の後は、朝日新聞の調査では35%(15年9月)まで落ち込んだが、翌月には42%まで持ち直している。

 今回、森友学園、加計学園問題などで支持率を落としている安倍政権だが、『ポスト』は、この流れを変えるために、安倍が考えているのは「憲法改正特需」であろうと読む。

 憲法改正案が国会で発議され、数で勝る与党が賛成すれば、国民投票を実施する。そうなると改憲賛成派と反対派が、それぞれ国の予算を使って新聞やテレビに意見広告を出すことができる

 その金額を総選挙の政党広告予算程度とみると100億円規模になる。さらに個別の政党や民間団体が自由に意見広告を出せるから、新聞、テレビには空前の「改憲特需」となるのである。

 加計学園スキャンダルが萩生田や下村博文(しもむら・はくぶん)元文科相など、安倍の側近に広がる中、安倍は野党が要求している臨時国会の召集を拒否し、加計問題もそのうち吹き消すことができるとタカをくくり続けているのは、「政府と大メディアが政府広報と改憲の広告費というカネをつかみ取りにするという共同謀議を練っているからに他ならない」(『ポスト』)

 7月11日から悪名高い「共謀罪」が施行された。悪事をしようと考えただけで逮捕できるというとんでもない悪法だが、どうせなら逮捕第1号は、安倍首相と、彼と謀議を図っているメディアのトップたちにしてもらいたいものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 いまさらながらだが「女は怖い」。ピンクモンスター・豊田真由子議員を超える女性は、今年は出てこないだろうと思っていたら、まだまだいました。松居一代(まつい・かずよ)と船越英一郎の離婚騒動で、松居が動画を駆使して、亭主の浮気や、バイアグラを使っても役に立たない下半身のことを暴きたて、日本中の爆笑と嘲笑を買っている。一度は愛し合った男をここまで貶(おとし)めることができるとは、女は謎? いやモンスターである。

第1位 「船越英一郎が松居一代に離婚調停<全真相>」(『週刊文春』7/13号)
第2位 「『豊田真由子代議士』のヤメ秘書匿名座談会──もっと事情が知りたい!」(『週刊新潮』7/13号)
第3位 「ビートたけし2017上半期『ヒンシュク大賞』を決定するぜっての!」(『週刊ポスト』7/21・28号)

 第3位。ビートたけし恒例の上半期「ヒンシュク大賞」だが、今回は誰の目にも豊田真由子代議士センセイが断トツだから、たけしも言うことがなくて困っただろう。

 「あまりにテレビの自主規制がひどいんで、オイラも『テレビじゃ言えない』なんて本を出したけど、豊田センセイのおかげで流れが変わったね。あれ以来、ハゲネタはタブーじゃなくなった。センセイが復活したら、国会で『ポコチン』『コーマン』を連呼してもらって、この国の『表現の自由』を死守して頂きたい!」

 ヒンシュク大賞は豊田真由子と不倫で名をはせた中川俊直センセイに決定! たけし曰く、「自民党代議士2回生は、トンデモナイ逸材揃い」だそうだ。

 第2位。今年最大のモンスターになった豊田真由子議員だが、『新潮』は、彼女の事務所を辞めたヤメ秘書たちの匿名座談会をやっている。新たな豊田センセイのお言葉はこうだ。
 「赤信号でも止まるな」「世の中、ホントにバカばっかり」「新しいタイプのおバカさんたち」「このチョギっ!」(有史以来誰も使ったことのない新しいタイプの罵り言葉だそうだ)
 国会では「弱者のために」なんて言っているが、差別意識の塊(かたまり)だとヤメ秘書は語っている。厚労省出身だから障害者施設を回ることが多く、表向きは弱者に寄り添っている風を演じるが、裏では全く違う。

 「施設で障害者が作ったお菓子なんかをもらって帰ってくると、『こんなの、中に何が入ってるか分かったもんじゃない!』とか言って、絶対に口をつけようとしませんからね。この行動が、彼女の全てを物語っています

 ここまでバラされたら、彼女が次の選挙で当選することはあり得ないだろうが、ちょっぴり寂しい気がするのはなぜだろう。

 第1位。松居一代(60)とは私が『現代』編集長の頃だから、20年ぐらい前に会ったことがある。そのときは、彼女の子どもがひどいアトピーで、アトピーを治すためにいろいろの病院を回り、あらゆる本を漁って研究していると、熱く語っていた。
 私の子どももアトピーがひどく、その後、いろいろアドバイスをしてもらったと記憶している。
 離婚した後で、船越英一郎(56)と再婚する前だったが、思い込みが激しく、こうと思ったら何が何でも突き進んでいくタイプで、こういう女性と結婚した男は大変だろうなと思った。
 船越のことはほとんど知らないが、父親の船越英二は好きな俳優だった。日本のマストロヤンニといわれた美男俳優だったが、1959(昭和34)年、大岡昇平原作、市川崑監督の『野火』に主演して、極限状況の敗残兵を演じ映画賞を総なめにした。
 親父に比べて息子は線が細い気がする。そうした男は松居のような気の強い女に魅かれがちだが、この結婚は当初から波乱含みだったと『文春』が報じている。

 「船越家は由緒ある家柄で、英一郎は三十四代目の当主。父で昭和の名優だった英二さんは、跡継ぎとしてひとり息子の英一郎に大きな期待をかけていたこともあり、バツイチで子連れの松居との結婚には猛反対。英一郎の両親は結婚式に参列せず、英二さんは〇七年に亡くなるまで一度も松居と会うことはなかったのです」(船越家の知人)

 松居によれば、船越が両親に松居と結婚したいと言うと、父親は日本刀を抜いて「親を捨てて女を取るのか」と言ったそうだ。だが、親に勘当されても愛を貫くという生きかたもある。
 2001年に結婚して“円満”そうに見えたが、2011年ごろ、船越が自宅から徒歩1分のところに「支度部屋」を購入した頃から、2人の間に波風が立ち始める。
 そして15年に、船越側から離婚の意思を伝え、彼女側は拒否したため完全な別居状態が始まったという。
 船越が離婚を望んだ最大の理由は、松居の「執拗なDV」だそうだ。船越と他の女性とのメール履歴を見つけた松居は、携帯電話を沸騰した鍋に入れて破壊。さらには「離婚する」と言って暴れ出し、ハンガーで船越の頭を殴りつけ、台所から持ち出してきた包丁を船越に向けたそうだ。
 椎間板ヘルニアを患って入院していた船越に馬乗りになって、「さっさと電話をよこせ」と怒鳴り、胸ぐらを掴んでベッドに叩きつけた。
 船越が知り合いの女性と他愛のないメールを送っていたのを松居が発見して激昂し、船越の頭を10回以上殴りつけたなどなど、すさまじいDVがあったと、船越の知人が話している。
 07年、船越の父・英二が亡くなった時、松居は船越に「やっとくたばったか、クソじじい。罰が当たったんだ、ざまぁみろ」と言った。
 松居は自著の出版記念会で、亡くなった川島なお美と船越が付き合っていたことを暴露し、非難された時も、松居は「死んだ女がどうなろうと自分には関係がない。本が売れればいいのよ」と言い放ったという。
 松居という女性はバカではないから、彼女にも言い分がある。船越が糖尿病を発症したとき、おカネより健康が大事だから治療を受けるよう言ったが、健康食品のCMが決まったばかりだったから頑として受けなかった。
 糖尿病があるから、船越とは10年近くセックスレスだが、私は船越を愛していたから、手をつないで寝るだけで幸せだった。糖尿病の合併症で2度顔面麻痺を起こし、激ヤセしたのが心配だったという。
 浮気されるより船越の身体が心配だった。しかし船越はバイアグラを大量に飲んで不倫していた。それも松居の親友と。
 松居は2人が密会をしているところを突き止め、そして彼女はこう決めたという。

 「私は絶対に船越英一郎を許さないと。彼は私をとんでもない悪妻に仕立て上げて、自分を被害者のようにして離婚しようとしている。(中略)絶対に嘘をつかないというのが私の信念です。だから今回、きちんと(『文春』に=筆者注)お話ししたのです」

 両者の言い分は真っ二つ。松居は自分のブログで動画を配信し、船越の不実を詰り自殺すると語ったりしている。
 松居は中途半端な妥協はしないだろう。船越には同情しないが、怖いだろうなこういうカミさんを敵に回したら。結婚は人生の墓場とはよく言ったものである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 政治家にルビを振れという試験が出たら、私なら「バカか」とする。

 このところの政治家どもの暴言、放言を聞いていると、「選良」という言葉が死語になったことがよくわかる。

 豊田真由子(とよた・まゆこ)議員の秘書への「このハゲ~ッ!」という絶叫を含めた悪口雑言は人間業とは思えない。もはや悪魔の領域であろう。

 稲田朋美(ともみ)防衛相の時と場所と身分をわきまえない発言には、「バカか」という言葉しか浮かばない。

 向田邦子は「バカ」という言葉が差別語になったら、自分は放送作家を辞めると言っていたが、幸いなことに永田町にはバカが氾濫しているから、安倍独裁政権下でもこの言葉は禁止しようがなかった。

 自民党議員たちの数々の暴言もあり、先日の東京都議選挙で自民党は57議席から23議席へと歴史的大敗を喫した。選挙後の安倍政権の支持率も4割を切ってしまったのである(7月4日付、朝日新聞)。

 だが、自民大敗の最大要因は、安倍首相が親しくしている「お友だち」の森友学園や加計(かけ)学園への“便宜供与”疑惑に対して、何一つ安倍が説明責任を果たさないことに、国民の怒りが爆発したからである。

 さすがに安倍首相も、これはまずいと思ったのであろう。加計学園の獣医学部新設問題で、国会の閉会中審査の実施と前川喜平(きへい)前文部科学事務次官の招致に自民党が応じた。だが、安倍首相は外遊中だから出席しないというのである。これほど国民をバカにした対応はない。

 都議選終盤、『週刊文春』(7/6号、以下『文春』)は、安倍首相の一番のお気に入りの下村博文元文科相が、文科相時代に加計学園から2年にわたり200万円の献金を受けていたことを報じた。

 下村は幹事長代行で、東京都連の会長として都議選の最高責任者でもあった。下村は早速記者会見を開き、事実無根、選挙妨害だと言ったが、青ざめた顔が、この報道がほぼ事実であることを表しているように見えた。

 『文春』砲の内容はこうだ。

 下村と加計学園が親しいのはよく知られているが、もともとは下村の妻だったという。10年以上も前から親しく、下村夫人と安倍夫人の昭恵、加計孝太郎理事長とアメリカや韓国、ミャンマーなどへよく旅行していたそうだ。

 『文春』が入手した内部文書によると、「2013年博友会(下村の後援会=筆者注)パーティ入金状況」と題され、「9月27日 学校 加計学園 1,000,000」と記されているという。

 翌年も同じ金額が記されているが、重大なのは「この献金は、博友会の政治資金収支報告書には記載されていない」ことだと『文春』は指摘している。

 政治資金規正法では20万円を超えるパーティ券の購入を受けた場合、報告書に記載しなければならない。違反すれば、5年以下の禁固または百万円以下の罰金を受ける可能性がある。

 この博友会は全国にあり、塾や学校関係者が入っており、組織的、継続的に政治活動を展開し、盛大なパーティを開いているにもかかわらず、政治団体として登録されていない。したがって政治資金規正法違反の疑いがあると、『文春』は2015年3月5日号で報じ、そう指摘していた。

 この文書は、下村事務所を仕切る金庫番・榮(さかえ)友里子が書いた「日報」だそうだ。そこには加計学園側からの様々なお願いが記載されており、下村が加計学園のために相当な便宜を図ってきたことがうかがえる。

 14年の日報に加計学園の山中一郎秘書室長(当時)がたびたび登場する。4月21日には、「加計学園 山中室長より 大臣にお繋ぎして頂いた山本順三先生と23日に会食することになりました。もし宜しければ、是非大臣もご参加下さい」

 山本は参院議員で、選挙区は愛媛県、地元事務所を獣医学部が新設される今治市に置いている。

 さらに山中室長は、岡山理科大学の件で何度も文科省へ連絡をしたが取り合ってもらえないので、面会してくれるよう陳情している。

 これにも「→事務方を通して、お願いをいたしました」とあるそうだ。

 14年の内閣改造で下村が再び文科相を続投することが決まると早速加計側から、「就任のお祝いをいたしたいと思っています。10月中で空いている日程を夜頂けますか」と言ってきて、「→取り急ぎ、10月17日にいたしました」と素早く決めて返事している。

 文科相が、特定の学校法人のトップと親しくするなど、普通の頭があればやってはいけないことがわかるはずだが、この「バカだ大学」出身の政治家には考えが及ばないようである。

 さらに『文春』によれば、多額のパーティ券を購入してもらったら収支報告書に記載しなければいけないのに、そうしないケースが多々あるという。

 『文春』は20万円以上のパーティ券を購入したとされる人たちに、支払ったかどうかの有無を聞いている。

 そうすると、記載されていない金額は3年分で約1000万円にも上るというのである。

 さすがに下村も、文科省の管轄下にある教育業界から、多額の寄付をもらうことに多少後ろめたさを感じてはいたようだ。

 「文科省の大臣として、教育業界から寄付をもらっていいものかね」と、事務所関係者に漏らしていたというのである。

 悪いと知りつつも、やめられないのをバカというのだ。

 下村が会見で語った200万円の言い訳はいかにも苦しい。

 「下村氏が文部科学相だった2013年と14年、学校法人『加計学園』(岡山市)の秘書室長から、政治資金パーティー券の費用として各100万円、計200万円を受け取ったことを明らかにした。100万円はそれぞれ、11の個人と企業から秘書室長が預かったもので、『加計学園からのものではない』とした」(朝日新聞6月29日)

 11に分けてあるから一人20万円を超えないと言いたいのだろうが、小学生だってもう少しましな言い訳を考えるはずだ。

 11人もの人たちのカネをなぜわざわざ加計学園の秘書室長が集金して持って来たのか。それも、その中に加計学園分は入っていないというのである。

 加計学園と極めて親しい文科省のトップが、在職中に獣医学部新設などの便宜を図るために、その地域の政治家たちを紹介し、自分がいなくなれば、申し送り事項として後任に託し、首相補佐官たちが文科省に圧力をかけて、強引に特区での獣医学部新設を認めさせたのである。

 安倍首相は、森友学園問題では籠池前理事長を悪者にし、国策捜査をやらせて切り抜けようとしている

 だが「腹心の友」である加計孝太郎理事長を安倍首相は切り捨てるわけにはいかない。安倍の側近である下村元文科相と加計学園とのズブズブの関係が明るみに出て、寄付やパーティ券購入金などを違法に処理していたとなれば、これ以上知らぬ存ぜぬでは国民が許さない

 下村は、『文春』報道は「東京都議選の妨害目的と受け止めざるを得ない」と批判し、文書の出先は自民党以外から都議選に立候補した元秘書が関与した可能性を指摘、偽計業務妨害などの疑いで刑事告訴を検討する意向だと会見で言った。

 その元秘書は、都民ファーストの会から出馬して当選した。当選後、自分が持ち出し流したのではないと否定している。

 下村は都議選惨敗の責任をとって都連会長を辞任したが、この重大疑惑に対してきちんとした説明ができなければ、下村を打ち砕く二の矢、三の矢が出てくることは間違いない

 この内部文書から加計学園が学校ビジネスを展開していく過程で、下村をはじめ様々な政治家たちに働きかけを行なっていたことがはっきり見て取れる。

 このまま学部新設が文科省に認められれば、その後は補助金などの形で多額の公費が投入されることになる。

 「加計学園を巡る疑惑は新たなステージに入った」(『文春』)

 下村は、小学校3年の時に交通事故で父親を亡くし、母親が下村を含め3人の子どもを育てたという。交通遺児育英会の交通遺児奨学生第1期生である。

 苦労して這い上ってきた政治家なのに、長年センセイと呼ばれることに慣れ、差し出される多額のカネに目がくらみ、自分が進むべき道を見失ってしまったのであろう。

 夏目漱石の『吾輩は猫である』にこんな言葉がある。

 「呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする」

 下村議員、自分の心の底にある子どもの頃の悲しみを思い起こし、政治家たるもの何を為すべきかをもう一度原点に返って考えたがいい。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 豊田センセイの罵声で笑い、小林麻央の早すぎる死に泣き、藤井聡太四段の快挙に沸き、都議選の自民党惨敗でわずかに溜飲を下げた日本列島であった。だが、安倍自民党への怒りは、次の総選挙まで持続させなくてはいけない。日本人は忘れっぽいから時間が経てば忘れるよと高をくくっている安倍官邸に、目にもの見せてやろうではないか。

第1位 「我、『藤井聡太』にかく敗北せり──『14歳の天才』に敗れた『14人の棋士』インタビュー」(『週刊新潮』7/6号)/「藤井四段『ここが凄い』──『100回やっても勝てない』」、敗者が語る」(『週刊文春』7/6号)
第2位 「美人代議士『金子恵美総務政務官』が公用車で保育園」(『週刊新潮』7/6号)
第3位 「都議選圧勝! 小池百合子『総理への道』」(『週刊現代』7/15号)

 第3位。『現代』は「小池圧勝」と都議選を予測したが、多くが予想したことだから威張れることではないだろう。
 小池都知事は、このムードを駆って総理へと突き進むのではないかと書いているが、あまりにも短絡的な見方である。
 もちろん、野望政治家である小池が国政を狙っていないわけはない。その証拠に、都議選の候補者応援では、自民党への悪口は言うが、安倍批判はまったくしなかった。
 政治アナリストの伊藤惇夫(あつお)の言うように、「国政で一定数の議席を確保できたら、維新ではなく自民党と連立を組む考えを持っている」のであろう。
 だが、都知事になったばかりの小池が、国政へ出るとなれば都民から大きな批判が出ることは間違いない。
 小池にとっては、都民ファーストが大勝したのは嬉しいが、国政が近くなったことを意味しない。
 実際のところ、ポスト安倍には女性ならば野田聖子あたりが有力になるのではないか。小池はそれを、内心ではコンチクショーと思いながら、押さざるを得ないことになるはずだ。
 国政は遠くにありて思うものと、今頃小池は歌っているかもしれない。

 第2位。ところで、先週、今週と『新潮』のガンバリが凄い。『文春』中吊り盗み見問題にケリがついたのだろうか。6月29日の『とくダネ!』で小倉智昭が「新潮砲」と言っていた。
 「新潮砲」が今週、狙いを定めたのは金子恵美総務大臣政務官(39)の公用車・私用疑惑。金子政務官はゲス不倫で一躍有名になった宮崎謙介元議員の妻である。
 亭主が妊娠中に浮気をしていたことを「文春砲」が報じ、妻は離婚を考えたそうだが、それを乗り越え、今は2人で生まれた1歳4か月の息子を育てているという。
 『新潮』によれば、国会が閉会した翌日の6月19日、朝9時30分、永田町の衆議員第二議員会館内にある「国会保育園」と呼ばれる東京都の認証保育園「キッズスクウェア永田町」へ、専属の運転手が運転する黒塗りのクルマが滑り込んだ。
 クルマから出てきた金子政務官は、息子を車から降ろしベビーカーに乗せて(グラビアを見るとベビーカーを押しているのは総務省の秘書官である)、保育園に連れて行き、戻ってきて霞が関へ。この日は午後2時半にも、千代田区内で母親とともに公用車に乗り込み、母親を東京駅まで送り届けている。
 翌日の朝も公用車で息子を送り、午後6時前に公用車で迎えに行っている。22日は、午後7時に公用車で子供を迎えに行き、一緒に議員宿舎へ帰宅している。
 公用車とは政務三役など要人にあてがわれるもので、当然税金が使われている。舛添要一前都知事が毎週末、別荘へ行くのに公用車を使っていたことが大きな問題になったばかりである。
 このことは国会関係者の間で「バレたらまずい」と噂になっていたようだ。『新潮』も、どうしても忙しい朝に公用車を使って子供を保育園に送るのはわかるが、彼女の場合、それが「常態化」していることに問題ありだと指摘する。
 公用車に関する窓口の会計課管理係の担当者は、「途中の保育園で子どもを降ろす? ないです。家族を乗せること自体ダメでしょう。そんな人いないと思います」とはじめ答えていたが、金子議員が実際やっていると告げると、「えーっと……。運転手の日報にはそうしたことが書かれておらず、詳細は把握していないのが実情です」と、しどろもどろ。
 金子は自分のブログで「公用車の使用につき、常に総務省の運用ルールに則ってまいりました」と、問題はない、総務省の担当者は『新潮』に出ているようなコメントはしていないと言っていた。しかし「公用車に家族を同乗させてよいのかというご批判に対し、改めて自身の行為を振り返り、真摯に受け止めたいと思います」と言い、その後、これから金子は子どもを歩いて送り届けると公表した。
 この記事については、それぐらいはいいではないか、いや、選良は公私のけじめをつけるべきだと、両論あると思う。
 子どもを保育園に入れられない、首尾よく入れても送り迎えに苦労している母親たちの多くからは「特権を利用して」と白眼視されるだろう。彼女も亭主も安倍チルドレン「魔の2回生」である。

 第1位。29(にく)らしいほど強い藤井聡太(14)四段だが、30連勝はできなかった
 安倍政権のおかげで先の見えないどんよりとした雲が覆う日本列島だから、明るい話に飛びつきたい気持ちはわかる。だが、いささか騒ぎ過ぎではないか。
 29連勝を達成した夜のNHK『ニュースウオッチ9』は、放送開始から9時40分ぐらいまで、増田康宏四段(19)との対局を生中継し、29連勝が決まった瞬間、キャスター2人がバカ騒ぎをしていた。おまけに新聞社は号外まで出したのだ。
 翌日、私が読んだのは東京新聞と朝日新聞だが、一面トップがともに藤井29連勝だった。
 私が整理部長だったらせいぜい社会面トップまでだろう。「レジャー白書2016年」によると、一度でも将棋をしたことがある人は2015年で530万人。将棋ファンの数ははるかに少ないはずだ。テレビゲーム2170万人、パチンコが1070万人と比べるとそれほど多いとは言えない。
 それはともかく、非公式だが羽生善治(はぶ・よしはる)三冠まで破っているのだから、藤井四段の強さは本物である。
 『新潮』は、彼に敗れた棋士たちに、藤井の強さについて語らせている。曰く「終盤が強い」(小林裕士七段)、「時間配分が上手くて、持ち時間を残しますから終盤にしっかりと読み込める」(所司和晴七段)、「集中力のすごさは感じました」(宮本広志五段)
 『新潮』によると、大方の棋士たちが、藤井は現段階でトップ10~20人には入る実力があると太鼓判を押しているそうだ。
 瀬川晶司五段によると、ミスをしたときは膝を叩いたり、ボソッと小さな声で「しまった!」と口に出すそうだ。中学3年生の顔が時々覗くそうだが、そこがまたいい。
 こうなると渡辺明竜王や羽生三冠に挑むのも視野に入ってくるが、その先に、今や最強といわれる人工知能(AI)といつどういう形で対戦するのかも楽しみになる。
 藤井四段は、いまのところAIとやるつもりはないと語っているが、彼の将棋にはコンピューター将棋の影響が色濃くあるといわれる。
 『文春』で40代の棋士が、自分たちの世代はソフトの判断をそのまま受け入れることに抵抗があるが、「藤井君の世代だと、ソフトが示す判断基準をそのまま受け入れる事はごく普通のことだと思う。実際、藤井将棋はコンピューターの思考が色濃く反映されていると感じます」と語っている。

 私事で申し訳ないが、私の父親は将棋が好きで、たしか素人三段か四段だったと記憶している。家には分不相応な将棋盤と駒があり、休みの日は前に坐らされ駒の動かし方から教えてもらったのは小学校低学年の頃だった。
 当時、中野に旧将棋連盟本部があったせいだろうか、升田幸三第四代名人の着物姿をときどき見かけた。私もいっぱしの将棋少年だったが、すさまじく短気な父親に、指す度に怒鳴られるため、ついには将棋盤をひっくり返し、以来、将棋とは無縁になった。
 だが、会社に入って作家の山口瞳さんから芹沢博文(せりざわ・ひろふみ)や米長邦雄(よねなが・くにお)を紹介され、親しくなり、特に芹沢九段には可愛がってもらった。彼も14歳で入門して19歳で四段となり「天才」と言われた。
 だが多才すぎた。無類のギャンブル好きで女好き。原稿を書かせたらそこら辺の作家顔負けの素敵な文章。TVタレントとしても売れっ子で、酒は底なし。
 晩年、血を吐いて入院し、医者から酒をやめないと命取りになると言われたが、ワインは酒ではないからと、シャブリを朝から飲み、箱根のホテルへ行った時はホテル中のシャブリを持って来させ、私たち数人で飲み干した。
 たしか、田中角栄に将棋を教えていたと記憶している。彼を通じて角栄インタビューを申し込んでOKをもらった。だがインタビュー直前、角栄の秘書の早坂に「俺を通してない」といわれ、実現はしなかった。
 将棋指しの世界を見せてくれた。「お前のためなら何でもやってやる」と言ってくれた芹沢九段だったが、酒で体を壊し、たしか51歳の若さで亡くなってしまった。奥さんから聞いた。死ぬ間際、彼女に「ごめんね」と言ったという。
 藤井四段の話から余談になってしまったが、米長邦雄の口癖は「兄貴たちはバカだから東大に行ったが、オレはできるから将棋指しになった」。『文春』によれば、藤井は小四のときには五十手以上の詰将棋をあっという間に解いたという。地頭(じあたま)のよさとAIからも吸収できるいい環境があるのだから、連勝はストップしたが、彼がどこまで強くなるのか、これから楽しみではある。
   

   

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