コトバJapan! 元木昌彦 の 記事一覧

元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。


 言わんこっちゃない。バカは隣の火事より怖いのだ。トランプ大統領は米中首脳会談の最中にシリアを空爆して、世界中に衝撃が走った。

 それだけではなかった。首脳会談が終わった後、今度は米原子力空母カールビンソンや空母航空団、誘導ミサイル駆逐艦などを朝鮮半島近海に集結させるよう指令を出し、北朝鮮の核施設や軍事基地への空爆も辞さないと、圧力を強めているのだ。

 朝鮮戦争以来最大の危機である。一つ間違えれば第二次朝鮮戦争勃発という最悪の事態も考えられる。なぜトランプは、プーチン大統領や習近平主席の顔に泥を塗るようなことを始めたのか。

 その謎を解き明かしてくれる報道は日本のメディアには皆無である。シリア空爆については、こういわれているそうだ。

 4月4日、シリアの反体制派支配地域で、神経ガスを使ったと見られる空爆があり、子どもを含む多くの市民が犠牲になった映像が世界中を駆け巡った。それを見たトランプが怒り狂って命令した。後先を考えない“衝動的”なものだそうだが、だとすれば、こんな怖いことはない。

 『ニューズウィーク日本版』(4/18号、以下『ニューズ』)は、トランプの攻撃を取り上げている。トランプは選挙中ISISを討伐するといってきた。それが突然、アサド政権を打倒しようとしているISIS側に回ったかのように、アサド側を空爆したのである。

 この空爆が持つ意味は深刻である。シリアのこの地域にはトランプが“尊敬”しているプーチンのロシア軍が、アサド政権を守るために1万人程度入り込んでいるといわれている。

 「攻撃直後のロシアは怒りの声明を発表。米ロ両軍の偶発的衝突を防ぐための連絡システムを停止した。直接の報復行動ではないが、これで米軍の軍事行動はリスクがかなり高くなる」(『ニューズ』)

 さらに同誌によれば、トランプはアメリカ国内で「プーチンの傀儡政権」といわれている風評を打ち消すために、このような強硬姿勢をとったのではないかという見方があるという。

 トランプがロシアの傀儡政権であったとしたら怖ろしいことではあるが、それを否定するためにシリアを空爆したのであればなおさら怖い話だ。この男には世界最大の核戦力を動かす力があるのだから。

 シリアへの空爆をしたことだけでは満足できないトランプは、米中首脳会談が終わると今度は、北朝鮮を標的にすると公言して、核開発を放棄しなければ攻撃すると空母や駆逐艦を差し向けたのである。

 おりしも北朝鮮は故金日成(キム・イルソン)国家主席の生誕105周年を祝うための行事が行なわれ、外国メディアも多数招待していた。

 どちらかが誤って発射した一発の銃弾が、第二次朝鮮戦争を引き起こしかねない緊急事態である。さらに4月25日には軍創建85周年があり、この日に6度目の核実験をするのではないかといわれている。

 そうなればトランプは躊躇せず北朝鮮を攻撃するかもしれない。トランプと北朝鮮問題について何らかの話し合いがあったに違いない習近平は、北朝鮮の核実験を止めさせるために金正恩側への圧力を強めていると思われるが、金正恩があっさり引っ込めるとは考えにくい。

 日本にとってはアメリカの占領時代が終わって以来、初めて日本が巻き込まれる戦争一歩前の異常事態である。

 だが不思議なことに、この国のメディアを見ている限り、そうした緊迫感は伝わってこない

 4月18日、ペンス副大統領が来日して安倍首相と会談した。北朝鮮問題も話し合われたことは間違いないが、安倍首相の表情からも緊迫感はうかがえなかった。

 だが、安倍の“ニタ笑い”の裏に隠された秘密の日米合意があるのではないだろうか。

 ここで『週刊文春』(4/20号)の巻頭で「金正恩“斬首”秒読み 政府が覚悟『最悪シナリオ』」を書いている山口敬之(元TBS記者)のレポートを見てみたい。

 山口は安倍官邸に近いといわれている記者の一人である。

 9日早朝、安倍首相がトランプとの緊急電話会談に臨んだ話から始まる。トランプはそこで「シリア攻撃を安倍が支持した」ことへの謝意を述べたという。だが、安倍としては、化学兵器を使用した確固たる証拠がないため、悩んだ末に「軍事行動ではなく、化学兵器の拡散と使用を抑止する」というトランプの“決意”を支持するという、もってまわった言い方にしたと、安倍の苦心話を披露している。

 山口によれば、トランプは習近平に、近く行なわれるといわれている北朝鮮の6回目の核実験をやめさせるために、中国に対して期限を区切った北への制裁強化を強硬に求めたという。

 だが習近平は明確には答えなかったのだろう。そこで北朝鮮へ軍事攻撃も辞さずという強行姿勢に転じたのだが、山口はここで、シリアは空爆したのに、北朝鮮に対しては、すでに計画立案が終了している「斬首+限定空爆」になぜ踏み切らないのかと疑問を呈している。

 その理由は、日本政府が入手した衝撃的なシミュレーションにあるという。シリアと違って北朝鮮にアメリカが先制攻撃すれば、北朝鮮は必ず韓国のソウルへ攻撃をしてくる。そうなれば韓国人だけではなく、在韓邦人や観光客が多数犠牲になる可能性がある。

 だからアメリカはためらっているというのだが、こんなことはいまさらシミュレイションしなくても、わかりきったことである。

 北朝鮮はソウルだけではなく、日本の心臓部にもミサイルを撃ち込んでくることは間違いない。だが、山口も書いているように、日本の最新鋭のミサイル防衛システムでも、全部を迎撃できるわけではない

 『週刊新潮』(4/20号、以下『新潮』)によると、『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』(2003年、新潮社刊)を書いた北東アジア地域安全保障問題に詳しいマイケル・ユーが、米ヘリテージ財団の協力を得てした試算では、北朝鮮が核、生物兵器、化学兵器を搭載するミサイルを東京都庁周辺に撃ち込むと、最大で約186万人が死ぬとしている。

 山口の原稿で見逃せないのは結びの言葉である。「覚悟を決める必要がある」。主語はないが推測するに「国民」であろうが、何の覚悟なのか。

 安倍首相は北朝鮮討伐の米軍に、今後自衛隊も参加させるがゴチャゴチャ言うなということか。官邸の意向を代弁して、われわれに戦争への準備をしておけというつもりなのか。

 森友学園問題でもそうだったが、最近、官邸の意を汲んで、安倍昭恵の疑惑隠しや、アメリカと同盟関係にあるのだから、戦争となれば自衛隊を派遣するのが当然だといういい方をする評論家、ジャーナリスト、テレビのコメンテーターが多い気がしてならない。

 衝動的で先の見通しもないまま突っ走るトランプに対して、バカなことはやめろと忠告するのが真の同盟国としての役割ではないのか。

 トランプの本音はこうだ。シリアや北朝鮮を攻撃しても、アメリカ本土が攻撃されることは当面ない。自分たちが安全な場所にいて、アジアの火薬庫に火を放てば、朝鮮半島と日本列島は火だるまになる。それをワインでも飲みながら、トランプはテレビで見るつもりなのだろう。

 『新潮』によれば、かつて金日成が息子・金正日(キム・ジョンイル)にこう尋ねたという。

 「アメリカが北朝鮮を攻めて来たら勝てるのか」。金正日はこう答えた。

 「勝てないが、朝鮮のない地球はありえない。朝鮮が潰れる時には、地球を破壊してしまえばよい

 韓国では緊張感が高まっているが、日本ではメディアも国民も騒がないのはなぜか。

 今やノー天気週刊誌の代表になった『週刊ポスト』(4/28号、以下『ポスト』)などは、朝鮮半島有事なら日本に「特需」が来るなどという、呆れた特集を巻頭でやっている。

 昔から遠い戦争は買い、近くの戦争は売りという相場の格言がある。ベトナム戦争は遠い戦争であったから「ベトナム特需」があった。『ポスト』は朝鮮戦争のときも「朝鮮特需」があったではないかという。

 だが、あの戦争は米韓と北朝鮮との局地戦だった。その頃の日本はアメリカの占領下だったから、気分的には遠い戦争であった。

 それに、今のような飛び道具戦争ではなく、地上戦が主体だったし、北にはろくに戦闘機もなかったであろう。だが、今は、北と戦争になれば、アジア全土が巻き込まれる。

 『ニューズ』(4/25号)は、まだトランプは北朝鮮を攻撃しようとは考えていないと書いている。それは、韓国にいる15万人前後、日本にいる5万人以上のアメリカ人を退避させていないからだ。

 しかし、シリア攻撃をした後、プーチンの反応は抑制的だった。最強のアメリカに対して誰も報復などしやしない。

 「トランプがそんなおごり高ぶった自信を深めたとすれば、北朝鮮に対しても同じ論理で行動するのはあり得ない話ではない。これによって、米朝双方が互いの意図を読み違えて偶発的な武力衝突に至る可能性も否定できない」(『ニューズ』)

 保守的な『ニューズ』でさえ、北朝鮮という難題を解くには「話し合い」を目指すしかないと言っている。

 安倍首相は政治生命をかけてトランプを説得し、空母を引き上げさせ、金正恩とアメリカ、中国、韓国、日本との話し合いに持ち込むことに全力を挙げるべきなのだ。それこそが真のリーダーシップというものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 安倍首相の周りにはろくな者がいない。暴言、虚偽発言、浮気、不倫など、日常茶飯である。その連中になぜそんなことをするのかと問えば、きっとこう答えるに違いない。「上がアホだから」。左右どちらを見ても馬鹿と阿呆の 絡み合いばかりと歌ったのは鶴田浩二。ほんにお天道様に顔向けできない、いや~な世の中でございます。

第1位 「飲酒規制が始まった!」(『週刊ポスト』4/28号)
第2位 「『遺言手記』余命を諦めた『木嶋佳苗』の東京拘置所から愛をこめて」(『週刊新潮』4/20号)
第3位 「“総理の懐刀”が『番記者いじめて辞めさせた』事件」(『週刊ポスト』4/28号)

 第3位。今井尚哉(たかや)という首相秘書官は、よほど評判の悪い人間のようである。『ポスト』によれば、今井の番記者がいるそうで、毎晩、今井の家の前には番記者が10人以上も集まるという。
 機嫌がいいと話すが、へそを曲げると何もしゃべらない。その今井が朝日新聞の番記者S記者をとことん嫌ってしまったという。
 S記者は15年9月に可決された安保法案を取材しており、可決後、安倍首相が祖父岸信介と父安倍晋太郎の墓参りをした際、安倍に「安保法案の成立を報告したのですか?」と声をかけたのだ。
 それを、今井は「無礼極まりない」と怒っていたという。そこへS記者が番記者として現れたから、Sを無視し続けたそうである。
 Sはそれでも腐らずに夜回りを続けていたというが、今年1月、某新聞記者とテレビ局の記者に呼び出された。
 そして、君がいると今井さんが対応してくれない。もう来ないでくれ。その代わり、今井氏とのやり取りはメモで回すからと言われたというのだ。
 こんな記者がいるから、この程度の人間にいいようにあしらわれてしまうのだ。
 それを聞いたS記者は意気消沈して夜回りをしなくなり、朝日の上司もこれを知って、4月に別の記者と交代させてしまったという。
 記者もだらしないが、朝日もだらしがない。だから権力のポチと言われてしまうのだ。
 記者の質問に答える、説明責任を果たすのは役人や政治家どものやるべきことである。もしそうしないのがいたら、記者たちがそれぞれの紙面で告発し、世間に知らせるべきである。
 それでも何もしないのなら、野党に国会で質問させる。とことん追及するべきなのに、何をやっているのだ、お前たちは!
 安倍がヘラヘラしてられるのは、こういう腑抜けた記者たちのおかげである。

 第2位。さて、木嶋佳苗(かなえ)(42)という女性を覚えておいでだろうか。婚活サイトで知り合った男性3人を練炭自殺と見せかけて殺害したと殺人罪に問われ、4月14日に最高裁で上告が棄却され、死刑が確定した。
 その彼女が、『新潮』に「東京拘置所から愛をこめて」という手記を寄せている。彼女は獄中でも結婚、離婚、再婚をし、房内をパステルカラーのバスタオルで覆い、ベターッと開脚や、筋膜リリース、タバタ式などのストレッチを欠かさず、好きなブラジャーや下着を着けながら、優雅に暮らしていると書いている。
 食欲は旺盛で、いろいろなサンドイッチを作って楽しんでいる。性欲は「考えないわけではないけれど性欲で息苦しくなることはない」(木嶋)そうだ。
 彼女は自分が犯した罪については触れていないが、自分は無実だと主張しているようだ。だが彼女は、死刑確定後に法相に対して早期執行の請願をするというのである。
 その背景には母親との激しい葛藤があるようだ。母親は自叙伝などを執筆することをやめなければ一切の支援を打ち切る、弟妹や甥姪との交流も禁じると宣告し、彼女がそれを拒否すると、敢然と実行したという。
 拘置所内の生活は外部の支援なしでは立ちいかない。木嶋は母親のやったことを「悪意の遺棄」と書いている。それに父親が母親によって「心を蝕まれた結果、還暦で自死を選」んだことなどにも触れているが、複雑な家庭や母子の間の愛憎があるようだ。
 木嶋の学歴は知らないが、文章はうまい。拘置所内で多くの本を読んでいるそうだが、もともと書くことが好きで文才もあったのだろう。以前、ジャーナリストの青木理(おさむ)を好きだと言っていたが、そのことはここには書いていない。
 不謹慎かもしれないが、編集者としては、彼女の文才を駆使して、犯罪を犯す人間の心理や行動について書いてもらいたいと思う。

 第1位。今週の1位は『ポスト』の「飲酒規制が始まった」という特集にあげたい。まさに現代の「禁酒法」を厚労省が作ろうしているというのである。とんでもない!
 タバコについては、飲食店や公共の場所での喫煙を全面禁止する受動喫煙防止法案を3月にまとめていて、今国会で成立を目指している。
 4月1日、厚労省内に「アルコール健康障害対策推進室」を新設したそうだ。
 日本は酒の規制が少ない国なのだそうだ。そういえば、桜が咲けば酒、名月だと言っては酒、めでたいと言っては酒。言われてみりゃそうだがね。
 WHO(世界保健機関)では10年に「アルコールの有害な使用を減らすための世界戦略」を採択し、各国が取り組むべき酒害対策として、酒の安売り禁止、飲食店での飲み放題禁止、酒類の広告規制などをあげて、酒の値段の引き上げ、公共の場所での販売規制などが推奨されているというのだ。
 すでに欧米をはじめ、シンガポールやインド、タイなどにも規制の動きが広がっていて、日本でも13年に「アルコール健康障害対策基本法」がまとめられている。
 これは主として依存症対策だが、昨年5月に改正酒税法を成立させ、ディスカウント店に対して、過剰な酒の安売りの規制に乗り出しているというのである。へぇ~、ちっとも知らなかった。
 『ポスト』によると、テレビCMで、うまそうにゴクゴク飲みほすシーンは、アルコール依存症の人に苦痛を与えるとして、内閣府のアルコール健康障害対策関係者会議ワーキンググループの指摘で、業界がその指導に従い、ゴクゴクの効果音は使用しない、のど元のアップはしないという自主規制をしているそうだ。
 また、日本人の飲酒率は男が83.1%、女性が60.9%で約7472万人。このうち健康被害が予想される問題飲酒の人間が1353万人もいて、飲み過ぎによるけがや病気の治療にかかる医療費は年間1兆226億円と推計されている。飲酒による事故や労働損失を考えると、社会的損失は年間推定3兆947億円で、医療費との合計は年間4兆1483億円にもなる。
 アルコール飲料の国内市場は約3兆6000億円だから、飲酒は経済効果より損失のほうが大きいそうである。
 厚労省の官僚が、世界のほとんどの国では、公園やビーチなどの公共の場所での飲酒は禁止が常識だから、東京五輪に向けてアルコール規制の議論を本格化させ、自動販売機の全面禁止、屋外や公共施設での飲酒の規制、店での飲み放題の禁止などをしていくというのだ。
 フランスは飲酒大国だったのに、現在は半分以下に減ったという。カナダでは、野球場でも酒の販売と飲酒が禁止になったところが出ている。まるでこれでは、1920年から33年まで敷かれたアメリカの禁酒法のようではないか。
 プロテスタントの間での禁酒運動の高まりと、巨大資本への不満を持つ国民の社会改革運動が結びついて制定されたというが、これによって密造酒がつくられ、アル・カポネなどのマフィアの資金源になった。映画『アンタッチャブル』の世界だね。
 禁酒法でわかったのは、どんなことをしても飲みたい奴は飲むということ。それを金儲けにしようという人間が必ず出てくるということである。
 今回の場合は、国や厚労省が、医療費削減の大義名分でもって、酒への税金を大幅に上げて税収を増やそうとする魂胆が見え見えだ。
 この国は「酒なくてなんの己が桜かな」である。それに日本酒という世界に誇れる銘酒を作り出した国である。お上が禁酒令など出したら、暴動がおこるぜ。悪いことは言わねぇ、よしといたほうがいい。
 これを書き終わったら、谷中墓地の近くにある居酒屋へ、一杯飲みに行くとしようか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 私はこの原稿を東芝のパソコンdynabookで書いている。重厚長大型企業の東芝だが、PCや液晶テレビも優れた製品を出している。その東芝が倒産の危機にある。

 東芝の歴史は古く、創業は「1875年(明治8)田中久重(ひさしげ)が設立した田中製造所にさかのぼる」(「ニッポニカ」より)。東芝の名を高めたのは、財界総理といわれた第4代石坂泰三であるが、メザシを好み質素を旨とした土光敏夫(どこう・としお)第6代社長も国民的人気が高かった。

 半導体分野でもリーディングカンパニーであり、重電機、軍事機器、鉄道車両分野でも、日立、パナソニック、三菱電機とともに重電4社といわれている。

 その東芝が昨年12月末時点で2256億円の債務超過に陥った。その後も、東芝が06年に買収したアメリカの原発会社ウェスチングハウス(以下WH)の幹部が損失を少なく見積もるように圧力をかけていたという問題が発覚して、米監査法人と対立し、4月11日に綱川智(つなかわ・さとし)社長が会見し、監査法人が「意見不表明」という異常な形での決算発表に踏み切った。

 最終赤字は1兆円を超えるといわれているが、その損失の最大要因は、約6600億円を投じて先のWHを買収したことに端を発している。

 WHは原発推進を掲げる政府と経済産業省の「国策」に乗る形で東芝が買収したが、11年の福島第一原発事故で、原発事業に大きなブレーキがかかった。

 その時点でWHを手放していれば傷はここまで深くはならなかったはずである。だが、佐々木則夫社長は、福島第一原発事故以前、経産省が原発を自動車や電機に代わる輸出産業にしようと目論み、日本から原子炉を持っていくだけでなく、現地で原発を動かして必要な燃料もパッケージで輸出するという構想に固執し、「原発を欲しがっている国はいっぱいある」と強気の姿勢を崩さなかった。

 この重大な経営判断ミスが、東芝の赤字を膨らませ、倒産の危機に追い込んだのである。

 だが、WH買収に関わってきた東芝の田窪昭寛(たくぼ・あきひろ)と原発推進で手を組んできた安倍晋三首相、その秘書官・今井尚哉(いまい・たかや)にも、東芝崩壊の責任があるはずだと、『週刊文春』(4/13号、以下『文春』)で、ジャーナリストの大西康之が追及している。

 これは、今の大新聞やテレビが報じていない、東芝問題の核心を抉(えぐ)るレポートである。

 大西がある東芝社員のビジネスダイアリーを入手したことがきっかけだった。これは東芝電力システム社の首席主監だった田窪昭寛のもので、彼は78年に茨城大工学部を卒業後東芝に入社、主に原子力畑を歩み、06年のWH買収では現場を取り仕切った。

 09年には電力システム社首席主監に就任して、今年3月までWHの傘下企業である原子燃料工業の社長を務めていた。

 田窪は各国の政府高官などに東芝の原発を売り込むのが仕事で、佐々木社長から大きな権限を与えられていたという。

 彼は、こうと決めたら周囲が何と言おうと突き進むため「暴走機関車」と言われていたそうだ。

 田窪が「東芝製原発の海外輸出」へ突っ走るために接近したのが、今井だった。今井は82年に東大法学部を卒業後、旧通産省に入省している。今井の叔父は旧新日鉄社長、会長を務め経団連会長になった今井敬である。

 今井は安倍首相の覚えめでたく、第一次安倍政権で首相秘書官を務め、12年に第二次安倍政権ができると、安倍に懇願されて再び首相秘書官に就任している。

 今井は経産官僚時代、長年手掛けてきたのがエネルギー政策で、民主党政権時代にも資源エネルギー庁次長として原発再稼働に奔走していた。

 だが、今井が秘書官に返り咲いたのは3・11が起きた後である。常識的には、あれだけの大事故を起こした日本の原発を輸出しようなどという「妄想」は出てこないはずだが、原発輸出に活路を見出したい田窪と、トルコやアラブ首長国連邦に原発や関連技術の輸出を可能にする政府間協定の締結を推進していた今井が、無謀な事業に突き進んでいったのである。これには当然ながら安倍の後押しもあった。

 「アベノミクスの第三の矢『成長戦略』のうち、数少ない具体策と言えるのが原発輸出戦略です。首相も今井氏の進言に乗っかりました」(官邸関係者)

 先ほどの田窪の手帳には頻繁に今井の名前が出てくる。ディナーを一緒にしたり、帝国ホテルのフランス料理店で朝食をとりながら、田窪は今井の協力と安倍首相のGOサインも得たのである。

 「田窪氏の口癖は『国策だから』。周囲が『本当に大丈夫か』と不安視する案件でも、佐々木社長の後ろ盾があり、今井氏とも繋がっている彼に『国策だ』と言われると、誰も言い返せません。財務部門もストップをかけられなかった」(東芝関係者)

 そのころ、アメリカではシェールガス革命の結果、電気料金が急激に下がり、東芝がテキサス州で計画中の原発も、発電しても売り先がない状況に陥っていたのである。

 それでも佐々木社長は取締役会で、この原発を減損する必要はないと主張し続けていたという。

 東芝幹部たちの先を見ない愚鈍経営に、安倍首相とその側近が手を貸して、東芝崩壊へと導いたのである。

 WHを買収した当時の西田厚聰(にしだ・あつとし)社長は『文春』のインタビューにこう答えている。

 「残念ながら福島でああいうことが起き、環境が激変した。それに合わせて手を打つのが経営だが、佐々木君にはそれができなかった」
 国の顔色を窺ったのかという問いには、

 「それが間違いでした。僕の時代はそんなことはなかったが、佐々木君が社長になってからは、そういう部分もあったのだろうね」

 東芝は福島第一原発の廃炉という役割もあり、社員が17~18万人もいる日本を代表する大企業である。巨額赤字や粉飾決算にもかかわらず、潰せないため、公的資金(血税)の注入も検討されているといわれる。

 東芝の歴代トップたちの責任はもちろんのこと、安倍首相と今井秘書官にも、国民に「原発輸出事業は失敗だった」と説明する義務があること、言うまでもない。

 トップがアホだからと、東芝社員の多くは嘆いていることだろう。『週刊新潮』(4/13号)は「『東芝』30代社員のトホホな『転職活動日記』」を掲載している。

 「綱川社長が3月29日に記者会見を開きWHの破産法申請と同時に、その処理で赤字が最大一兆100億円になると発表。2年前だったらビックリしたかもしれないが、これまで数々の問題が起きて数千億円単位の損失などが明らかになったからだろう。危急存亡のときに立たされても、もはや驚愕しなくなった自分の感覚は、完全に麻痺している」

 筆者は有名国立大学を出て、当時勝ち組中の勝ち組で旧財閥色も薄い自由な社風だと感じた東芝に入った。

 支社勤務を経て本社の企画部門に「栄転」した中堅社員で、独身。年収は700万円台だったが、ボーナスカットにより2年間で100万円近く減っているという。

 日記では、次々に去っていく同僚がいるが、転職ができるのは引く手あまたの技術職で、彼のような企画畑では転職先もなかなか見つからないと悩みを綴っている。

 1月には東芝京浜事業所品質保証部の社員が、水力発電機器の安全検査データをねつ造していたことが報道された。2月にはWHの幹部が、米国で建設中の原発を巡り、部下に建設費の圧縮を指示していたことが発覚し、原子力事業を統括する会長と、社内エネルギー部門のトップが退任した。

 そのエネルギー部門のトップであるダニエル社長が部下に出したメールが、同僚から彼のところへ転送されてきた。それを読んだ彼はブチ切れる。

 「“短い間でしたが、みなさんと一緒に仕事ができて幸せでした”と。ふざけるな。お前と志賀会長が“チャレンジ”と称して、部下に圧力をかけたんだろ。同僚の話では、ダニーの給与は億単位だとか。この泥棒猫!」

 東芝が倒産すれば、当然ながら株主代表訴訟が起こるはずだ。本社、子会社を含めて、トップたちには賠償責任が生じるのではないか。そうしなければ、東芝社員たちが可哀そう過ぎると思う。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 私は横山やすしが亡くなってから漫才は見も聞きもしなくなったが、あれほどの天才でなくとも、喋りがそこそこできる芸人なら見てみたいと思う。だが、テレビに出てくる連中は、いたずらに大声を出し、裸になったり、バカ騒ぎをするだけで、芸無しである。最大の元凶はテレビ局だ。ギャラが安い、一歩間違えば大ケガをしかねない企画でも断らないから、芸NO人がテレビに溢れてしまう。どうだろう、お笑い芸人はテレビには出さず、ラジオだけに出すというのは。そこでリスナーから認められた芸人だけをテレビに出すのだ。そうすれば、話芸だけで勝負せざるを得ない。そうしないと、日本のお笑い芸はそっぽを向かれ、廃れると思う。

第1位 「香取慎吾20年恋人と“謎の少年”」(『週刊文春』4/13号)
第2位 「正直言って、つまんない『笑えない』お笑い芸人ワースト実名30人」(『週刊現代』4/22号)/「ブルゾンちえみに“パクリ疑惑” を聞いてみた」(『週刊文春』4/13号)
第3位 「『余罪』が発覚『核兵器解体』詐欺師との『ただならぬ関係』!」(『アサヒ芸能』4/13号)/「安倍昭恵首相夫人と『元暴力団組長との親密写真』」(『フライデー』4/21号)

 第3位。森友学園問題で渦中の人になった安倍首相夫人・昭恵だが、『アサヒ芸能』(以下『アサ芸』)と『フライデー』に詐欺師と元暴力団組長とも“交流”があったと報じられている。
 『アサ芸』が名指しするのは40代の米国人平和活動家、マット・テイラー。08年に車の中で練炭自殺した元TBSアナウンサーの川田亜子(享年29)の最後の恋人として、メディアに取り上げられたことがある。
 山口県出身者で占められている後援会「長州友の会」は、昭恵が運営委員を務め安倍首相も何度も講演に訪れている。そこに映画監督としての顔も持つマットが入り込み、広島の原爆を題材にしたドキュメンタリー映画を製作すると吹聴し、昭恵はそれに共鳴して、「事あるごとに上映会を開いては、彼の活動のための募金箱を設置して、参加者から集金していました」(地元有力者)
 中には信用して一度に10万円も募金した人もいるという。カネは彼が代表を務めるNPO団体「GNDF(世界核兵器解体基金)」の活動費になったそうだが、今に至るまで核のひとつも解体していないどころか、こうした高尚な名目を立て、カネを集めるのがマット流だそうで、98年には「タイタニック引き上げ品展」をやったが、イベント運営費を払わず、「収益をネコババした過去もあります」(NPO関係者)
 大手芸能事務所幹部は、マットが核兵器を解体する瞬間を映像に撮らせるからという条件で1000万円出資したのだが、出資金詐欺だと知り返還を求めたところ、逆に活動妨害で訴えられたそうだ。反訴してマットの詐欺行為が認定され、返金命令が出たという。
 それ以外にも、マットが付き合っていたミス・インターナショナル・吉松育美が、件の幹部をストーカーだと訴えたとき、昭恵は支援者として名乗りを上げ、彼はストーカーだと断定した騒動があった。
 だが吉松が、昨年2月にその発言を撤回してしまったのだ。後に昭恵は、その幹部に平謝りしたそうだが、「総理夫人という立場をあらためて自覚し、周囲の人間を疑うことを覚えなければ」(地元有力者)
 『フライデー』によれば、最近「アキエリークス」というサイトが開設されたという。そこに、動物愛護団体「J-Taz’s」の代表と彼女が写っている写真が掲載されている。 その代表は元暴力団組長だった人間で、そこが昭恵の名前を使って寄付金集めをしているという情報が流れているそうである。
 『フライデー』の取材に代表は、昭恵の友人が渋谷で犬を保護したことがきっかけで連絡を取り合うようになったと話している。自分が元暴力団の組長で、指がなく入れ墨があるのも事実だが、昭恵の名前でカネ集めをしたことはないと否定した。
 飲み会のとき、酔った昭恵から「代表、入れ墨見せて!」とよくせがまれたが、「こんなもん人に見せるもんやない」と断ったという。天真爛漫なのかバカなのか。「大麻容認発言」など、一歩間違えれば大スキャンダルになりかねない妻の行動や発言に、夫は気が気ではないだろう。

 第2位。キャリアウーマン風のいで立ちで「花は~自分からミツバチを探しに行きますか? ……探さない。待つの」と上から目線の恋愛指南をするネタでおなじみのお笑い芸人に、ブルゾンちえみ(26)というのがいるそうな。
 『文春』は、先の言葉が、某占星術師の本からのパクりではないかと、ネットで話題になっていると報じているが、そんなことはどうでもいい。
 どうせ今の芸人にオリジナリティなどあるわけがない。私はお笑いを見なくなって久しいが、ときどき、チャンネルを間違えて芸人が出ていることがあるが、まったく笑えない。笑えないお笑い芸人など、何とかのないコーヒーより始末が悪い。
 そんな芸無し芸人をもてはやすテレビ局やファンがいるから、さらに彼らを増長させるのだ。
 先日も、お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建(44)と俳優の佐々木希(29)が結婚することをテレビ番組で公表したとスポーツ紙が報じていた。
 何が悲しくてこんな年上のオジンと、可愛い盛りの女が結婚しなくてはいけないのだ。
 忠告しておく。才能のある芸人は家では面白くもなんともない。外面は仮面だ。女だって通りを歩いている犬だって笑わせることができるが、家ではうんともすんとも言わないのが当たり前なのだ。
 渥美清を見なさい。彼は仲間に自分の住所さえ教えなかった。ビートたけしを見なさい。家にあんな顔の男がいたら、子どもはひきつけを起こす。
 昔、私が付き合った萩本欽一だって、舞台を降りれば、タダの無口な人間だ。外でも家でも、ヘラヘラしている奴にろくな芸人はいないのだ。
 『現代』が、笑えないお笑い芸人ワースト30をやっているが、これは企画間違いだと思う。笑える芸人のほうが圧倒的に少ないのだから、ベスト3を選んだほうが読者の役に立つ。
 このワースト1にもブルゾンちえみが選ばれている。ただの素人の宴会芸だと評されているが、そんなのばかりだろう。
 2位にはオリエンタルラジオの中田。3位が昨年200本以上のテレビに出たという永野。続いて品川庄司、芥川賞のオマケといわれるピース綾部が5位。
 30位まで挙げても何の足しにもならないからここでやめておく。
 芸無し芸人がテレビを席巻しているのは、安く使えて便利だからで、テレビのディレクターにも芸のわかる人間などいないからだ。
 元吉本興業の木村政雄が言うように、今は籠池(かごいけ)のような濃いキャラクターのほうがはるかに面白い。心から笑いたかったら、バラエティ番組を消して報道番組を見るべきである。

 第1位。今回の「文春砲」は、元SMAP香取慎吾(40)の“家族”についてである。
 3月5日、後楽園遊園地・東京ドームシティアトラクションズに香取の姿があった。一緒にいるのは中学生ぐらいの少年。
 モノクログラビアに後楽園のゴンドラに2人して乗り、香取が自分と少年を自撮りする写真が載っている。
 どこにでもいる父と子どもという風情だ。だがなぜ『文春』は香取の子どもと書かずに「謎の少年」としたのか。
 香取が2歳年上の彼女との「熱愛」を『フライデー』で報じられたのは97年早々。その年の6月には、彼女との「婚前旅行」も同誌で報じられている。
 当時、彼女は会社勤めをしながら歌や踊りのレッスンをしていた「アイドルの卵」だったという。『フライデー』が報じる2年ほど前から交際していて、香取はテレビ局に、彼女の家から出かけることもあった。
 香取は祖母の葬儀にも彼女を同伴し、香取の両親が経営していた雑貨店でも働いていたそうである。事実婚のような状態だったのだろう。
 だが、05年に、2人は鶴見区の一軒家から六本木のマンションに引っ越してしまう。そのころこんな噂がファンの間で流れたという。
 「慎吾に子どもができた」
 そして熱愛報道はぴたりと止み、それから10年以上ツーショットが撮られたことはない。 だが、昨年3月末に、ハワイで香取が少年と一緒に歩いている写真がツイッターに上げられた。
 彼女とは事実婚ではなく、結婚しているのではないか。少年は2人の子どもで、SMAPが解散して時間のできた香取が、子どもと一緒に後楽園へ遊びに行き、ファンに気づかれても気軽に握手していたそうだ。
 だが、ジャーニーズ事務所に、この件を問い合わせても「結婚の事実はない」と答え、香取本人を直撃しても無言。
 香取を可愛がっていた元マネージャーの飯島三智氏に聞いても、彼女のことは知らない、子どもはいないでしょと否定した。
 香取が彼女と暮らし始めた頃、アイドルが同棲や結婚するなど、事務所ではご法度だった。木村拓哉が工藤静香とできちゃった婚を発表したのが2000年11月。だが、香取には好きな彼女がいることも、結婚したいと公言することも許されなかった。
 SMAPの解散を強く主張したのは香取だった。結婚を公表したキムタクへの「思い」もあっただろうが、自分たちの仲を公にできない事務所への長年の不信もあったのではないか。
 『文春』は「二十年以上に及ぶ“悲恋の物語”に終止符を打つことができるか」と結んでいる。
 今、香取は新規の仕事のオファーを受けていないという。彼は絵が得意で、芸能界を引退してアーティストとして生きていくという見方もあるようだ。
 一方、香取は4月8日放送のテレビ朝日系列『SmaSTATION!!』で、「隠し子じゃないんです。友達の子どもなんです。困っています」と隠し子報道をキッパリと否定。今週発売の『文春』(4/20号)で続報はなかった
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 新潟県北魚沼郡広神村(魚沼市旧広神村)出身、57歳。「謙」は越後の戦国武将・上杉謙信に因むという。演劇集団・円を経て2002年からケイダッシュ所属。

 1987年のNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』で主役の伊達政宗を演じ39.7%という大河ドラマ史上最高の平均視聴率を獲得して、一躍スターダムにのし上がった。

 だが、1989年に映画『天と地と』撮影中に急性骨髄性白血病を発症して降板。生命も危ぶまれたが約1年の闘病の後、治療を続けながらも俳優業に復帰した。

 2003年に公開されたトム・クルーズ主演のアメリカ映画『ラスト サムライ』に出演して、同年度のアカデミー賞助演男優賞などにノミネートされた。

 その後『バットマン ビギンズ』や『SAYURI』などにも出演し、ロサンゼルスを拠点にして英会話を猛勉強、マスターした努力の人でもある。
 2005年には米TIME誌の表紙になり、ピープル誌が企画する「最もセクシーな外国人男性」に選出されたりする国際派俳優である。

 2015年にはミュージカル『王様と私』に主演してトニー賞・ミュージカル部門主演男優賞にノミネートされたが、翌年に早期の胃がんが発見され手術を受けている。

 私生活では1983年に結婚したが、泥沼の2年に及ぶ離婚調停の末、2005年に離婚している。同年に女優の南果歩(53)と再婚

 長男・渡辺大は俳優、長女・杏(あん)も女優・ファッションモデルとして活躍している。

 日本を代表する俳優でありブロードウェーの舞台でも主役を務める渡辺だが、久々に『週刊文春』(4/6号、以下『文春』)にスキャンダルが載った。

 不倫の舞台はニューヨークである。ニューヨークの冬は寒い。5年前にクリスマスから新年7日ごろまでニューヨークに滞在したことがあるが、ブロードウェーにミュージカルを見に行って、劇場を出たら大雪になっていた。

 タクシーはつかまらないので仕方なくホテルまで歩こうとしたが、雪が激しさを増し、動きが取れなくなってきた。

 下手をすればここで行き倒れかと覚悟したころ、ようやくタクシーをつかまえることができて、何とかホテルへたどり着いた。そのホテルのレストランで飲んだオニオングラタンスープのおいしさを決して忘れることはないだろう。

 だが、今年の2月18日は例年より10度も気温が高かったというから、マンハッタンのオアシスであるセントラルパークにも暖かさに誘われ、人出が多かったようだ。

 そんな中を肩寄せあって散歩する2人の日本人男女がいた。小柄な女は濃紺のロングコートで、顔の半分をサングラスで覆っていたが、笑みを浮かべていた。

 帽子とスカーフをまとった男もサングラスをしている。歩道の隅には名残雪。絵のような景色の中を2人は手を握り合ったまま、高級住宅街のほうへ歩いて行った。

 中年のニューヨーカーが、男の顔を見て「ケン・ワタナベ」と呟いた。今や世界的俳優となった男は、そのまま彼女を伴って高級アパートメントへと入って行った。

 映画のワンシーンのようである。だが、渡辺謙が連れていたのは再婚した妻・果歩ではなかった

 果歩は昨年3月に乳がんを患い、都内の病院で手術している。それ以後投薬療法を開始しており、渡辺も献身的な介護をして“おしどり夫婦”といわれている。

 しかも、『文春』によると、果歩はニューヨークを離れて、元夫で作家の辻仁成との間にもうけた大学生の息子に会うためにサンフランシスコへ行っていたそうだ。

 渡辺の女性遍歴は有名である。最初の妻との離婚がもつれて裁判沙汰になった際、妻サイドが実名を上げた女たちの中には、女優以外にも、NHKの受付嬢、行きつけのすし屋の常連客の妻までいたことが大きな話題になった。

 現在熱愛しているA子は『文春』が調べたところ、ジュエリーデザイナーで36歳。出会いは渡辺が主演した『許されざる者』の試写会の後、俳優たちと遊びに行った大阪・北新地にある老舗高級クラブだったという。

 大阪の裕福な家庭で育ったA子は、女子高を出た後、女性誌の読者モデルとして活動していたが、20代後半から宝飾関係の専門学校へ行き始め、ジュエリーブランドを立ち上げようとして、その資金稼ぎのためにクラブで働いていたという。

 エルメスのバッグをいくつも持ち、フランス語やソムリエの資格にも挑戦していて、海外の高級ホテルに宿泊するセレブな生活を送っているようだ。

 そんな2人は最初の出会いから1年後ぐらいで交際を本格的にスタートさせたという。

 逢瀬はニューヨークだけではなく、大阪や気仙沼など国内でも仲睦まじい2人の姿が目撃されている。

 『文春』には、2人がニューヨークのチャイニーズレストランで食事をしている写真、渡辺がソファーでくつろいでいる写真も掲載されている。

 ティファニーで買ったプレゼントをもらって喜ぶ彼女とのツーショットを、渡辺が自撮りした写真まである。

 なぜこのような写真を『文春』は手に入れることができたのであろう。渡辺が出すはずがない。A子が自分のSNSにこのような写真を載せていたとは考えにくい。

 推測するに、A子から出たのではないのか。『フライデー』編集長の経験からいうと、こうした情報は交際している女の側から出ることが多い

 その際、有名になりたい、こんな有名な芸能人と私は付き合っているんだと世間に吹聴したいという「動機」が多かった。

 今回のA子にはそうした動機はないようだ。これも推測だが、2人の関係が妻の南果歩の知るところとなり、困った渡辺から別れ話を持ち出され、カッとなってというケースなのかもしれない。

 だが、仲睦まじく歩いている2人に、そうした諍いがあるようには見えないのはなぜだろう。

 どちらにしても、渡辺は妻に何と言って詫びるのだろうか。それともラストサムライらしく、腹掻っ捌いて死んでみせるのか。

 『週刊現代』(4/15号、以下『現代』)は、この「不倫」問題を追っている。やはり、2月以降、2人の間が悪化したため、A子が情報をリークしたのだろうと推測している。

 芸能事務所関係者が渡辺をこう評している。

 「いまは真面目でクリーンなイメージですが、もともとは女性好きで、しかも惚れっぽく冷めやすい。Aさんとも温泉旅行に行ったり、最初は盛り上がったのだと思います。Aさんもホステスをやめるほど謙さんに夢中になって、周囲にも交際を話してしまった。おそらく謙さんはだんだん距離を置こうとしたが、Aさんは別れたくなかった。その男女のズレが、不倫が明るみに出るきっかけとなったのでしょうね」

 同じ関係者が、『文春』が出た後、渡辺は彼女を責めず、自分の責任だとして、きちんと関係を清算しようとしているという。

 映画で彼が演じる主人公のようだが、実生活ではなかなかそうはいかないのではないか。かつて『現代』のインタビューに渡辺がこう答えていたそうだ。

 「彼女(南のこと=筆者注)は真っ赤なマグマ。こっちも焦げるのを覚悟で付き合わなくてはいけませんから、大変ですよ」

 そのうえ女は執念深い。謙さん、大変だねと、声をかけてあげたい。

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 昨日聞いた話だが、2040年に中国は、65歳以上の人間が3億人を超えるという。現在でも日本の人口ぐらいの高齢者がいるというのだから、中国という国が抱えている問題の大きさがわかろうというものである。老々介護、介護殺人など、高齢者先進国日本は、こうした難問を解決するノウハウをつくりあげ、後進国へ高齢者対策ビジネスとして売り込むことを考えたらどうか。それには目の前のこの問題をどうするかだが、いい知恵はないかな。

第1位 「他人事ではなかった『介護殺人』の恐怖」(『週刊新潮』4/6号)
第2位 「緊急寄稿 菅野完『籠池ノート』の中身」(『週刊朝日』4/14号)
第3位 「ディーン・フジオカが『藤岡竜雄』だった頃」(『週刊文春』4/6号)

 第3位。ディーン・フジオカ(36)という俳優がいる。NHKの朝ドラ『あさが来た』でブレークし、4月から始まるテレビ朝日系のニュース番組『サタデーステーション』にレギュラー出演することが決まった。
 謎に包まれた経歴で、ニュース番組の顔になる男を『文春』が追いかけたとなると、何やら昨年のショーンKの二の舞かと思って読み始めたが、期待(?)は裏切られた。
 彼の本名は藤岡竜雄で、メーカー勤務の父親とピアノ教師の母親のもと、4人兄弟の長男として福島県で生まれている。生粋の日本人である。
 一時は芸能界へ入るチャンスがあったが、IT分野に興味を持ち、英語を磨くためにアメリカへわたる。
 シアトルのコミュニティカレッジに通うとき、学校から紹介されたホストファミリーが彼に付けた愛称が「ディーン」だったそうだ。
 彼が次に選んだのが香港だった。モデルや香港映画にも出たが、日本の芸能関係者に「これからは北京語(中国語)の時代だ」と言われ、台湾へ行く。
 台湾ではドラマにも出たが、さほど華々しい活躍をしたわけではない。その後台北で知り合ったインドネシアの恋人が住む地に移り、結婚。彼は今もジャカルタを生活の拠点にしているそうだ。
 この彼女の父親はインドネシアで指折りの大富豪だというから、彼の運がついてきたのは、この結婚からということができる。
 というわけで、有名になりたいという野心を抱いてあちこちを回った青年が、スターの座をつかんだのは、生まれ育った日本だったというのはやや皮肉ではある。
 テレビ局が彼のどんなところを見て抜擢したのかは、私にはわからない。珍しいもの好きだけで起用されたとすれば、ディーンにとって気の毒な気もする。テレビでしゃべったひと言で、俳優としてのキャリアをダメにしたケースはこれまで多くある。まずはお手並み拝見といくか。

 第2位。朝日新聞デジタル版が3月31日付でこう報じている。

 「大阪府教育庁は31日午前、学校法人『森友学園』(大阪市)が運営する幼稚園の立ち入り調査に入った。府は、補助金を不正に受給したなどの疑いがあるとみて、学園の籠池泰典(かごいけ・やすのり)氏(64)らから事情を聴く」

 権力ににらまれたら怖い。安倍の妻が説明責任を果たさないことに世論が怒っていることを知っていながら、籠池封じをするというは、安倍の権力が衰退してきている証左であるが、疑惑はまだ解明されてなどいない。
 メディアは権力を私(わたくし)しようとする安倍夫婦を許してはならないと思うが、今の大メディアは頼りないからな。
 証人喚問以来、あまり表に出なくなった籠池泰典森友学園前理事長だが、その代わりといっては何だが、ジャーナリストの菅野完(すがの・たもつ)氏が、週刊朝日で籠池の言い分の正しさと、安倍首相の、この事件を葬り去ろうという画策に「NO」を突き付けている。
 菅野氏は、問題になっている昭恵の秘書、谷査恵子からのfaxだが、それと突き合わせて読むとよくわかる籠池の「手紙」についてこう書いている。

 「冒頭の挨拶や自己紹介、依頼内容の概要など、手紙らしい内容は一切ない。ただただ要求内容が羅列されるだけ。『籠池氏が何をしている人か』『なんでこんな手紙を送りつけてきたのか』という予備知識がなければ、到底、理解できるような代物ではない。しかしながら、これに対する返答である谷氏からのfaxは、予備知識のない人間であれば読解不可能なはずの『籠池からの手紙』を見事に読み込み、その要求事項の全てに遺漏なく的確に返答しており、先述のように『工事立替費の次年度での予算化』という『籠池の要求』を完全に満たす回答まである」

 菅野氏は、ここまで円滑なコミュニケーションが成立するためには、谷に解説する人間が必要で、それは、籠池が留守番電話に吹き込んだと言い、自身のフェイスブックでも認めている、昭恵が担当したと考えるのが自然だろうと言っている。
 昭恵が籠池の要求を受け、それを財務省に伝えろと谷に指示を出した。

 「これでは政治家が行う『陳情処理』や『口利き』と全く同じではないか」(菅野)

 昭恵の土地取引への関与は誰の目にも明らかだという菅野の主張は、私にも理解できる。
 これまで、政府、与党側から、この問題で資料が出されたことはない。議論の検討材料になる資料はことごとく籠池側から提示されたものばかりである。
 それにもかかわらず、安倍や菅官房長官の言い分は「『苦しい言い訳』としか表現のしようがあるまい」(同)。それは安倍が、妻と私が関わっていれば、総理も議員も辞めると言ってしまったため、すべてを籠池の一人芝居にしなくてはならなくなったためである。

 「たかだか首相一人のプライドを守るために、政府高官たちが嘘に嘘を重ね、国家を溶解させていく姿は見るに忍びない。もうゲームオーバーだろう。首相、いい加減、諦めなさいな」(同)

 大阪地検が捜査を開始したが、東京地検特捜部の元検事、郷原信郎弁護士は、こう語っている。

 「籠池氏は証人喚問でも一貫して昭恵氏から100万円をもらったと語るなど政権には大きなダメージを与えた。そんな意を法務省が“忖度”し、告発状を受理したとリークしたのではないか。補助金は返還しているので通常は捜査しても起訴はありえない

 むき出しの国家権力を使って、一市民をひねり潰そうというのは、あってはならない。
 籠池の人間性や信仰心はともかく、ここで安倍の横暴を止めないと、日本は北朝鮮よりも言論弾圧がひどい国になる。
 メディアはここが正念場だということを、腹に叩き込め。

 第1位。『新潮』では「介護殺人」について特集を組んでいる。何しろ介護殺人は日常化しているのである。
 自分が認知症になり、介護される側になったら。逆にカミさんがそうなったら、どうするだろう。
 元気な時は「オレがお前の面倒を見てやる」「私があなたの介護をする」と言えるが(本音は別として)、そうなったときは、介護する側の肉体的な衰えもある。
 『新潮』は有名人といわれる人たちにも話を聞いているが、そうした体験のある人は異口同音に、この人を殺して私も死のうと考えたのは一度や二度ではないと話している。
 世界で一番早く少子高齢化を迎えた老人大国ニッポン。なかでも老々介護、介護殺人に対する処方箋を考えだしたら、今でも日本人の人口を超える高齢者を抱える中国などは、そのノウハウをいくらカネを出してもいいから買いにくるに違いない。
 自動車も半導体もテレビも斜陽産業になり、日本が生きていこうとすれば、高齢者のクオリティ・オブ・ライフをどうするかというノウハウを世界に先駆けてつくることしかないと思う。
 歌手の橋幸夫(73)は6年にわたって認知症の実母を介護した。もちろん介護殺人をしたわけではないが、介護殺人をした人間には同情的だ。

 「愛する人を手にかけるのは本当に辛いことのはず。でも愛情があればあるほど、相手を楽にしてあげたくなるんですよね。そういう人を、果たして単に『殺人犯』と片付けていいのかどうか」

 エッセイストの安藤和津(69)は、介護していた実母の死を夢に見たことがあったと振り返っている。

 「仕事、家事、子育てと介護で、熟睡できることは全くありませんでした」(安藤)。

 慢性的な睡眠不足が思考回路をおかしくし、夜、外を眺めて大きな木が目に飛び込んでくると、「この木に紐をぶら下げて首をくくったら楽になる」と思ったという。

 事実婚のパートナーと父、母の3人を介護したという作家で慶応大学文学部教授の荻野アンナ(60)は、父親の介護のとき、父親がリハビリ病院に入ることに怒り、そこの医者から出ていってくれと言われたとき、病院に行く途中でカッターナイフと缶チューハイを知らずに買っていたという。

 「それまで私の中でなんとか保っていた『何か』がガラガラと音を立てて崩れ、『もういや、こんな生活!』『お父さんを殺して私も死ぬ!』と叫びながら、床を転がっていました」(荻野)

 父への殺意というよりも、世界中で私以外にこの人の面倒を見られる人はいない。だから責任を取って心中しよう、という気持ちだったという。

 安倍首相よ、小池都知事よ。豊洲や東京五輪などよりも深刻でより難しい「老々介護」「介護殺人」について、英知を集め、解決策を早急に模索するべきだと思う。

 これこそが今の日本の本当の危機であることは間違いないのだから。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦