コトバJapan! マンデー政経塾 の 記事一覧


 これが事実なら、北朝鮮はまたやっかいな核戦力を得たことになる。

 北朝鮮メディアは、2017年9月3日、北朝鮮が開発したICBM(大陸間弾道弾)の核弾頭に搭載した「水爆」について、「電磁パルス(EMP)攻撃能力を得た」と報じた。

 EMPは「Electromagnetic Pulse」の略。EMP攻撃は、高高度(極めて高い)の上空で核爆発を起こし、放たれたガンマ線が作用して地上の電子機器などを破壊するものだ。人間や建物には直接の影響はない。しかし、電子機器が破壊されることで、大規模停電、水道、鉄道、航空機、通信・インターネット網などが停止・故障し、甚大な影響を及ぼす。復旧には場合によっては数年かかるとの指摘もある。

 心配なのは、日本の防衛網にも影響を及ぼす可能性があることだ。日本の防衛網の基盤はレーダーなどの電子機器が基盤となっているからだ。

 EMP攻撃自体は冷戦時から米ソ両国などが開発と対策を練ってきた経緯がある。残念ながら、日本はこれまで対策を怠ってきた。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は記者会見で、「万が一の事態の備えとして、国民生活への影響を最小限にするための努力が必要。必要な対策を検討していきたい」と述べた。その対策が不十分であることを認めた形だ。政府は、防衛省、経済産業省、国土交通省などが中心となってようやく対策に着手した。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 少子高齢化が進む中、安倍政権は2017年6月下旬、国家公務員と地方公務員の定年延長を目指す検討会議を設置した。国家公務員と地方公務員の定年を、早ければ2019年度から段階的に、65歳まで引き延ばすことを視野に置く。2017年度中にも対策をまとめ、2018年の通常国会に関連法案を提出する。

 公務員の定年は現在、原則として60歳である。しかし、年金の受給開始年齢は2025年度には65歳までに引き上げられる。65歳までの延長は、年金も給与も受け取れない無収入の高齢者が出てくることを防ぐ狙いがある。

 また、定年延長は、団塊世代のリタイアが進み、国内の労働人口の減少が加速することから、人手不足を補う側面もある。

 課題は、公務員の総人件費をどう抑えるかだ。

 定年延長だけでは公務員の総人数が増えて、当然だが、その分、総人件費も膨れ上がる。そのため、政府の検討会では、人件費の抑制策も話し合う。

 人件費抑制のポイントは、中高年層の給与の減額だ。例えば50歳代の給与水準を全体として抑制、また60歳以降を管理職から外す「役職定年制」の導入も検討する。

 ただ、50歳以降は子どもの大学進学などで、教育費の負担が大きく増す時期と重なっている。最近は晩婚化で、子どもが大学に進学する時点で親が60歳をすぎているケースも少なくない。そうした家庭からは「子どもを大学に出せない」といった悲鳴が聞こえてきそうだ。

 一方、公務員の定年延長には、民間企業の定年延長を後押しする狙いもある。

 民間企業などに対しては「高齢者雇用安定法」が、65歳までの雇用確保を念頭に(1)定年制の廃止、(2)定年延長、(3)再雇用など3つの対応を求めているが、再雇用を選択する企業がほとんど。定年延長が進んでいないのが実情だ。
   

   

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 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2017年7月、大枠で合意した。2019年中の発効を目指す。

 協定は日・EUを合わせて世界全体の3割を占める巨大な経済圏が対象となる。これまで以上に日欧間の貿易が盛んになるのはもちろん、企業の取引も活発になる。安倍晋三総理大臣も、「アベノミクスの新たなエンジンが動き出す。経済成長に直結させたい」と期待を寄せる。

 経済連携協定は英語で、Economic Partnership Agreement。経済連携協定は、特定の国や地域との間で関税や貿易障壁を減らしたり、知的財産の保護、投資のルールを決めたりする協定のことを言う。似たような協定にFTA(自由貿易協定)があるが、これはEPAに比べ、より対象を絞ったもので、主に関税やサービス貿易の障壁等について、その削減・撤廃をはかるものだ。

 国際間の貿易・投資を巡っては、最近、米国・トランプ政権のTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、英国のEU離脱問題など、自由貿易体制に暗雲が漂う気配が出ている。そうした中での日欧・EPA大枠合意は、自由貿易体制を立て直す意味合いもある。

 日欧経済が活発化し、保護主義への流れをけん制する一方で、国内農業に影を落とす可能性も指摘されている。欧州からの輸入品との競争が、激しくなるからだ。

 例えば欧州産のチーズや豚肉で関税の一部を撤廃・削減されると、当然だが輸入が拡大し、国内産への影響は必至だ。この場合畜産農家、酪農家などへの対策は急務だ。
   

   

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