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 言わんこっちゃない。バカは隣の火事より怖いのだ。トランプ大統領は米中首脳会談の最中にシリアを空爆して、世界中に衝撃が走った。

 それだけではなかった。首脳会談が終わった後、今度は米原子力空母カールビンソンや空母航空団、誘導ミサイル駆逐艦などを朝鮮半島近海に集結させるよう指令を出し、北朝鮮の核施設や軍事基地への空爆も辞さないと、圧力を強めているのだ。

 朝鮮戦争以来最大の危機である。一つ間違えれば第二次朝鮮戦争勃発という最悪の事態も考えられる。なぜトランプは、プーチン大統領や習近平主席の顔に泥を塗るようなことを始めたのか。

 その謎を解き明かしてくれる報道は日本のメディアには皆無である。シリア空爆については、こういわれているそうだ。

 4月4日、シリアの反体制派支配地域で、神経ガスを使ったと見られる空爆があり、子どもを含む多くの市民が犠牲になった映像が世界中を駆け巡った。それを見たトランプが怒り狂って命令した。後先を考えない“衝動的”なものだそうだが、だとすれば、こんな怖いことはない。

 『ニューズウィーク日本版』(4/18号、以下『ニューズ』)は、トランプの攻撃を取り上げている。トランプは選挙中ISISを討伐するといってきた。それが突然、アサド政権を打倒しようとしているISIS側に回ったかのように、アサド側を空爆したのである。

 この空爆が持つ意味は深刻である。シリアのこの地域にはトランプが“尊敬”しているプーチンのロシア軍が、アサド政権を守るために1万人程度入り込んでいるといわれている。

 「攻撃直後のロシアは怒りの声明を発表。米ロ両軍の偶発的衝突を防ぐための連絡システムを停止した。直接の報復行動ではないが、これで米軍の軍事行動はリスクがかなり高くなる」(『ニューズ』)

 さらに同誌によれば、トランプはアメリカ国内で「プーチンの傀儡政権」といわれている風評を打ち消すために、このような強硬姿勢をとったのではないかという見方があるという。

 トランプがロシアの傀儡政権であったとしたら怖ろしいことではあるが、それを否定するためにシリアを空爆したのであればなおさら怖い話だ。この男には世界最大の核戦力を動かす力があるのだから。

 シリアへの空爆をしたことだけでは満足できないトランプは、米中首脳会談が終わると今度は、北朝鮮を標的にすると公言して、核開発を放棄しなければ攻撃すると空母や駆逐艦を差し向けたのである。

 おりしも北朝鮮は故金日成(キム・イルソン)国家主席の生誕105周年を祝うための行事が行なわれ、外国メディアも多数招待していた。

 どちらかが誤って発射した一発の銃弾が、第二次朝鮮戦争を引き起こしかねない緊急事態である。さらに4月25日には軍創建85周年があり、この日に6度目の核実験をするのではないかといわれている。

 そうなればトランプは躊躇せず北朝鮮を攻撃するかもしれない。トランプと北朝鮮問題について何らかの話し合いがあったに違いない習近平は、北朝鮮の核実験を止めさせるために金正恩側への圧力を強めていると思われるが、金正恩があっさり引っ込めるとは考えにくい。

 日本にとってはアメリカの占領時代が終わって以来、初めて日本が巻き込まれる戦争一歩前の異常事態である。

 だが不思議なことに、この国のメディアを見ている限り、そうした緊迫感は伝わってこない

 4月18日、ペンス副大統領が来日して安倍首相と会談した。北朝鮮問題も話し合われたことは間違いないが、安倍首相の表情からも緊迫感はうかがえなかった。

 だが、安倍の“ニタ笑い”の裏に隠された秘密の日米合意があるのではないだろうか。

 ここで『週刊文春』(4/20号)の巻頭で「金正恩“斬首”秒読み 政府が覚悟『最悪シナリオ』」を書いている山口敬之(元TBS記者)のレポートを見てみたい。

 山口は安倍官邸に近いといわれている記者の一人である。

 9日早朝、安倍首相がトランプとの緊急電話会談に臨んだ話から始まる。トランプはそこで「シリア攻撃を安倍が支持した」ことへの謝意を述べたという。だが、安倍としては、化学兵器を使用した確固たる証拠がないため、悩んだ末に「軍事行動ではなく、化学兵器の拡散と使用を抑止する」というトランプの“決意”を支持するという、もってまわった言い方にしたと、安倍の苦心話を披露している。

 山口によれば、トランプは習近平に、近く行なわれるといわれている北朝鮮の6回目の核実験をやめさせるために、中国に対して期限を区切った北への制裁強化を強硬に求めたという。

 だが習近平は明確には答えなかったのだろう。そこで北朝鮮へ軍事攻撃も辞さずという強行姿勢に転じたのだが、山口はここで、シリアは空爆したのに、北朝鮮に対しては、すでに計画立案が終了している「斬首+限定空爆」になぜ踏み切らないのかと疑問を呈している。

 その理由は、日本政府が入手した衝撃的なシミュレーションにあるという。シリアと違って北朝鮮にアメリカが先制攻撃すれば、北朝鮮は必ず韓国のソウルへ攻撃をしてくる。そうなれば韓国人だけではなく、在韓邦人や観光客が多数犠牲になる可能性がある。

 だからアメリカはためらっているというのだが、こんなことはいまさらシミュレイションしなくても、わかりきったことである。

 北朝鮮はソウルだけではなく、日本の心臓部にもミサイルを撃ち込んでくることは間違いない。だが、山口も書いているように、日本の最新鋭のミサイル防衛システムでも、全部を迎撃できるわけではない

 『週刊新潮』(4/20号、以下『新潮』)によると、『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』(2003年、新潮社刊)を書いた北東アジア地域安全保障問題に詳しいマイケル・ユーが、米ヘリテージ財団の協力を得てした試算では、北朝鮮が核、生物兵器、化学兵器を搭載するミサイルを東京都庁周辺に撃ち込むと、最大で約186万人が死ぬとしている。

 山口の原稿で見逃せないのは結びの言葉である。「覚悟を決める必要がある」。主語はないが推測するに「国民」であろうが、何の覚悟なのか。

 安倍首相は北朝鮮討伐の米軍に、今後自衛隊も参加させるがゴチャゴチャ言うなということか。官邸の意向を代弁して、われわれに戦争への準備をしておけというつもりなのか。

 森友学園問題でもそうだったが、最近、官邸の意を汲んで、安倍昭恵の疑惑隠しや、アメリカと同盟関係にあるのだから、戦争となれば自衛隊を派遣するのが当然だといういい方をする評論家、ジャーナリスト、テレビのコメンテーターが多い気がしてならない。

 衝動的で先の見通しもないまま突っ走るトランプに対して、バカなことはやめろと忠告するのが真の同盟国としての役割ではないのか。

 トランプの本音はこうだ。シリアや北朝鮮を攻撃しても、アメリカ本土が攻撃されることは当面ない。自分たちが安全な場所にいて、アジアの火薬庫に火を放てば、朝鮮半島と日本列島は火だるまになる。それをワインでも飲みながら、トランプはテレビで見るつもりなのだろう。

 『新潮』によれば、かつて金日成が息子・金正日(キム・ジョンイル)にこう尋ねたという。

 「アメリカが北朝鮮を攻めて来たら勝てるのか」。金正日はこう答えた。

 「勝てないが、朝鮮のない地球はありえない。朝鮮が潰れる時には、地球を破壊してしまえばよい

 韓国では緊張感が高まっているが、日本ではメディアも国民も騒がないのはなぜか。

 今やノー天気週刊誌の代表になった『週刊ポスト』(4/28号、以下『ポスト』)などは、朝鮮半島有事なら日本に「特需」が来るなどという、呆れた特集を巻頭でやっている。

 昔から遠い戦争は買い、近くの戦争は売りという相場の格言がある。ベトナム戦争は遠い戦争であったから「ベトナム特需」があった。『ポスト』は朝鮮戦争のときも「朝鮮特需」があったではないかという。

 だが、あの戦争は米韓と北朝鮮との局地戦だった。その頃の日本はアメリカの占領下だったから、気分的には遠い戦争であった。

 それに、今のような飛び道具戦争ではなく、地上戦が主体だったし、北にはろくに戦闘機もなかったであろう。だが、今は、北と戦争になれば、アジア全土が巻き込まれる。

 『ニューズ』(4/25号)は、まだトランプは北朝鮮を攻撃しようとは考えていないと書いている。それは、韓国にいる15万人前後、日本にいる5万人以上のアメリカ人を退避させていないからだ。

 しかし、シリア攻撃をした後、プーチンの反応は抑制的だった。最強のアメリカに対して誰も報復などしやしない。

 「トランプがそんなおごり高ぶった自信を深めたとすれば、北朝鮮に対しても同じ論理で行動するのはあり得ない話ではない。これによって、米朝双方が互いの意図を読み違えて偶発的な武力衝突に至る可能性も否定できない」(『ニューズ』)

 保守的な『ニューズ』でさえ、北朝鮮という難題を解くには「話し合い」を目指すしかないと言っている。

 安倍首相は政治生命をかけてトランプを説得し、空母を引き上げさせ、金正恩とアメリカ、中国、韓国、日本との話し合いに持ち込むことに全力を挙げるべきなのだ。それこそが真のリーダーシップというものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 安倍首相の周りにはろくな者がいない。暴言、虚偽発言、浮気、不倫など、日常茶飯である。その連中になぜそんなことをするのかと問えば、きっとこう答えるに違いない。「上がアホだから」。左右どちらを見ても馬鹿と阿呆の 絡み合いばかりと歌ったのは鶴田浩二。ほんにお天道様に顔向けできない、いや~な世の中でございます。

第1位 「飲酒規制が始まった!」(『週刊ポスト』4/28号)
第2位 「『遺言手記』余命を諦めた『木嶋佳苗』の東京拘置所から愛をこめて」(『週刊新潮』4/20号)
第3位 「“総理の懐刀”が『番記者いじめて辞めさせた』事件」(『週刊ポスト』4/28号)

 第3位。今井尚哉(たかや)という首相秘書官は、よほど評判の悪い人間のようである。『ポスト』によれば、今井の番記者がいるそうで、毎晩、今井の家の前には番記者が10人以上も集まるという。
 機嫌がいいと話すが、へそを曲げると何もしゃべらない。その今井が朝日新聞の番記者S記者をとことん嫌ってしまったという。
 S記者は15年9月に可決された安保法案を取材しており、可決後、安倍首相が祖父岸信介と父安倍晋太郎の墓参りをした際、安倍に「安保法案の成立を報告したのですか?」と声をかけたのだ。
 それを、今井は「無礼極まりない」と怒っていたという。そこへS記者が番記者として現れたから、Sを無視し続けたそうである。
 Sはそれでも腐らずに夜回りを続けていたというが、今年1月、某新聞記者とテレビ局の記者に呼び出された。
 そして、君がいると今井さんが対応してくれない。もう来ないでくれ。その代わり、今井氏とのやり取りはメモで回すからと言われたというのだ。
 こんな記者がいるから、この程度の人間にいいようにあしらわれてしまうのだ。
 それを聞いたS記者は意気消沈して夜回りをしなくなり、朝日の上司もこれを知って、4月に別の記者と交代させてしまったという。
 記者もだらしないが、朝日もだらしがない。だから権力のポチと言われてしまうのだ。
 記者の質問に答える、説明責任を果たすのは役人や政治家どものやるべきことである。もしそうしないのがいたら、記者たちがそれぞれの紙面で告発し、世間に知らせるべきである。
 それでも何もしないのなら、野党に国会で質問させる。とことん追及するべきなのに、何をやっているのだ、お前たちは!
 安倍がヘラヘラしてられるのは、こういう腑抜けた記者たちのおかげである。

 第2位。さて、木嶋佳苗(かなえ)(42)という女性を覚えておいでだろうか。婚活サイトで知り合った男性3人を練炭自殺と見せかけて殺害したと殺人罪に問われ、4月14日に最高裁で上告が棄却され、死刑が確定した。
 その彼女が、『新潮』に「東京拘置所から愛をこめて」という手記を寄せている。彼女は獄中でも結婚、離婚、再婚をし、房内をパステルカラーのバスタオルで覆い、ベターッと開脚や、筋膜リリース、タバタ式などのストレッチを欠かさず、好きなブラジャーや下着を着けながら、優雅に暮らしていると書いている。
 食欲は旺盛で、いろいろなサンドイッチを作って楽しんでいる。性欲は「考えないわけではないけれど性欲で息苦しくなることはない」(木嶋)そうだ。
 彼女は自分が犯した罪については触れていないが、自分は無実だと主張しているようだ。だが彼女は、死刑確定後に法相に対して早期執行の請願をするというのである。
 その背景には母親との激しい葛藤があるようだ。母親は自叙伝などを執筆することをやめなければ一切の支援を打ち切る、弟妹や甥姪との交流も禁じると宣告し、彼女がそれを拒否すると、敢然と実行したという。
 拘置所内の生活は外部の支援なしでは立ちいかない。木嶋は母親のやったことを「悪意の遺棄」と書いている。それに父親が母親によって「心を蝕まれた結果、還暦で自死を選」んだことなどにも触れているが、複雑な家庭や母子の間の愛憎があるようだ。
 木嶋の学歴は知らないが、文章はうまい。拘置所内で多くの本を読んでいるそうだが、もともと書くことが好きで文才もあったのだろう。以前、ジャーナリストの青木理(おさむ)を好きだと言っていたが、そのことはここには書いていない。
 不謹慎かもしれないが、編集者としては、彼女の文才を駆使して、犯罪を犯す人間の心理や行動について書いてもらいたいと思う。

 第1位。今週の1位は『ポスト』の「飲酒規制が始まった」という特集にあげたい。まさに現代の「禁酒法」を厚労省が作ろうしているというのである。とんでもない!
 タバコについては、飲食店や公共の場所での喫煙を全面禁止する受動喫煙防止法案を3月にまとめていて、今国会で成立を目指している。
 4月1日、厚労省内に「アルコール健康障害対策推進室」を新設したそうだ。
 日本は酒の規制が少ない国なのだそうだ。そういえば、桜が咲けば酒、名月だと言っては酒、めでたいと言っては酒。言われてみりゃそうだがね。
 WHO(世界保健機関)では10年に「アルコールの有害な使用を減らすための世界戦略」を採択し、各国が取り組むべき酒害対策として、酒の安売り禁止、飲食店での飲み放題禁止、酒類の広告規制などをあげて、酒の値段の引き上げ、公共の場所での販売規制などが推奨されているというのだ。
 すでに欧米をはじめ、シンガポールやインド、タイなどにも規制の動きが広がっていて、日本でも13年に「アルコール健康障害対策基本法」がまとめられている。
 これは主として依存症対策だが、昨年5月に改正酒税法を成立させ、ディスカウント店に対して、過剰な酒の安売りの規制に乗り出しているというのである。へぇ~、ちっとも知らなかった。
 『ポスト』によると、テレビCMで、うまそうにゴクゴク飲みほすシーンは、アルコール依存症の人に苦痛を与えるとして、内閣府のアルコール健康障害対策関係者会議ワーキンググループの指摘で、業界がその指導に従い、ゴクゴクの効果音は使用しない、のど元のアップはしないという自主規制をしているそうだ。
 また、日本人の飲酒率は男が83.1%、女性が60.9%で約7472万人。このうち健康被害が予想される問題飲酒の人間が1353万人もいて、飲み過ぎによるけがや病気の治療にかかる医療費は年間1兆226億円と推計されている。飲酒による事故や労働損失を考えると、社会的損失は年間推定3兆947億円で、医療費との合計は年間4兆1483億円にもなる。
 アルコール飲料の国内市場は約3兆6000億円だから、飲酒は経済効果より損失のほうが大きいそうである。
 厚労省の官僚が、世界のほとんどの国では、公園やビーチなどの公共の場所での飲酒は禁止が常識だから、東京五輪に向けてアルコール規制の議論を本格化させ、自動販売機の全面禁止、屋外や公共施設での飲酒の規制、店での飲み放題の禁止などをしていくというのだ。
 フランスは飲酒大国だったのに、現在は半分以下に減ったという。カナダでは、野球場でも酒の販売と飲酒が禁止になったところが出ている。まるでこれでは、1920年から33年まで敷かれたアメリカの禁酒法のようではないか。
 プロテスタントの間での禁酒運動の高まりと、巨大資本への不満を持つ国民の社会改革運動が結びついて制定されたというが、これによって密造酒がつくられ、アル・カポネなどのマフィアの資金源になった。映画『アンタッチャブル』の世界だね。
 禁酒法でわかったのは、どんなことをしても飲みたい奴は飲むということ。それを金儲けにしようという人間が必ず出てくるということである。
 今回の場合は、国や厚労省が、医療費削減の大義名分でもって、酒への税金を大幅に上げて税収を増やそうとする魂胆が見え見えだ。
 この国は「酒なくてなんの己が桜かな」である。それに日本酒という世界に誇れる銘酒を作り出した国である。お上が禁酒令など出したら、暴動がおこるぜ。悪いことは言わねぇ、よしといたほうがいい。
 これを書き終わったら、谷中墓地の近くにある居酒屋へ、一杯飲みに行くとしようか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 中国という一つの国の中に、社会主義と資本主義が並存する制度のことをいう。

 英国(1997年返還)、ポルトガル(1999年返還)からそれぞれ中国に返還された香港、マカオに適用されている。外交と防衛を除く行政分野に「高度な自治」が保障され、当地には返還前の資本主義制度を維持させた。提唱者は鄧小平(とうしょうへい)である。

 香港の場合、特別行政区として独自に行政、立法、司法権が認められており、公用語も中国語と英語である。一国二制度は返還後50年間維持するとされた。

 ところがである。香港でこの一国二制度が形骸化しそうな気配が出てきたのだ。2017年3月、香港行政長官を決める選挙が行なわれ、親中国派の林鄭月娥(りんてい・げつが)氏が当選した。問題なのは、その際、習近平政権が介入したからだ。選挙を前に、政権の要人が「林鄭月娥氏は、党中央が支持する唯一の候補者だ」と発言したのだ。香港の行政長官選挙は、選挙と言っても選挙委員(1194人)による間接投票だ。「一人一票」の普通選挙ではない。しかも委員の大半は親中派で占められており、要人の発言は「林鄭月娥に投票せよ」と大号令したようなものだった。世論調査では当選した林鄭月娥氏は、ライバル候補に30ポイント近く水をあけられていた。民意は林鄭月娥氏に「ノー」だったのだ。

 台湾を自国の一部と主張している中国は、台湾に対しても「一国二制度」を求めている。香港における一国二制度の形骸化の動きは、台湾としても到底、看過できないだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 日本語にすると「もう一つの事実」あるいは「代替的事実」。

 米国・トランプ政権から飛び出した奇妙な言葉である。その経緯はこうだ。

 2017年1月の大統領就任式会場の人出について、米メディアは8年前のオバマ大統領の就任式に比べてとても少なかったと指摘した。

 これに対し、トランプ大統領自身が米メディアを「うそつきだ」と批判。さらにスパイサー報道官は「史上最多の聴衆だった」と主張した。その際、高圧的なスパイサー氏は記者からの質問を一切受け付けつけなかった。

 そこに登場したのがコンウェイ大統領顧問。テレビ番組で前述のスパイサー発言への疑念を指摘されると、こう言い放ったのだ。

 「オルタナティブ・ファクトだ」

 ちなみに、8年前の就任式の写真と比べると明らかに人出が少なかったのは「客観的事実」だ。

 コンウェイ氏の発言は、事実の前に強弁としか言いようがない。番組ではキャスターから「代替的事実とは事実ではない。ウソだ」と反論されたが、当然だ。コンウェイ氏は「いずれにせよ人出の数を確認する方法はない」としか言い返せなかった。

 「オルタナティブ・ファクト」にはトランプ政権によるメディア批判の側面がある。見逃してはならないのは、政権に批判的なメディアの指摘を一切認めず、逆に「偽ニュース」として根拠もなく排除する、その政治的スタンスだ。逆にトランプ大統領にこそ、虚言ぶりが目立つ。

 野放図なトランプ節に我々はもっと警戒せねばならない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作