評論家の故・江藤淳氏は、1999年に『産経新聞』に寄せた文の中で、当時の都知事選を制した石原慎太郎氏を「無意識過剰」と評した。他人から何を言われようと気にしない、それが反感を買う一方で大衆の共感をも得たというのである。これはのちに『読売新聞』のコラム「編集手帳」でも取り上げられ、いまでは逆に、豊洲市場問題などで石原氏のマイナス面を語る際に欠かせないワードとなっているようだ。

 ここから来ているかどうかは不明だが、「無意識過剰」という言葉はいま、ネット上でそれなりに存在感のあるワードになっている。「自意識が薄くなんの配慮もない(そのため周囲が振り回される)」タイプの人を揶揄するときに使われる。ただ、だからこそ魅力的・個性的といえる面も改めて強調しておきたい。

 無意識過剰の表現は単なる自意識過剰のもじりなので、初出がわからないほど昔から存在する。たとえば、かつて漫画家の根本敬(ねもと・たかし)氏らは、いまやバラエティタレントの蛭子能収(えびす・よしかず)氏の特異なキャラクターを「無意識過剰」と称した(上記の石原知事うんぬん以前の話である)。「空気が読めない人」では包括できない、「無意識過剰な人」とでも表現せねばならないニュアンスが、この世にはあるものだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「ヘイトスピーチ対策法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)」の施行から、6月3日で1年を迎えた。

 民族や宗教、障害の有無、性的指向など、特定の属性をもつ人々に対して、憎しみや偏見の言葉を投げつけるヘイトスピーチ(憎悪表現)。イギリス、フランス、ドイツなどの欧州諸国では、ヘイトスピーチを規制する法律があるが、日本では長く放置されてきた問題だ。

 だが、2013年頃から、日本でも排外主義的な市民団体が在日韓国人や朝鮮人に対して、「殺せ」「日本から叩き出せ」など、聞くに堪えない暴力的なヘイトスピーチを行なっていることがマスメディアでも報じられるようになり、多くの人が知るところとなった。

 当初、安倍政権はヘイトスピーチの規制についてあいまいな態度を見せていたが、主要国首脳会議「伊勢志摩サミット」を前に、国会で野党から問われて対策に乗り出す可能性を示唆。サミットが開催される2日前の2016年5月24日に、ヘイトスピーチ対策法が成立した(施行は6月3日)。

 対策法では、相談体制の整備、人権教育や啓発活動などに対する国の責務、地域の実情に応じて地方自治体が施策を講じることを制定。人権教育・人権啓発などを通じて、ヘイトスピーチをなくしていく取り組みを推進していこうという理念を定めている。

 その結果、排外主義的な市民グループによるデモ件数は、警察庁によると法律の施行前の1年間は61件だったのに対して、施行後は35件に減少。法律の制定が、ヘイトスピーチ抑止に一定の効果は表しているようだ。ただし、根絶には至っておらず、ヘイトスピーチと認定されないような言葉を使って、排外主義的な言動を続けている団体もある。

 法務省は、2017年2月にヘイトスピーチ対策法の基本的な解釈をまとめ、差別的発言の具体例を要望のあった約70自治体に提示。「〇〇人は殺せ」「〇〇人を海に投げ入れろ」などの脅迫的言動、ゴキブリなどの昆虫や動物に例える著しい侮辱、「祖国へ帰れ」「この町から出て行け」などの排除の扇動を挙げている。だが、こうした言葉を使っていなくても文脈や意味合いによって差別的なものを感じさせるものであれば、それはヘイトスピーチだ。

 ヘイトスピーチがなくならない原因として指摘されているのが、法律の限界だ。憲法が保障する集会、結社、表現の自由を制約する恐れから、ヘイトスピーチ対策法はあくまでも理念法という位置づけになっている。「不当な差別的言動は許されないことを宣言」しているものの違法とはしておらず、禁止規定や罰則を設けていない。そのため、いまだヘイトスピーチに傷ついている人がいるのが実情だ。

 だが、法律で規制できなくても、それぞれの自治体が条例でヘイトスピーチ対策をとることはできる。実際、動き出している自治体もあり、大阪市は2016年7月にヘイトスピーチを規制する条例を全国で初めて制定。悪質なインターネット動画の登録名(ユーザー名)の公表を行なうなどの対策を講じている。また、川崎市は公的施設でのヘイトスピーチの事前規制をするガイドラインの策定や条例を作る予定で、ヘイトスピーチの根絶に向けた啓蒙活動も行なっている。このほか、神戸市や名古屋市などでも、ヘイトスピーチ対策への条例制定の動きがあるが、あとに続く自治体が一つでも増えてほしいと思う。

 たかが「スピーチ」。たかが「デモ」と思うかもしれない。だが、歴史上最大の悲劇といわれるユダヤ人の虐殺も、最初は言葉による攻撃から始まっている。その言葉がやがて人々に憎悪の感情をうえつけ、ホロコーストにつながっていったのだ。二度と再び、あのような悲劇を起こさないためには、今、ここでヘイトスピーチに歯止めをかける必要がある。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」といえば、毎年業界が注目するランキング。旅行会社の投票で選出され、「もてなし」「料理」「施設」「企画」の4つの部門、またそれらの合計ポイントによる「総合」で評価される。石川県和倉温泉の老舗旅館・加賀屋が、36年連続で1位という偉業を成し遂げたことでも有名だ。

 しかし2017年度の第42回において、その牙城はついに破られることになる。新たな「総合」1位は、福島県・母畑(ぼばた)温泉の八幡屋。部門別ではどれも1位ではなかったが、総合では前年度の9位からのジャンプアップとなった。じつはこの温泉、業界では評価が高い一方、福島の関係者でも知らないことがある。屋外プールなどの施設面もさほど珍しくなくベーシックといえるし、ビジュアルが贅沢な旅館はほかにいくらでもある。特に周囲に観光名所があるわけでもないのだ。だが、シーズンによらず一年を通して賑わい、その居心地の良さからリピーターも多いという。つまり、昔ながらの湯治場による、「無欲の勝利」なのだ。

 ちなみに、母畑温泉には「八幡太郎」こと源義家が戦(いくさ)で傷ついた愛馬を癒やした伝説が残る。八幡屋はその霊泉の上にあるとされ、ここから「八幡」の名前は来ているそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 いま、流通業界で「電子タグ」によるちょっとした革命が起きようとしている。

 電子タグは、小型のICチップとアンテナを内蔵したタグ(荷札)。チップには電子情報として、価格など、商品情報が一つひとつに記録されており、その情報は専用機器を使って読み取ることができる。

 流通業界は人出不足に直面し、電子タグはその救世主と位置付けられている。

 例えば、現在、スーパーの一部で始まったセルフレジでは、バーコードで1点ずつ読み取っているが、これが電子タグを導入すると、買い物カゴの中の複数の商品の価格を瞬時に読み取り、レジの画面に価格の総計が表示される。セルフレジでの処理スピードが大幅にアップする。

 コンビニ業界では、2017年4月、セブン-イレブン、ローソンなど大手5社と経済産業省が共同で2025年までに全国の5万店舗(ほぼ全店舗)超での電子タグ導入を目指すことを発表した。コンビニでもセルフレジが普及するだろう。

 電子タグ導入による効率化はレジ精算だけではない。商品の在庫管理や在庫確認といった人手がかかった作業でも、省力化の効果は大きいものがある。また、流通業界の悩みのタネだった万引き防止にも期待がかかる。

 導入に向けて課題もある。現在、電子タグ1枚当たりのコストは10~20円もする。当然、価格に上乗せされるが、低価格商品への上乗せは価格競争上、なかなかしづらいものがある。普及するにはコストダウンが求められる。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 第三者に対し、任意の人や物事に関して自分側の都合のいい印象を与えようとすること。最近、安倍首相が国会でやたら好んで口にするせいか、ちまたにもわりと流行語っぽく浸透しつつあるが、野党からは「あんな言葉、どこで覚えたんですかね?」と、失笑混じりの声が上がっているとも聞く。(実例:「1年間に14万円の報酬を受けたことはございます。しかしこれは印象操作であって、まるで私が友人のために便宜を図ったかのごとく議論をしておりますが恣意的な議論だと思います」)

 マスコミがよく利用する表現の一手段とされており、スタンダードな手法としては「断定的な論調で主張を示す」「それらの主張を一般的であるかのように連呼する」あたりが挙げられる。

 たとえば、ここ数年「(東京・渋谷区にある飲み屋街)恵○寿横丁は今、都内でもっともアツいナンパスポット」みたいなニュースをあちらこちらのメディアで目にする。しかし、実際行ってみたら“交渉”が成立する確率はごく僅かで、結果、となりのコンビニで購入した缶ビールや缶チューハイを飲みながらクダを巻いている敗残兵が入口付近に溢れかえっているだけ……なのが実状だったりする。地元民からすれば、週末の夜などは滅法うるさかったり、通行の邪魔になったり、となりのコンビニのトイレが行列になったり……と、迷惑極まりない話で、これもれっきとした「マスコミによる印象操作の弊害」なのではなかろうか?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 西日本と東日本の食べものの違いについて、かねてからいろいろ触れているが、「おにぎり」一つにこれほど違いがあるとは思いもしなかった。

 まず第一に、形が違う。東日本は三角か丸型が標準の形だと思うが、京都は俵型が基本形である。さらに、お葬式や法事などの特別なときに使うものや食べるものは、日常のものと異なる形にするという風習があり、京都では「おにぎり」を三角形にすることが多い。さらに、三角形の「おにぎり」は、災害時の炊き出しや火事場のお見舞いなどとして用いるものともされている。気の急いているときにどこからでも食べやすいからだという。コンビニエンスストアの「おにぎり」が日常食化している昨今、このような風習は徐々に薄れているものの、肝心なときに問われる大切な常識といえるだろう。京都には神社やお寺が多く、古い行事や祭が頻繁に行なわれるためかもしれない。

 一方、「おにぎり」の中身は、海苔や昆布の佃煮、おかか、明太子、たらこ、焼いた塩ざけなどが定番だ。これに東西の違いはないものの、京都で初めて「おにぎり」をいただいたとき、かぶりついて思わず口から出しそうになったことが思い出される。なぜかといえば、海苔を巻いた「おにぎり」のそれが、味付け海苔を使っていたからだ。それまで味付け海苔は、旅館の朝食ぐらいでしか食べる機会がなかったのでずいぶん驚いた。京都では、子どもにも、大人にも、一番食べ慣れた「おにぎり」だと教えられた。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 山本七平の『「空気」の研究』は名著である。彼は日本がなぜ無謀だとわかっていた第二次大戦にのめり込んでいったのかをいろいろな例を引き、それに異を唱えることができなくなる「空気」の存在を指摘してみせた。

 「この『空気』とは一体何なのであろう。それは教育も議論もデータも、そしておそらく科学的解明も歯が立たない“何か”である」

 この空気は日本独特のもので、それは今もこの国を“支配”し続けている。この摩訶不思議な空気という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)し、時代を経て「ムード」「KY(空気の読めない人)」、最近流行りの「忖度」などもその流れから出てきているのだろう。

 空気が読めない、忖度できない奴は、日本社会では「異端児」扱いされるならまだしも、「変人」「奇人」呼ばわりされて、ムラ社会からつま弾きになってしまうのである。

 私は詳しくはないが、戦後に限ってみても「空気を支配」してきた人物がどの分野でも成功者になっているのではないか。または、リーダーになっても「空気を支配」できなかった人間は、成功者とみなされず、リーダーシップがない、リーダーの器にあらずなどといわれ、表舞台から消えていった。

 前置きが長くなったが、安倍晋三という男が一強といわれ、憲法を蔑ろにしても支持率が下がらず、長期政権を続けているのも、この「空気」を巧みに支配しているからではないかと、『週刊ポスト』(6/16号、以下『ポスト』)が特集を組んでいる。

 安倍政権では大臣たちの失言が続出している。明らかに大臣としてではなく人間として備えておくべき理性も知性も欠如していると思われる“デージン”が多すぎる。

 安倍自身も“お友だち”の森友学園理事長や加計(かけ)学園理事長への便宜供与疑惑や妻・昭恵の関与が疑われ、追及されているにもかかわらず、なぜか内閣の支持率はある程度のところから下がらない

 平成の七不思議であるが、『ポスト』によると、「空気という妖怪」を手なづける術を身につけているらしいというのである。

 だが安倍は、昔からそうだったわけではない。「KY」という言葉が最初に流行したのは2007年だったらしいが、これは第一次安倍政権の末期だった。

 当時の朝日新聞はこう書いている。

 「最近、中高校生の間では、『KY』という言葉がはやっているらしい。(中略)この若者言葉が安倍首相を評する時にも使われている

 その後、安倍は突然辞任し、安倍の政治家生命は終わったとみんなが思っていたのだ。

 そして、野党に転落した自民党が立て直しのために取り組んだのが「情報分析会議」だったという。メンバーは茂木敏允(もてぎ・としみつ)現政調会長、世耕弘成(せこう・ひろなり)現経済産業相、平井卓也現IT戦略特命委員長、加藤勝信現一億総活躍相など、現在の安倍内閣で中枢を担っている面々である。

 この取り組みを内部から見ていた自民党情報戦略のブレーン・小口日出彦がこう話している。

 野党になると新聞もテレビも取り上げてくれないから仕方なくネットを使った

 「そこで自民に好意的な情報からネガティブな情報まで丹念に集めて直視してもらうところからスタートした。(中略)徹底的に議論して情報を分析し、表現方法なども研究した」

 12年に政権に復帰した安倍は、13年にネット選挙が解禁されると、特に重視したのが不利な情報やネガティブ情報への反撃作戦だったという。

 小口はこれを「毒矢を消す」と呼んでいる。ネット戦略の実働部隊として小池百合子を自民党広報部長に、その下に議員、選挙スタッフ、ネット企業の専門家、弁護士からなる「Truth Team」を発足させ、24時間体制でネットを常時監視し、ブログやSNS、2ちゃんねるなどに候補者への誹謗中傷などの書き込みがあれば、直ちに削除要請する仕組みを作り上げた。

 それらが功を奏して、13年の参院選で31議席増という結果を出したというのである。

 小口は、メディアでは、政治で取り上げられるのはカネをめぐる疑惑や男女関係のスキャンダル、失言・暴言、ヤジが飛び交う議場などばかりで、そういう情報に基づいて政治の印象が固まり、「本当に重要な情報がこぼれ落ちていく」と言っている。果たしてそうであろうか。これへの反論はまた後述するとして、「毒矢を消す」手法は森友・加計問題でも使われた

 安倍首相は国会で「私や妻が関係していたら総理も国会議員も辞める」と全否定し、都合が悪い文書が公表されると菅官房長官が「怪文書みたいなもの」と頭ごなしに否定してみせたことがそれに当たるそうだ。

 さらに安倍は「空気」を支配することを考え出したという。森友学園問題では籠池泰典(かごいけ・やすのり)前理事長の補助金不正受給疑惑で検察が捜査に乗り出し、加計学園問題では、前川喜平(きへい)前事務次官が出会い系バーへ通っていたと読売新聞に書かせたことがそうだというのである。

 政権が吹っ飛ぶような内容でも、そうした風評を流すことで、国民に「どっちもどっち」という印象を与え、ダメージを打ち消してしまう

 トランプ米大統領のように、都合の悪い情報がネットに出ても、「それはフェイクニュースだ」と平気で言い張る。厚顔無恥と紙一重だと、私は思うが。

 それに安倍の常套手段は、森友学園問題では、民進党が民主党時代の偽メールを引き合いに出し、加計学園問題では、鳩山内閣も動いたと言い出す。批判を受けると「お前の時もやっていた」と言うのは禁じ手である。なぜなら、民進党からいえば、それは自民党時代からやっていたではないかと言いたくなる。それでは泥仕合になるだけだが、それが安倍のやり方で、相討ちになればオレのほうが有利だという計算があるからだろう。

 その上、メディアを支配する。時事通信の田崎史郎をはじめ、準強姦罪疑惑で名を上げた(?)山口敬之(のりゆき)元TBS記者など、安倍のポチ記者をコメンテーターに起用させ、反安倍のコメンテーターをテレビから排除していった。

 ジャーナリズム論の上智大学水島宏明教授は、こうした安倍のやりたい放題にも、安倍を支持する率がさほど落ちないのは、視聴者、特に若い層の視聴者が変わってきたからだという。

 「昔は、メディアには権力監視の役割があり、政権に批判的な報道は当然という考え方が常識としてあった。今ではそれが崩れている。特に若い世代は、安倍さんを攻撃しているように見える報道には嫌悪感を感じる傾向があります。政権に批判的な従来型のジャーナリズムのスタイルでやってきたコメンテーターは、実際には官邸の圧力などに関係なく次第に姿を消している

 今、都知事として日の出の勢いに見える小池都知事も、安倍の「空気の支配力」をよく知っているため、安倍に弓を引いたことはない。都知事選の公約も「アベノミクスを東京から」だった。

 また、政治ジャーナリストの藤本順一は、安倍のうまさを、対中強硬姿勢、アベノミクス、対ロ交渉、憲法改正など多くのテーマを次々に掲げるから、一つがうまくいかなくても目先を変えられ、大きく支持が下がらないと分析する。

 それに国論を二分する沖縄の基地移転、原発再稼働などは、反対派の反感を買っても半数の支持は得られるポチ・メディアと反安倍メディアを分断することによって、メディアが挙(こぞ)って安倍批判をすることはない。

 説得力があるのは、安倍第二次政権は元々期待されていなかった、期待値が低いから、それにしては「よくやっているんじゃない」と“好意的”に受け取られているのではないかという見方である。

 先の小口が言うスキャンダルや議員たちの怒声などで「本当に重要な情報がこぼれ落ちていく」などと言えるものは、安倍内閣には何もないということだ。

 ここはトランプ政権と酷似している。自分に都合の悪いことには知らぬ存ぜぬを決め込み、ポチ・メディアを使って批判する人間のスキャンダルや逆の情報を流させ、世論を操作する。

 文科省の人間が、官邸の意向という文言がある文書を出せば、国家公務員法違反(守秘義務違反)で処罰すると恫喝(どうかつ)する。

 これでは北朝鮮と同じではないか。こんな無茶苦茶なリーダー一人、首をすげ替えられない日本人って、欧米の常識人から見たら、どこか狂っていると見えるのではないだろうか。

 山本七平は本の中で、空気という妖怪を打ち破るには「水を差す」国民が現実に立ち返ることだとしている。

 そのうえで戦争が始まる前、誰かが石油という「先立つものがない」と水を差していれば、B29の爆撃機を「竹やりでは落とせない」と水を差せば、あれほどの惨禍を免れたかもしれないと論じている。

 今の時代、水を差す役割はメディアにあるはずだ。だが、世界一の部数だけを誇る読売新聞が「安倍御用新聞」になり果て、テレビはポチたちが勢ぞろいして安倍にすり寄っている現状では、期待するだけ無駄ということかもしれない。

 最後を、本の中にある山本の言葉で結んでおきたい。

 「これまで記してきたことは、一言でいえば日本における拘束の原理の解明である。ある状態で、人は何に拘束されて自由を失うのか? なぜ自由な思考とそれに基づく自由な発言ができないのか。そしてその状態にありながら、なぜ『現在の日本には自由が多すぎる』といえるのか。なぜ『譲れる自由』と『譲れない自由』といったおそらく世界の『自由』という概念に類例のない、まことに不自由な分類が出てくるのか。それはおそらくわれわれが、『空気拘束的通常性』の中の、どこに『自由』という概念を置いてよいかわからないからであろう。確かに、こういう状態で『自由』という言葉を口にすれば、正直な人は笑い出すだけである」

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 タレントのスキャンダルが暴露されるケースは、女性側が男の不実に我慢できない、自分が相手の知名度を利用して有名になりたい、売り込んでカネにしたいという場合が多いようだ。小出恵介というアホタレが、17歳とわかっていた女とSEXをして、彼女が『フライデー』に垂れ込んだ。雑誌に売り込む前に小出側にかなりの金銭要求があったという報道もある。質の悪い女に引っかかったということかもしれないが、未成年と性交渉では弁解の余地はない。33歳にもなって「知りませんでした」では済まされまい。無期限活動停止を同情する気にはなれない。

第1位 「小出恵介『17歳女子高生と飲酒&SEX』狩野英孝に続き……人気俳優の許されざる淫行を告発する!」(『フライデー』6/23号)
第2位 「食べログ“カリスマレビュアー”が『高評価飲食店』から過剰接待」(『週刊文春』6/15号)
第3位 「巨人軍崩壊『ああ、無策!』由伸監督を解任せよ」(『週刊ポスト』6/23号)

 第3位。無策のまま42年ぶりに球団史上ワーストを更新した巨人軍。長嶋の監督1年目でも11連敗だった。
 それもこの年は、球はものすごく速いがノーコンだった新浦(にうら)というピッチャーを根気よく使い続けたための最下位だった。
 その新浦は翌年、見事にエースに育ち、巨人を優勝させた。
 だが今の高橋由伸(よしのぶ)には何もない。由伸の名言が『ポスト』に載っている。

 「相手があることなので、なかなかうまくいかない」

 11連敗後のコメントのようだ。その通りである。相手があるから、それに対処するのが監督なのだが、由伸にはそれがわからないのだ。
 2年目の今季は、30億円もの大型補強をしたのに、その選手が一人として活躍していない。これも見事というしかない。
 これは監督だけの問題ではなく、フロント、それに口を出し過ぎるナベツネこと渡辺恒雄主筆の責任が問われなくてはいけない。
 昔、氏家齊一郎(うじいえ・せいいちろう)日本テレビ社長からこんな話を聞いた。務台(むたい)光雄読売新聞社長時代のこと。テレビで野球中継を見ていた務台が、「こんなピッチャーを使うからいけないんだ」と怒り出し、近くにいた人間に巨人のベンチに電話を掛けろと命じた。
 早速、電話をすると、次の回、監督が出てきてピッチャー交代を告げた。こんなことがよくあったという。
 これではいくら優秀な監督でも嫌気がさす。今もこのようなことが行なわれているのかもしれない。由伸よ、早く辞任したほうがいい。今の戦力では立教大学にも負ける。
 私にいい案がある。長嶋を監督に復帰させるのだ。長嶋はベンチで座っていればいい。選手たちが自分たちで考え、動いてくれる。そうすれば、必ずいいほうへ動くし、長嶋で負けても、ファンは長嶋を見に来ているのだから怒りはしない。いいと思うのだが。

 第2位。食べログというのがある。私も時々利用するが、場所や営業時間の確認をするためで星の数など気にはしない。
 だが、『文春』によれば、星の影響力は絶大で、「激戦区では星が三・五以上か未満かで月間売り上げが数千万円違う場合もある」(都内飲食店経営者)という。
 その食べログでカリスマレビュアーといわれる「うどんが主食」というのがいるそうだ。四国出身の50代男性で、小さなビルメンテナンスの会社の社長だ。
 これまで2000件近いレビューを食べログに投稿してきたという。だが、彼が高評価したステーキ店『ウェスタ』のオーナーや、『うしごろ』という焼き肉店の社長、EXILEが所属するLDHが経営する焼き鳥屋『鳥佳』と親しく付き合い、接待を受けていると『文春』が報じている。
 それだけではない。気に入らない店は罵倒したり、中韓や東南アジアをさげすんだ差別発言を書き込むことも多いというのだ。
 もちろん食べログにも「口コミガイドライン」があり、もし無料接待を受けて飲食した場合は「通常利用外口コミ」にチェックをして投稿しなければならないという。
 だがこの御仁、そんなことはしていない。食べログにはこの頃、評価の仕方やネット予約を使わないと評価を落とすといったなど、いろいろな疑問が報じられている。
 このままでは所詮ネットだからとユーザーからそっぽを向かれてしまうと思う。最近、店を探すと食べログが上位に上がってこないことが多くなっている気がする。信用回復策を講じなければ、これまでのようなおいしいことはできなくなる。

 第1位。今週の第1位は『フライデー』。俳優の小出恵介(33)が17歳の女子高生(編集部注:その後の報道では少女となっている)と飲酒&SEXをしたと報じたことで、ワイドショーが大騒ぎである。『フライデー』はこう書いている。

 「17歳のA子さんが“その日”を振り返る。
 『9日の夜11時ごろ、知り合いに「小出恵介と飲んでるからおいで」と、ミナミのバーに呼ばれたんです』(中略)
 『私が17歳ということは、小出さんは間違いなくわかっていました。私が到着した時、みんなが「この子17歳やで」と、小出さんに紹介してましたから』」

 このバーで1~2時間ほど飲んだ後、小出から「2人で飲みに行こう」と誘われたA子さんは、戎橋(えびすばし、通称「ひっかけ橋」)近くにあるバーへと案内された。

 「『ヤバいかも、と思ったのは、深夜3時ごろに2軒目を2人で出た後でした。ひっかけ橋の上で、キスしながら欄干に押し付けられたんです。私はワンピースだったんですけど、裾をめくり上げて服を脱がそうとしてきたので、「アカンよ!」と必死に止めました』」

 「『小出恵介に会える』と、ミーハー気分で飲み会に参加したことを後悔したA子さんは、帰宅しようとタクシーを止めた。しかし乗り込んできた小出に、宿泊先である帝国ホテルへ有無を言わさず連れて行かれた。
 『そこからは本当に最悪でした……。部屋に入った途端に迫ってきて(中略)』」

 6時間以上にわたって「17歳の身体」を弄んだ小出。一晩で5回。そのうち中出し2回とA子さんが赤裸々に語っている。
 事務所と小出は、お詫びと無期限の俳優活動停止を発表した。彼女はインスタグラムに、自分が『フライデー』に売り込んだのではない、謝礼も受け取っていないと書き込んでいる。
 たとえ、彼女が売り込んだのだとしても、小出には非難する資格はないが。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


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