コトバJapan! 結城靖高 の 記事一覧

結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。


 カギや電子機器、財布などの貴重品……、よくモノを落っことして困るタイプには、福音となったことであろう。紛失物の追跡ができる無線タグ「MAMORIO(マモリオ)」が話題だ。「なくすを、なくす」がキャッチコピーとなっている。

 MAMORIOは重さ3gで縦35.5mm×横19mm×厚さ3.4mとごく小さいので、財布やキーケースなどの中に入れておくのもわけがない。スマホのアプリと同期して、タグとのあいだに一定の距離ができる(無線の接続が切れる)と、自動的に通知が届く仕組みだ。紛失に至った場合でも、GPS機能を使ってその場所が地図上に示される。

 ただし、位置情報はあくまで「最後になくしたときの場所」。いまタグが実際にある位置ではない。警察に届けられる、持ち去られるなど、忘れ物の位置が変わった場合には当然わからなくなる。こういうとき、「みんなで探す」機能(クラウドトラッキング機能)を活用することもできる。ほかのMAMORIOユーザーが忘れ物に取り付けたMAMORIOとすれ違った場合、現在の位置情報が更新されるのだ。「誰か」と協力する感じがユニークなアイディアだ。

 その機能性には鉄道会社も飛びついた。現在、首都圏の東京メトロや小田急では、忘れ物自動通知サービスの実証実験が行なわれている。忘れ物センターに届いた荷物にMAMORIOのタグが付いていた場合、その旨を知らせてくれるのだ。鉄道会社において忘れ物の管理は甚大なコストになり、今回の試みで一定数を減らせるのでは、と期待されている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 エッセイストの酒井順子氏といえば、かつて30代以上、未婚、子どもがいない女性たちを「負け犬」と称して話題を呼んだ。過剰な表現にも聞こえる「負け犬」だが、現代を生きる独身女性たちへのまなざしは優しい。だから、反発の声はありつつも、一定の評価を受けて流行語にもなったのだろう。いま女性が置かれている社会状況を、鋭い感性で浮き彫りにする酒井氏の、新たな造語が「男尊女子」である。

 男尊女卑の意識は、じつは女性の中にこそ見え隠れしているのではないか。著書『男尊女子』(集英社)では、次のような例が挙げられている。自分よりデキない男性社員にまで、キャリア女性がお茶を淹れようとする。共稼ぎで専業主婦でもないのに、自分よりも稼ぎのない夫を「主人」と呼ぶ。……考えてみれば、奇妙な美意識なのである。

 ことが酒井氏と同年代かそれ以上の女性だけに当てはまるならば世代論になるのだが、どうやら下の年代でも見てとれる傾向のようだ。たとえば、若い世代がよく用いる「女子力」の「女子」。どうも「男を立ててくれる女子」というニュアンスがないだろうか。もともとの女子力とは、それを持たない女性が自虐的に使った表現とされる。なのにいつしか、男性にとって都合のいい指標となった。女子力を信奉する向きは、無自覚のうちに「男尊」の域に陥っているかもしれない。

 家事・子育て、さらには社内でのこまごまとしたお世話まで抱え込むキャリアウーマンは、人生が「業務過多」になっていないか振り返ってみてもいい。そして男性陣は、男尊女子に甘えすぎていないか、ご注意。
   

   

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 いわゆる「世界名作劇場」(フジテレビ系)シリーズの一つとして、1977年に放送されたアニメ『あらいぐまラスカル』。スターリング少年は、森で出逢ったアライグマを懸命に育てるが、やがてその野生は手に負えなくなり別れのときが近づく……という筋書きだ。その「泣ける」最終回はいまなお語り草である。

 愛すべきキャラクターのラスカルは、実際のアライグマよりもレッサーパンダに似たカラーリングでデザインされた。かわいさを狙ったという説があるが、これが良かったらしい。各社より販売されている関連グッズは、長年にわたって確固とした売れ行きを示している。「ラスカリスト」と呼ばれる、コアなファンも多い。

 LINEのスタンプで二頭身にデフォルメされた「プチラスカル」が登場してからは、若い世代のラスカリストも増え続けている。この人気に拍車を掛けたのが、スマホのゲーム『モンスターストライク』(モンスト)や、アニメ『進撃の巨人』など、様々なコンテンツとのコラボである。ときにコスプレもこなすプチラスカルは、多様なジャンルとじつによく合う。大御所・ハローキティにも近い、キャラとしての柔軟性があるのだ。

 手に入れにくいレアなグッズの情報交換など、SNSではラスカリストどうしの交流が盛んだ。今年ラスカル関連の動きが多いのは、放送から40周年の節目に当たるところが大きいだろうが、もとよりキャラの世界では安定した人気。来年以降も支持は続いていくだろう。
   

   

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