コトバJapan! 旬wordウォッチ の 記事一覧


 昨年の8月に出版された佐藤愛子氏のエッセイ『九十歳。何がめでたい』(小学館)がロングセラーとなっている。よそ様の子育てにまで四の五の言うような世間の偏狭さを、「いちいちうるせえ」と喝破するなど、痛快な内容。評判は増すばかりで、いまや80万部に迫ろうかという勢いだ。単に「毒舌」の著名人ならばごまんといるが、佐藤氏には93歳の人生のベテランならではの優しさも感じられる。読者にとって癒しにもなっているようだ。

 そのキャラクターにも注目が集まり、『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ系)、『ゴロウ・デラックス』(TBS系)、『徹子の部屋』(テレビ朝日系)と、立て続けに人気番組に出演した。当人としてはテレビ出演は疲れるので嫌、今後は御免被りたいということ。それが残念なほど、魅力的なタレント性を見せている。

 今回のブレイクには前段がある。最後の小説『晩鐘』のあと、二度と筆を執ることもあるまいと考えていた佐藤氏。だが、ものを書かない日々に鬱々としてしまった。そこで出版社の依頼を引き受けることにしたというのだ。根っからの仕事人間である。もともとエッセイの名手であり、他の著作も連動して売れている。また直木賞受賞作『戦いすんで日が暮れて』など、「本分」の小説も再注目された。

 メディア各所でのインタビューを読む限り、その舌鋒は衰えるところを知らず。まだまだ活躍を追っていきたい作家である。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 フランスでは「国民食」といわれるほど知名度が高い冷凍食品ブランドの「Picard(ピカール)」。もともとは1906年、レイモン・ピカール氏が創業した氷屋が起源という。現在のような冷凍食品専門店のかたちとしては、1974年に産声を上げた。これまでにイタリアやベルギーなど、ヨーロッパ各地で1000店舗以上を展開しているという。

 流通大手のイオンとの提携のもと、昨年の11月より日本にも進出。青山骨董通り、麻布十番、中目黒と、ターゲット層がうかがえる立地での出店が続く。もとより国内の冷凍食品の市場は充実していて、高価格帯が消費者にどれだけ受け入れられるか、注目されていた。いまのところ評判は上々のようである。エスカルゴやフォアグラなど、フレンチのレストランでしか食べられないような食材には、やはり強い。本格的なコースがピカールだけで揃えられるところはかなりのウリだ。マカロンなどのスイーツの品揃えも色彩豊かで楽しい。

 我が国の食の業界において、フランス料理のレベルの高さはよく語られている。また首都圏の富裕層は、食材の質にこだわる傾向がある。ピカールの攻勢は、おそらくマーケティング的には手堅く、受け入れられる素地があったということだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 近年、日本でも注目を浴びているマリンスポーツ「SUP」。「Stand Up Paddle(board)」の略で、サーフィンで用いるようなボード(もとは大型のサーフボードが用いられていたが、いまでは専用のものがある)の上に立ったまま乗って、パドル(オール)で漕いで海にすべり出す。バランスを保つ運動神経は重要だが、サーフィンほど技術的な難しさはないので、老若男女が楽しめるという。

 その起源には諸説あるが、有名なものは1960年代のハワイにおける「商売」から来たというもの。当時、波乗りの様子をサーフボードの上から写真に撮って、サーファーたちに売ることが流行ったらしい。やがて、板の上にいるだけでアクティヴィティとして素晴らしいことに気づき、地元の一部で親しまれた。その後いったんは廃れた文化であったが、かつてのことを覚えていた者たちが2000年代に入って復活させたらしい。

 競技スポーツとして、波に乗るパフォーマンスや、カヌーのようなレースがよく挙げられるSUPだが、それだけにとどまらない。無理のないペースで自然をクルージングするなど、楽しみ方には様々なアプローチがある。ボードの上で釣りやヨガをすることすら、SUPに含まれるスタイルだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高