コトバJapan! 旬wordウォッチ の 記事一覧


 我が国の狭い住宅事情を反映して、「片づけのコツ」はテッパンのネタだ。主婦層に向けた生活情報系のテレビ番組や雑誌が、こぞって採り上げている。片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵氏はいまやカリスマ的人気。さらに、やましたひでこ氏が提唱した「断捨離」という言葉も一般化した。

 この流れに「参戦」したというわけではないだろうが、経済評論家の勝間和代氏がおもしろい新語を考案した。それが「収納破産」である。

 多方面で活躍する彼女も、自宅ではどうも片づけが苦手であったらしい。「汚部屋(おへや、おべや)」にはモノが増え続け、ついには家の中の収納スペースを使い切ってしまう。こうなると、いわば「思考停止」状態に陥る。いたるところに未整理のモノが転がっている様子を眺めて、何から手をつけてよいかわからず、ただ呆然とするばかり……。まさに経済的な破産と同じような精神状態となる。これが収納破産だ。

 勝間氏がこの状態からどうやって脱却したかは著書(『2週間で人生を取り戻す!勝間式汚部屋脱出プログラム』 (文藝春秋刊))やネット上のインタビューを読んでいただくとして、筆者としては、その絶妙なネーミングに唸った。モノがあふれるままにしておくと、「いつか取り返しがつかないことになる」と脅かされているよう。破産はイヤだと、たしかに片づけをする気になるのである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2016年に公開された映画のランキングが各誌・各メディアで出そろった。『キネマ旬報ベスト・テン』第1位など、アニメ映画『この世界の片隅に』が席巻している。こうの史代(ふみよ)・原作、片渕須直(かたぶち・すなお)・監督による本作は、11月12日の公開とともにSNS上で高い支持を受け、客足を伸ばしていった(約3か月の興行で興収20億円を突破)。ヒロイン・すずを演じたのん(能年玲奈(のうねん・れな))は、芸能界のむずかしい事情から、多くのメディアで宣伝協力を得られなかった。だが、その熱演はたしかに観客の心を打った。のん無しでこの成功はあり得ただろうか。

 良質なものが売れるとは限らない、それが現実であろうが、小規模公開からスタートしたコノセカ(一部のマスコミにおける『この世界の片隅に』の略称)は今回、みごとに社会現象化した。異例のヒットの理由については、先に述べたヒロインのハマりようなど、様々な分析がある。当時の庶民の生活描写や、建築物などのディテールなど、「何度も観て確認したくなる」といった視点からのアプローチも多い。

 登場人物のなめらかな動きにも、アニメーション技術のこだわりがある。もちろん、なにもテクニックを見せびらかしたいわけではない。キャラクターたちが画面の中に生きている「実感」のようなものを表現するためだ。そのための手間を惜しんでいない。いろいろとビジネス的(予算的)には怖い選択をしているだろう。だが結果として、コノセカは興行的にも結果を残したのだからおそれいる。片渕監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』が、打ち切り寸前から口コミで逆転した記憶がスタッフの中にはあったかもしれない。

 もう一つ、送り手以外からみたヒット理由を挙げるとすれば、やはり現状の世界の不穏な雰囲気であろう。戦争を知らない世代も、「知りたくない」世代というわけではない。漠とした世情への不安は、若者を無意識的に劇場に向かわせているのではないか。笑いの要素も多いエンターテインメントながら、日常が戦争に振れるとはどういうことか、声高でなくとも伝わってくるのが『この世界の片隅に』という作品であった。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 ニンニクの名産地として名高い青森県南部の田子町(たっこまち)には、「みろくの滝」なる名所がある。その名前は弥勒菩薩から来ているとか。ある僧侶が、凶作から民を救おうと菩薩に願ったところ、滝が現れて田んぼを満たしたという伝説が残っているそうだ。

 いま、この滝がネット上でひそかな話題となっていることをご存じだろうか。みろくの滝としてではなく、「スヌーピーの滝」としてだ。こちら、岩肌の凹凸がイヌの横顔に見える。さらに、その端の部分に水が白く流れると「耳」のように見えてくる(ちなみに、この流れの白さから「ソーメンの滝」とも呼ばれるそうだ)。まさに、コミックのスヌーピーを思わせる絵面が現れることになる。

 静かなブナの原生林の中に位置しており、癒しスポットとして年々知名度を増している。これから春を迎えると、散策の人出もさらに増えそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高