コトバJapan! 文化 の 記事一覧


 2016年の出版界を席巻したキーワードは、なぜか「開脚」であった。

 『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』(サンマーク出版)が、4月の発売から順調に版を重ね、2016年末の時点で累計100万部に至っている。長いタイトルなので、マスコミでは「開脚本」と通称されることが多い。ご多分にもれず類似本も出たが、本書の勢いにはかなわない。

 その売れ行きは、「開脚の女王」と呼ばれるヨガインストラクター・Eiko氏の開脚メソッドのシンプルさと、たくみな指導力によるところが大きい。一応「著者」という扱いになるのだろうが、おそらく編集部側でした仕事が大半のはずだ。しかし、本の内容はじつに実践的。多くの読者にとって体のかたさを改善するきっかけになるのではないか。Eiko氏みずからが複数のテレビ番組に出演してタレントたちを指導、結果を残したことも人気に拍車をかけた。

 本書自体は「商社のサラリーマンが開脚をめざす小説」(タイトルは「開脚もできないやつが、何かを成せると思うな」)に多くのページ数が割かれている不思議な構成の本で、賛否両論あるようだ。開脚のプログラムじたいも動画サイトで以前から公開されていたもの。とはいえ、本書がネットに興味のない層に開脚の成功体験をもたらしている事実は、功績といっていい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 「金つば」は、厚めに四角くした餡の表面に小麦粉生地をつけ、その六面を焼いた和菓子である。餡に白豆、サツマイモ、カボチャなどを使うもの、羊羹のような寒天を混ぜたものに生地を付けたものなど、いくつかの種類がある。「金つば焼き」と呼ばれていることもある。

 江戸後期(文化年間)の随筆集『嬉遊笑覧』(喜多村信節(きたむら・のぶよ))には、「どらとは 金鼓(ごんぐ)に似たる故 鉦(どら)と名づけしは 形大きなるをいひしが、今は形小さくなりて、金鍔と呼(ぶ)なり」と記されている。当時のどら焼きは、現代のような、ふっくら焼いた皮で餡を挟んだものではなかったので、形の大小だけで「どら焼き」と「金つば」は区別していたことが読み取れる。

 そもそも金つばは、天和(1681~1684)から貞享(1684~1688)にかけ、清水(きよみず)坂周辺の茶屋で売り出されたものが原型で、これを「銀つば」と呼んでいたそうだ。当時、表面の焼皮は小麦粉ではなく、粳(うるち)米の粉でつくった生地で餡を包んで表裏を焼いたもので、形は丸く平たい姿をしていた。これが刀の鍔(つば)のようであったため、「銀つば」という名称が付けられたそうである。

 ここで「あれっ」と思われた方は、かなりの和菓子好きであろう。現在の京都にも、ほぼ同じ形状で同じ製法の名物菓子がある。おわかりだろうか、「焼き餅」である。おそらく「銀つば」とは、腰掛け茶屋で出される現在の「焼き餅」のようなものであったと考えられる。

 その後、「銀つば」は江戸へと伝えられ、いつしか「金つば」という名称に変わった。幕末に「金つば」を売る屋台から発祥した榮太樓總本鋪(東京日本橋)のホームページには、「(銀つばが)江戸に渡った折り、粳を小麦粉に変えて焼いたところ、焼色が付き『粳皮の銀色より、金色の方が上である』ということ」から、「金つば」という名称になったという理由が記されている。


金つばでも有名な中村軒(西京区)のもの。原材料は砂糖、小豆、小麦粉、寒天、餅米。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 素人目にも気になるダンスのムーブメントは、彼女が牽引しているといっていいだろう。振付師のMIKIKOこそ、現在のエンタメを語る上で欠かせない存在だ。海外での評価が高いメタルアイドルユニット・BABYMETAL(ベビーメタル)やリオデジャネイロオリンピック閉会式におけるダンスパフォーマンス、そしてドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』から一世を風靡した「恋ダンス」。これらはすべてひとりの振付師の仕事だ。

 MIKIKOの名を高らしめたのは、まずはPerfumeである。じつはPerfumeが人気アーティストになる前から振付を担当していた(それどころか、メンバーのアクターズスクール広島時代からの縁という)。これは象徴的でもある。Perfumeがバーチャルな世界に入り込んだかのようなライブパフォーマンスでブレイクを果たした過程と、MIKIKOの活躍がシンクロしている。最近のショー演出は、映像とダンスが融合した表現がトレンド。まさに現在のMIKIKOの得意なフィールドなのだ。今後、ますます活躍が期待されるところだろう。

 またMIKIKOは、2010年からダンサー兼振付師のTomomi Yoshimuraとともにダンスカンパニー・ELEVENPLAY(イレブンプレイ)を主宰している。星野源の『恋』のミュージックビデオで、キレキレに踊っている女性たちがそのメンバーである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高