この夏、興味深いニュースが配信された。「北極海の海氷面積が観測史上、最小になった」というのである。地球温暖化の影響であることは言うまでもないが、その関連で注目されているのが「北極海航路」。アジアと欧州をつなぐ最短航路のことだ。夏場にかぎって一部運用が行なわれてきたが、海氷面積が小さくなればその期間がより長くなるわけだ。
 国土交通省の資料によると、たとえば横浜港―ハンブルグ港(ドイツ)の場合、スエズ運河経由の南回り航路と比べると航海距離が約6割に短縮されるという。時間短縮はもちろん、運航コストも大幅に削減できるという。
 こうしたことから国土交通省は8月に北極海航路の利用に向けた検討会を設けた。海運会社などからヒアリングなどを行ない、安全面など航路利用の課題を探る。
 北極海は石油や天然ガスなど海底の資源が豊富とされ、その意味でも各国が熱い視線を送っている。
 熱心なのは中国だ。胡錦濤(こ・きんとう)国家主席や温家宝(おん・かほう)首相もデンマークやアイスランドなど沿岸国を訪問し、「北極海外交」に余念がない。航路開発をめぐっても、7~8月に大型砕氷船「雪竜号」を調査航海に派遣した。
 軍事面でもロシアの欧州にある艦隊が短期間に太平洋に展開することも可能となるため、日本の安保政策にも影響がありそうだ。
 日本政府としても対応を急がねばならない。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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