2012年9月から11月にかけて福島瑞穂(みずほ)社民党党首は全死刑囚へのアンケートを実施し、133人のうち78人が回答を寄せた。内容は再審請求の有無、被害者への感情、死刑制度への見解など6項目。
 『週刊ポスト』(2/15・22号)は78人のうち35人分の肉筆の文や絵を掲載した。
 裁判で死刑が確定すると拘置所での待遇は大きく変わる。塀の外との交流は遮断され、面会や手紙のやり取りは指定された親族などごく一部にかぎられてしまう。
 以前は運動や集会などで死刑囚同士が顔を合わせる「集団処遇」があったが、いまはなく、生活の大半を独居房で過ごす。
 福島党首は、外部との交流を極端に制限するのは、死刑に対する情報を閉ざすとともに、死刑囚の精神状態にも悪影響を及ぼしかねないと批判している。
 死刑囚は被害者に対しての感情をこう綴っている。
 「すなおに頭の一つまともに下げれなかった否(ママ)はおわびしたいとおもいます。すみませんでした」(光市母子殺人事件、元少年)
 「書けない。あまりにも恐そ(ママ)ろしく 怖わ(ママ)くて 書くことが出来無い。(中略)毎日毎日 自分の死のあり方を見つづけている。僕自身 自分を罰する如く毎日毎日何千回も何万回も殺し続けています。謝罪の絶叫を被害者の魂に届くまで叫びつづけます」(神奈川主婦連続強盗殺人事件、庄子幸一)
 「何という恐ろしくとりかえしのつかないことを、しかも救済すると信じてやってしまったのだと、たとえようのない苦悶の波におそわれます。(中略)犯した大罪をどれほど苦しみもだえても、苦しんでいるものまねにすぎないと思い知らされ、ただただとりとめなく悲しみがあふれます」(地下鉄サリン事件など、井上嘉浩)
 判決への部分的異議を含めて78人中46人が再審請求中だという。『週刊新潮』(2/7号)の「『死刑囚』30人 それぞれの独居房」では、東京拘置所で数年間衛生夫として服役した30代の男性が、彼が見てきた死刑囚の姿を語っているが、その中に「再審請求中は死刑執行のないことは暗黙のルール」という記述がある。そういうことが再審請求の多さに関係があるのだろう。死刑執行の日に脅える者は多い。
 「私のいる舎房は今の所は何も有りません。でも独房の鉄のとびらを急にあけたり、しめたります(ママ)ので、鉄のど(ママ)びらですので大きな音がして、自分の番がきたと思って、脅えるので有ります」(堺夫婦殺人事件、江東恒)
 死刑制度に対する疑問を訴える声は多い。
 「死刑は残虐な刑罰にはならないと云うのであれば、また8割の国民が制度存続を認めていると云うのであれば、刑を公開すれば良い」(大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件、小林正人)
 「死刑は都合の悪い者は殺してもいいという殺人を肯定する意識を国民に植え付け、殺人や暴力を助長する」(地下鉄サリン事件など、林泰男)
 「死刑制度は被害者でもない刑務官によって殺されるのは頭に気(ママ)ます。被害者の立ち会いで執行ならかまいません」(女性4人殺人、西川正勝)
 死後に臓器提供したいのにできない現行制度を批判する者もいる。死刑制度の是非を考えるうえでも貴重な証言である。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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