宝塚歌劇団出身で人気女優の天海祐希(45)が舞台「おのれナポレオン」(三谷幸喜作・演出)に出演中だった5月6日、体調不良になり、都内の病院へ行ったところ軽い心筋梗塞と診断され、休演したことが話題になっている。

 心筋梗塞は動脈硬化や血管内のプラークと呼ばれる脂肪などの固まりが破れて血栓ができ、冠動脈が完全に詰まって心筋に血液が行かなくなった状態をいう。症状としては胸に痛みを感じ、呼吸困難や吐き気、冷や汗などをともなうこともある。

 天海も当日の舞台では、息苦しそうで、やたら汗を流し、胸が痛いと訴えていたという。

 一般的に心筋梗塞は女性には多くない。その理由として、糖尿病や高血圧、高脂血症、喫煙の“四大因子”を男性のほうが多く抱えているからだと『週刊新潮』(5/23号、以下『新潮』)が書いている。

 だが、別のタイプの冠動脈の痙攣によって起きる心筋梗塞は女性にも起きると、信州大学医学部循環器内科の池田宇一教授が語っている。

 「これは、安静型狭心症とか冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症と呼ばれているもので、たとえば精神的なストレスによって自律神経が異常をきたし、血流が悪くなった結果、心筋梗塞を起こすというものです。天海さんの場合、仕事がとても忙しかったということから、このタイプの可能性が高い」

 さらに『新潮』は、数年前までは若い女性に起きなかったのに、最近では40代でも多く見られるという報告が医療関係者から聞かれるようになり、東北大の調査によると死亡率では男性を2倍近く上回っているそうである。

 「このタイプの心筋梗塞は脱水症状が加わると、さらに起きやすくなる。たとえば、舞台中、トイレに行かずにすませるため、水分を控えたりすると余計に危ないのです」(東京医科大学八王子医療センター・高澤謙二病院長)

 普段の天海は「ヘビースモーカーでワインを好んで飲む」と、『週刊文春』(5/23号、以下『文春』)で天海の友人が語っている。同誌で親族が「宝塚時代から常々『熱を出しても休めない』と言っていて、食事にも気をつかい、ジムやマッサージにも頻繁に行っています。腰が痛くなればしっかりした治療に通っていますよ」と話しているが、ストイックで責任感が強く、ヘビースモーカーのうえに、仕事の忙しさでストレスが溜まっていたことがトリガーになったのかもしれない。

 今回は自分から病院へ行ったことと症状が軽かったことで、復帰は早いといわれているが、急性心筋梗塞の死亡率は約30%と高いことを忘れてはいけない。

 芸能界では徳光和夫や西田敏行、大山のぶ代、松村邦洋(くにひろ)、森本レオなどが心筋梗塞で倒れている。

 彼らは復帰しているが、小林繁(元プロ野球選手・享年57歳)や松田直樹(サッカー選手・享年34歳)は不帰の人になっているのだ。

 余談だが、天海の代役をこなした宮沢りえ(40)の評判がすごくいい。本番まで2日しかない中で、130か所もあるセリフとダンスも披露する難しい役を、寝ずに覚えてぶっつけ本番で臨んだのに、「見事に演じきり、千秋楽のカーテンコールでは観客のスタンディングオベーションが続いた」と『文春』が報じている。

 りえに“天才伝説”がまた一つできた。天海もうかうかと寝ていられないかもしれない。


 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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