食品の製造工程で、決められた大きさに合わない規格外の商品が発生することがある。また、ラベルに誤記があったり、包装が破れたりしたことで、販売できない商品もある。このように、品質には問題ないのに食べられずに捨てられてしまう食品を、福祉施設やホームレス支援団体などに提供するのが「フードバンク」だ。

 日本では、「セカンドハーベスト・ジャパン」などのNPO団体が食品メーカーや量販店からの支援、個人からの寄付を受け、失業者やシングルマザーなどの生活困窮者、児童養護施設などに食品を提供する活動を行なっている。こうした仕組みがあることで、生活困窮者は食品の提供を受けられ、食品ロスを減らすことにも貢献している。

 日本で1年間に供給された食料8446万トンのうち、約2割にあたる1788万トンが廃棄物として捨てられている。そのうち500~800万トンは食べられるのに捨てられる食品ロスだ。

 世界では全人口の13%に及ぶ約8億7000万人が飢餓にあえいでいる。生まれる国が違えば、お腹いっぱい食べられることは決して当たり前のことではない。世界中から食べ物を買い漁っている日本は、この数字の意味を重く受け止める必要がある。

 フードバンクの取り組みは、いま、目の前にいる生活困窮者を救うための重要な取り組みだ。だが、フードバンクにいつまでも頼らなければならないことは、人々にとって好ましいことではないはずだ。

 そもそもなぜ、これだけ豊かな日本で食べられない人がいるのか。なぜ食べられるのに捨てられる食品が生まれてしまうのか。

 貧困の裏にある教育問題、就労問題などに踏み込んだ解決策を探らなければ、いつまでたってもフードバンクを必要とする人はなくならないだろう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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