気温が下がり、空気が乾燥しだすと、インフルエンザの流行が始まる。インフルエンザウィルスがもっとも繁殖しやすい環境は、気温20度以下、湿度20%前後と言われており、この条件に当てはまる12月~2月が日本での流行の中心となっている。

 普通の風邪は、咳やくしゃみ、喉の痛みなどが症状の中心。発熱しても重症化することは少ないが、インフルエンザは頭痛、関節痛、38度以上の発熱などの全身症状が突然現れるのが特徴だ。まれに、子どもが急性脳症を起こしたり、高齢者や免疫力が低下している人は肺炎を併発したりするなど、重症化することもある。そのため、流行前にインフルエンザワクチンを予防接種することが推奨されている。

 だが、ひとくちにインフルエンザといっても、そのウィルスには様々な型がある。おもにA型、B型、C型の3種類に分類され、その年に流行するウィルスは異なる。そのため、日本では用意するワクチンを決めるために、国立感染症研究所(感染研)の「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」で話し合われ、これに基づいて厚生労働省が製造するワクチン株を決定し、ワクチン製造メーカーに通知を出している。
 
 選定にあたっては、国内の流行状況や検出されたウィルスの抗原性や遺伝子解析の成績、住民の抗体保有状況調査の成績、周辺諸国から送られたウィルス株の解析結果、WHO世界インフルエンザ監視対策システムを介した世界各地の情報などから、次のシーズンの流行を予測する。今シーズン(2013年度)選ばれたのは次の3株による3価ワクチンだ。

・A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
・A/テキサス/50/2012(X-223)(H3N2)
・B/マサチュセッツ/2/2012(BX-51B)(山形系統)

 このように、その年に使用されるワクチンは、流行を予測して選ばれているのだが、昨シーズンは効果が低かったという批判が出ている。ワクチンは鶏卵の中でウィルスを培養するが、その過程で抗原が変化することが原因とみられている。ただし、この問題は、ワクチンが鶏卵で製造される限りは根本的な解決は難しく、ワクチン株の選定の問題ではないとされる。

 ワクチンを接種しても、絶対に感染しないとは言えないので、生活習慣にも気をつけたいもの。インフルエンザのおもな感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染なので、人ごみではマスクを着用したり、外出から帰ったら手洗いやうがいを忘れずに。また、インフルエンザウィルスは湿気に弱いので、加湿器などで室内を一定の湿度に保つことも大切だ。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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