「クールジャパン」として日本の漫画・アニメを世界に売り出そうとする政府の動きがある。ストーリー性や表現方法において、海外の「コミック」とは異なる進化を遂げた「漫画」という文化。コンテンツとして力があることには異論がないだろう。近年、出版社の戦略もあって翻訳が進み、世界中で読者が増えている。一方で、国内ではピークが過ぎたとの見方をされ、漫画雑誌も次々と廃刊になり、安閑としていられない状況だ。こうなると、海外はマーケットとしてますます重要になる。

 そんな日本に負けじと、韓国政府が売り出そうとしているのが韓国の漫画、「マンファ」である。近年、韓国では漫画ビジネスの凋落が日本以上に深刻な事態となっている。景気の悪化や、1997年制定の青少年保護法によって漫画が「有害な媒体」と規定された影響だ。マンファの描き手は次々と発表の場を失っていった。が、2000年代半ばには、自らが招いたマンファの危機を忘れたかのように、政府が積極的な振興策を打ち出すようになった。日本でも「韓流ドラマ」のブームが起きたが、エンタメコンテンツ輸出への支援は、いまや重要な経済政策なのである。

 「マンファ」は、日本の影響を受けている、というよりも、ほぼ「漫画」と見分けがつかないほど。これが海外の出版イベントで紹介される様子を想像してみてほしい。外国人からすれば、日韓の漫画が並んでいれば、もはや「同じもの」である。決して皮肉ではなく、「うまく乗っかろうとする」ところは、実にしたたかといえる。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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