じとじととした暑い季節になったら、あっさりとして、冷たいおばんざいがおいしい。味のよい豆腐が身近で安く手に入る京都では、白和えが最適である。白和えといえば、豆腐、白ごま、調味料をすり混ぜ、そこに好みの具を和える、というのが一般的であるが、歯ざわりや具の組み合わせ次第で、いろんな味わいが楽しめる。

 まず、豆腐は水気をよくきっておく。具はお多福豆、エンドウ、こんにゃく、椎茸などで、色付けにはにんじんがよい。お多福豆とエンドウは塩ゆでに、こんにゃくと椎茸などは短冊状に切ってうす味で炊いておく。下ごしらえが済んだら、溶いたからしを擂り鉢でよくすり、そのうえに豆腐を入れてすり合わせる。調味料は砂糖少々、塩ひとつまみ。味を調えながら、好みで淡口醤油を加えてもよい。そこに、さきほど下ごしらえした具を和えればできあがり。からしがどこからともなくぴりっと効いて、夏には白ごまを混ぜたものよりも食べやすいように感じられる。

 リンゴや柿が手に入る季節ならば、それらを加えると、味に深みが増す。リンゴなら、なるべく酸味の強いもののほうがキリッとした後味が加わり、さくさくした歯ごたえもまたよい。


こんにゃく、小松菜、にんじんの白和え。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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