社会福祉法人に対し、法律で「地域における公的活動」を義務づけることが検討されているという。厚生労働省の有識者検討会議が6月中旬にまとめた報告書に盛り込まれた。

 社会福祉法人は、国や都道府県などの認可を受けた非営利の民間組織で、特別養護老人ホーム、介護施設、保育所、障害者支援施設などを運営する。現在、国内に約2万法人がある。

 報告書は、具体的な貢献策として、「生活困窮者への支援」「生活保護世帯の子どもへの教育支援」「低所得高齢者の居住確保に関する支援」などを提示している。

 地域貢献を義務づけるのには理由がある。かねてより、社会福祉法人に対しては補助金や税制優遇措置を受けていながら、「優遇措置にみあった国や地域への貢献がなされていない」との批判があったからだ。

 社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームが多額の内部留保をため込んでいるとの指摘もある。内部留保は、1施設あたり約3億円との数字もある。その総額となれば兆単位である。報告書はためこんだ内部留保を「埋蔵金」と見なし、それを元手に「地域貢献策をやりなさい」ということだ。

 社会福祉法人を巡っては、公益法人でありながら「財務諸表の公表が不十分」との批判があるほか、一部では、理事長一族による経営の「私物化」「世襲」も指摘されている。

 「私物化や世襲が蔓延すれば、優秀な人材は介護や福祉の分野に来ません。頑張っても賃金は上がらず、有能であっても施設長にもなれない」(シンクタンク研究者)

 改革の余地はまだまだありそうだ。政府は2015年の通常国会に社会福祉法改正案を提出する方針だ。

   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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