政府が公的年金の運用を見直して株式の比率を増やそうとしている。

 厚生年金と国民年金の積立金は約129兆円にのぼる。その運用は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に任されている。

 GPIFの運用は現在、国内債券が全体の60%を占め、国内株式は12%にすぎない。新聞報道によると、政府は10月にも新しい運用方針をつくり、国内株式の比率を20%まで引き上げるという。

 株式投資には損失リスクがある。リーマンショック(2008年)では株価が急落しGPIFは2008年度、9.3兆円の巨額損失を出したのが記憶に新しい。今回の運用見直しの狙いは、政府による「株高誘導」だ。企業収益をあげる「残業代ゼロ」の雇用改革、法人税減税もそうだ。公的年金の株運用比率見直しも株価引き上げ策にほかならない。

 首相官邸の執務室には株価ボードがあるというが、野党からは「アベノミクスの正体は株高の演出。株価が上がれば内閣支持率も上がり、政権維持ができる」(民主党幹部)といった声が聞こえる。

 狙い通り運用益が上がればいいが、巨額の損失が発生したら、年金制度は破綻する。国民的な議論が必要だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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