料理をつくるとき、ある材料とある材料を一緒に組み合わせると、材料同士が個々の素材の味以上に持ち味や深みを引き出し合い、料理がおいしくなることをいう。あるいは、どちらの材料の味も引き立たせるような取り合わせのよい食材のことをさす。おばんざいや佃煮、漬け物などといった、あらゆる京都の料理に通じるスタンダードな考え方のようなものといえるだろう。

 「であいもん」といえば、その代表は鰊茄子(にしんなす)である。秋茄子は嫁に食わすな、という諺があるように、茄子は9月頃に旬が極まる。そのとろりと溶けるような食感に身欠き鰊の風味を煮含めた鰊茄子は、ごはんにも、酒の肴としても、おばんざいを代表する一品である。これからの季節は、小芋も旬を迎えるので、イカや鱧(はも)の子などとの取り合わせが京都好みである。秋になれば、キノコや木の実、根菜類を組み合わせた料理がぐっと多くなる。ほかにも、棒鱈(ぼうだら)と海老芋、筍と若布(わかめ)、水菜とお揚げ、生節(なまぶし)と焼き豆腐と、おいしそうな「であいもん」がたくさんある。ちりめんじゃこと山椒を合わせた佃煮、柚子と大根の漬け物などと、数ある取り合わせの中から選び抜かれた食材同士からつくりだされた「であいもん」が、京都の味の土台を形づくっているのである。


戻した身欠き鰊と茄子を炊き合わせているところ。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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