日本人はよそ様に気を使う国民性があるらしく、それ自体は美徳といえそうだが、よいことばかりではない。住宅の密集地であればなおさらだ。いまどきの公園の注意書きを読むと、ボール遊びや大声が禁止されていて、近隣住民に配慮されていることがわかる。家の前で騒がれる苦痛を想像すれば、不寛容の一言では片付けられない。だが、一方では、子どもたちが日常生活ではしゃぐ場所はどこに存在するのか、ということになる。

 いま、都会の道端で大騒ぎする子どもと、それを傍観している親がトラブルの火種になっている。道路行政に影響力を持つ族議員になぞらえて、「道路族」と呼ばれる。うるさいだけならまだしも、普通の道路で遊ぶわけなので、交通安全の面でも問題があるだろう。勝手に家の敷地内に入って、モノを壊してしまう事例もあるという。こうした「モンスター」たちの傍若無人ぶりは、単に近隣への気配りの欠如なので、厳しく否定されるべきものと思われる。

 難しいのは、過度にマナーの遵守が求められた結果、子どもたちが公園から実質的に締め出されている地域だ。道路族の問題は、子どもがうるさいだけでなく、そばで井戸端会議に花を咲かせている母親たちも耳障りなところだという。視点を変えれば、母子ともども、おしゃべりでコミュニティを広げていく場すらも少ない現状を示す。人どうしのつながりが希薄な環境で、子どもたちは健やかに成長できるものだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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