アメリカでは1990年代から、豆の品質や産地、その淹れ方にまでこだわったコーヒーが支持を受けているという。大量生産・大量消費の1960~70年代を「第一の波」、スターバックスなどのエスプレッソ系、いわゆる「シアトルコーヒ-」が普及した1980年代を「第二の波」として、その後に来る「第三の波」が「サードウェーブコーヒー」と呼ばれるものだ。「浅煎り」をさす「アメリカン」に、単なる薄めただけのコーヒーの誤解があるからか、アメリカのコーヒー文化は低く見られているところがある。実際は世界のコーヒートレンドの発信基地なのだ。

 サードウェーブコーヒーの紹介で、必ず出てくるワードが「シングルオリジン」という言葉である。単一種の苗木から収穫されたコーヒー豆だけを使うことで、混じりけのない豆本来の味を知ることができる。これをなし得ているのが豆の生産地と直接取引するダイレクトトレードだ。産地直送の優良な農作物を想像するとよいだろう。産地の農園が明確になることで、品質に対する信頼も生まれることになる。

 さらに重要なポイントは、一杯ずつハンドドリップで淹れる手法だ。当然、少し時間をくうことになるが、それが落ち着いた店内の空間を楽しむことにつながる。もともと日本の喫茶店文化は、コーヒーの味に関して職人的なところに特徴がある。それがスタバなどの隆盛で一時期苦しんだが、「最新のコーヒートレンド」として復権を果たしつつあるわけだ。都内ではサードウェーブコーヒーを全面に押し出す店が増えており、それが同様のこだわりを無骨に続けてきた「昔ながらの喫茶店」にも好影響を与えている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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