漢字では「名木紅葉」と書く。晩秋に美しく色づいたさまざまな種類の木々のことを、ひとまとめにして呼ぶことばである。もっとも朱色に染まるのは楓(かえで)であろうが、特別に紅や黄の葉の色づきが美しい木には、木の名の下に「もみじ」をつけた呼称が使われている。例えば、漆(うるし)紅葉、銀杏(いちょう)黄葉、櫨(はぜ)紅葉、柏黄葉、柿紅葉などである。「なのきのもみじ」というのは、このような個々の紅葉の美しい木々をまとめた呼び名である。

 京都の赤く染まる木としては、高雄楓(たかおかえで)や大紅葉(おおもみじ)、イロハ紅葉などの楓があり、さらにハゼ、ヤマウルシ、ヤマザクラなどが豊富である。また、黄色になるものには、小楢(こなら)、椚(くぬぎ)、柏(かしわ)、漉油(こしあぶら)といった木々がある。京都の北山や東山は杉や檜(ひのき)の人工林が多く、西山は赤松などの松林や竹林が多い。これらの緑の木々のあちらこちらに美しく色づいた雑木林が点在しており、名もなく静かな落葉の景色にはっとさせられることが多い。このような雑木林一帯が秋色に染まった情景のことを「雑木紅葉」(ぞうきもみじ)という。


山々の雑木紅葉までが、庭園の一部のように美しくなる秋。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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