巷間、「街の美観を汚している」と評判が悪いのが、街頭の電柱や電線だ。国土交通省の資料によると、電柱を地中化などして美観を守る「無電柱化率」はロンドンやパリが100%なのに、日本は東京23区で7%、大阪市で5%と大きく立ち遅れているのが実情だ。アジアに目をやっても、香港が100%のほか、台北95%、シンガポール93%、ソウル46%といった具合だ。

 日本は「無電柱化後進国」であるわけだが、自民党は、2014年10月、防災や景観保全対策として、「無電柱化推進法案」(仮称)の素案をまとめた。そのポイントは(1)国・自治体の責務として「無電柱化」を推進する、(2)電力会社に対し、電柱・電線の新設を原則として禁じ、その地中化を促す――というものだ。

 実は、国による無電柱化推進は30年近く前から掲げられてきた経緯がある。国土交通省は前身の建設省時代の1986年度から何度も推進計画をまとめ、景気対策にも盛り込んできた。それが思ったように進んでいないのは、地中化するための費用が地上の場合の「約10倍」もかかるからだ。

 「無電柱化推進」は「2020年東京五輪に向けた観光対策」との意味合いもあるというが、「東京五輪と絡めたばらまきだ」との批判もある。

 自民党は無電柱化推進法案の、秋の臨時国会への提出を目指している。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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