人に感染する溶連菌で多いのがA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)で、おもに喉に感染して咽頭炎や扁桃炎を起こしたり、皮膚に赤い発疹をともなう猩紅熱(しょうこうねつ)が出たりする。潜伏期間は2~5日で、38~39度の高熱が出て、喉に痛みが出るのが特徴。手足や体に小さくて赤い発疹が現れたり、舌にイチゴのようなブツブツ(イチゴ舌)が出たりすることが多く、嘔吐を伴うこともある。

 初期症状は風邪に似ているが、適切な治療を受けないと急性腎炎、肺炎、髄膜炎、肺血症などの化膿性疾患、心臓弁膜に障害を起こすリウマチ熱などの合併症の原因になることもある。自己判断せずに、医師の診断のもと、適切な治療を受けるようにしたい。

 最近では、喉についた細菌を培養して検査する迅速診断キットが作られており、溶連菌に感染しているかどうかは、病院や診療所でもすぐに診断してもらえることが多い。

 溶連菌感染症の治療には、症状を緩和するための対症療法に加えて、抗生物質を用いた治療が行なわれる。熱が下がっても溶連菌が残っていると再発する恐れもあるので、溶連菌が完全になくなる2週間程度は処方された抗生物質を服用し続ける必要がある。また、発症後2~3週間後には、完治したかどうかの診察も忘れずに受けたい。

 5~15歳の子どもに多く見られる病気だが、抵抗力の弱い高齢者、妊娠中の女性などがまわりにいる場合は感染しないように注意が必要だ。

 学校保健安全法で、溶連菌感染症に関する明確な規定はないが、第3種の「その他の感染症」として、感染の恐れがないと医師が認めるまでの期間出席停止の措置が必要と考えられる病気という位置づけなので、子どもの登校・登園についても医師に相談を。

 現状では、溶連菌感染症に対する予防接種はない。これから春を迎えるまでの数か月間は、溶連菌感染症だけではなく、そのほかの感染症も多くなる。外出先から戻ったら手洗い・うがいをする習慣を身につけ、人ごみに出るときにマスクをするなどの予防を心がけたいもの。また、家族が溶連菌に感染した場合は、同じ食器やタオルなどを使わないようにして、感染の広がりを防ぐようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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