時として、常識は覆されるものだ。

 これまで、冷凍に向かない食品の代表だった殻つきの生卵。これをあえて冷凍して食べる「冷凍卵」が、昨年の秋頃からブームになっている。

 作り方は簡単で、殻のままの生卵を冷凍庫で一晩冷凍するだけ。冷凍中に殻がひび割れることがあるため、フリーザーバッグに入れたり、キッチンペーパーに包んだりするとよい。

 冷凍庫から出して、1時間ほど置いておくと自然解凍されるが、冷凍する前に比べて白身はサラサラになり、反対に黄身は箸で持ち上げられるほど、モッチリした食感になるという。インターネットのレシピサイトには、この冷凍卵を使った卵かけごはん、黄身の醤油漬け、天ぷらなどが紹介されており、「おいしい」と評判になっている。

 また、凍っている間に殻を剥いて、半分にカットしてフライパンで焼けば、ミニサイズの目玉焼きが2つ作れるのでお弁当のおかずやハンバーグのトッピングなどにも便利。調理の幅を広げてくれる冷凍卵は、今年、大ブレークの兆しを見せている。

 一年でもっとも寒いこの時期、全体的に鶏の産卵数は減っていくが、反対に滋養を蓄えて栄養価は高くなる。そのため、大寒の日(1月20日)に産まれた卵を食べると、健康に暮らせると言われており、開運の象徴として珍重されてきた。

 ちなみに、二十四節気を5日ごとに分ける七十二候では、大寒の末候(まっこう)に「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」という言葉がある。これは、鶏がはじめて卵を産み始めるという意味で、暦をめくると、もうそこまで春がきていることを告げている。

 長年、物価の優等生といわれてきた卵だが、アベノミクスによる円安が外国産飼料の高騰を誘い、2013年秋頃から卸売価格がじわじわと値上がりしている。

 だが、卵は手頃な価格で庶民の食卓を支えてきた貴重なタンパク源だ。今年もまた、たくさんの家族の食卓を卵料理が飾り、健康で暮らせることを祈りたい。

 2015年が、世界中の人にとって幸多き年になりますように。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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