実践的な職業教育に特化した新しい高等教育機関が登場しそうだ。

 下村博文・文部科学大臣は2015年4月14日、「専門職大学」(仮称)の創設について、中央教育審議会(中教審)に諮問した。諮問は、先に文科省の有識者会議がまとめた報告書を受けたもの。報告書によると「高等学校等の新卒者」「社会人」の入学を想定し、修業期間は2~4年。卒業すれば学位も授与される。設置者は「国」「地方公共団体」「学校法人」となっており、それぞれ国立、公立、私立という位置づけだ。

 「専門職大学」創設の動きの背景にあるのは何か。報告書は「グローバル競争の激化に伴い技術革新や企業淘汰が加速しており、職業に必要となる知識や技術も高度化・複雑化している」と指摘している。そのため経済状況が厳しい中、企業が社内で人材育成に手間ひまをかける余裕がなくなっているわけだ。企業は即戦力の人材を求めるようになる。労働者も実践的な知識や技術を自分で取得する必要に迫られる。

 文科相の諮問を受け、中教審は2015年度中に答申をまとめる予定だが、課題はカリキュラムをどうするかだろう。即戦力の人材を養成するには技能実習が柱となるが、そのためには企業側の協力も必要だ。専門職大学には国の補助金が支給される見通し。本来、企業が自前でやってきた人材育成を国の補助金で肩代わりする形となる。教官の派遣など応分の協力は当然だろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1700冊以上(総額750万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る