東京でオリンピックなど開いてほしくないと思っているのは、私のように生まれ(疎開先の新潟で生まれたがすぐに戻ってきた)も育ちも東京(中野区)で、親子三代住みついている東京人に多いのではないだろうか。

 1964年の東京オリンピックのときは19歳の浪人生だった。父は貧乏サラリーマンだったが、今日より明日がよくなると素直に信じられた時代だったと思う。

 そんな高度成長のただ中で開かれたオリンピックは、東京だけではなく日本中をあげてのお祭りになった。どこの町や村の盆踊りでも三波春夫の『東京五輪音頭』に合わせて老若男女が踊り、カラーで中継された各国選手団の肌の色やカラフルな民族衣装に目を見張ったものだった。

 あれから半世紀以上が経った。東北や九州でオリンピックを開くならまだ分かるが、なぜ東京を莫大な費用をかけて汚さなければならないのか、私には理解できない。

 だが、為政者はオリンピックが好きなようである。『週刊現代』(6/13号)で、中国の習近平主席について中国共産党の某幹部にインタビューしている中に、こんなコメントがある。

 「わが国は、08年に北京オリンピックを開催した。当時、国家副主席になったばかりだった習主席は、胡錦濤主席を補佐しながら、オリンピックがいかに国威発揚になるのかを思い知った。
 そこでどうしても、故郷の北京で、もう一度オリンピックを開きたいのだ」

 このオリンピックは22年に開かれる冬季大会である。この考えは当初、無理筋だと考えられていた。北京で夏季オリンピックを開いたばかり、その前の冬季オリンピックが韓国の平昌(ピョンチャン)で行なわれることなどからだが、習近平は主席時代の総仕上げとして何としても招致すると名乗りを上げたのだ。

 ところが有力候補だった北欧の国々が財政難や政情不安などで撤退してしまい、残ったのは隣国カザフスタンのアルマトイと北京だけになってしまったのだ。7月31日に開かれるIOC(国際オリンピック委員会)総会に向けて水面下の駆け引きが行なわれているようである。

 安倍首相も20年の東京オリンピックまで権力の座にしがみつきたいと思っているようだが、こちらは本当の無理筋であろう。

 しかも、ここへきてオリンピックの目玉である新国立競技場建設が予定より遅れて「種なしスイカ」ならぬ屋根なし競技場になるかもしれないと、『週刊文春』(6/4号、以下『文春』)が報じている。

   安倍首相が開催国になりたいがためにIOCへのプレゼンで、原発事故で発生した大量の放射能汚染水は完全にコントロールされているという「嘘」をついてまで招致したのに、重大事態発生である。

 このことが明らかになったのは、5月18日に下村博文(しもむら・はくぶん)文科大臣と舛添要一(ますぞえ・よういち)都知事が会談した際のことである。

 下村氏が「屋根を付けると工期が間に合わない上に見積もりの1600億円では収まらない。東京都に500億円程度の負担をお願いしたい」と切り出したため、舛添氏が難色を示したのだ。

 舛添氏は、協力するのはやぶさかでないが、そのためにはいくらかかるのか、ちゃんと間に合うのかを説明してほしいと『文春』に答えている。当然であろう。

 『文春』によれば、五輪開催国のメイン会場建設費はだいたい600億から700億円だそうで、1600億円という額はその倍以上にもなる。

 新国立建設だけでこれだけの費用がかかるのである。総額どれだけの税金が注ぎ込まれるのか、国は詳細を公表するべきだ。

 第一、16年招致の際には「世界一コンパクトな五輪」を掲げて、旧国立は残すという構想だったという。

 今回も当初は、国立を耐震補強して使う「改修案」だったそうだ。それが新国立建設へと大幅に変更されたのは、ある人物が絡んだためだというのである。

 オリンピックの前年の19年に日本で行なわれるラグビーW杯の会場として、新しい国立を建てようと、日本ラグビー協会会長を長く務めていた森喜朗(よしろう)元首相らが画策して予算規模がどんどん膨らんでいったと『文春』が指摘している。

 何のことはない、オリンピック予算に便乗して、やってしまえとなったのだろう。

 さらに新国立のデザインを英国在住の女性建築家に頼んだことや、資材・人件費の高騰で予算が一時は3000億円にまでなった。それでは世論が許さないだろうと、競技場のサイズを縮小するなどして1600億円程度まで圧縮したそうである。

 しかし屋根付きにすると工期が延びてラグビーW杯はもちろん、五輪にも間に合わないかもしれないし、カネはさらに嵩(かさ)む。

 私は東京五輪開催には反対だから新国立建設が間に合わなくてもいいが、これも東京五輪招致のプレゼンで安倍首相がIOCに約束したことである。川淵三郎日本バスケットボール協会会長の言うように、「日本は事前に約束していてもいざとなったら平気で破る」国だと言われかねない。

 中国同様、権力者が自己顕示欲のために開催するオリンピックは、64年のそれとはまったく違うものになるはずである。その上、放射能汚染を恐れてボイコットする国が出てくるかもしれない。そうなれば多くの西側の国が参加しなかった80年のモスクワ・オリンピックの二の舞になりかねない。

 私はオリンピックの期間中、ハワイかプーケットに「避難」したいと考えている。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週は芸能人や相撲界の人気者の話題が多かった。なかでも北大路欣也夫妻の老人ホーム入居報道は、他人事ではなく読んだ。こうした記事や102歳(数えで103歳)になる美術家・篠田桃紅(しのだ・とうこう)さんの本などを読み、人生においても歳を取ることは「クリエイトすることだ」という言葉に感動したりする。
 50年ぶりに始めたエレキギターの練習も、篠田さんの「この歳になってできることはある。昨日と今日とは違うんですから」という言葉に触発されたのだが、指が動かなくて苦労している。

第1位 「『照ノ富士』を先物買いした『お目の高い彼女』」(『週刊新潮』6/4号)
第2位 「紀香(43) 愛之助(43)爛漫の同棲愛」(『女性セブン』6/11号)
第3位 「北大路欣也『愛妻と超高級老人ホーム入居』の男気」(『週刊ポスト』6/12号)

 第3位。北大路欣也といえば、東映時代劇の俳優で片岡千恵蔵らとともに戦前・戦後の大スターだった市川右太衛門の次男として生まれ、13歳のときに映画『父子鷹(おやこだか)』でデビュー、以来、スター街道を突っ走ってきた大物俳優だが、これまでプライベートはあまり知られていない。
 『ポスト』によれば、北大路は今、妻とともに介護付き有料老人ホームで暮らしているというのだ。
 その老人ホームは都内にあり、高級ホテルさながらの設備を誇っているそうだ。ロビーには高級ソファーが並び、食事は都会の夜景を見下ろすダイニングで、専属シェフの手による日替わりメニューを味わえるほか、ジャグジーやラウンジなどを備えている。
 当然ながらホームドクターと専属の看護師がいて健康管理は万全なうえ、介護が必要な状態になった時にはケアスタッフによる介護を受けられる。サービスも施設も至れり尽くせりだそうだ。
 だが、入居には一時金として数千万円、加えて食費等月々の費用が数十万円かかる超高級施設だ。
 北大路72歳、妻は66歳だそうだ。『ポスト』によれば、北大路夫婦が元気なうちに老人ホームに入る決断をしたのは、両親のことが影響したそうである。
 両親の安全と安心を常に確保でき、命の尊厳をいつでも守れる環境を提供しなければならないと考えていた北大路は、自分の足で親の終の棲家探しをしたそうである。
 そして巡り会ったのが千葉県館山市の老人保健施設であった。そこで父は92歳、母は95歳で大往生した。母は90歳を過ぎて足取りが覚束なくなっても、夫のためにコーヒーを淹れていたそうだ。
 そんな両親の晩年こそ、北大路にとって理想の夫婦の生き方なのであろう。ちょっといい話である。

 第2位。藤原紀香(43)と歌舞伎役者の片岡愛之助(43)の熱愛を張り込みスクープしたのは『女性セブン』である。
 紀香と愛之助が代官山の和食屋で食事をしたあと、一旦別れた愛之助が、愛車に乗って紀香のマンションへ入り、翌日の朝出てくるところを「目撃」している。
 同棲状態といってもいいそうだ。紀香は独身、愛之助も戸籍上は独身だから問題はないようだが、愛之助には13年2月に「交際宣言」したタレントの熊切(くまきり)あさ美(34)という彼女がいるのだ。
 歌舞伎座近くのマンションで一緒に暮らしていた二人だったが、梨園には結婚について厳しい掟があるため、なかなか結婚に踏み切れなかったようだ。
 そこに紀香との「同棲」の話が表沙汰になり、愛之助は熊切との仲は「終わった」と言ったそうだから、彼女としては「冗談じゃない」と怒るのも無理はない。
 彼女は5月29日、日本テレビ系『情報ライブ ミヤネ屋』に出演して、愛之助とは「別れ話になったことはない」、破局していないと涙ながらに訴えたのだ。

 「熊切は『本当のことはわからないけど(記事に)出ちゃってるから、それが現実なんだろうなと思いました』とショックを隠せず。それでも2人の間で『別れ話になったことはないです』と断言し、『(2人が同棲しているマンションに荷物が)あるから出て行ったと思っていないし、何も変わらずなんで』とあくまで今でも交際中であることを主張した」(『スポニチアネックス』5月29日より)

モテる女と男のちょっとした浮気心なのかもしれない。紀香に梨園の妻になる覚悟があるのだろうか。チョッピリ熊切が可哀想になる、罪作りなゴシップではある。

 第1位。強すぎる横綱・白鵬を抑えて優勝、大関昇進を果たした関脇・照ノ富士(23)に対して『新潮』が「ご祝儀」スキャンダルを放っている。タイミングがバッチリのスクープである。

 「彼と同じウランバートルの出身の20代の女性です。照ノ富士と彼女は現在、伊勢ヶ濱部屋からほど近いマンションの一室で“半同棲”に近い生活を送っているのです」

 部屋の関係者がこう話している。白鵬が千秋楽に日馬富士に負けてまさかの4敗になったため転がり込んできた賜杯だったが、ポスト白鵬に名乗りを上げたのは間違いない。『新潮』によると500人以上が集まった祝賀会で「夢のようだ」と涙ぐんでいたという。
 少し前に『文春』が白鵬にモンゴル出身の愛人がいることを報じたが、照ノ富士の彼女も同郷である。女優の真行寺君枝(しんぎょうじ・きみえ)似の彼女は現在、大学に通っているらしい。伊勢ヶ濱部屋の関係者からも「力士としてスケールが大きい」と言われるだけに女性関係もコソコソしていないようだ。
 毎日のように彼女の部屋へ行って一緒に過ごしているのを『新潮』が目撃している。
 豪快なのは女性にだけではなく、優勝がかかった夏場所の13日目にも、錦糸町と両国にある行きつけの店をはしごして、帰ってきたのは午後11時過ぎだったという。
 「新入幕から8場所での大関昇進は、年6場所制が定着した1958年以降では歴代3位のスピード出世」(5月28日のasahi.comより)。引退の二文字が見えてきた白鵬の次を狙う若武者は、すでに女性関係では大横綱の風格十分のようだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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