親の経済状況による子どもの教育格差が問題になって久しい。

 2013年の「国民生活基礎調査」(2014年7月発表)によると、日本の相対的貧困率(国民を所得順に並べて、真ん中の人の額の半分に満たない人の割合)は16.1%。なかでも母子家庭などのひとり親世帯の貧困率は54.6%と、OECD(経済協力開発機構)加盟34か国で最悪となっている。

 デンマークやスウェーデン、フランスなどに比べて、日本は税や社会保障による所得の再分配機能が弱く、経済格差が拡大している。そうした国の無策が子どもにも影響を及ぼし、親の経済状況によって学習の機会を奪われたり、進学を諦めざるを得ない子どもを多く生み出す結果となっている。

 だが、高校、大学などの高等教育に進むことを諦めると、自由に仕事を選べなくなったり、高収入の職業につくのは難しくなったりする可能性が高い。そうした貧困の連鎖を断ち切るために、進学の応援をしてくれるのが「タダゼミ」だ。

 タダゼミは、NPO法人キッズドアが主催する無料学習塾で、対象は高校受験を希望する中学3年生。ひとり親家庭や生活保護の受給世帯など、経済的な理由で学習塾や家庭教師を利用できない子どもに対して、大学生や社会人がボランティアで勉強を教えてくれる。

 貧困家庭で育った子どもは、親が仕事で忙しく身近に勉強を見てくれる人がいないため、そもそもの学習習慣がついていないケースもある。そのため、タダゼミでは、入試対策だけではなく、勉強の仕方や進学意欲を高める方法などを一から教えてくれるという。

 過去にタダゼミに参加した子どもたちの100%が受験に合格しており、この塾での学びが子どもたちの可能性をすくい上げている。 キッズドアでは、高校受験のためのタダゼミのほかにも、行政と連携しながら、ひとり親家庭や生活保護受給世帯の子ども向けの学習支援も行なっている。おもな活動資金は、個人や企業からの寄付でまかなわれており、だれでも支援が可能だ。

 本来、子どもの教育は、国が責任をもって面倒をみるべきもののはずだが、高等教育における家庭支出は、OECD平均が31%なのに対して、日本は66%(2014年度OECD統計)。個人に負担が重くのしかかっており、それが貧困家庭の子どもの進学を妨げる要因にもなっている。

 タダゼミでの成果を見ればわかるとおり、学習機会が与えられれば子どもたちは自らの能力を発揮し、高校合格を勝ち取っている。親の所得によって、その可能性が奪われるのはなんとも理不尽だ。

 国際社会のなかで活躍する人材を育てたいなら、まずは国が責任をもって、誰もがスタートラインに立てる教育体制をつくるべきではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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