JRA(日本中央競馬会)所属の女性騎手。18歳。身長157.4cm、体重45.6kg、美浦・根本康広厩舎所属。JRA生え抜きの女性騎手としては久しぶりであることと、名前同様可愛いらしい容姿が人気を集め、菜七子フィーバーを巻き起こしている。

 この欄を書かせてもらってだいぶ経つが競馬の話題は初めてだ。私には自慢できる特技は何もないが、競馬だけは現存する競馬ファンの最古参の一人と言ってもいいだろう。何しろ高校生のとき東京競馬場でシンザンの勝ったダービー(1964年5月31日)を見て以来だから、半世紀以上になる。

 競馬歴長きが故に尊からずだが、これだけは言える。人生に必要なことはみんな競馬場で学んだ。一つだけあげろと言われれば「諦め」ということである。競馬に絶対はない。そんなことはわかりきっているといわれるかもしれない。だが、何万回と馬券を買っているなかには、このレースはこの馬同士で「鉄板」だと思えるレースが何度かはある。

 講談社に入社して2年目の初夏、ボーナスを全部はたいて2頭の馬連を買った。3強と言われていて1頭は逃げ馬、私が買ったのは差し馬と追い込み馬。東京競馬場の坂を上がって逃げ馬を差し馬がとらえた。追い込み馬も逃げ馬に並びかけ、これで決まったと確信した。だが、抜かれた逃げ馬がジリジリと二の足を使って差し馬に迫り2頭が並んだところがゴールだった。長い長い写真判定。私の何十万かの馬券は紙屑となって競馬場に舞った。

 今一度は絶対本命馬から2点流しで勝負したとき。発馬と同時にその本命馬が落馬してしまったのだ。レースはヒモにした2頭で決まった。

 「賭博には人生では決して味わえぬ敗北の味がある。競馬ファンは馬券を買わない。財布の底をはたいて自分を買っているのである」そう寺山修司は言った。「競馬が人生の比喩なのではない。人生が競馬の比喩なのだ」とも。

 私が何とか編集者としてやってこれたのは、競馬から人生を学んでいたからだと思う。それに山口瞳、伊集院静、大橋巨泉、常盤新平、虫明亜呂無(むしあけ・あろむ)、本田靖春、米長邦雄、数え上げれば切りがないが、競馬を通じて親しくなった人たちがいた。この競馬人脈が編集者としてどれだけ役に立ったか。

 話を藤田に戻そう。藤田は競馬とは関係ない家庭に生まれたが、小学校6年生のとき競馬のテレビ中継を見て、騎手を志したそうだ。美浦トレーニングセンターの乗馬苑に通って馬と接していたという。騎手として必要な腕っ節や脚の力を鍛えるためだったかどうかは知らないが、子どもの頃から剣道と空手を習っていて、ともに有段者だそうだ。

 藤田がどこかのインタビューで語っていたが、競馬学校で一番辛かったのは人を肩に乗せてスクワットしたり、足を使わずに綱を登ったりするフィジカルトレーニングだったそうである。

 競馬社会は未だに男社会だ。戦前、女性騎手が出たが、競馬関係者が「女がいると風紀が乱れる」と反対運動をし、それを機に日本競馬会(当時)は、騎手は男に限るとしてしまったのである(今は違うが)。

 アメリカでも1968年に女性騎手が免許を取ったが、男の騎手たちがストライキを起こして抵抗したため、結局その騎手は一度もレースで騎乗することなく引退してしまった。

 その後、ウーマンリブ運動などの広がりから競馬界にも女性騎手が登場して活躍するようになる。アメリカのジュリー・クローンは通算3704勝を挙げ一流騎手の仲間入りを果たし、初めて競馬の殿堂入りをした。

 日本でも地方競馬では何人かの女性騎手が活躍しているが、JRAではこれまで出ていない。藤田は歴史を塗り替えることになるのだろうか

 藤田はJRA生え抜きの新人騎手としては珍しくデビューは地方競馬の川崎競馬場になった。当日は取材制限するほど入場者が詰めかけ、売上を大幅に伸ばした。

 この日は2着が最高だったが、3月24日の浦和競馬では、第3レースで逃げ切り、第6レースで差し切り勝ちをしてファンの歓声を浴びた。

 「センスを感じますね。スタートはうまいし、地方競馬のキツいコーナーにも対応できている。初めての競馬場、初めて跨(またが)る馬でのレースが多いなかでこれだけやれるのはすごい」(元公営騎手の赤見千尋さん・『FLASH』4/12号より)

 度胸がいいという評価が多いようだ。4月2日の中山競馬場第5レース、オールドラゴン(牡3歳)に騎乗して大外枠から出ると果敢に逃げた。ゴール200メートル手前で蛯名正義の馬にかわされ1馬身ほどリードされたが、左ムチを懸命に使って再び追い詰め、並んだところがゴールだった。写真判定の結果4cm「鼻差」の2着。

 私はテレビで見ていたが、最後までフォームが崩れないのがいい。脚の力が強いからできるのだが、よほど鍛えているのであろう。これからの課題は、馬ごみで包まれたときどうするかだ。ベテラン騎手になると「どけ!」と一喝し、若い騎手が怯んだ隙に抜け出すという力業を使う者もいるが、彼女にはムリだろう。

 スタートがうまいからポンと飛び出してハナを奪って逃げ切るか、後方から終いの脚に賭けて大外から追い込むかのどちらかの戦法をとるのがいいと思う。

 『週刊新潮』(4/7号)で今は解説者となっている元JRA初の女性ジョッキーだった細江純子が、(騎乗依頼がないので=筆者注)乗れない苦しみがあった、と語っているが、今の藤田には騎乗依頼が殺到していて、捌(さば)くのが大変だという。

 気になる藤田の懐具合だが、厩舎からの月給は20万円程度。だが中央のレースは騎乗するだけで手取り3万円はもらえるので、年間500回騎乗できればそれだけで年収1500万円になるそうだ。

 また芸能プロダクションの「ホリプロ」に所属し、ネットだが大王製紙のCMに有村架純(かすみ)と共演もしている。

 老婆心ながら心配なことは、JRAが菜七子人気を利用して売上増を目論んでいるため、新人騎手として大事な基礎を学ぶ時間が少なくなってしまうことだ。それに藤田が騎乗する馬が実力以上に人気が被るため、それでなくてもプレッシャーがかかっている彼女を萎縮させてしまわないか。

 私は彼女の馬の馬券は買わずに、心で応援していたいと思う。当たらない馬券と同じように彼女の中央競馬の初勝利を予想すれば、逃げ馬に乗って勝つのではないかと思う。そのとき競馬場に「菜七子コール」が響き渡るに違いない。楽しみだ。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 桜の季節は心がせわしない。咲くまでは満開までを指折り数え、咲けば「酒なくて何で己が桜かな」と毎晩花見酒、散り出せば以前は弘前まで桜を追いかけて北へ旅したこともある。残念なことに今年はカラッと晴れる日が少ない。やはりソメイヨシノには青空が似合う。桜を見るのに忙しく週刊誌が疎かになっている。ごめんなさい。

第1位 「とにかく明るい“不倫現場”安村がパンツを脱いだ!」(『週刊文春』4/7号)
第2位 「美少女15歳を2年間監禁 千葉大生の歪んだ情欲」(『週刊文春』4/7号)/「美少女を2年も閉じこめた『千葉大工学部卒』の監禁システム」(『週刊新潮』4/7号)
第3位 「国会議員と官僚“専用”保育所は超豪華だった!」(『週刊ポスト』4/15号)

 第3位。保育所問題が大きな話題になっているが、『ポスト』は国会議員や官僚には超豪華な「専用保育所」があるのは如何なものかと報じている。

 「キッズスクウェア永田町──衆院第二議員会館の地下3階に、そんな文字がドアに書かれた部屋がある。東京都の認証保育所で、総面積は約275平方メートル。屋外には154平方メートルの天然芝の園庭を備え、0歳児(生後57日)から就学前まで定員は34人。午前8時~午後9時まで預けることが可能だ。
 一般の人が出入りするには、空港にあるような金属探知機のゲートをくぐって厳重な手荷物検査を受けなければならない。おそらく「日本一安全な保育所」といえるだろう。
 都の補助がある認証保育所は保育料の上限が定められており、3歳児未満が月額8万円、3歳児以上は月額7万7000円となっている。東京都心の認可外保育所の場合、 同クラスの設備となると3歳児未満の保育料は月額14万円、3歳児以上でも月額12万円ほどが相場であり、料金的にも半分近い」(『ポスト』)

 もともとは自民党の橋本聖子議員の出産(00年)をきっかけに超党派の「国会に保育所を!推進議員連盟」が発足して、10年の議員会館建て替えに合わせて実質的な「国会保育園」として開設されたそうだ。
 民進党の議員秘書がこう話す。

 「山尾(志桜里(しおり)議員=筆者注)さんは当選2年目の2010年に妊娠、翌年1月に出産すると0歳児の頃から会館内の保育所を利用されていました。子育てにとても熱心で、最初は旧第一議員会館に事務所が割り当てられていましたが、できるだけ赤ちゃんと近い方がいいからと党に希望して出産前の会館建て替えの際に、保育所のできる新第二議員会館の部屋に移してもらったほどです」

 キッズスクウェア永田町は議員専用ではなく、一般からの申し込みも可能だそうだが、入るのはそうとう難しそうだ。官僚たちにも恵まれた保育所がある。
 厚生労働省の本庁舎(中央合同庁舎5号館)には、安倍政権の「女性が輝く社会」政策に合わせて14年12月に「ふくろう保育室」がオープンしている。

 「定員19人のうち、従業員枠の14人は基本的に厚労省職員の子供を預かります。認可保育所なので残り5人が千代田区民のお子さんを預かる区民枠になっている。現在は区民枠に1人空きがあります」(厚生労働省福利厚生室)

 こちらもセキュリティは万全だそうだ。

 「しかも、認可保育所だから保育料は議員会館の認証保育所よりさらに安い。千代田区の基準では、年収1000万円以上の世帯でも第1子の3歳時の保育料は月額2万2600円、4歳児は1万8000円となっている。(中略)
 この他にも、霞ヶ関には文部科学省や国土交通省の庁舎内に保育所がある」(『ポスト』)

 第一次安倍内閣の時に文部科学政務官を務めた小渕優子氏も、退任後に同保育室に子供を預けていたそうである。
 「自分たちが利用する保育所がどこよりも充実しているようでは、待機児童ゼロの本気度を疑われても仕方がない」と『ポスト』は結んでいる。これでまた「保育園落ちた議員や官僚は死ね!」というツイッターが増えるだろうな。

 第2位。このところ私の住んでいる東京・中野区で事件が多い。劇団員の加賀谷理沙さん(当時25)が殺害された事件も私の家から歩いて15分ぐらいのところだし、埼玉県朝霞市で女子中学生(15)が行方不明になり、約2年ぶりに保護された事件の大学生・寺内樺風(かぶ)容疑者(23)と女の子が住んでいたマンションも10分程度のところである。
 元々中野は、新宿のヤクザたちのねぐらが多い町で、昔は駅前のサンモール商店街でよくヤクザ同士のドンパチがあった。建ったときは東京一のマンションといわれたブロードウェイも、いまや「まんだらけ」に代表されるオタクの聖地として名高く、世界中からオタクたちが集う“怪しい雰囲気”の商店街になっている。
 最近はキリンビールの本社や早稲田、明治などの大学も出来て昼間の人口が1万人増えたといわれ、中野駅の朝のラッシュは新宿駅並みである。
 東京23区で人口密度の二番目に多い町だが、人口の移動が激しく、私のような土着の人間以外は、近所づきあいもしない人が多い。
 そんな町だから目立たないと思って寺内容疑者は移ってきたのかもしれない。『文春』によると、寺内の家は祖父が大学教授で、一族には高学歴者が多いという。彼も地元の名門・大阪教育大学附属池田中学に合格し、中学の卒業文集では修学旅行の沖縄体験をもとに「沖縄戦の記憶」というレポートを書き、高校の卒業文集には難解な数式を使って「航空機騒音」をテーマにしたレポートを残している。
 その後千葉大工学部へ進学し、2年生の時、大学を自主休学してカナダのバンクーバーに語学留学、米国カリフォルニア州で小型機の操縦免許を取得している。
 経歴だけを見ると、恵まれた環境で学生生活を送っていたように思える。今春、都内の消防設備会社に就職が決まっていて、中野へ移ってきたそうだ。
 その寺内が、2年前に埼玉県朝霞市で市内の公立中学に通うA子さん(当時13)を連れ去り、監禁していたことを知る者は誰一人いなかった。
 A子さんを監禁してからも、大学の2泊3日のゼミ合宿にも参加し、「今年の正月もしばらく帰省していたんです。就職も決まり、今までありがとうと、祖父母の私らに五千円ずつくれて。仲のよい妹とも一泊旅行に出かけました」(寺内の祖母)
 寺内が借りた部屋は家賃約7万5000円の六畳一間。だが、隣に住む住民も「物音一つ聞こえなかった」と言っている。
 寺内は何度も外出しているのに、長きにわたってA子さんの自由を奪い続けることが出来たのはなぜか?
 『新潮』は、寺内の実家の商売が関係しているのではないかと見ている。

 「寺内の父親は防犯設備士という民間資格を持っており、経営する会社の名前は株式会社店舗サポートと言います。(中略)『e-防犯.com』というサイトを通じてアラームや監視カメラといった防犯グッズの通信販売を手掛けているそうです」(近隣住民)

 その中のいくつかがA子さんの監禁に使用されたのではないかというのだ。

 「ドアの内側からは開錠できない補助錠や、ベランダのサッシが開けられると感知して受信機に信号を送るセンサー、室内の様子を常に監視することができる監視カメラがそれに当たります。いずれも『e-防犯.com』で扱っている商品なので、息子なら容易に入手できますし、工学部の学生だから扱いにも抵抗はなかったことでしょう」(在阪の社会部デスク)

 そうした装置を使って24時間監視されているとA子さんに思い込ませ、逃げられないとマインドコントロールしていたということはあり得るだろう。だが、A子さんは「秋葉原に行く」と寺内が言って出て行った3月27日の午後、必死の思いで部屋を抜け出し、JR東中野駅の公衆電話から自宅と警察に助けを求めたのだ。
 寺内はそのことをニュースで知り、逃亡した静岡県伊東市で首をカッターナイフで切り自殺を図った血だらけの状態で発見され、逮捕された。A子さんは連れ去られたときより5センチ背が伸びていたという。

 第1位。私にはこの芸人のおもしろさがまったくわからないのだが、とにかく明るい安村(34)という変わった芸人がいる。全裸に見えるポーズをとり「安心してください、はいてますよ!」と言うだけのピン芸人だ。
 『文春』が、この男が女性と2人で東京駅からほど近いもつ鍋屋で杯を重ね、その後、缶ビールとミネラルウォーターを買って近くのビジネスホテルへ入っていったと報じている。
 その部屋で安村はパンツを脱いだのか否か? 『文春』に朝出てきたところを直撃され、安村は体をのけ反らせて驚いたという。やりとりはこうだ。

 「──不倫しちゃいましたか?
 『いやっ。不倫じゃないですけど……』
──パンツ、はいてました?
 『はいてました(苦笑)』
──脱いだんじゃ?
 『フフフフ』(中略)
──ゲス不倫では?
 『うわーっ(涙目)』」

 最後まで男女の関係ではないと言っていたようだ。
 安村はコンビを組んでいた男とケンカ別れして芸人引退を考えていたとき、奥さんが勇気づけてくれて、「ピンでやりなよ」と言ってくれたそうだ。立ち食いそばのアルバイトをしても稼ぎは10万円に満たず、焼肉屋で一人前の牛タンを2人でゆっくり食べるのが最高の贅沢だった時代があったという。
 今は月給も100万円以上で、スケジュールは数か月先まで埋まっているそうだ。その奥さんに何と言って言い訳したのか。

 「こっぴどく叱られたものの、奥さんは何とか許してくれたそうです」(吉本興行関係者)

 パンツを本当に脱ぐのは奥さんの前だけにしたほうがいい。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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