いま、タイで話題のルクテープ(Luk Thep)人形。「ルクテープ」はタイ語で「天使の子」という意味で、まさに赤ちゃんの姿をしている。なかなかリアルな造形で、われわれ日本人からすると少し怖さを感じてしまいそう。仏教がさかんな現地では、購入後にお寺に持っていき、祈祷を施してもらうという。これによって、人形へと子どもの魂が宿り、持ち主に幸運を招くと考えられているのだ。

 ルクテープ人形は、タイの著名人たちがSNSなどで「御利益あり」のお墨付きを与えたことから、空前の広がりをみせている。まるで本当の子どものようにたいせつに扱われるのだ。飛行機に乗せるとき、ひとりぶんのシートを確保するサービスをタイ・スマイル航空が始めたほどである。

 一方でタイ民間航空局では、ルクテープ人形をあくまで人形として扱い、機内での収納などのルールを遵守するように通達を出した。薬物の密輸などに悪用される懸念があるためだ(実際、すでにこうした犯罪は起こっている)。いささか呪術めいたその存在自体、「常識的な」タイ人のあいだではこころよく思われていないらしい。たかが人形、されど人形。今回の狂騒ぶりは、政府でも手に負えないところまで来ているようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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