東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、2013年7月に施行された改正原子炉等規制法では、運転開始から40年たった原子力発電所は原則的に廃炉にすることになった。

 ところが、この40年廃炉ルールは、早くも崩れ去った。

 6月20日、原子力規制委員会は、稼動から40年を超えた関西電力の高浜原子力発電所の1、2号機の運転延長を認可。最長20年の延長が可能になった。法改正によって40年廃炉ルールができてからはじめてのケースだ。

 東日本大震災による東京電力福島第一原発事故後、全国各地で反原発・脱原発の運動が巻き起こった。原発のない社会を求める市民が声をあげ、世論調査でも、原発の再稼動に反対する意見が過半数を占めた。

 こうした国民の意見に後押しされ、当時、政権与党だった民主党は、将来の原発依存度に関して「2030年代に原発ゼロ」を提言。そして、運転開始から40年たった原発は原則廃炉、新増設は認めない、という方針を出した。

 だが、その後、政権与党に返り咲いた自民党は、事実上、この方針を棚上げし、2015年7月に発表した「長期エネルギー需給見通し」で原発をベースロード電源(昼夜を問わず、一定の電力を安価に安定供給できる電源)に復活させている。

 この需給見通しでは、2030年の電源構成(エネルギーミックス)として、太陽光などの再生可能エネルギーの比率を22~24%にしているものの、原発も20~22%維持していくことになっている。だが、すでに廃炉が決まった原発、稼動後40年を迎える原発を除くと、2030年時点の原発の発電量は15%程度にしかならない。

 法改正が行なわれたとき、40年超え原発の延長を認めた特例措置について、国は「例外中の例外」と国民には説明していた。だが、2030年のエネルギーミックスで原発比率を20~22%にするためには、40年超えの原発を動かすか、新たな原発をつくるしかない。「例外中の例外」だったはずの40年超え原発の運転延長は、自民党が政権与党に返り咲いた時点で、規定路線になっていたといえる。そのため、今後もその他の老朽原発も次々と再稼動していくことが懸念されている。

 40年超え原発の運転延長をめぐっては、発電出力の小さな原発は、新基準に適合させるための改修費用が見合わないとして、廃炉の決まったものもある。40年超えの老朽原発で運転延長を目指すのは出力の大きなもので、安全性よりも経済効率が優先されているきらいがある。

 実際、今回の高浜原発1、2号機も、電気ケーブルの耐火性、重要機器の耐震性の甘さが指摘されながらも、運転延長が認められている。関西電力は、電気ケーブルを防火シートで覆ったり、耐震補強工事などをしたりしたうえで、2019年10月から再稼動する予定だという。

 高浜原発1、2号機の運転延長については、今年4月に14都道府県の市民が認可差し止めを求める訴訟を名古屋地裁に起こしている。

 原子力規制委員会は、稼動から40年超えの老朽原発の運転延長にゴーサインを出した。だが、司法がそれを許さない可能性もある。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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