政府は、「過労死白書」を2016年10月に発表した。同白書は過労死等防止対策推進法(2014年施行)に基づくもので、今回、初めてまとめられた。全280ページ。過労死の現状や防止対策の実施状況などについて報告している。

 そもそも過労死とは何か。前述の推進法は、「過労死等」について「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡、若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、またこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害」(第2条)と定義している。要は、労働者が働き過ぎて疲労やストレスがたまり、脳卒中や心筋梗塞で死んだり、精神的に追い込まれてうつ病などに罹り、自殺したりすることだ。

 残業時間が「過労死ライン」(月80時間)を超えると、過労死の危険が増すとされる。そのラインを超えて残業している社員がいる企業は、白書によると2015年度で22.7%に上る。業種別では、(1)情報通信業(44.4%)(2)学術研究、専門・技術サービス業(40.5%)(3)運輸業・郵便業(38.4%)の順。また、過労により、脳血管疾患、心臓疾患を患い、労災補償が支給されたのは過去10年を見ると、200件台後半~300件台で推移する。実際に過労死と認定されたのは2015年度は96人だった。とても重い数字である。

 大手広告代理店・電通で、女性新入社員の過労自殺が明らかになった。企業の利益や行動原理が個人の生活に優先する「企業社会」がはびこる中で、「犠牲者」は後を絶たない。政府は「働き方改革」を看板に掲げているが、過労死の根絶に本腰を入れてほしい。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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