2011年3月11日、南三陸沖を震源とする地震と津波の影響を受け、レベル7に分類される過酷事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所。事故から5年以上が経過した今も、先の見えない廃炉作業が続いている。

 この原発事故を受け、当時、政権与党だった民主党(現・民進党)は、「2030年代に原発ゼロ」を提言。そして、(1)運転開始から40年たった原発の運転を制限し、原子力規制委員会が安全確認した原発のみ再稼働する、(2)新増設は認めない、という方針を打ち出した。

 ところが、その後、政権与党に返り咲いた自民党のもとで脱原発政策は、事実上、棚上げに。停止中だった原発が再稼働され、2016年10月現在、九州電力の川内(せんだい)原発2号機、四国電力の伊方(いかた)原発3号機が稼働中だ。

 「人類史上最悪」と言われた原発事故を経験し、世界を震撼させたにもかかわらず、いまだ原発で電気をつくり続けようとする日本。それとは対照的なのが、お隣の台湾だ。

 5月に新政権を発足させた民進党の蔡英文(ツァイインウェン)政権が、10月20日、再生可能エネルギー事業への民間参画を促す改正電気事業法案を閣議決定し、2025年に原発ゼロにすることを打ち出したのだ。

 台湾には稼働中の原子力発電所が3基あるが、いずれも2025年までに運転期間が40年に達する。閣議決定された改正案では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電割合を、現在の4%から2025年までに20%まで高めることで、原発に依存しない社会づくりを目指している。

 日本と同様、地震国である台湾では、東日本大震災後に大規模な反原発運動が起こり、市民の力によって2014年4月に建設中の第4原発の工事を中止に追い込むまでになった。

 今回の閣議決定を下した蔡英文率いる民進党は、そうした台湾の人々の市民運動の結果、誕生した政権だ。

 望む社会は、暮らしを守るために自ら動いたもののみが手に入れられるということを、台湾の人々の活動から読み取ることができそうだ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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